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tovo plus〜あおもりの100家族、わたしたちのこれから。[season 6] No.065

今号(66 家族目)のご家族 ▶

坂本 孝也さん・静香さん・柊馬くん・咲耶ちゃん

撮影場所 ▶ 青森市金浜

 

【インタビュー】

●2011年3月11日のこと、憶えていますか?

▶孝也さん「地震があったのは、南佃のスタジオでアシスタントと2人で仕事をしている時でした。…もう、すんごい揺れたんですよね。古い建物でしたので『崩れるんじゃないか!?』と、2人で外に出ました。そしてクルマの中でニュースを見たんです。ワンセグで。そうしたら、僕が18〜19歳の頃に住んでいた名取市の、閖上(ゆりあげ)港が津波の中に消えていく映像が流れていて…。新聞配達をしていた見慣れたエリアが写っていたんで、そこに住む知っている人達はどうしたかなと心配して見ていましたね。少ししてから仕事しに戻ったんですけど、社長に『何してんだ、早く帰れ』って言われまして帰ることに。帰路は信号止まっていて大変でしたけど、みんな譲り合っていて割とスムーズに帰ることができました。」

▶静香さん「私はその日、柊馬(当時1歳)と家にいました。柊馬を寝かせて、テレビを見ていたら揺れが来て、停電して…。柊馬を抱っこして、万が一に備えて玄関のドアを開けに行きました。この辺は地盤が固いらしく、そんなに揺れは大きくなかったんですけど、停電は珍しいなと思いましたね。どうしたんだろ?って。16時頃になって夫が帰ってきて『スタジオ(揺れが)凄かったよ!』って言うんですけど、ここがあんまり揺れなかったもんで『え、そんなに?』って感じでした。」

▶孝也さん「2人の無事を確認して、少ししたら父も帰ってきました。まだ停電したままでしたけど、父は『大丈夫、うぢだっきゃ(津軽弁。「うちは」の強調)なんでもあるんだ』と落ち着いてましたね。確かに(農家のため)お米はいくらでもあるし、ガスで調理できたし、反射式のストーブもありましたし…。翌日、はっち(八戸ポータルミュージアム。青森県八戸市三日町)で仕事の予定だったんですけど、避難所になっているとのことで中止になったり、そのまた次の日も釜石で仕事の予定でしたが、やはり中止になったりと仕事は厳しい状況でしたけども、家の中は落ち着いていました。」

▶静香さん「柊馬が初めて立ったのって、この日の夜なんですよ。なので、色々な意味で忘れられない日となりましたね。」

▶孝也さん「もともとこの辺は賑やかな方ではないですけど、この日の夜は更にシ〜ンとしていて星も綺麗でした。その景色にも少し心が救われた気がします。」

 

●心境や生活の変化はありましたか?

▶静香さん「食べるものや飲み物を多めに買うようになりました。備蓄するようになったんです。うちは登山によく行くんですが、その度に新しい水や食料に取り替えています。」

▶孝也さん「アウトドアに興味が出るようになりました。何か買う場合も、家族のことや災害時の事まで考えて買うようになりましたね。アパレルにしても、見た目にプラスαを求めるようになりました。あとは、今まで関心がなかった畑仕事についても考えるようになりました。自給自足の生活を意識するようになったんですね。それからは田んぼや畑も手伝うようになって、自分のとこで採れたものを自分たちで食べるってことを大事に思うようになりました。“作って食べる”っていうことを通して、子供達にもそのありがたさを知ってもらいたいです。正直言って自分はその“ありがたさ”を忘れていて、あの地震で再認識しましたが、子供達には忘れないでいて欲しい。どうやって育って、どうなったものを食べているのか。どの季節に何が美味しいのかとか…食べ物のありがたみですよね。あと、植物を育てられたり、家が崩れてもそれを直す知識がある親のことを改めて尊敬するようになりました。」

 

●10年後のイメージは?

▶静香さん「このままでいて欲しいですが、今後また何か災害があったとしても、その時は以前よりももっと災害に強い坂本家になっていたらいいですね。そうなることによって、他の人のことももっと考えられるようになると思うんですよ。近くても遠くても、困っている人の力になれるようになっていたい。知っている人が困っていたら辛いですし。」

▶孝也さん「家族の仲も良いですし、このまま自然に囲まれて現状を維持できていたら良いですね。さっきも言いましたが、子供達には食べ物のありがたみというものをずっと忘れないで大人になっていって欲しいです。」

 

【取材後記】食べるものに拘りがあって、食べ物の写真を撮ることが好きだという、プロカメラマン孝也さん。「津波が田んぼを飲み込んでいく映像が忘れられない。」とつぶやく。2011年、インタビュー中にも出てきたスタジオから震災後に独立し、コマーシャルフォトスタジオ『スリーイン』を設立。静香さんもカメラマンとして共に働く。2人とも実に穏やかな空気に包まれており、その2人に笑顔いっぱいの子供たちが包まれている。普通って普通じゃない…って変な表現だけれども、普通な状態は奇跡の積み重ねなんだよなぁ…なんて改めて気付かされる。そもそもこの星がこの位置にあること自体が奇跡であって…と、スケールの大きいことを青森市郊外の田んぼの一角で考えていた。

(今号No.065のインタビュー:なるみしう 撮影:須川健太郎)

 

【寄付総額】2011年6月〜2017年6月27日まで「¥5,320,262」を、あしなが育英会「あしなが東日本大震災遺児支援募金」へ寄付することができました。ご支援に深く感謝致します。

 

【定期購読のご協力を!】1年間の定期購読を承ります。1,800円(送料・寄付含)/1年間(12号)です。このフリーペーパーは定期購読の皆様のご支援で発行されております。ご支援の程、宜しくお願い致します。ご希望の方は、ウェブショップ(http://shop.tovo2011.com)よりお申し込みください。


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最終更新日 : 2017-08-11 14:00:28

この本の内容は以上です。


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