泪
どうしたの
嬉しいこと
悲しいこと
目に小さな虫が入って
悪が留る
留まれない記憶
思い出すこと
憧れ続けた温もり
手に触れること
祈りの果ての夢は
破れて
泪をながす
泪をながせない
いいえ
私たちは
泪をながす
red
毛むくじゃらが
寄りかかって
深く息を吐く
ふーっ
赤に溺れた私は
ワインレッド
もしくはワインレッドの毛に顔を埋める
交換可能なものから
交換不可能なものへ
誰も居ない島で
一人、波の音を聴く
流転する魔王なるものの横を通り過ぎて
がちゃがちゃと音のなる箱の中味を覗き込む
殻が割れて
傘下の教義が水に浸る
逆さまになった月の下で
お月見をして
後で還る
展覧会
ほっぺにキスして
カランコロン
円周を縁取って
屋上の池に飛びこめば
雲の温度が
体にしみこむ
目を開けたままにして
でも口は閉じていて
貴方の思惑が
転がっていった金貨を
踏みつぶさないように
二人の会話の間を
目配せと息づかいで
満たしたら
深く深く
存在を満たして
非存在するものの息づかいに注意する
高く飛んで
雲の上でふざけあったら
ほっぺたでキスを
柔和な竜が
架かる輝きを絵画に描いたら
展覧会の幕が開く会場の隅に住む
猫の家族の毛繕いする姿をみて
「あ、猫だ」と一言と木々の葉の音
愛の有りうる場所で一番安堵できる場所で
野菜スープをことこと煮込んだら
ぽこぽこと泡にゆられて
あまりにくらくらしたので
駱駝に乗ったら
体が楽だ
eternal
彼岸に
立ち止まること
つばを飲み込むこと
手に搾られた布の色
駅に架かる鳩の家
穏やかな波音
ものことが続いて
生きていても
良いと念う
おしゃべりな人は
無言で
盤を交わす
水面
静かな夜
三日月は雲をまとう
穏やかな季節の
心地よい風は
私を包み込む
昼間の喧噪で舞い上がった
澱が沈み
優しい水面の側に座って
針も竿もなく
釣り竿を
垂らす
浮き上がって
空に向かう言葉は
一つずつになる
一瞬
風が冷たくなり
波が立つと
整然さを失った言葉達が
めいめいに踊りだし
収拾がつかなくなるが
そっと目を閉じ
息をつけば
魚籠に魚が入る