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ヨーロッパの妖精とふしぎの国の妖怪たち


 ヨーロッパの国々には、昔から、たくさんの妖精たちが目撃されている。妖精とは、森や川や草花など、自然のものにやどってる精霊(すべてのものにやどっている魂のこと)たちのことで、その種類はとても多い。

 妖精の姿や名前はさまざまだが、その性格は大きく分けて、いたずら好きの悪い妖精と、おとなしくてやさしい良い妖精の二つに分かれる。悪い妖精は、小さないたずらをするものがほとんどだが、人を殺したり、おおケガを負わせるやつらもいる。良い妖精は、ふだんは、ほとんど姿を見せずに静かにくらしているが、ときどき、人間たちの手伝いをすることもある。さらにヨーロッパには、アンデルセン童話やグリム童話、ガリバー旅行紀やふしぎの国のアリスなど、昔から語り継がれてきた物語の中には、ふしぎな妖精や怪物たちが数多く登場する。たとえば、グリム童話のように、いろんな国の民話を集めたものには、伝説の妖精や怪物たちが登場し、ガリバー旅行記のように作者がつくりだした空想の物語には、作者自信が考え出した動物や妖怪たちが登場する。その中には、おそろしいものもいれば、やさしい妖怪や、なんだかよくわからない正体不明のものまでいて、どれも魅力的なものばかり。物語によっては主人公よりも目立ったりしている。



●ブラウニー

 スコットランドやイングランドにあらわれる妖精。身長は60~90センチほどで、汚い服を着ていて、みにくい顔をしているが、人間に危害を加えるようなことはしない。

 人の家に住みつき、その家の洗濯や掃除などの残り仕事をよろこんでする。お礼として家の片隅に、質のよい牛乳とクリーム、大麦で作ったバノックという堅パンを置いておくと、次の日も手伝ってくれる。ただし、お礼を忘れたりすると機嫌が悪くなって、夜中にその家の人間の体をつねったり、部屋の中をわざと散らかしたりする。

 ブラウニーの呼び名は地域によって、ブカ、フェノゼリー、ボダッハなどと呼ばれている。


●ピクシー

 イングランド南西地域の、いろんな場所にあらわれる妖精。旅人を迷子にするいたずらが大好きだが、気に入った人間は手助けをする。服、特に緑色の服をプレゼントされると、大変喜ぶらしい。

 ふだんは手のひらに乗るほど小さいが、人間くらいの大きさにもなれる。踊り好きで、夜中に仲間と集まって踊ったりする。

 ピクシーは、ときどき、ハリネズミの姿であらわれるので、ハリネズミという意味の方言で、アーチンとも呼ばれている。

 イラストでピクシーたちが踊っている場所は妖精の環と呼ばれるもの。妖精たちが夜に集まっておどったあとに生えてくるキノコの環には、ふしぎな力があって、満月の夜に環の中に入って願い事をすると、叶うといわれている。しかし、悪い人間が環の中に入ると、妖精の国へひきずりこまれ、罰をうけるという。

 この妖精の環と同じ力を持つ輪を、ピクシーは作り出すことができる。夜中に盗み出した馬に乗ってぐるぐると回り、ガリトラップとよばれる輪を作り出すのだ。ガリトラップは、その輪の中に人間が足を踏み入れると、必ず捕まってしまう。ピクシーに気に入られた人間なら脱出できるが、悪い人間ならば、助かる可能性はほとんどないという。


●ジミー・スクウェアフット

 イギリス(グレートブリテン島)とアイルランドの間のアイリッシュ海に、マン島という小さな島が浮かんでいる。そこは、他所にはみられない、多種多用な妖精伝説に満ちあふれ、今でも様々な妖精たちが棲んでいるという。このジミー・スクウェアフットもその一つ。マン島だけに棲む妖精といわれている。 かつて、マン島にはフォールと呼ばれる巨人たちが棲んでいたという。ジミー・スクウェアフットは、その巨人たちに乗りものとして飼われていた家畜の、後の姿だといわれていてる。家畜として飼われていた頃は大きなブタの姿をしていたが、やがて巨人にすてられ、さまよい歩いているうちに、人間のように二本足で歩くようになり、今の姿になったという。

 イノシシのような大きな牙を持っているため、しばしば、人食いの怪物と間違われることがあるが、人間には無害の妖精であるらしい。



●シーオーク

 アイルランドでは、妖精のことをシー、またはシーオークと呼ぶ。イラストの妖精は、一般的なシーオーク。イバラの茂みなどに棲んでおり、人間の手のひらに軽々と乗せられるほど小さい。蝶やトンボのような羽を持ち、踊るように宙を舞う。

 小さなシーオークたちは、人間に危害を加えるようなことはほとんどないが、まれに、近づいて来た人間を、クノックと呼ばれる妖精たちの国に引きずり込むことがあるという。

 クノックは、人間が滅多に立ち入ることのない神聖な場所の地下にあって、シーオークたちは満月の夜になると、そこに集まり、一晩中踊り続けるという。クノックの入り口は、普段は人間の目に見えないが、満月の夜、クノックのある場所を三回巡ると、入り口が現れ、中で踊るシーオークたちの姿を見ることができるといわれている。


●ノーム

 ヨーロッパやスカンジナビアなどに棲む小人で、人間の手に乗せることができるほど小さい。寿命は400歳と、とても長い。男のノームは長いあごひげを生やしているが、女のノームも、300歳を越えたあたりから、ひげが生えてくるらしい。

 ノームたちは、地下に穴をほって家をつくり、赤いとんがり帽子をかぶって、家族で生活している。地域によっては、地下の宝物を守っているともいわれている。頭がよくて、はたらきものだが、他の妖精たちとは関わりを持とうとはせず、ノーム族だけで静かに暮らすことを望んでいる。しかし、たびたび、トロールから一方的に嫌がらせを受けることがあるため、トロールが近くに現れたら、臨戦態勢をとって警戒する。


●トロール

北欧の国々の森や古い塚などの地下に棲む妖精。みにくい姿をしているが、いろんな動物や美しい人間に変身することができるため、人間の住む場所へ、容易に入り込むことができる。

 大半のトロールは、くいしんぼうで力持ちのくせに、カミナリをとっても怖がる臆病な性格だが、中には、違う性格や能力をもつトロールも存在する。他の妖精たちへ執拗にいたずらを繰り返す、ひねくれもののトロールもいれば、おとなしくて優しいトロールもいる。また、太陽の光を浴びると、石になってしまう夜行性のトロールもいる。



●スプリガン

 イングランドの古い城跡や、塚、古代の巨人たちが作ったとされる環状列石などの周辺に棲む妖精。自分で管理している宝物の埋蔵地近くに棲む場合もあるという。

 スプリガンは妖精たちの中で最も醜くいとされ、性格はとても気むずかしいといわれている。 病気をもたらすこともある厄介な妖精だともいわれているが、大抵は人間を怖がらせることに満足し、必要以上に危害を加えることはめったにしないらしい。ただし、妖精たちをいじめる者や、自分の行きつけの場所を荒らす人間には、さまざまな悪さをして懲らしめるという。さらに、人間のこどもをさらったあと、かわりに自分のこどもを置いていったり、嵐を引き起こして畑をあらしたりもするらしい。

 スプリガンは、もとの小さな体を、大きくふくらませることができるので、巨人の幽霊だともいわれている。


●魔除けの植物

 もしも、悪い妖精に遭遇したとしても、魔除けのアイテムを持っていれば、危険は避けられる。四つ葉のクローバー(a)は、妖精のいたずらから身を守るといわれている。また、トネリコの枝(b)や、小さなヒナギク、ナナカマド(c)の赤い実なども、妖精たちの魔法をはねかえす力があるらしい。スプリガンやゴブリンが出没しそうな場所を訪れる際には、これらの植物を前もって身につけておくと良い。


●ドワーフ

 ドイツ、スイス、スカンジナビアなどの山地に棲む妖精。地域によっては、ドヴェルグ、ツヴェルクなどと呼ばれている。

 身長は1メートル前後で、男のドワーフも女のドワーフも毛深く、どちらも長いあごひげを生やしている。男のドワーフは老人のような顔をしているが、体はとても丈夫で力持ち。男女とも寿命は 200歳以上もある。

 ドワーフたちは太陽の光を嫌い、地下に穴をほって都市をつくり生活している。太陽の光をあびると、ドワーフは石になってしまうから地下で生活するのだという説もある。暗闇でも眼が利くため、一日の大半を地下で過ごす。鍛冶や石工が得意な妖精で、地下の作業場で精巧な道具を毎日作り続けていてる。出来上がった物に魔力を入れ込み、最終的に不思議な力を持つ武器や民芸品として完成させる。

 働き者の妖精ではあるが、敵対する妖精や怪物が近づくと、戦士となって戦う。また、ドワーフたちの縄張りに生息している動物たちを守っているとも言われていて、勝手に狩りをした者には容赦なく厳しい罰を与えるという。


●ゴブリン

 ヨーロッバでは、人間にとって悪い妖精たちのことをゴブリンと呼んでいる。いろんな姿のゴブリンがいるが、大半は小柄で醜い姿をしている。性格も皆だいたい同じで、ずる賢くって短気、さらに、飽きっぽい上にひがみっぽいから、ほかの妖精たちからも嫌われている。

 人間を襲ったり命を奪うことはしないが、人間を不幸にすることは大好きなので、いろんな悪知恵をひねり出しては悪さを企み、目当ての人間を陥れようと、常に機会を伺っている。そのくせ、ゴブリンたちの悪巧みといったら、小さないたずらばかり。たとえば、人の寝静まった民家で、物を壊したり足音をたてて騒いだり、笑うと果物が木から落ちたり、ミルクが腐ったりする術を使って人を困らせる。

 ゴブリンのほとんどは、馬小屋や洞穴などの暗い所をねぐらにしているが、同じ場所にずっと棲み続けることはしない。一人の人間を陥れたら、すぐにまた違う人間をターゲットにしたがるから、陥れる人間を求めてあっちこっち移動している。

 ゴブリンの名前が付いてても、まったく別の種類のものたちがいる。ボブゴブリンは、ゴブリンとは性格が正反対で、上半身が人間、下半身が山羊の姿をしたおとなしい妖精。ボブゴブリンたちは、ミルク一杯を与えてもらうだけで、いろんな手伝いをしてくれる。ただし、人間たちにいじめられると、そのお返しにちょっとしたいたずらをすることもある。


●ボーグル

 イングランドやスコットランドに棲む妖精。ゴブリンの仲間とされているが、ゴブリンほど悪い妖精ではない。悪い人間だけに害を加える妖精。だから、ゴブリンの仲間ではなく、ボブゴブリンの仲間だとする説もある。人間の生活にとても興味をもっていて、めったに開けられない戸棚や宝箱の中に隠れて、いつもこっそりとのぞいている。

 ボーグルは幽霊のような妖精で、姿は目に見えていても、実際には実体がなく、骨も血も肉も付いていない。だから、武器を使って退治しようとしても、ポーグルには効かない。


●レプラホーン

 アイルランドの妖精で、地下のすみかで一人暮らしをしている。地域によってはレプラコーンとも呼ばれ、奇妙な三角の帽子を斜めにかぶり、部屋にこもって、妖精たちのために靴を作り続けている。特に踊り好きの妖精たちからは、レプラホーンの作る靴は大変重宝されている。

 レプラホーンが作業をしている時は、ハンマーでたたく音が地上にももれるため、人間がその場所を見つけ出すのは容易だという。また、地下に隠された財宝のありかを知っているといわれ、しばしば、宝探しをしている人間によって捕まえられ、財宝のありかを白状させられることもあるという。しかし、人の気をそらせることが上手く、わずかなスキをついて姿を消してしまうため、結局は財宝を手にした人間はいないらしい。


●クルーラホーン

 小さな老人の姿をしたアイルランドの妖精。地域によっては、クルーラコーンとも呼ばれている。食料を蓄えておくための部屋や、地下の酒蔵などに住み着いている。

 レプラホーンの仲間とされているが、妖精たちの靴を作り続けている働き者のレプラホーンと違い、クルーラホーンは大の酒好きで、住み着いた家の酒をこっそりいただき、ほとんど毎日のように酔っぱらっている。

 時には家の主人の目を盗み、その家で雇われている召使いたちといっしょになって酒を飲むこともあるいっぽうで、酒を盗み出そうとする召使いを、追っ払ってしまうこともある。 酔いが過ぎると、ペットや家畜の背にのって大さわぎすることもあるが、そんな後は少しは反省するようで、後日、食料室や酒蔵のそうじをすることもある。

 家の者になついているというわけではないのに、家の者が引っ越しをすると、クルーラホーンは酒樽の中に隠れ、一緒に引っ越しをする。



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