2-1.『間隙時代』の変遷。
http://85358.diarynote.jp/201712032313307554/
2-1.『間隙時代』の変遷。
それから数万年が経った。
砂の大陸の先住民族であった旧石器人たちは涙滴大陸から持ち込まれた病やまた版図争いに破れ、伝説の中に「愚鈍な巨人」として語られるのみとなった。
また漂着した後もかたくなに「純血」を保ち続けた者らは「賢く剣呑な小人」族としてのみ名を残し、やはり多くの地においては伝説の彼方に没した。
早くから寛大な交雑混血を進めていった者らは広く栄え、あるは争いを避け、あるはまたより豊かな獲物や肥沃な土地を求めて、ちりぢりに増え広がり、その間に言語もまた文化や外見も離れていった。
涙滴大陸の歴史と悲劇の物語はただ「水に没した彼方の大陸」の伝説としてのみ残った。また、槍を持ち天空の城から降り立って人々を使役し苦しめた者らは、畏れをもって語られ、「天の神」という概念を形成するに至った。
大洋の孤島や多島海では、漂着した少数の者らがそのまま独自の文化を築いた。
長い長い時が経った。
人々は散り散りになりつつそれぞれの地で再び「古代文明」と呼ばれるにたる文化と建造物を築き、再び交易と混血の時代に至り、戦と婚姻が交互に行なわれ、国は統合され、文明は衝突しあった。
やがて涙滴大陸の伝承が再び発掘される頃、人々は複数国家間の大規模な戦闘を数度体験し、一時的に世界大戦を収める協約が結ばれた。
惑星をあらたに「地球」と名付け、ひとつの共存圏として複数の文化や言語や人種が共同統治を試みる時代に至った。
しかし、試みは試行錯誤のまま、祖語と破綻に終わった。
2-8.『最終戦争』
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ひみつ日記
2-3.《色の十支族》の拡散と他族の台頭
2-4.惑星上連盟の誕生と分裂。
2-5.アルヴァトーレと〈黄金のイルレアーナ〉
長らく惑星《地球》の衛星は《月》と呼ばれる1つだけであったが、ある時、2つに増えた。
《第二の月》と名づけられたそれはまさに地球に衝突せんとする小惑星を寸前で回頭させ、衛星軌道に乗せたものであった。
その行為を行った、主にPK能力者らからなる集団は後に《アルヴァトーレ》と名乗る。
呼びかけ、率いた者は、《黄金のイルレアーナ》であった。
彼らは《ムーン ii 》の領有を宣し、地球圏における最初の宇宙独立国家となる。
2-6.【M.TOKI】プロジェクト。
アルヴァトーレの主導と出資により、軌道上に独立衛星都市《ポイントP》が置かれた。それは大学都市であり、地球圏の国家間の思惑を無視して、統一人類としての宇宙開発を目指す者らの集団であった。
特筆するべき学生に、M.T. OKIがいる。
彼は在学中より数々の発明品と特許で財をなし、その財を投じて次々と新造コロニーを、始めはオーダーメイドで地表からの脱出を求める富豪らのためのそれぞれの独立都市国家として造り、次には戦乱を逃れ安寧を求める中間富裕層のために《DAN-CHI》シリーズを展開した。
その富をもって彼は「全人類救済」を掲げたNGOを立ち上げ、荒れる地球の沈む島嶼群に取り残された人々を無料で大量回収し、《WAGAYA》シリーズと呼ばれる量産コロニーに移住させていった。
2-7.《宇宙生活者連合》(コロニスツ)の成立
宇宙移住者の中で人数と技術力で主流派となったのが日系人であった。
その中から豪田行(ゴウダ・ユク)が立った。
宇宙移住者を糾合し、政体としてまとめあげ、《宇宙生活者連合》(コロニスツ)と名乗り、地表の各国に対し「対等以上」の地位を要求し、即時停戦を監視することを自らの任とした。
地表の戦乱は一旦収まったかに見えたが、地表環境の荒廃は、もはや止まらなかった。
2-8.『最終戦争』
《アルヴァトーレ》と《コロニスツ》の間でささいな分裂が起こった。
さらにそれをひき裂いて、新精力たる《青狼伝説団》が台頭した。
彼らは「保護のための地球遺棄」を宣言し、全人類の宇宙移住を強要した。
従わぬ者はことごとく抹殺され、それに抗ったのがキーヨ・エ=ミーニアらであったが、「地表復元作戦」は強行され、全生命が一旦喪われた。
この時、全生命の大半は急造された宇宙船団で外太陽系へと旅立った。
《ムーン II 》は木星軌道に留まり、星系内惑星移住者も多く残った。
残りは地下都市に潜り、細々とのみ生き残った。
これが、「地球最終戦争」と、後の世に語られる物語である。
3.美麗天地の物語
3.美麗天地の物語
3-0.《先史文明》遺跡
そも美麗天地には先人の都市遺跡あり。居住者なく、後人たちの到着時には、既に滅びていた、と言われる。
3-0-1.《ユヴァの猿族》
後人らより《ユヴァの猿族》と呼ばれる者ら惑星上にあり。言葉を持たず、文字を持たず、文化も持たぬと誤解され、当初は「類人猿なり。」と記録さる。
両性具有の群体として《思念共有》(ニワンサー)の力を有していたことが後に知られる。
遺跡都市の内紛滅亡時に争いを嫌って都を離れ野生に帰った人々の後裔、と理解された頃には後人たちとの交わりは断たれ、隠れた、または、滅びた、とされた。混血児の子孫らのみが遺され、後、その特殊能力を存続させるため少数民族として集められ、保護政策がとられた。
3-1.《星船》墜落。
美麗天地の後人らは《恒星間を渡る船》から墜ちた人々の子孫である。
一説には先人らはその落船の衝撃時に滅びた、とも言われる。
落船の子孫らは広く平坦な大陸部と多島海《ラクシャ・インストラ》に分散して墜ち、それぞれに0から文化文明を築きなおして再発展した。
ために初期文明は多文化多民族多言語空間の様相を呈し、「海峡を渡る」は「異文明世界に分け入る」と同義の危険をはらんだ。
3-2.初期《帝国》の成立。
大陸部に強国が建ち、いくつかの衝突と戦乱を経て《ラクシャ・インストラ》地域が併呑され、惑星全土が《ひとつの帝国》として緩やかに統合された。
3-2-1.《ナシルの谷》
帝国の有力者階級の子弟らと、平民階級から選抜された優秀な者らの最高等教育の場として「学都」(スレルナン)が制定された。
その中で一部の変わり者らが、与えられた官位を捨て、身分も性差もない「和合の暮らし」の理想を説いて、隠遁生活の村を創った。生涯不婚を許された別格公主アリンシ・エランの所領を恒久割譲され、《ナシルの谷》(エラン・ナシル)と名乗った。
後に惑星の正式名称となる《リスタルラーナ》は、この時、《ナシルの谷》を指して不婚公主の非公式な伴侶が詠った「リ・イス・スタル・アァルラーナ」(我らが麗しの天地よ!)が元であったと言われる。
理想と安寧の数代を経て、内乱時代に野盗に火を放たれ、土地としては滅びたが、その思想は残った。
3-3.後期《帝国》時代。
数百年にわたる内乱時代を経て再び統一帝国が建ち、平和政府の下、惑星全土がゆるやかに栄えた。
この時期、絶滅危惧種となった両性具有種《ユーヴェリー》らの末裔の「保護政策」が採られ、種の保存と普遍的人権の擁護を巡って、長らく論争が持たれた。
文化が普及し、科学技術が発展し、人々は生活に余裕を持ち、そして歴史に興味が向いた。
先人遺跡の探検と、合わせて《星船》伝説の検証が行なわれ、史実であったことがつきとめられ、ついに実物が発掘され、解析と研究が始まった。
3-4.《大崩壊》
それは突然だったと言われる。
惑星上のほぼ全ての生態系と文化文明とが、一瞬にして滅びた。
発掘責任者は直後に悲嘆にくれて自死したため詳細はつまびらかでないが、後世に往時の入力記録が確認された。
発掘隊は《星船》深部の「開かずの扉」をようやくこじ開けることに成功し、そこで提示された「光る文字」の、読めるようで意味の判然としない問いかけに対して、豪胆で知られた発掘隊長は、ただひたすらすべて「諾」の印を押し続けてみたらしい。と推測されている。
《星船》を統括する人工脳は問いかけていた。
「現住惑星を設定初期値の居住可能型惑星に再改造しますか?」
「現住惑星上に存在している全生命の保全は必要ないですか?」
「この選択を押すと警告なしに惑星改造が始まります。諾か?」
専門の高等教育を受けた少数の発掘技術者といささか知見の怪しい多数の自称考古学者とその昼食を手配していた家族の者らと天気の良い日にわざわざ地底の穴倉の遺跡探検と洒落こんだ物見遊山の好事家たち、わずか数千人のみを船内に保護して…
星船は埋まっていた地底の上の都市を瞬時に破壊して惑星重力圏外まで離脱し、即刻に「惑星改造」を開始した…
地表面は全て破砕され、微細粉末は分子原子のレベルで組み替えられ、「設定値ゼロ」の惑星表層改造が完了するまでの間、《星船》内でその報告映像を観続けることを強いられ人々は…
多くが嘆きのあまり狂死し、暴動が起き、荒れ狂い…
《星船》が再び地表に降り立った時、生き残っていたのは、数百人足らずであった…。
4.《 リスタルラーナ星間連盟 》の設立。
4-6.再起と開発。
「再改造」され尽した地表より奥深く、たまたま地底の《先人遺跡》の都市内にいた人々も原子分解の難を免れ、降りてきた人々と合流し、事実を知り、嘆き、そして再起の試みが始まった。
人々は「惑星起源伝説の再来だ…」と泣き笑いしながらよく働き、《星船》の自動機能を駆使して人工的な人口増大を図り、《星船》の提案に導かれるままに恒星間惑星開発に乗り出し、急激に増やされ過ぎた人口は更なる新天地を求め、近隣の小型惑星と大型衛星は、次々に「居住可能型」に改造されていった。
4-7.好奇と衝動。
人々は次々と与えられる「新しいもの」を喜び、「古いものを調べる」ことに極端な忌避を示した。
人種としての無意識集合体のトラウマが形成されたのである。
知的好奇心を満たすための学術教育は歓迎されたが、歴史や来歴を知る・学ぶなどの必要性はことごとく無視され、回避された。
記録は残されず、交渉もその場限りで、不足による争いが生じれば《船》に命じて、即座に新しい代替物が提供された。
4-8.忘却と忘失。
数代を待たず、人々は餓えも乾きも病も恐怖も死も忘れ…(加齢により死に近づいた人々は巧妙に隔離され、若い人々の眼からは消えた)。
その数5000と概算される惑星と衛星と人工基地とに分かれ住んだ人々は、共通言語と軽佻浮薄な好事家、という文化的心理的特徴のみを共有し、常に新しい刺激を欲し、わずかでも人生に倦み退屈すれば、簡単に世界を拒絶し、しばしば(軽率にも)衝動的な自死を選んだ。
4-9.疑問と停滞。
「…なにかが、おかしいのではないか…??」
そう呟いて立ち止る人々が現われ、この時に至って初めて「統一機構」が再結成され、有志による行政府が組織され、「リスタルラーナ星間連盟」と名乗った。
「行政」に関わる人々は、禁忌と忌み嫌われる「記録」と「計数」をしばしばとりたがるため、一般の人々からは「変人」と忌避され、「過去をほじくりかえして《大崩壊》の愚を再発したがりかねない、危険思想な人々」という認識すらなされる場合があった。
4-10.退屈と退廃
やがて多くの人々は、請えば次々と与えられる「新しいもの」が実は「いつか観たものの焼き直し」に過ぎない繰り返しだということに気づいてしまった。ひたすら新奇を求めることにすら飽き、無気力無関心の心の病が拡がった。
うわついた恋愛や結婚や家族という幻想が激減し、子どもや子育てという行為が魅力を持たなくなった。
自然人口は激減の一途をたどった。
みずから「行政」に関わろうとする生存欲の強い少数派の有志がこれを憂い、個人の希望ではなく「行政の意志」として、星船の自動機能から「人工繁殖機関」を独立させ、養育施設を工夫し、減り続ける自然人口に対して穴埋めの「育成人材」を増やし続けた。
4-X。《テラザニア》発見。
そんななか、最初期型の「育成人材」の一人であり、星間科学者マリア,オードら夫妻の養子でもあったマリア,ソレル女史が、辺境星域探査中、星腕影の暗黒の彼方に別文明《テラザニア》を発見、調査を開始した。
この情報は極秘裏のうちに上部会議にかけられ、「文化衰退抑止のための人心起爆剤」と認識され、大規模な「開国促進キャンペーン」が始まった。