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息吹

夜の下流に

一隻の小舟

月明かりの夏は

風が冷たく心地よい

通り過ぎていく世界は

過ぎ去った後に

もっと

もっと知りたいという勝手の

終わった後に

生きている証し

お腹がふくらんだりへこんだり

大事な人の寝顔に

そっとキスする

太陽や青空、

嵐の波や雷鳴でさえも

力強いもの

私達を養い育てるもの

そんなものが

こんなにもふんだんに

当たり前のように

日常生活に溶け込んで

溢れていること

風に運ばれた

静かで力強い

一首は

心のお椀に

息吹をそそぐ


お月見草

疑いのない段差を

登っていって

開いた扉の向こうに広がる

青空

日々出される

命令の連続から

解き放たれて

ふっと周りを見渡すと

通り過ぎていた景色の中の

忘れていた風景の日陰で

静かにひっそりと咲く

お月見草

五線譜に流れる

安心と穏やかな幸せは

夜も眠らん


肉球

砂の中に生きる

誇り高い生き物よ

途切れた音の合間に

真実聴こえてくる

空白の彩り

両腕は

投げ出したくなるほどに重いのに

手首は次に進もうとする

地平線から

姿をみせた太陽は

イメージの世界を破って

目を細めさせる

大地を踏みしめた

ふかふかの生き物の

肉球もまた

顔に当たることの

心地よさ


数えることをやめる

あっちがいいな

こっちがいいなと

比べてみるのを

やめてみて

ひい、ふう、みい、よ

いつ、むう、なあと

数えることを

やめてみて

数や量を着せた服を

ほどいてみれば

ツベルクリンが普通にある時代の

夕暮れ時に

縁側に座った

年老いた夫婦が

ふっともたれかかって

手を合わせてみれば

また、今日も今日


一度消えてしまった光の中で

31日と1日の間に

落っこちてしまって

それにも気付かず

なんだか暗いなあと思っていると

どこからか不思議の国のアリスの

鼓笛隊が

チロチロチロと

近づいてきて目が覚める

夢と気付かない夢の中で

ああ、俺はこのまま死ぬのだなと

「流れ」を受け入れそうになった後に

そこから戻ってこれたのは

いつかのドラゴン、

けれども幾らか小さくなった竜の

瞳と目が合って

顔をぺろぺろ

舐められたから

生きる気力というものがもしもあるなら

それは人から与えられるものじゃない

己が積極的に望まねば届かない

たとえ人のための気力であっても

人から支えられた気力であっても

その人に出会ったときに

ときめくことの出来る心の準備があること

光を受け入れられるスペースが最低限、

自分の責任で確保されていること

生地に練り込まれたひとつの種は

忘れられて

いつしか枝を伸ばし

小鳥を喜ばせるようになる



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