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無題 3

淀みのないもの

小さな虫の鳴きごえや

蛍の光

昼間の暑さが柔らいで

透き通った匂い

遠くの花火は

彩りを添えて

後から奏を打つ

流れない時間の終わりに

そっと手をとり

慈しむ


交換できないこと

訪れた人の記憶

交わした言葉

時折の衝突

喜びと温かさ

いつか

もうすぐ死ぬ

それは誰も変わらない

けれど

それが一層

光を注ぐ

いくつになっても

種をまき続けること

明日へと枝を伸ばすこと

一周まわった

楓の葉は

意識のひとつで

元通り


étude

前に進んで

砂塵は

喉を突き抜け

双葉は遠い未来の

黒髪に

風が舞う

今一瞬を通り過ぐ

揺れ動く人の étude

飛び乗った列車は

反対方向で

重なりあったのは

急ぎすぎ

雲もまた

円を描いて薄まっていく

切手の消印は

夏の浜辺に

手痛い失敗

訪れる線路の微分に

肩がぶつかって

食い逸れた

春夜の海


感動

お庭の花が咲いて

ギリシャ文字の

後ろみたいに

背伸びをして

一心不乱に

観察を続ける君

コンクリートを

踏んだ音が面白くて

強弱やこすった音を

喜んでいる

白い小さな生き物が

いつしか大きな

青い竜になって

いえいえを守る

心の穴は

太陽の光と繋がり

獣は物語りをする

地球の音が動いて

夜空に一首

絡まりあう軌道も森も

遠く観たほしの

感動


くだせぇ

かみさまぁ、

おいらの願いを

ひとつ

聴いてくだせぇ

頼むから

いつでも

ここにいてくだせぇ

誰もが

かみさまのことを

忘れねぇような

奇跡をおこして下せぇとは

言わないです

ただ、地獄のような

痛みや心持ちを

抱えたときに

憐れんで

頬にそっと

手を添えてくれる

そういうようなことが

ありふれている

そういうこの世に

お座りになって

いつも我々を

見守っていて

くだせぇ



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