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2013年

詩的鏃 (2013 ~)

anchor

red

展覧会

eternal

水面

名前を呼べる幸せ

手つなぎ

せめてきれいごとを

ごうごう

グラス

借景

ばしょ

花束

無題 3

étude

感動

くだせぇ

ほぐれる

これから

見出す

もずく

さざ波

夕闇隠れ

露色

息吹

お月見草

肉球

数えることをやめる

微睡み

帰路

メカカモメ

揺蕩い

スープ

加速

つつじと茶、青空

あの

春の空


anchor

夜月が映る海

会合にそっと

錨を下ろす

白い砂の砂漠

巻貝の殻を

見つけたら

心の奥にある

隠した想いを

吹き込む

白色雑音に紛れた日常を

乗り越える

暖色で縁取られた

所作が流されない様に

触れることの出来る温もりの

宛名を記して

錨を下ろす


どうしたの

嬉しいこと

悲しいこと

目に小さな虫が入って

悪が留る

留まれない記憶

思い出すこと

憧れ続けた温もり

手に触れること

祈りの果ての夢は

破れて

泪をながす

泪をながせない

いいえ

私たちは

泪をながす


red

毛むくじゃらが

寄りかかって

深く息を吐く

ふーっ

赤に溺れた私は

ワインレッド

もしくはワインレッドの毛に顔を埋める

交換可能なものから

交換不可能なものへ

誰も居ない島で

一人、波の音を聴く

流転する魔王なるものの横を通り過ぎて

がちゃがちゃと音のなる箱の中味を覗き込む

殻が割れて

傘下の教義が水に浸る

逆さまになった月の下で

お月見をして

後で還る


展覧会

ほっぺにキスして

カランコロン

円周を縁取って

屋上の池に飛びこめば

雲の温度が

体にしみこむ

目を開けたままにして

でも口は閉じていて

貴方の思惑が

転がっていった金貨を

踏みつぶさないように

二人の会話の間を

目配せと息づかいで

満たしたら

深く深く

存在を満たして

非存在するものの息づかいに注意する

高く飛んで

雲の上でふざけあったら

ほっぺたでキスを

柔和な竜が

架かる輝きを絵画に描いたら

展覧会の幕が開く会場の隅に住む

猫の家族の毛繕いする姿をみて

「あ、猫だ」と一言と木々の葉の音

愛の有りうる場所で一番安堵できる場所で

野菜スープをことこと煮込んだら

ぽこぽこと泡にゆられて

あまりにくらくらしたので

駱駝に乗ったら

体が楽だ


eternal

彼岸に

立ち止まること

つばを飲み込むこと

手に搾られた布の色

駅に架かる鳩の家

穏やかな波音

ものことが続いて

生きていても

良いと念う

おしゃべりな人は

無言で

盤を交わす


水面

静かな夜

三日月は雲をまとう

穏やかな季節の

心地よい風は

私を包み込む

昼間の喧噪で舞い上がった

澱が沈み

優しい水面の側に座って

針も竿もなく

釣り竿を

垂らす

浮き上がって

空に向かう言葉は

一つずつになる

一瞬

風が冷たくなり

波が立つと

整然さを失った言葉達が

めいめいに踊りだし

収拾がつかなくなるが

そっと目を閉じ

息をつけば

魚籠に魚が入る


名前を呼べる幸せ

こっちに来てほしいから

名前を呼ぶ

名前を呼べる

当たり前の日々

嬉しいことや

楽しいこと

腹が立つことや

我慢ならないこと

いろんなことをひっかけながら

名前を呼ぶ

おあとはよろしくなくて

誰にも変えることは出来ない

関係性の絆

一生懸命に

名前を呼ぶ


左目に広がる

夜の青空が

異国でみた

空の記憶と酷似する

両手を伸ばして掴んだ

中古のオートバイで

羊を追う

三角形の糸が

空から垂れて

一寸法師の小舟に

風が吹けば

鴨がゆらゆら


手つなぎ

体が固まって動けない

崇高な事も

ポジティブな事も

鈍い歯をゆっくりと動かすから

骨を左右して

余裕がない

汗と体臭にまみれて

貶められた自尊心は

阿鼻

芽を出した二葉は

倒れた人の

顔の高さにあって

ようようと陽の光を浴びる

色が混乱して

青色の四角が顔にぶつかって

痛い

のばした手の先に

枯木は

仲間外れの世界で

閉じ込められる

夜の時間が訪れる

その時に

半周回った命が

是のガラスを割って

生きることの火を連れ戻す

痛みへの呪詛や

切り裂くような環境音が聞こえなくなって

目を開けると

どこか疲れた

みなれた人との

手つなぎ


せめてきれいごとを

せめてきれいごとを

瓦礫に埋もれた街の

いつしか忘れた子守唄

声の届かぬ井戸に

おいていかれた

子供の烏帽子は

水に濡れ落つ

葉っぱの妖艶

連れていかれた

あの子のお手を

掴み損ねた悔いもない

以前と変わらぬ装いの

他人の音頭

当てにならない

天気の夕方

絶望せぬよう

あるいは

果たせぬ雨に打たれて

生きるため

せめてきれいごとを


ごうごう

ごうごうとした音がなくなって

耳が休まると

かき消されていたものが

あらわれる

大切なもの

本当にかけがえのないものは

簡単に隠されて

心を不安に

所在をなくしてしまう

探すべきものは

みつかっていて

余計なものが

重なってみえなくなった

レンガの路で

モノクロな写真に

好奇心と恥ずかしさの

混ざった顔で座っている

やんちゃな二人


グラス

近づいたり離れたり

触れる思いは今一瞬

手に触れてみても

みつめかえしてみても

寄る辺に

よせてかえす波は

蟹をこそこそ泳がす

ムードが変わって

真剣な気配になって

ある今は今

急ごしらえで作った間に合わせと

持ち寄って作った思いやりと

グラスは満たされて

かわりばんこのなぞなぞが

深く深く

今に刻まれる

作り替えられ続ける話題に

透き通った乾杯の音が

cymbalsになって

確かに始まった

長く大切な昔語りの

横顔を撫でる


借景

どこを歩いているのだろう

昨日までにみた景色が

重なり合って

今の一歩を遮る

強いて意識を使って

立つ今の

揺るぎなさの揺らぐ

鳥瞰図

鳥になって

つついた殻は

新たな音色のレイヤー

重なり合うのは

また借景


ばしょ

心が在る場所

砂の上の

氷河の上の

林の中の

海の底

心から笑うことを

忘れたRⅡDⅡ

肩の上には

小鳥が訪れ

日々の挨拶

何かを求めた

眼差しの先に

かつて

身近だったものを

みつける

嗚呼、と歩く

行者の中にも

雨宿りの一椀


花束

どういうことで

あっても

雪は溶けて

風が吹く

新しい芽は

生まれいづる

もしも今

誰かのために

酸に両手を浸すなら

私の腕も抛とう

知らぬ間に

針を呑むなら

代理しよう

揺れ動き続ける

発電機とファンの音が

耳朶を裂くなら

私も一緒に

雨宿りをしよう

望まれない働きも

素直な花束

海の鮭


無題 3

淀みのないもの

小さな虫の鳴きごえや

蛍の光

昼間の暑さが柔らいで

透き通った匂い

遠くの花火は

彩りを添えて

後から奏を打つ

流れない時間の終わりに

そっと手をとり

慈しむ


交換できないこと

訪れた人の記憶

交わした言葉

時折の衝突

喜びと温かさ

いつか

もうすぐ死ぬ

それは誰も変わらない

けれど

それが一層

光を注ぐ

いくつになっても

種をまき続けること

明日へと枝を伸ばすこと

一周まわった

楓の葉は

意識のひとつで

元通り


étude

前に進んで

砂塵は

喉を突き抜け

双葉は遠い未来の

黒髪に

風が舞う

今一瞬を通り過ぐ

揺れ動く人の étude

飛び乗った列車は

反対方向で

重なりあったのは

急ぎすぎ

雲もまた

円を描いて薄まっていく

切手の消印は

夏の浜辺に

手痛い失敗

訪れる線路の微分に

肩がぶつかって

食い逸れた

春夜の海


感動

お庭の花が咲いて

ギリシャ文字の

後ろみたいに

背伸びをして

一心不乱に

観察を続ける君

コンクリートを

踏んだ音が面白くて

強弱やこすった音を

喜んでいる

白い小さな生き物が

いつしか大きな

青い竜になって

いえいえを守る

心の穴は

太陽の光と繋がり

獣は物語りをする

地球の音が動いて

夜空に一首

絡まりあう軌道も森も

遠く観たほしの

感動


くだせぇ

かみさまぁ、

おいらの願いを

ひとつ

聴いてくだせぇ

頼むから

いつでも

ここにいてくだせぇ

誰もが

かみさまのことを

忘れねぇような

奇跡をおこして下せぇとは

言わないです

ただ、地獄のような

痛みや心持ちを

抱えたときに

憐れんで

頬にそっと

手を添えてくれる

そういうようなことが

ありふれている

そういうこの世に

お座りになって

いつも我々を

見守っていて

くだせぇ


ほぐれる

ほどいては結び

ほどいてはもつれ

次の一手を思案する

夜の森の鳥達は

ひそひそ

くすくす

kingのために

どの駒で死ぬか

香草で匂いづけされた

焼き網の上の供物

芽を摘むこと

土を耕すこと

水をやること

塩を作ること

膨らんだ手が

そっと

両手を添えて

茶器を作る

花を添えた人の

心遣いを

ふと留めて

また、ほぐれる


これから

重なりあう山々の

鋭さに体を抉られ

断片に分かれた思い出

それぞれの方向に

歩み出そうとする暗闇の中でも

記憶の中の安寧が

一輪の穏やかさを

なげる

いつかの微笑みの光は

忘れ得ない

連なりあった氷河の

互いにこすれ、軋む音が

ただ空虚な胸に

ごつごつと

鳴り響く

けれど

風はたおやか

空は晴れ

あおぎみる人の光は

まだこれから


見出す

透き徹った水滴

虹色の光を従えながら

青銅の騎士は

左手に盾を持つ

生まれたばかりの子供が

母親の乳を求めて探す

暖かい敷き藁も

夏の青葉

霊峰の頂上にも

気持ちのよい風が駆け抜け

花も戦ぐ

のらりくらりと

幾千の深呼吸を吐いて

てんとう虫の歌声

お月見の縁側は

ギターを片手に

花札とお酒を

昨日までみたことや嗅いだこと

そういうものが

一度に目の前にあらわれて

轟音ともに

はじける

涙も愛も怒りも愛おしさも

ただ叫びの中に

擾乱の曼荼羅を

一声に見出す


もずく

くしゃっとした

海坊主

ほっかむりをして

顔だけ海から

のぞいている

決してきれいではない

コラージュされた絵は

ほぼ元のまま

海の上にあがろうとした

その右手につかんだもずくは

まばたきをして

ずるりとすべって

ぼちゃんと

落ちた


さざ波

些細なこと

いつも良く行った

あのお店を

ふいに思い出すこと

遠くの景色だったのに

なぜこんなにも急に

思い出すのだろう

切れ切れにやってくる

田舎の電車は

足をふみふみ

待ちぼうけ

松の葉が

ちくちく刺さっても

小さな石橋は

いつもきっかけを

現在に連れてくる

たまたま寄り合った

お宿の客と

さざ波の祈りを

そっと一緒に聴いて

二つの鼓動の

たまゆらとかげろう


夕闇隠れ

詩の雨が降って

からからと降り積もる

心の鏡から

ひとつの尊さが

ゆらめく

きっと明日

夢の終わること

叶わなかった願いの

深く、深く

どこへも辿り着かないところに

落ちていくこと

けれど

生きられないよりは

むしろ

魂に薪をくべ

燃やす

紫陽花も

花火も

蛍のゆらめきの様な

口づけに似た

たまゆら

総督府の荘厳さは

朽ち果てて

廃墟の埃は

叫ぶ声を失った

強い願いに

月の光を注ぐ

紅色のこうもり傘が

石畳を渡る人の

肩にかかって

そっと

秘かな思いは

夕闇隠れ


露色

木の葉の下に住む

遠く離れた友人へ

露色の贈り物を届けよう

心のこもった

雨が終わり

朝の心地よい風

誰も他人の人生に

及ばぬ

夢の後は

食後のお茶を

絵が書き終わったら

かくれんぼを

季節が変わって

お互いを知らない間に

年を重ねた

山のふもとの

ノイズのない

一生懸命な日々

幾年も続く

法隆寺も

それに連なる

週末の

つかの間

働きつつかれ

つかれた人は

じゅわっと

消えて

空を優しく包む


息吹

夜の下流に

一隻の小舟

月明かりの夏は

風が冷たく心地よい

通り過ぎていく世界は

過ぎ去った後に

もっと

もっと知りたいという勝手の

終わった後に

生きている証し

お腹がふくらんだりへこんだり

大事な人の寝顔に

そっとキスする

太陽や青空、

嵐の波や雷鳴でさえも

力強いもの

私達を養い育てるもの

そんなものが

こんなにもふんだんに

当たり前のように

日常生活に溶け込んで

溢れていること

風に運ばれた

静かで力強い

一首は

心のお椀に

息吹をそそぐ


お月見草

疑いのない段差を

登っていって

開いた扉の向こうに広がる

青空

日々出される

命令の連続から

解き放たれて

ふっと周りを見渡すと

通り過ぎていた景色の中の

忘れていた風景の日陰で

静かにひっそりと咲く

お月見草

五線譜に流れる

安心と穏やかな幸せは

夜も眠らん


肉球

砂の中に生きる

誇り高い生き物よ

途切れた音の合間に

真実聴こえてくる

空白の彩り

両腕は

投げ出したくなるほどに重いのに

手首は次に進もうとする

地平線から

姿をみせた太陽は

イメージの世界を破って

目を細めさせる

大地を踏みしめた

ふかふかの生き物の

肉球もまた

顔に当たることの

心地よさ


数えることをやめる

あっちがいいな

こっちがいいなと

比べてみるのを

やめてみて

ひい、ふう、みい、よ

いつ、むう、なあと

数えることを

やめてみて

数や量を着せた服を

ほどいてみれば

ツベルクリンが普通にある時代の

夕暮れ時に

縁側に座った

年老いた夫婦が

ふっともたれかかって

手を合わせてみれば

また、今日も今日


一度消えてしまった光の中で

31日と1日の間に

落っこちてしまって

それにも気付かず

なんだか暗いなあと思っていると

どこからか不思議の国のアリスの

鼓笛隊が

チロチロチロと

近づいてきて目が覚める

夢と気付かない夢の中で

ああ、俺はこのまま死ぬのだなと

「流れ」を受け入れそうになった後に

そこから戻ってこれたのは

いつかのドラゴン、

けれども幾らか小さくなった竜の

瞳と目が合って

顔をぺろぺろ

舐められたから

生きる気力というものがもしもあるなら

それは人から与えられるものじゃない

己が積極的に望まねば届かない

たとえ人のための気力であっても

人から支えられた気力であっても

その人に出会ったときに

ときめくことの出来る心の準備があること

光を受け入れられるスペースが最低限、

自分の責任で確保されていること

生地に練り込まれたひとつの種は

忘れられて

いつしか枝を伸ばし

小鳥を喜ばせるようになる


微睡み

日々新たに

古くから

昔から思っていたことを

大切な人達のために

静かに口をつぐんで

ひとこと祈る

風がぴゅーん

車がびゅーん

草の葉の重なった

隙き間で

てんとう虫がかさこそ

ピカソの絵みたいに

暮らしてきたこと

覚えてきたことが

乱雑に

視野を埋め尽くしていくことが

いつしか激しくなってきて

このままいくと

きっともうすぐ

光をみれないと思うような時にも

みえていること

聞こえていること

自分を何かにつきうごかすように

働きかけるもの

そういったものから

体を離して

手を合わせる

指先一つの決まりごとは

縛っていた心から離れて

びゅーっと吹いた

風の中で

大切な人と

生きていられることに

雲は穏やかさと暖かさに

まどろむ


帰路

高速道路の渋滞が

体を突き抜けて

ぐるんぐるんと

ご飯に巻かれた

かんぴょうか何かのようになって

さっき使って

まだ洗っていないグラスに

出来上がって立てかけられると

はみ出た具材の大胆さに

ふふふと

一人静かに

心の中でわらう

世界征服は出来ないけれども

巻き寿司を介した

ストレス発散と

描き続ける絵画の一部を

物語に託して

立てかけている

簾のかかった

そば屋のラジオは

小さくてありふれた

一人の魔法使いの

完全犯罪を終わらせる


メカカモメ

夏の青空に

ぷかぷか

一群のカモメが

飛んでいて

その中に

メカカモメが

おりました

いつからどうして

飛んでいるのかは

分かりかねるが

ただぷかぷかと

空に浮かんでおりました

お昼どきには

となりのカモメの

あいさつに付き合い

退屈しのぎに

リーダーカモメの愚痴を

ばれないように

しゃべっておりました

メカカモメは

仲間に囲まれておりまして

体がぎしぎしと

音を出すようになっても

群れのペースを遅らせぬように

飛んでおりました

いくつかの旅の後に

メカカモメが

飛ばなくなると

仲間のカモメは

カモメのしきたりで

メカカモメを

弔いました


揺蕩い

抜け目のない

取り立て屋さんから

運命を回収されて

憧れの噴水は

コインが沢山

思い出にするための旅で

手をつないで

歩きまわったことの

大切さや嬉しさが

残渣としての淀みを

かき混ぜて

オリジナリティーの夢にする

愛していることを自覚できた

細やかな夜の紙芝居は

ホトトギスも鳴いていて

いつもと変わらぬ

流れの揺蕩い


スープ

目に見えないことを願って

手を伸ばした

届かない

届かないと

もどかしくなりながら

手を伸ばした

死にものぐるいで

どっちに進んでいるのか

分からぬままに

生きているうちに

頭上の月は

天守の足下を照らす

槍人の矜持が

蟻を驚かせて

人間同士の争いは

透き通った中華スープになって

静かに小鳥がさえずる

気持ちのよい太陽の

白いテーブルクロスの上で

静かな平面

向かい合う相手の口元は

猜疑や

思惑を感じさせることの無い

安心と平和、

安寧のにおいがする

暖かな木漏れ日


加速

想像を停めたバス停の

座っている乗客の膝には

いつもの湖面

日食は

歌に形と命を与える

すり減らしていったブレーキは

もはや速度を緩めない

急な展開に

行き場を失った速度は

鋼鉄の柵を通り越す

強烈な衝撃

高度4万メートルに飛び出して

いつの間にか

背中から羽が生えて

ふわふわと飛んでいる

覚せい剤の無い

夢の中の世界では

観覧車が猛スピードで回って

スペースシャトルが地面に突き刺さる

血で濡れた盾から

最低限が強奪されて

己の影が伸びて

頷きながら

両手を伸ばす

もう一度だけ、

と言うと

行き場を失った速度が

地面に叩き付けられて

砕けて死んだ


つつじと茶、青空

車の扉を開くと

甘いつつじの匂いが香る

乱れた季節の年の

温かな五月

一度目を閉じて

次に目を開けたら

幾つもの時間が過ぎ去って

残るのは今

天の廟の中で

おかしさと楽しさがこみ上げてきて

ほんのちょっぴりの寂しさの後味

つつじの色が

季節が変わっても

あざやかに残り続けるように

一緒に時を重ねて

年月を過ごした人達の

笑顔と声と

悲しさや怒りでさえも

その全部を記憶して

一杯の緑茶と

青い空


あの

あらあら新たを菖蒲が殺めて

幾ばくか薄弱な慈しみは何処か

うとうとと問うて疎い凍土に

延々たる灼熱の永遠なる洋々

追う王の魚の音の戸の

かんかん叩きつけられる怒った金鎚

きいきい揺れる生糸の奇異さ

くすくす笑って竦む楠木の屑に

けろっとして計測された経験に

昏々と眠り続ける狐

さらさらとさらわれて去っていった羅紗の

しわしわな和紙の鷲は輪になり

するする登って居留守で留守さ

せこせこ狸とせこせこそこの

そろそろ揃える揃わぬ草紙

ただただただいま只の今まで

ちりちり積もる理知の塵

つとつと努めて訳知り顔の

手と手の隣は通せんぼ

滔々と問うて等々うとうと

なんとなく泣いた言い訳を言うまでもなく

偽物の中にはその中の存在意義が無くて

ぬるっとして溶いたくすみの

ねえと言って問いかけられたら素知らぬ振りをしなければならぬという

野は淀んだ濃を良く知る

去り際の渦巻きとかげ


春の空

春、崖に立って

砂浜に押し寄せる波をみていた

ふと、振り返ると

パンが焼けていた

空は青い


誰にも言わずに

好きだった風景を

雪が隠した

そっと降り注ぐ

見慣れた路の

objectを連結して

新しい世界が輝く

今日の出会いが

思いもよらない

世界を創る

いつまでたっても

達成されないように

いつまでたっても

遊べるように

雪をふむ

雪は降り注いで

その足跡を消したが

大地を踏みしめた

彼の感覚は

いつまでも残る