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クリシュナ神の気配

4.クリシュナ神の気配

 また響に関したお話ですが、インドで私が住んでいた建物にいるサーバントの息子が、まだ十歳ぐらいなんですが、お父さんの麦畑に案内しますと言うので、ついて行ったんです。サーバントでも土地をたくさん持っているんです。アウトカーストの人でもね、大昔からそこに住んでいるから土地をたくさんもっているわけです。そこに麦を植えているんです。で、ずーっとずーっとずーっとあっちの、だいぶ遠い所まで歩いて行ったら、一面の麦畑です。ちょうど麦の穂が実って、ザーッと見渡す限り麦、金色の麦の波のうねりです。ウワーッとね、麦畑、麦畑、麦畑。そこに一本のマンゴーの木がありましてね、その木に腰を降ろして息子が持ってきたスイカを食べながら、その辺の空気を味わっていたんです。見ても見ても見ても、遠く遠く遠ーくまで、見渡す限りの麦畑、金色の穂先が波打っています。なんて言ったらいいのか、その辺り一面の空気がとってもいいんです、静かでね。その辺は今言ったような真実なバイブレーションを持った田舎の人々が住んでいる地域ですから、地域そのものにもまた真実なバイブレーションがあるんですね。人間にそういう真実なバイブレーションがあるように、その地域にも真実な響が漂っているんです。ものすごく気持がいいんです。そしてその時ね、インドの神様のクリシュナってありますね、そのクリシュナが笛を吹いて現われてくるような、そんな空気が感じられたんです。ついその辺にクリシュナが現われてきているように思うんです。気配がするんです。そんなバイブレーションが近づいてくるわけです。すごいものですねぇ。だからそれを反対に言えば、悪ーい人間がいたらその辺りの空気まで悪い。まぁ例えばシカゴとかニューヨークとか、またはダウンタウンの裏道を歩いても恐ろしいですねぇ、怖い空気が漂っているでしょう。で、その時に、神クリシュナっていたんだなぁと思いました。やっぱりそこは神クリシュナが現われてくるような、そういうバイブレーションなんですね。本当のバイブレーション、真実な響があるんです。

 

 私の書いた詩にね、我々が忘れてきた一本の笛というのがあります。その笛というのは真実な響が出るわけですね。その笛を自分たちがどこかに置き忘れてしまったんです。昔、草笛と言うんですか、草をちぎって笛を作ったりしたですね。ああいうのはいいものです。

 

 インドへ行きますとね、牛飼いの子供たちが、笛を吹きながら山羊とか水牛とか牛などたくさん引っ張っていくんです。引っ張っていくのに笛を持っています。ピリピリピリピリピリピリ鳴るね、その笛がとってもいいんです。それで子供たちがそれを吹いていると、もうその笛が欲しくてしょうがない。で、その笛を一遍見せて欲しいと言って見るでしょう。そうしたらお土産に売っているような安物の笛と同じなんです。ああ、こんなのかと思って、お土産に売っているような安物の笛を買うわけです。そして笛を吹くんだけれども、インドの子供たちが吹いているような音色が出ないんです。なんだ、やっぱり子供たちの吹いている笛とお土産の笛は違うんだなぁ、そう思うんですけれども、結局どうも同じらしいんです。皆同じ、アハハ・・・。で、皆お土産の安物の笛買って、日本に持って帰るんだけれども、吹いてもいい音色が出ない。それは細い竹にただ穴があいているだけの、つまらない笛なんです。だからいくらうまいことその笛を操っても、いい音色が出ない。その同じ笛なのにね。インドの子供の持っている笛はものすごい宝物みたいになるんです。きたない子供で、靴も履いているか履いていないかわからないような、ズボンでもシャツでも方々破れているような、いつお風呂に入ったかわからないような子供なんです。そんな子供が牛を追いながら、山羊を追いながら、吹いている笛の音がものすごくきれいなんです。そんな賤民、アウトカーストで町に行っても映画館へ入れてくれないような、しいたげられた子供が吹く笛の音から、もう真実なる響が流れてくるんです。それは何が流れてくるかと言うと、自分の心ですね。体全体から出てくるんでしょうね。

 

 長老が歌を歌いながら自分の歌の響をね、耳に手を当てて聞く、聞きながら歌う、そういうインドの伝統、大昔からある伝統。それはもう町中には、あるいはお金持ちの家には、あるいは立派な着物を着たお坊さんには、あるいは大きな殿堂で押し合いへし合いしている信者とかお坊さんたちの中にはないんです。そういう響というのはお金とか名誉心とか商売が繁盛しているとか、そういうものの中にはないんですねぇ。そういうことをインドで勉強させられるわけです。どうしたらあのような響が自分たちの中に出てくるんだろうかということを勉強するんですね。そういう恩恵というか特典があるから、奉仕活動を一生懸命にやれるんです。暑い所でも辛抱してやれるわけです。そしていつまでもそんな所にいることができたんです。我々が忘れてきた一本の笛、これをまた我々は見つけないといけないですね。