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「わしは、ライダー。のり物シリーズだ」

「あっ、はじめまして」

 かさねられたいちばん上で、時計が言いました。

「この家の、トモ君のパンツになって、2か月以上がすぎたかな。わしらも3枚組で、他にヨットと、宇宙(うちゅう)ロケットがいっしょだよ」

「ぼくら、だれのパンツになるのでしょう?」

「3つ上のお兄ちゃんもいるが、ここはトモ君の引き出しだから。やっぱり、君らもトモ君のパンツだろうな」

「ぼくらは、ライダーよりも大きなサイズにできていて、それでもいっしょかなあ……」

「子供はどんどん成長するんだ。最初はブカブカでも、それが今ではピッタリだもの」

 ライダーはそう言うと、少し悲(かな)しそうな顔をしました。(顔がどこかって、考えこまないでくださいね。)


「わっ!」

 そのとき急に引き出しがあいて、時計がどこかへつかみ出されて行きました。

「さっそくはいていただくのでしょうか?」

 上の時計がいなくなり、帽子が顔を見せました。(顔というか顔ではなくて……。)

「いいや。ママがいちど洗濯(せんたく)をして、それからだもの。それにあの手は、ママじゃない」

「ええっ」

 しばらくたって、時計がよれよれにたたまれてもどってきました。

「サイズが違(ちが)ってる。ぼくらはきっと小さすぎるんだ。あと少しでやぶれるかと思ったよ」

 時計が、戸惑(とまど)うようすで言いました。

「君をはいたのは、トモ君のお兄ちゃんだよ。弟の買い物がうらやましくて、だからはいてみたかったんだ」

 ライダーのことばに、時計も帽子もグラサンも「はあ」と、うなずきました。


「じゃあ、トモ君が次にはくのは、ライダーってこと?」

 グラサンが、いちばん下でもごもご尋(たず)ねます。

「いいや。わしは、ゴムが少しのびてしまってな。今はここで、留守番(るすばん)をしているよ。おもらしした時なんかの、着がえ用としてな」

 ライダーは、また悲しそうな顔になりました。(たたんだシワが、そう見えます。)

「だけど思い出すなあ。トモ君が紙おむつをとって、初めてはいたパンツが、わしでな」

 ライダーの悲しい顔は、むかしをなつかしむやさしい顔に変わりました。(シワです。)


「最初は、うまくトイレに行けなくてな。家では失敗(しっぱい)しても、すぐ洗濯してもらえるから良いが。いつか遊園地(ゆうえんち)へ行ったときなど、ウンチといっしょにビニール袋(ぶくろ)に入れられて、家に着くまで、そりゃあ臭(くさ)いしたいへんだった」

 「ええっ」という顔を3枚がすると、それを横目(よこめ)で見ながらライダーが話を続けます。


「でも今はだいじょうぶ! トモ君もじょうずになって、おかげでわしの出番(でばん)も無くなった。だから君たちには、感謝(かんしゃ)してもらわないと」


「のり物シリーズのみなさんのおかげですね」

「トモ君もママも、わしらのことを〈おにいさんパンツ〉とよぶんだ」


「おにいさんパンツ」


「紙おむつが卒業(そつぎょう)できて、赤ちゃんからお兄さんのなかま入りをした証拠(しょうこ)だから。その最初の手助(てだす)けを果(は)たしたのが、わしらってことだ」

 3枚は話を聞きながら、色あせた真っ赤なバイクを、まぶしそうにながめました。


 引き出しの中ですごす間、ライダーの他にヨットや宇宙ロケットとも会うことができました。
 2枚はとてもいそがしそうで、ライダー以上によれよれに見えたけれど、トモ君の事などをかわりばんこに教えてくれました。


そして、ついにおしゃれシリーズの3枚は、そろって引き出しを出て、ママに洗濯をしてもらったのです。

 よい香(かお)りの泡(あわ)の中で、さっぱりしたら、ぽかぽかの日の下、うたた寝(ね)をしながら乾(かわ)きました。
 そのとちゅう、ヨットをはいたトモ君が、お兄ちゃんと庭(にわ)に出て、近くで遊(あそ)ぶ姿(すがた)も見られたのです。
 3枚は、なんだか楽しくなって、今日あった出来事(できごと)を、早くライダーにおしえたいと思いました。

 夕方(ゆうがた)になって、バスタオルにのせられた宇宙ロケットと別れ、引き出しにもどると、なんと、どこにもライダーの姿がありません。
 いつかこの日が来ることを、しかし、3枚とライダーも覚悟(かくご)していました。

「さあ次は、ぼくらの番だ。ライダーの分もがんばろうぜ!」

 時計が、せいいっぱい大きな声で言うと、その下でたたまれた帽子とグラサンが「わかっているさ」と、静(しず)かにうなずきました。

                           (おわり)


この本の内容は以上です。


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