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せめてきれいごとを

せめてきれいごとを

瓦礫に埋もれた街の

いつしか忘れた子守唄

声の届かぬ井戸に

おいていかれた

子供の烏帽子は

水に濡れ落つ

葉っぱの妖艶

連れていかれた

あの子のお手を

掴み損ねた悔いもない

以前と変わらぬ装いの

他人の音頭

当てにならない

天気の夕方

絶望せぬよう

あるいは

果たせぬ雨に打たれて

生きるため

せめてきれいごとを


ごうごう

ごうごうとした音がなくなって

耳が休まると

かき消されていたものが

あらわれる

大切なもの

本当にかけがえのないものは

簡単に隠されて

心を不安に

所在をなくしてしまう

探すべきものは

みつかっていて

余計なものが

重なってみえなくなった

レンガの路で

モノクロな写真に

好奇心と恥ずかしさの

混ざった顔で座っている

やんちゃな二人


グラス

近づいたり離れたり

触れる思いは今一瞬

手に触れてみても

みつめかえしてみても

寄る辺に

よせてかえす波は

蟹をこそこそ泳がす

ムードが変わって

真剣な気配になって

ある今は今

急ごしらえで作った間に合わせと

持ち寄って作った思いやりと

グラスは満たされて

かわりばんこのなぞなぞが

深く深く

今に刻まれる

作り替えられ続ける話題に

透き通った乾杯の音が

cymbalsになって

確かに始まった

長く大切な昔語りの

横顔を撫でる


借景

どこを歩いているのだろう

昨日までにみた景色が

重なり合って

今の一歩を遮る

強いて意識を使って

立つ今の

揺るぎなさの揺らぐ

鳥瞰図

鳥になって

つついた殻は

新たな音色のレイヤー

重なり合うのは

また借景


ばしょ

心が在る場所

砂の上の

氷河の上の

林の中の

海の底

心から笑うことを

忘れたRⅡDⅡ

肩の上には

小鳥が訪れ

日々の挨拶

何かを求めた

眼差しの先に

かつて

身近だったものを

みつける

嗚呼、と歩く

行者の中にも

雨宿りの一椀



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