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ほぐれる

ほどいては結び

ほどいてはもつれ

次の一手を思案する

夜の森の鳥達は

ひそひそ

くすくす

kingのために

どの駒で死ぬか

香草で匂いづけされた

焼き網の上の供物

芽を摘むこと

土を耕すこと

水をやること

塩を作ること

膨らんだ手が

そっと

両手を添えて

茶器を作る

花を添えた人の

心遣いを

ふと留めて

また、ほぐれる


これから

重なりあう山々の

鋭さに体を抉られ

断片に分かれた思い出

それぞれの方向に

歩み出そうとする暗闇の中でも

記憶の中の安寧が

一輪の穏やかさを

なげる

いつかの微笑みの光は

忘れ得ない

連なりあった氷河の

互いにこすれ、軋む音が

ただ空虚な胸に

ごつごつと

鳴り響く

けれど

風はたおやか

空は晴れ

あおぎみる人の光は

まだこれから


見出す

透き徹った水滴

虹色の光を従えながら

青銅の騎士は

左手に盾を持つ

生まれたばかりの子供が

母親の乳を求めて探す

暖かい敷き藁も

夏の青葉

霊峰の頂上にも

気持ちのよい風が駆け抜け

花も戦ぐ

のらりくらりと

幾千の深呼吸を吐いて

てんとう虫の歌声

お月見の縁側は

ギターを片手に

花札とお酒を

昨日までみたことや嗅いだこと

そういうものが

一度に目の前にあらわれて

轟音ともに

はじける

涙も愛も怒りも愛おしさも

ただ叫びの中に

擾乱の曼荼羅を

一声に見出す


もずく

くしゃっとした

海坊主

ほっかむりをして

顔だけ海から

のぞいている

決してきれいではない

コラージュされた絵は

ほぼ元のまま

海の上にあがろうとした

その右手につかんだもずくは

まばたきをして

ずるりとすべって

ぼちゃんと

落ちた


さざ波

些細なこと

いつも良く行った

あのお店を

ふいに思い出すこと

遠くの景色だったのに

なぜこんなにも急に

思い出すのだろう

切れ切れにやってくる

田舎の電車は

足をふみふみ

待ちぼうけ

松の葉が

ちくちく刺さっても

小さな石橋は

いつもきっかけを

現在に連れてくる

たまたま寄り合った

お宿の客と

さざ波の祈りを

そっと一緒に聴いて

二つの鼓動の

たまゆらとかげろう



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