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算命学余話 #R48玄 (page 1)

 前回の『算命学余話 #R36玄』では、干支つまり十干と十二支の成り立ちと組合せ、及びその性質にまつわる基本理念を解説しました。十干と十二支の最小公倍数が六十なので、その組合せのバリエーションを六十花甲子と呼びますが、これを日に当てはめれば一日毎に干支の組合せはひとつずつ進み、六十日で一巡します。同様に月に当てはめれば毎月干支の組合せはひとつずつ進み、六十カ月で一巡し、年に当てはめれば毎年ひとつずつ進むので、六十年で一巡します。この六十年で一巡するということから、六十歳になることを「還暦」と呼んでいるのです。

 この干支の組合せを右から年干支・月干支・日干支の順に並べて「その日」を表したものを、算命学では宿命の三柱と呼び、或いは単に宿命と呼んでいます。

 宿命は同時に生年月日そのもののことでもあります。人間は生まれた瞬間にこの世界そのものである自然と触れることになりますが、この自然からのファースト・インパクトが、あたかもカルガモの雛が生まれて初めて見た動くものを親ガモと認識するように、生まれたばかりの人間にも多大な影響を及ぼします。一生ものの刷り込みと言っていいでしょう。それほどの刷り込み効果のある自然の影響が、人間のその後の人生に作用しないはずはない。故に、生まれた瞬間の自然の状態を示している宿命を詳しく読み解けば、その人の性格や人生の大まかな設計を知ることができるだろう、というのが算命学の考える宿命論なのです。

 

 判りやすい例を挙げるなら、南国生まれの人や夏生まれの人は汗をかきやすい体質です。これは生まれた瞬間からしばらくの間高温の環境に置かれることで、なるべく体温を下げようと盛んに汗をかきたい人体の生存欲求から生じた体質です。体温を下げられないと赤ん坊は死んでしまいますから、人体は生存のために環境に適応すべく、汗をかくモードに早くもシフトしたわけです。それがその後の人生全般にも影響している。

 こうした環境の影響はまず四季に従って顕著に現れます。その点は前回の「月干支の重要性」のところで述べました。しかし四季だけではあまりにざっくりしすぎですし、四季を更に三分割した十二カ月に分類してもまだ大まかすぎます。生まれ月で分類した十二星座占いが、一理あると同時に大まかすぎるのと同じです。同じ月に生まれたからといって、多少の共通点はあるにせよ、誰もが同じ性質であるはずがありません。

 算命学は「生まれた瞬間」をより細やかにフォーカスするために、宿命の三柱を以って人生の設計図とするという考え方を採用しました。干支の組合せは六十通りですから、これが年干支・月干支・日干支の組合せだけあるということは、60×60×60通りの自然風景がこの世に存在するということになり、同時にこれと同じ数だけの人生の設計図がこの世に存在するということになります。その数は21600通りです。随分多いと思いませんか。人口2万人の町に住む住民のうち一人も同じ生年月日でないとしたら、同じ宿命の人は一人もいない、つまりは同じ人生設計、同じ性格の人は一人もいないという計算です。

 

 ところが同時にこれは、同じ生年月日の人は同じ人生設計を持っているということでもあります。しかし同じ生年月日だからといって全くの別人が同じ人生を歩むはずがないことは、誰しも想像のつくことです。では何が違うのか。それは生まれた瞬間に持たされた地図ともいうべき宿命を駆使して、その人が実際にどのような人生の道のりを歩んだか、それによって生じた違いなのです。

 人生はよく山道に喩えられますが、算命学のいうところの宿命は地図や食糧や登山道具であり、これを持っているからといって山を制覇したわけではありません。実際に山に登らないことには登山とは言えないのです。人生も同じで、人生を歩まないことには人生とは言えないし、人生を完遂することもできないのです。そのため算命学では、宿命は人生の設計図・地図としてその半分を決定づけているけれども、残りの半分はその人自身の生き方によってかなり自由に変容すると考えています。

 だから宿命を見ただけでは「この人はこういう傾向の人生を歩む可能性が高い」ということは判っても「必ずこうなる」という断言はできないし、未来の細部を予言することもできないのです。未来の細部は、その人の日々の生き方が決定していくことだからです。

 

 それでも算命学が成立から数千年を経ても未だに廃れないのは、算命学の寄って立つ自然思想や宿命論から人間の運命なり運勢なりをある程度推し量ることができるという実績があり、その評価が一定の高さを保っているからです。

 算命学は鑑定者による霊感は必要なく、使用ツールは干支暦だけです。従って、正しく鑑定しさえずれば、誰が鑑定しても同じ鑑定結果が出るものです。この普遍性が算命学の信頼を高め、今日まで寿命を延ばしている一因です。

 今回の基礎編は、前回取り上げた干支が、鑑定の実践においてどのような意味を示しているのかを解説します。


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最終更新日 : 2017-11-29 12:27:00

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