手つなぎ
体が固まって動けない
崇高な事も
ポジティブな事も
鈍い歯をゆっくりと動かすから
骨を左右して
余裕がない
汗と体臭にまみれて
貶められた自尊心は
阿鼻
芽を出した二葉は
倒れた人の
顔の高さにあって
ようようと陽の光を浴びる
色が混乱して
青色の四角が顔にぶつかって
痛い
のばした手の先に
枯木は
仲間外れの世界で
閉じ込められる
夜の時間が訪れる
その時に
半周回った命が
是のガラスを割って
生きることの火を連れ戻す
痛みへの呪詛や
切り裂くような環境音が聞こえなくなって
目を開けると
どこか疲れた
みなれた人との
手つなぎ
せめてきれいごとを
せめてきれいごとを
瓦礫に埋もれた街の
いつしか忘れた子守唄
声の届かぬ井戸に
おいていかれた
子供の烏帽子は
水に濡れ落つ
葉っぱの妖艶
連れていかれた
あの子のお手を
掴み損ねた悔いもない
以前と変わらぬ装いの
他人の音頭
当てにならない
天気の夕方
絶望せぬよう
あるいは
果たせぬ雨に打たれて
生きるため
せめてきれいごとを
ごうごう
ごうごうとした音がなくなって
耳が休まると
かき消されていたものが
あらわれる
大切なもの
本当にかけがえのないものは
簡単に隠されて
心を不安に
所在をなくしてしまう
探すべきものは
みつかっていて
余計なものが
重なってみえなくなった
レンガの路で
モノクロな写真に
好奇心と恥ずかしさの
混ざった顔で座っている
やんちゃな二人
グラス
近づいたり離れたり
触れる思いは今一瞬
手に触れてみても
みつめかえしてみても
寄る辺に
よせてかえす波は
蟹をこそこそ泳がす
ムードが変わって
真剣な気配になって
ある今は今
急ごしらえで作った間に合わせと
持ち寄って作った思いやりと
グラスは満たされて
かわりばんこのなぞなぞが
深く深く
今に刻まれる
作り替えられ続ける話題に
透き通った乾杯の音が
cymbalsになって
確かに始まった
長く大切な昔語りの
横顔を撫でる
借景
どこを歩いているのだろう
昨日までにみた景色が
重なり合って
今の一歩を遮る
強いて意識を使って
立つ今の
揺るぎなさの揺らぐ
鳥瞰図
鳥になって
つついた殻は
新たな音色のレイヤー
重なり合うのは
また借景