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見出す

透き徹った水滴

虹色の光を従えながら

青銅の騎士は

左手に盾を持つ

生まれたばかりの子供が

母親の乳を求めて探す

暖かい敷き藁も

夏の青葉

霊峰の頂上にも

気持ちのよい風が駆け抜け

花も戦ぐ

のらりくらりと

幾千の深呼吸を吐いて

てんとう虫の歌声

お月見の縁側は

ギターを片手に

花札とお酒を

昨日までみたことや嗅いだこと

そういうものが

一度に目の前にあらわれて

轟音ともに

はじける

涙も愛も怒りも愛おしさも

ただ叫びの中に

擾乱の曼荼羅を

一声に見出す


もずく

くしゃっとした

海坊主

ほっかむりをして

顔だけ海から

のぞいている

決してきれいではない

コラージュされた絵は

ほぼ元のまま

海の上にあがろうとした

その右手につかんだもずくは

まばたきをして

ずるりとすべって

ぼちゃんと

落ちた


さざ波

些細なこと

いつも良く行った

あのお店を

ふいに思い出すこと

遠くの景色だったのに

なぜこんなにも急に

思い出すのだろう

切れ切れにやってくる

田舎の電車は

足をふみふみ

待ちぼうけ

松の葉が

ちくちく刺さっても

小さな石橋は

いつもきっかけを

現在に連れてくる

たまたま寄り合った

お宿の客と

さざ波の祈りを

そっと一緒に聴いて

二つの鼓動の

たまゆらとかげろう


夕闇隠れ

詩の雨が降って

からからと降り積もる

心の鏡から

ひとつの尊さが

ゆらめく

きっと明日

夢の終わること

叶わなかった願いの

深く、深く

どこへも辿り着かないところに

落ちていくこと

けれど

生きられないよりは

むしろ

魂に薪をくべ

燃やす

紫陽花も

花火も

蛍のゆらめきの様な

口づけに似た

たまゆら

総督府の荘厳さは

朽ち果てて

廃墟の埃は

叫ぶ声を失った

強い願いに

月の光を注ぐ

紅色のこうもり傘が

石畳を渡る人の

肩にかかって

そっと

秘かな思いは

夕闇隠れ


露色

木の葉の下に住む

遠く離れた友人へ

露色の贈り物を届けよう

心のこもった

雨が終わり

朝の心地よい風

誰も他人の人生に

及ばぬ

夢の後は

食後のお茶を

絵が書き終わったら

かくれんぼを

季節が変わって

お互いを知らない間に

年を重ねた

山のふもとの

ノイズのない

一生懸命な日々

幾年も続く

法隆寺も

それに連なる

週末の

つかの間

働きつつかれ

つかれた人は

じゅわっと

消えて

空を優しく包む



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