閉じる


<<最初から読む

41 / 73ページ

ごうごう

ごうごうとした音がなくなって

耳が休まると

かき消されていたものが

あらわれる

大切なもの

本当にかけがえのないものは

簡単に隠されて

心を不安に

所在をなくしてしまう

探すべきものは

みつかっていて

余計なものが

重なってみえなくなった

レンガの路で

モノクロな写真に

好奇心と恥ずかしさの

混ざった顔で座っている

やんちゃな二人


グラス

近づいたり離れたり

触れる思いは今一瞬

手に触れてみても

みつめかえしてみても

寄る辺に

よせてかえす波は

蟹をこそこそ泳がす

ムードが変わって

真剣な気配になって

ある今は今

急ごしらえで作った間に合わせと

持ち寄って作った思いやりと

グラスは満たされて

かわりばんこのなぞなぞが

深く深く

今に刻まれる

作り替えられ続ける話題に

透き通った乾杯の音が

cymbalsになって

確かに始まった

長く大切な昔語りの

横顔を撫でる


借景

どこを歩いているのだろう

昨日までにみた景色が

重なり合って

今の一歩を遮る

強いて意識を使って

立つ今の

揺るぎなさの揺らぐ

鳥瞰図

鳥になって

つついた殻は

新たな音色のレイヤー

重なり合うのは

また借景


ばしょ

心が在る場所

砂の上の

氷河の上の

林の中の

海の底

心から笑うことを

忘れたRⅡDⅡ

肩の上には

小鳥が訪れ

日々の挨拶

何かを求めた

眼差しの先に

かつて

身近だったものを

みつける

嗚呼、と歩く

行者の中にも

雨宿りの一椀


花束

どういうことで

あっても

雪は溶けて

風が吹く

新しい芽は

生まれいづる

もしも今

誰かのために

酸に両手を浸すなら

私の腕も抛とう

知らぬ間に

針を呑むなら

代理しよう

揺れ動き続ける

発電機とファンの音が

耳朶を裂くなら

私も一緒に

雨宿りをしよう

望まれない働きも

素直な花束

海の鮭



読者登録

mogurato_yukiさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について