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ある女

 

どこにでもいる人、彼女はこれからいったいどこに出かけるのだろう。

家に帰るとレトルトのカレーを食べながらテレビをみているのだろうか。

それとも合コンにでも行って結婚相手でも探すのだろうか。

 

そんな事を想像しながら、彼女を見つめている。

 

 

彼女は、会社からでると、そそくさと街の雑踏に流れ込む。

人々の蛇腹のような列に加わり急ぎ足で歩き出す。

 


ある女

彼女は、突然立ち止まった。

そこから石のように動けなくなったかの様だ。

 

それでも、人々の波は器用に彼女を避けて抜けていく。

 

おもいおもい体、沼地にめり込みそうな気分なのに足下はかたいコンクリート。

普段気にもしないことが、今日はこんなにも違和感を覚える。

 

「あれ?

楓じゃん、こんな路の往来で何してるの?」

 

この人どこかでみた事がある、あっ、何か答えなければ

頭は焦るのに、答えがでてこない。

 

 


ある女

とりあえず、楓はこの人に話を合わせることにした。

 

「久しぶりー、げんきだった?」とかなんとかから始まり、

数分、誰々が何の仕事をしているとか、誰と誰が結婚したとかを

聞かされる羽目になる。

 

で、ようやく

「で、あんたはどうなの?」

 

「独身、彼氏なし、事務」

 

これが精一杯の私の回答。

 

「ははは、分かる、そんなオーラでてるもん、私もそう」

 

 

 


ある女

どうやら、彼女も似たような境遇らしい。

 

そのまま、勢いで居酒屋に繰り出し、中ジョッキを2杯あけ,

結婚したい、もっと楽してお金が欲しいーだの普遍的なことを叫んだ気がする。

 

たった、これだけ.

石のようなあの状況を打破してくれた彼女には感謝する。

LINEを交換して別れた

 

しかし,最後まで言えなかった。

「あんた、だれ?」

 

でも、きっとこれからも連絡を取り合うんだろう。


この本の内容は以上です。


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