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二人の少女

夕美は一見美しい、高い服が似合う、東京にあこがれる少女で、よくもてた。一方の麻紀は、顔は美しかったが、地味で、人目をひきつけなかった。

 

ある時、田舎に住むこの、親友同士の二人は、将来のことを語りながら、土手に座っていた。

そこに、一人の青年が通りかかった。

 

この二人の少女は、あまりに対照的で、二人でいるとお互いの個性が引き立つので、青年の目をひいた。

 

「ここの人?ずいぶん田舎だけどきれいなところだから僕はここに絵を描きに来たんだ。絵を描くのにいちばんいいのはこの土手だと思ってね。」

と、青年は言った。

 

「勝手に描けば?私はこの田舎が大嫌い。いつか東京の大学に行くのよ。」と夕美はそっけなく言った。麻紀は黙っていた。

 

青年は、麻紀が黙っていることが気になったらしく、しきりに麻紀の目を見ながら、絵を描き始めた。

 

それが、夕美にはしゃくにさわった。

 

 

 


上京

「ねえ、あなたどこから来たのよ。」夕美は青年に聞いた。

 

東京だ。と青年はそっぽを向きながらすげなく言った。

 

「じゃあ、私も上京するから、東京で会えるかもしれないわね。それよりあなたここが気に入ってここにいついて麻紀と結婚したりしてね。」

 

「バカなことを言うな!!」

青年(正と言う)は本気で怒り出した。

「わかったぞ、君がどんな子か。男はみんな自分に惚れると勘違いしているんだろう。その高そうな服はなんだ。隣にいる、口をきかない女の子とえらい違いだな。」

正は言う。「絵を描くのはやめだ。すっかり気がそがれた。僕は君へのあてつけに、隣の女の子と話でもするよ。」

 

正は、麻紀の隣に座った。

「ねえ、君は東京に興味はないのか?ぼくは明日帰るんだけど、見物したいなら一緒に行こうよ。

いいものがたくさん売っているよ。」


興味ありません

「悪いんですけれど、東京にもあなたにも私は興味がありません。どうして私が行かないといけないのですか。夕美を連れて行ってあげて下さい。この子は、確かに生意気だけど、・・・確かに男は自分に惚れると思い上がっているけれど、ちゃんと夢があるんですよ。それに、学歴が大切と思っていて、大学に行くつもりでいるけれど、服飾の仕事につきたくておしゃれをしているんです。」

 

「興味ありません・・・か。でも、今の話を聞いて、僕は二人ともに興味を持ったよ。ことに、麻紀ちゃんだっけ?いいねえ。こんな生意気なお友達のことをかばってあげて。しかも、悪いところを知りながらちゃんと長所も見ている。決めたよ。僕は一日だけでも君を東京に連れて行く。」

 


夕美

夕美は少しあせった。男が自分より麻紀に興味を持つのは初めてだったからだ。しかも、東京の男が。

 

しかし、男はもう麻紀にしか話しかけなくなっていた。麻紀の方は、うるさそうにあしらっているだけだったが・・・。

 

日が暮れてきた。正は麻紀に、「明日、9時にここで待っている。来なかったら一人で帰るとするか。」と言い残して去っていった。

 

「ねえ夕美、あなたあの人のこと好きになったんでしょ?」

麻紀は言った。

「あの人明日帰ってしまうわよ。あの人には、あなたのいいところが見えていない。でも、あなたの、強いところ、芯のしっかりしたところ、情熱を知れば知るほどあなたを好きになるわ。あの人は、きっと、あなたのようなきらびやかな人に東京でいっぱい囲まれているから、あなたより私に興味を持ったのね。明日、あなたがここに9時に来て、東京を見て来なさいよ。」

 


麻紀

夕美は、麻紀の手を握った。「せっかくあなたに・・・私よりもあなたに興味を持った人をあなたはあっさりと私に譲るなんて・・・。あなたはそんな生き方をして、何が大切で生きているのよ。」

 

麻紀は即答した。「もちろん、私にも夢はあるわよ。私も、画家になりたいの。見たところあの人は趣味で描いているだけだったみたいね。今まで内緒にしていたけれど、私の部屋には抽象画がたくさんあるのよ。もちろん私が描いたの。その絵は、この田舎にいないと描けはしないのよ。抽象画だけれども。」

 

 



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