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揺蕩い

抜け目のない

取り立て屋さんから

運命を回収されて

憧れの噴水は

コインが沢山

思い出にするための旅で

手をつないで

歩きまわったことの

大切さや嬉しさが

残渣としての淀みを

かき混ぜて

オリジナリティーの夢にする

愛していることを自覚できた

細やかな夜の紙芝居は

ホトトギスも鳴いていて

いつもと変わらぬ

流れの揺蕩い


スープ

目に見えないことを願って

手を伸ばした

届かない

届かないと

もどかしくなりながら

手を伸ばした

死にものぐるいで

どっちに進んでいるのか

分からぬままに

生きているうちに

頭上の月は

天守の足下を照らす

槍人の矜持が

蟻を驚かせて

人間同士の争いは

透き通った中華スープになって

静かに小鳥がさえずる

気持ちのよい太陽の

白いテーブルクロスの上で

静かな平面

向かい合う相手の口元は

猜疑や

思惑を感じさせることの無い

安心と平和、

安寧のにおいがする

暖かな木漏れ日


加速

想像を停めたバス停の

座っている乗客の膝には

いつもの湖面

日食は

歌に形と命を与える

すり減らしていったブレーキは

もはや速度を緩めない

急な展開に

行き場を失った速度は

鋼鉄の柵を通り越す

強烈な衝撃

高度4万メートルに飛び出して

いつの間にか

背中から羽が生えて

ふわふわと飛んでいる

覚せい剤の無い

夢の中の世界では

観覧車が猛スピードで回って

スペースシャトルが地面に突き刺さる

血で濡れた盾から

最低限が強奪されて

己の影が伸びて

頷きながら

両手を伸ばす

もう一度だけ、

と言うと

行き場を失った速度が

地面に叩き付けられて

砕けて死んだ


つつじと茶、青空

車の扉を開くと

甘いつつじの匂いが香る

乱れた季節の年の

温かな五月

一度目を閉じて

次に目を開けたら

幾つもの時間が過ぎ去って

残るのは今

天の廟の中で

おかしさと楽しさがこみ上げてきて

ほんのちょっぴりの寂しさの後味

つつじの色が

季節が変わっても

あざやかに残り続けるように

一緒に時を重ねて

年月を過ごした人達の

笑顔と声と

悲しさや怒りでさえも

その全部を記憶して

一杯の緑茶と

青い空


あの

あらあら新たを菖蒲が殺めて

幾ばくか薄弱な慈しみは何処か

うとうとと問うて疎い凍土に

延々たる灼熱の永遠なる洋々

追う王の魚の音の戸の

かんかん叩きつけられる怒った金鎚

きいきい揺れる生糸の奇異さ

くすくす笑って竦む楠木の屑に

けろっとして計測された経験に

昏々と眠り続ける狐

さらさらとさらわれて去っていった羅紗の

しわしわな和紙の鷲は輪になり

するする登って居留守で留守さ

せこせこ狸とせこせこそこの

そろそろ揃える揃わぬ草紙

ただただただいま只の今まで

ちりちり積もる理知の塵

つとつと努めて訳知り顔の

手と手の隣は通せんぼ

滔々と問うて等々うとうと

なんとなく泣いた言い訳を言うまでもなく

偽物の中にはその中の存在意義が無くて

ぬるっとして溶いたくすみの

ねえと言って問いかけられたら素知らぬ振りをしなければならぬという

野は淀んだ濃を良く知る

去り際の渦巻きとかげ



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