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数えることをやめる

あっちがいいな

こっちがいいなと

比べてみるのを

やめてみて

ひい、ふう、みい、よ

いつ、むう、なあと

数えることを

やめてみて

数や量を着せた服を

ほどいてみれば

ツベルクリンが普通にある時代の

夕暮れ時に

縁側に座った

年老いた夫婦が

ふっともたれかかって

手を合わせてみれば

また、今日も今日


一度消えてしまった光の中で

31日と1日の間に

落っこちてしまって

それにも気付かず

なんだか暗いなあと思っていると

どこからか不思議の国のアリスの

鼓笛隊が

チロチロチロと

近づいてきて目が覚める

夢と気付かない夢の中で

ああ、俺はこのまま死ぬのだなと

「流れ」を受け入れそうになった後に

そこから戻ってこれたのは

いつかのドラゴン、

けれども幾らか小さくなった竜の

瞳と目が合って

顔をぺろぺろ

舐められたから

生きる気力というものがもしもあるなら

それは人から与えられるものじゃない

己が積極的に望まねば届かない

たとえ人のための気力であっても

人から支えられた気力であっても

その人に出会ったときに

ときめくことの出来る心の準備があること

光を受け入れられるスペースが最低限、

自分の責任で確保されていること

生地に練り込まれたひとつの種は

忘れられて

いつしか枝を伸ばし

小鳥を喜ばせるようになる


微睡み

日々新たに

古くから

昔から思っていたことを

大切な人達のために

静かに口をつぐんで

ひとこと祈る

風がぴゅーん

車がびゅーん

草の葉の重なった

隙き間で

てんとう虫がかさこそ

ピカソの絵みたいに

暮らしてきたこと

覚えてきたことが

乱雑に

視野を埋め尽くしていくことが

いつしか激しくなってきて

このままいくと

きっともうすぐ

光をみれないと思うような時にも

みえていること

聞こえていること

自分を何かにつきうごかすように

働きかけるもの

そういったものから

体を離して

手を合わせる

指先一つの決まりごとは

縛っていた心から離れて

びゅーっと吹いた

風の中で

大切な人と

生きていられることに

雲は穏やかさと暖かさに

まどろむ


帰路

高速道路の渋滞が

体を突き抜けて

ぐるんぐるんと

ご飯に巻かれた

かんぴょうか何かのようになって

さっき使って

まだ洗っていないグラスに

出来上がって立てかけられると

はみ出た具材の大胆さに

ふふふと

一人静かに

心の中でわらう

世界征服は出来ないけれども

巻き寿司を介した

ストレス発散と

描き続ける絵画の一部を

物語に託して

立てかけている

簾のかかった

そば屋のラジオは

小さくてありふれた

一人の魔法使いの

完全犯罪を終わらせる


メカカモメ

夏の青空に

ぷかぷか

一群のカモメが

飛んでいて

その中に

メカカモメが

おりました

いつからどうして

飛んでいるのかは

分かりかねるが

ただぷかぷかと

空に浮かんでおりました

お昼どきには

となりのカモメの

あいさつに付き合い

退屈しのぎに

リーダーカモメの愚痴を

ばれないように

しゃべっておりました

メカカモメは

仲間に囲まれておりまして

体がぎしぎしと

音を出すようになっても

群れのペースを遅らせぬように

飛んでおりました

いくつかの旅の後に

メカカモメが

飛ばなくなると

仲間のカモメは

カモメのしきたりで

メカカモメを

弔いました



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