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露色

木の葉の下に住む

遠く離れた友人へ

露色の贈り物を届けよう

心のこもった

雨が終わり

朝の心地よい風

誰も他人の人生に

及ばぬ

夢の後は

食後のお茶を

絵が書き終わったら

かくれんぼを

季節が変わって

お互いを知らない間に

年を重ねた

山のふもとの

ノイズのない

一生懸命な日々

幾年も続く

法隆寺も

それに連なる

週末の

つかの間

働きつつかれ

つかれた人は

じゅわっと

消えて

空を優しく包む


息吹

夜の下流に

一隻の小舟

月明かりの夏は

風が冷たく心地よい

通り過ぎていく世界は

過ぎ去った後に

もっと

もっと知りたいという勝手の

終わった後に

生きている証し

お腹がふくらんだりへこんだり

大事な人の寝顔に

そっとキスする

太陽や青空、

嵐の波や雷鳴でさえも

力強いもの

私達を養い育てるもの

そんなものが

こんなにもふんだんに

当たり前のように

日常生活に溶け込んで

溢れていること

風に運ばれた

静かで力強い

一首は

心のお椀に

息吹をそそぐ


お月見草

疑いのない段差を

登っていって

開いた扉の向こうに広がる

青空

日々出される

命令の連続から

解き放たれて

ふっと周りを見渡すと

通り過ぎていた景色の中の

忘れていた風景の日陰で

静かにひっそりと咲く

お月見草

五線譜に流れる

安心と穏やかな幸せは

夜も眠らん


肉球

砂の中に生きる

誇り高い生き物よ

途切れた音の合間に

真実聴こえてくる

空白の彩り

両腕は

投げ出したくなるほどに重いのに

手首は次に進もうとする

地平線から

姿をみせた太陽は

イメージの世界を破って

目を細めさせる

大地を踏みしめた

ふかふかの生き物の

肉球もまた

顔に当たることの

心地よさ


数えることをやめる

あっちがいいな

こっちがいいなと

比べてみるのを

やめてみて

ひい、ふう、みい、よ

いつ、むう、なあと

数えることを

やめてみて

数や量を着せた服を

ほどいてみれば

ツベルクリンが普通にある時代の

夕暮れ時に

縁側に座った

年老いた夫婦が

ふっともたれかかって

手を合わせてみれば

また、今日も今日



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