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注射

今年もあと僅か。
毎年の事ながら、年の瀬が迫ってから市の健康診断に慌てて駆けつける。
もっと早く受けておけばいいものを、後で・・後で・・と一日伸ばしにしているとこんな時期になってしまう。


病院の待合い室で、壁に掛けてある「小磯良平」のパステル画や油絵などを眺めていたら、先に診察室に入っている方の採血風景がカーテンの隙間からちらりと見えた。


ちょっと髪の薄くなった50前後の働き盛りのおじさんが、注射針を見ないように、出来る限り首を回して目をぎっとつぶって我慢している様子が可愛かった。


私は絶対、最初から最後までじっと確認しないと気が済まないタチ。
針が何時刺されるか、血管に上手く命中するか、全部リアルタイムで凝視していないと嫌なのだ。
ひっ、いつ刺されるのかな・・・痛いかな・・・と見ぬふりでどきどきしている方が不安。
自分に起こる全てのことを知っておきたい性分。


この二派はきっと、癌の告知でも同じ様に二派に分かれるのだと思う。
私は自分の病状を全部知り、調べ上げた上で自分の余命を自分で取り仕切りたい。
主人はどうも他派のようだ。


目をぎっちりつぶって耐えていたあのおじさん派は、人生もふわりと夢多くすごしているのだろうなぁ・・・。
現実を見据えて、痛みも自分のものにしてしまう私のような生き方は、ちょっとリアルで甘さがなく、可愛げが無いかもしれないが、その分「いつ刺されるか」という不安からは逃避できる気がする。


などなど考えながら、待ち時間をすごしていたことだった。

で・・・。「白内障のようですね・・」だって!  げっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


はな〇〇

生地を買いに電車で出かける。
今日は秋晴れの素敵な日より。


大好きな、ぶらり一人ショッピングには打ってつけの気候。
思い立って電車に飛び乗る。


日暮里繊維問屋街は私の一番大好きなところ。
一日彷徨っていても退屈しない。


で・・・。買った!買った!生地やレースを買い捲って帰途につく。


重い袋を3つも網棚に乗せてほっと一息つく頃には、汗びっしょり!


よんこらしょと我が家に着いて、ふと鏡を見てびっくり
午後から思いつきで飛び出したので、お化粧もそこそこで、しっかり点検しないで出かけたらしく、眉の片方が描いてなかった?
はたまた、汗で流れてしまったのか・・・。


片方の眉が半分しかな~い!


ありゃりゃん!
ま、終わってしまった事だし、しゃぁない!しゃぁない・・・。(ーー;)

人って、変な事があっても、見て見ぬフリですごしてしまいますよね。
たとえ頭に「ちょんちょこりん」が乗っていようが、背中に落書きがしてあろうが、チャックが開いていようが、ズボンが裂けていようが、鬘がずれていようが、ストッキングが伝染していようが・・・。

ある日、同級生が新宿で集まろうという事になり、何十年ぶりに会った時のこと。
それぞれ、卒業以来の歴史を身体や服装に滲ませながら「あらぁ!」「まぁ!」と再会を喜びあって・・・。


当時「お嬢様」で通っていたT嬢(?)も、その名にタガワズ相変わらずお上品なたたずまい。
白い上等な麻にカッティング刺繍が施された見事なスーツは、卒業後のお幸せさを象徴していた。


と・・・。
あれま・・・。
お出掛け時には、何十年振りの思いも重なって、丹念に入念にお化粧を整えていらしたであろう彼女の鼻の脇に・・・大きな「鼻○○」が・・・。
ほんと、お気の毒だけど教えて差し上げられなかった・・・。

今も美しく華やかに活動していらっしゃる彼女のお噂を耳にするたび、どうしてもその瞬間の事が頭をよぎる。


私って、ツレナイ人かも・・・。
いや、人間ってそんなものですよね・・・。(・・;)
教えて上げなくてごめん!(遅いって!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


この本の内容は以上です。


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