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名前を呼べる幸せ

こっちに来てほしいから

名前を呼ぶ

名前を呼べる

当たり前の日々

嬉しいことや

楽しいこと

腹が立つことや

我慢ならないこと

いろんなことをひっかけながら

名前を呼ぶ

おあとはよろしくなくて

誰にも変えることは出来ない

関係性の絆

一生懸命に

名前を呼ぶ


左目に広がる

夜の青空が

異国でみた

空の記憶と酷似する

両手を伸ばして掴んだ

中古のオートバイで

羊を追う

三角形の糸が

空から垂れて

一寸法師の小舟に

風が吹けば

鴨がゆらゆら


手つなぎ

体が固まって動けない

崇高な事も

ポジティブな事も

鈍い歯をゆっくりと動かすから

骨を左右して

余裕がない

汗と体臭にまみれて

貶められた自尊心は

阿鼻

芽を出した二葉は

倒れた人の

顔の高さにあって

ようようと陽の光を浴びる

色が混乱して

青色の四角が顔にぶつかって

痛い

のばした手の先に

枯木は

仲間外れの世界で

閉じ込められる

夜の時間が訪れる

その時に

半周回った命が

是のガラスを割って

生きることの火を連れ戻す

痛みへの呪詛や

切り裂くような環境音が聞こえなくなって

目を開けると

どこか疲れた

みなれた人との

手つなぎ


せめてきれいごとを

せめてきれいごとを

瓦礫に埋もれた街の

いつしか忘れた子守唄

声の届かぬ井戸に

おいていかれた

子供の烏帽子は

水に濡れ落つ

葉っぱの妖艶

連れていかれた

あの子のお手を

掴み損ねた悔いもない

以前と変わらぬ装いの

他人の音頭

当てにならない

天気の夕方

絶望せぬよう

あるいは

果たせぬ雨に打たれて

生きるため

せめてきれいごとを


ごうごう

ごうごうとした音がなくなって

耳が休まると

かき消されていたものが

あらわれる

大切なもの

本当にかけがえのないものは

簡単に隠されて

心を不安に

所在をなくしてしまう

探すべきものは

みつかっていて

余計なものが

重なってみえなくなった

レンガの路で

モノクロな写真に

好奇心と恥ずかしさの

混ざった顔で座っている

やんちゃな二人



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