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tovo plus〜あおもりの100家族、わたしたちのこれから。[season 6] No.070

今号(71 家族目)のご家族 ▶

坂本 隆之さん・美世子さん・隆太くん・なごみちゃん・次美ちゃん

撮影場所 ▶ ふたば写真館(青森市橋本)

 

【インタビュー】

●2011年3月11日のこと、憶えていますか?

▶隆之さん「写真館で撮影してましたね。撮影中にグラっときて…ひな祭りか何か用で小さい子の撮影だったんですが、その子は平気そうにしてました。」

▶美世子さん「その頃、上の子(隆太くん)がお腹の中にいたんですが、私もその撮影に立ち会っていました。揺れて物が落ちてきたとかはなかったのですが、停電してしまったので一度休憩にしました。」

▶隆之さん「外を見てみたら、信号機が消えていて。電気が回復する兆しもなかったので、そのまま撮影は中止することとなりました。お客様が無事に帰れるか心配でしたね、その時は。」

▶美世子さん「その後で、スタッフの子もお家へ帰らせたのですが、安全に帰れるか心配でした。」

▶隆之さん「写真館を閉めて、我々もアパートへ戻りました。途中、コンビニも電気が消えているし、あぁこれは…と。最初は大事だと思っていなかったんですが、徐々に感じてきましたね、事の重大さを。(美世子さんが)妊婦だったので、時間が経つにつれだんだん寒くなるし怖さも募っていくし、大丈夫かなって気になっていました。写真館に反射式のストーブがあったので、それをアパートに持って行って使いました。二人で毛布に包まってじっとしていましたね。」

▶美世子さん「スタッフの子がアパートにおにぎりやお弁当、あったかいお茶を持ってきてくれたんですよ、私の身を案じてくれて…。凄くありがたかったですね。私の実家(青森市内)の方と連絡が取れなくて心配だったんですけど、身重でしたのでそのまま家にいることにしました。翌3月12日は天気良く明るかったので、実家へ行ってみました。父は前日から仕事だったみたいで、母は一人でロウソク一本で夜を過ごしたと言っていました。電話も通じないし、ラジオから流れてくる情報は怖いものだったし、心細かったみたいですね。」

 

●心境や生活の変化はありましたか?

▶美世子さん「非常時に持ち出す袋を用意しました。最初の頃は期限を見て水を入れ替えたりしていましたが、今の中身は懐中電灯とロウソク、湯たんぽくらいになっています…あ、置き場所は私しか知らないので、みんなに教えておかなきゃですね。」

▶隆之さん「全国の若手写真館経営者が集まる勉強会があるのですが、その仲間でもある大槌町(岩手県上閉伊郡)の写真館の方が震災で亡くなってしまいまして…仲間と一緒に大槌に行き、追悼してきました。大槌では、ボランティアとして津波被害にあったネガや紙焼き写真をきれいに洗浄して、持ち主に返す活動も行ってきました。被災地でもっと他にできることがあるんじゃないかと思っていたのですが、持ち主さんに本当に喜んでいただけて、改めて写真=思い出をプリントして形に残すことの大切さを知りました。デジタルデータとして残すのではなく、紙に焼く大切さ。一枚の写真が、家族にとってどれだけ大事なものとなるか。いい仕事をやらせてもらっているなと思うようになりましたね。写真館にいらっしゃるお客様にも、何用というわけではなくても家族写真を撮りましょうとお勧めするようになりました。写真というものは時とともに価値が出ていきます。データで保存するだけでなく紙に残しましょうと、しっかりお勧めできるようになりました。うちの家族も毎年撮るようにしています。」

 

●10年後のご家族のイメージは?

▶美世子さん「みんな一緒にいたい。みんなで笑っていたい。笑っていなくてもいいかな、健康でいてくれたら。健康第一で。みんな朝起きてきて、学校行って、パパと二人の時間があって…そんな普通が一番ですね。」

▶隆之さん「とにかく子供たちが元気にのびのび仲良く育ってくれればいいですね。自分はそのために頑張っていられればいい。たとえ写真を仕事にしていなくても、家族が仲良くやっていけるように頑張っていられれば。あと、東北の仲間たちもみんな元気でいてくれればいいですね。もう自分の町に戻ることができなくなってしまった仲間もいますが、元気で写真館を続けてくれていたら嬉しいですね。」

 

【取材後記】写真、撮っていますか? 食べたものや景色の写真ばかりの自分の携帯。気軽に撮って、どんどん蓄積されていくデータが、近頃の「写真」のような気がします。我が家では昔、撮り終えたフィルムを写真屋さんに出しに行くのは僕の役目でした。歩いてすぐの場所にあった写真屋さん。その店内の匂いを今も思い出せます。「◯日にできるからね」と写真屋のおじさんに言われ、その日に受け取りに行く。そのワクワク感も覚えています。どんな風に写っているのかは、そこで受け取り開けてみるまでわかりませんでした。そして大きくて厚くて重いアルバムに収め、誕生会など皆が集まるタイミングで賑やかに開いてみる。そんな、家族にとってとてもとても大事な存在でした「写真」は。最近、母の写真を撮ったのはいつでしょう? 家族の写真、家族の姿、家族のカタチ、家族の思い出。一つ残らず残したいものですが、切り取るからこそ生まれてくる思いもあると思います。普段から切り取って、形に残していこう。そう思った平成29年師走でございました。(今号No.070インタビュー:なるみしう/撮影:須川健太郎)

 

【寄付総額】2011年6月〜2017年12月14日まで「¥6,015,019」を、あしなが育英会「あしなが東日本大震災遺児支援募金」へ寄付することができました。ご支援に深く感謝致します。

 

【定期購読のご協力を!】1年間の定期購読を承ります。1,800円(送料・寄付含)/1年間(12号)です。このフリーペーパーは定期購読の皆様のご支援で発行されております。ご支援の程、宜しくお願い致します。ご希望の方は、ウェブショップ(http://shop.tovo2011.com)よりお申し込みください。


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最終更新日 : 2018-01-11 16:56:08

この本の内容は以上です。


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