目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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第10章 この世でもっとも珍しい動物

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第10章 この世でもっとも珍しい動物

オシヒッキーは、今はもう絶滅しています。
どこにもいません。

でも、昔々、まだドリトル先生が生きていたころは、アフリカの深いジャングルには少しは残っていたのです。
とはいえ、その当時にしても、とてもとても少なかったのですが。

オシヒッキーにシッポはなく、かわりにもうひとつ頭がついています。
二つの頭に、二本の鋭い角がはえています。

オシヒッキーはジャングルの奥に引きこもって、捕まえるのが大変むつかしい動物です。

アフリカの人は動物をつかまえるとき、その動物がこちらを見ていないすきをねらいます。
しかし、オシヒッキーの場合はそうはいきません。
なぜなら頭が二つあって、どっちから近づいても、いつもこちらを見ているからです。
それに、片方が寝ていても、もう片方の頭が起きていて、警戒しています。

これが、オシヒッキーが今まで一度も捕まったことがなく、動物園にもいない理由です。

今まで、腕利きのハンターや優秀な動物園の専門家が何人も、雨の日も風の日もオシヒッキーをさがして、長い年月、その人生を費やしました。
しかし、たったの1匹さえも捕まっていなかったのです。

ずいぶん昔の、その当時でさえ、頭が2つある動物は、世界にこのオシヒッキー1種類だけでした。

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さて、この動物を捕まえるために、サルが数匹、ジャングルへでかけました。

何キロも何キロも行ったところ、川のほとりでオシヒッキーのものらしい足跡をみつけました。

「この近くにいるにちがいない」

「ああ」

そこから川の土手にそって細い道を歩いていくと、高い草が生い茂っている場所にでました。

「きっと、この草むらの中だ」

「よし。じゃあ、みんなで囲むんだ!」

サルは手をつないで、高い草のまわりに、おおきな囲いをつくりました。

オシヒッキーはサルに気づきました。
なんとかサルの囲いかからのがれようと頑張ります。

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しかし、ムリでした。
オシヒッキーは逃げられないとわかって、その場に座り込み、サルが何かいってくるのを待ちました。

サルがオシヒッキーに頼みます。

「ドリトル先生といっしょに都会へいって、ショーに出てくれないか」

それを聞いたオシヒッキーは、おどろいて2つの首を振りました。

「ありえない!」

サルはオシヒッキーに説明しました。

動物園に閉じ込められるわけではない。
ただ、見物されるだけだと。
ドリトル先生はとても親切な人だけど、お金がない。
頭が2つある動物を見物できるなら、人はお金を払う。
これで先生はお金ができて、アフリカに来るとき借りた船のお金が払えるのだ、と。

「イヤなんだ! ボクが引きこもりなの知ってるくせに。人前に出るのはイヤなんだ」

オシヒッキーは今にも泣き出しそうです。

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サルは説得に三日かけました。

三日たって、

「とりあえず、ドリトル先生という人がどんな人か会ってみたい」

ということになりました。

サルはオシヒッキーを連れ帰ると、先生の住む、草でできた小屋をノックしました。

「どうぞ!」

アヒルのダブダブが返事をします。
ちょうど、トランクに荷物を詰めていたところでした。

チーチーは自信満々で小屋にはいると、先生にオシヒッキーを見せました。

「この世にこんな動物が?」

先生は、まじまじとその変わった動物を見つめました。

「すごいなあ! どうやって考えをまとめるんだろう」

ダブダブがさけぶと、イヌのジップも、「ムリなんじゃないの?」といいます。

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チーチーがいいます。

「先生、これはアフリカのジャングルに住む、オシヒッキーという世にもめずらしい動物です。頭が2つある獣は、世界にただひとつ、この動物だけです。これを連れて帰れば、ひと財産つくれますよ。みんな、これを見るなら、いくらでも払うでしょう」

「いや、金なんかいらんのだよ」

先生がそういうと、ダブダブが割って入ります。

「いえいえ、いります。いります。先生、わすれたんですか? パドルビーで、肉屋の支払いのために、どんだけケチケチしていたか。どんだけ家中のお金をかきあつめたか。それに、先生は、あの船乗りに新しいボートを返すといってましたよね。お金もないのにどうやって買うんです?」

「船くらい、自分で作るさ」

「まったく、なにをいってんですか! 船を作るのに、材木やクギはどうするんです? それに、これから、どうやって暮らしていくんです? 帰ったら、今まで以上に貧乏なんですよ。ぜんぶ、チーチーのいうとおりです。この楽しい動物を連れて帰りましょう」

先生は、もごもごといいました。

「ああ、まあ……お前さんのいうことにも一理ある。新しい仲間としても、なかなかいい。しかし、その……えーと、なんていったかな、こいつは本気で行きたがってるのかな?」

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「うん。行く気になった」

オシヒッキーは答えました。
じつは、先生の顔を見た瞬間から、この人は信用できると思っていたのです。

「先生は、ここの動物にすごく親切にしてくれたよね。それに、役にたてるのはボクしかいないって、サルがいうし。でも、約束してよね。もし都会がいやになったら、すぐに帰らせてよね」

「もちろんだとも。きっと約束するよ。ところで、お前さんはシカの仲間かな? ちがうかな?

「うん、そうだよ。アビシニアン・ガゼルと、アジアティック・シャモアがお母さん系で、お父さんのひいおじいさんが最後のユニコーンだったんだ」

「それはおもしろい!」

先生はそういうと、ダブダブが詰めているトランクから本を出してきて、ページをめくりはじめました。

「博物学者のビュフォンはなんていっておったか……」

「あの。ちょっと気になることがあるんだけど」

ダブダブが質問します。

「あなたって、片方の口だけでしゃべっているみたいだけど、もう片方の口は使えないのかしら?」

「ううん、使えるよ。でも、こっちは食べるの専用なんだ。それだと、食べながらしゃべらないですむから、行儀がいいだろう。ボクらの種族は、みんなとても行儀がいいんだ」

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荷物を詰めおわり、出発の準備も整ったころ、サルが、先生のために盛大なパーテイーを用意しました。
ジャングルの動物もすべてやってきました。
パイナップルやマンゴーやハチミツや、その他たくさんのおいしい食べ物や飲み物を食べました。

食事のあと、先生は立ち上がりました。

「友よ。ワシは夕食のあとは頭が働かないので、長いスピーチはできない。そういう体質なんじゃ。そして、まさに今、フルーツだのハチミツだの、たらふく食べたばかりだ。しかし、これだけはいいたい。みなさんの住む、この美しい土地からはなれるのは、とても残念だ。しかし、やる事があるので、ワシは都会へもどらねばならん。みなさん、ワシがいなくなっても、これだけは忘れないでください。食べ物にハエがたかったままにしない。雨が降っているときは、地面に寝ない。えーと、えーと、では、これからも、みんなで楽しく暮らしてください。おわり」

先生が座ると、サルの拍手が長いあいだ続きました。
口々にいいます。

「この木の下で、先生とわれわれがともに座り、食したことを、いつまでも忘れず、伝えようじゃないか。先生は、本当に一番偉大な人間だ!」

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そこで、毛むくじゃらな腕をもつ、7馬力もの大ゴリラが巨大な岩を転がしてきました。

「この石は、この場所を永遠に記念するものである」

この石は、今日もなお、ジャングルに奥地の同じ場所にあります。
そして、たまに親子のサルが近くを通りかかったりすると、木々のあいまから石を指さして、こどもに伝えるのです。

「しずかに……あれをごらん。大疫病の年、善なる人とわたしたちが、あそこで一緒に食事をしたんだよ」

パーティーが終わると、みんなで海岸へ向かって出発しました。

サルは全員、先生のトランクやカバンを持って、サルの国のはずれまでついてきて、先生を見送りました。