目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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第7章  サルの橋

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第7章 サルの橋

女王アーミントルードは、その夜ほど怖い王の姿を見たことはありませんでした。

誰かれ構わずどなりちらして、飼いネコにも歯ブラシをなげつけます。
パジャマのまま走りまわり、兵隊を全員起こして、先生を捕まえるため、ジャングルへ送り込みました。
召使も全員、コックも庭師も散髪係も息子の家庭教師まで行かされました。

女王は、きつい靴をはいてダンスをしてきた帰りだったので、もうクタクタでしたが、そんな女王ですら、捜索隊の手伝いに行かされました。

一方、先生とみんなは、サルの国めざしてまっしぐら、全速力で森を駆け抜けていました。

でも、足の短いブウブウは、すぐにヘトヘトになってしまうので、先生が運んでやらないといけません。
トランクやカバンも持った上に子ブタも持つのは、けっこう大変でした。

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ジョリギンキの王は、兵隊を使えばすぐ見つかると思っていました。
先生にとっては知らない土地だし、道もわからないからです。

しかし、それがちがったのです。
サルのチーチーは、ジャングルにある道という道をすべて知っていました。
王の家来よりもよく。

チーチーは、みんなを森の奥深くへと案内しました。
人はまだ、だれも足をふみ入れたことのないような森の奥。
そんな奥地の、そびえる岩にかこまれた大きな洞穴に、みんなを隠したのです。

「しばらくここにいましょう。兵隊が寝にもどるのを待って、それからサルの国へ行くことにしましょう」

チーチーのことばを信じて、みんなはそこで一晩明かすことにしました。

ときおり、王の家来どものワーワーとした声が聞こえてきます。
ジャングル中、あちこち探しているのです。

しかし、ここなら大丈夫です。
この洞穴は、チーチー以外は他のサルでさえ知らないのです。

ついに、深い森にも朝日が差しはじめました。
女王のアーミントルードの疲れ果てた声が聞こえてきます。

「これ以上さがしても無駄じゃろう。帰って少し寝るぞよ」

兵隊たちが全員行ってしまうと、チーチーはみんなに洞穴から出るようにいいました。
サルの国に向けて出発するのです。

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そこからは長い長い道のりでした。

みんなクタクタに疲れています。
とくにブウブウはすぐに泣くので、そのたびに、大好物のココナツミルクを飲ませないといけませんでした。

でも、食べ物、飲み物には困りませんでした。
チーチーもポリネシアもジャングルでとれる果物や野菜にくわしくて、ナツメヤシやイチジク、ピーナッツやショウガ、ヤマイモなどを見つけてくるからです。

レモネードも作りました。
木のウロにできたハチの巣からハチミツをとってきて、野生のオレンジに入れるのです。

ほかにも、チーチーとポリネシアにたのめば、なんでも手に入りました。
なくても、似たようなものを見つけてきます。
ある時、持ってきたタバコが底をつき、先生がつらそうにしていると、それすら用意してきました。

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夜は、ヤシの葉でテントを作り、分厚く、やわらかい干し草を敷いて寝ます。

そうこうしているうちに、みんな、たくさん歩くのにもなれてきて、あまり疲れないようになってきました。
すると、旅は、たいへん楽しいものになってきました。

夜になると、歩くのをやめて休みます。
これがまた楽しみです。
木の枝を集めてたき火をおこし、晩ご飯です。
みんな、輪になって座り、ポリネシアの海の歌や、チーチーのジャングルの話をききます。

なかでも、チーチーのかたる物語にはおもしろいものがたくさんありました。

ドリトル先生が書きのこすようになるまで、サルは自分たちの歴史の本というものを持っていませんでした。
こどもに聞かせるためには、全部おぼえていたのです。

チーチーは、おばあさんから聞いたという物語を、たくさんかたってくれました。

昔、昔、昔、とても昔、ノアの洪水よりもっと昔、人間が毛皮を着て、岩の洞穴に住み、まだ火も知らず、料理もせずにヒツジの生肉を食べていた頃の物語。
かつて、巨大マンモスや、電車ほどの長さの恐竜が山々をうねり歩き、木々のこずえをかじっていたころの物語。
そんな物語に、みんなが夢中になりました。

あんまりおもしろかったので、気がつくと、たき火の火が消えていて、あわてて新しいたき木を探しにいくことすらありました。

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さて、宮殿に戻った王の兵隊が、

「先生を見つけられませんでした」

と報告したところ、王は、

「つかまえるまで、帰ってくるな!」

といって、追い出してしまいました。

つまり、サルの国へ向かう先生とみんなは、もう安全だと思い込んでいたのですが、実はまだ、兵隊たちに追いかけられていたのです。

チーチーがこのことを知っていたら、またみんなを隠したことでしょう。
しかし、チーチーはもちろん知りません。

ある日、チーチーは高い岩にのぼり、上からジャングルを見わたしました。

「サルの国はすぐそこです。もうまもなく到着です」

そのとおりでした。

夕方には、チーチーのいとこや他のたくさんのサルと会うことができました。
まだ病気にかかってないサルが、沼のほとりの木々にとまって、先生のことを待っていたのです。

「キャッ、キャッ、キャッ、キャッ! キーキーキーキー」

有名な先生が本当にきてくれたとわかって、おおぜいのサルが、手をたたいたり、葉っぱをゆらしたり、枝をふったり、とんでもない大さわぎになりました。

サルは、先生の持ち物ならカバンでもトランクでも何でも持ちたがります。
大ザルが、まいどのごとく、ぐったりしているブウブウを運んでくれました。
2匹のサルが、病気の仲間に先生の到着を知らせるため、先に走って行きました。

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さて、王の家来どもは、なおも先生のことを追っています。
その耳に、サルのさわぐ声が飛び込んできました。

「なんだ? ――あ!」

ついに先生の居場所をつきとめました。

「いたぞ! あの医学なんとかがいたぞ!」

急いで、つかまえに来ます。

ブウブウをかついでる大ザルは、少しおくれて歩いてましたが、捜索隊の隊長がそっと近づいてくるのに気づいて、あわてて先生に知らせました。

「いかん! 逃げるんだ!」

みんなは、今までこれほど必死に走ったことはないというほど、走りました。

「まてー!」

おいかけている方も走り出しました。
中でも隊長は、死にものぐるいで走っています。

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「うわっ!」

先生は薬カバンに足をひっかけてしまい、泥のなかに転んでしまいました。

「よし、捕まえた!」

隊長はそう思いました。

しかし、この隊長の耳は、異常に長かったのです。
髪は短かったんですが。
そのため、先生を捕まえようと突進したとき、耳が木の枝に引っかかってしまいました。

あとから来た兵隊も、隊長を助けるために止まることになってしまいました。

「よし、今のうちだ!」

そのあいだに、先生は立ち上がって逃げることができました。

走って走って走りました。

チーチーが叫びました。

「やった! あとすこしです!」

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しかし、サルの国にはいる手前で、地面が終わっていました。
そこは崖になっていて、下には川が流れています。

ここが、ジョリンギンキ王国のはずれなのです。
そして、川の向こう側が、サルの国です。

イヌのジップが見下ろすと、断崖絶壁です。

「うぎゃー。どうやって渡ればいいんだ?」

「うわー! 王様の家来が、もうそこまで来てる。見て見て! また牢屋にいれられちゃうよー」

ブウブウがまたブヒブヒ泣き出しました。

ブウブウをかついでいた大ザルが、ブウブウを地面におろし、他のサルに向かって叫びました。

「みんな! 橋だ! 速く! 橋を作れ! 時間がない。隊長の耳がはずれた。カモシカみたいにすっ飛んでくるぞ。元気出して! 橋だ! 橋だ!」

先生は驚きました。
何を使って橋を作るのか、見当もつかなかったからです。

「どこかに板でも隠してあるのか?」

まわりをさがしました。

しかし、先生が次に崖の方にふり返ったとき、すでにもう橋はかかっていました。
生きたサルの橋です。
先生がキョロキョロしている間に、サルは、目にもとまらぬ速さで手をつないで、自分たちの体をつかって橋をかけたのです。

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大ザルが先生に叫びました。

「渡って! 渡って! みんな、いそいで!」

ブウブウは、怖がってます。
橋のハバはせまく、川を見ると目がくらみそうな高さです。
しかし、なんとか渡りきりました。

みんな、渡りきりました。

ドリトル先生が最後です。
先生が渡りきったとき、王の家来どもが、さっきまでいたガケに到着しました。

「ちくしょー! まてー! 帰ってこーい!」

こぶしをふりあげ、怒りの叫びをあげています。

しかし、時、すでにおそしです。
先生とみんなは無事、サルの国にはいり、サルの橋はすっかり引き上げられてしまいました。

チーチーが先生にいいました。

「サルの橋のナゾをさぐろうと、たくさんの大探検家や立派な自然学者が、ジャングルの中に何週間も潜んでいたこともありました。でも、我々は、いまだかつて、よその国の人間に見せたことはありません。有名な『サルの橋』をごらんになったのは、先生、先生がはじめてですよ」

ドリトル先生は満足気にうなずきました。