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こそどろ

 家族構成は調査済み。この時間、マンションには小僧が一人だと知っていた。

「簡単にドアを開けちゃ駄目じゃないか」

 こそどろは嫌らしい笑みを浮かべながらも、眉間に力を込める。

「ママは?」

 小僧は凍てついて阿呆面を晒す。

「口が聞けないのか?そんなことはないだろう。パパは?」

 すると、激しく首を振った。

「そこは大きく否定するんだな」

 こそどろは一安心。顔が弛緩すると鼻の下で結わいた唐草模様の手拭いが緩む。

 こんなに分かりやすい格好をしてやったのに、スコープも覗かずにドアを開けたな。

「ママは一体どんな教育してんだ?」

「ママはね、もうママって呼ぶなって言う癖に、自分のことをママって言うよ。パパもだね」

 こそどろは目をしばたたく。すると、階下から響く男達の靴音。

 気づけば小僧の手には携帯端末。

「おまえが呼んだのか?」

 こそどろは目を丸めた。

「またいつか一緒に暮らそうよ」


吊り革

 車に揺られながら、シートで酔いつぶれたサラリーマンを見下ろしていた。湯気のたつ饅頭のような男。吊り革に掴まって疲れた身体をぶら下げていると、湯気が目に入り酷くしみた。思わず手を滑らせ、その醜い腹に頭からめり込む。跳ね返る。バカな。あまりの勢いで跳ね返ったものだから、爪先立ちになってバレリーナのように反転。反対側の吊り革を掴んだ。

 驚いた。反対側のシートにも同じような饅頭男がだらしなく眠っていた。双子のように瓜二つ。反転したと思ったが一回転だったのか。いや、饅頭男のとなりに座る不機嫌な女が違う。こんな真っ赤な女ではなかった。唖然としていれば、再び手を滑らせ、その醜い腹にめり込む。跳ね返る。爪先で立ちあがり反転。元の吊り革に戻った。

 驚いた。男は血を噴いてのびていた。となりの不機嫌な女は血を浴びて真っ赤に染まっている。俺は目を丸める。そして、また手を滑らせた。


ハンマーとダーザイン

は釘を打つ道具なのだろうかいやネズミを潰す道具だろううまくヒットすれば身動きがとれなくなり、あとは頭蓋骨を砕いてお仕舞い。そんな金属片に木材の突き刺さった道具だ 

なに言ってんの。黄色いアーモンドみたいな形して 

俺はとは違うのか。  

あたしが見る限りあんたはイエローサブマリン。みんなで楽しい旅をする潜水艦。バンド演奏も加わって何不自由なく楽しく暮らせる潜水艦。 

それはあまり魅力的ではない 

なんでよ。 

今、俺本の釘が打ちたいん 

それならば金属片に木材の突き刺さったあたしのほうが向いているんじやない。 

でもはネズミを潰す道具だろう 

あんたが求めれば釘打ちくらいにはなるわよ。 

ほかに何かを打つのに適当な道具はいないのか 

ここにはあたしあんたしかいない 

それならほかの行くとしようか。 

どこに行ったって釘を打つための道具なんていやしない。いつの時だってネズミを潰す道具釘を打ってきた 

ネズミを潰す道具釘を打つなんて、あまり気持ちのいいもんじゃないな 

あんたはまでどうやって釘を打っていたのよ 

釘を打つのにとても良い形状をしていと思っていた。でも、君に言わせればそうではないらしい 

なんか悪いこと言ったかしら 

そんなことはない。俺がネズミを潰す道具というよりイエローサブマリンの形をしていだけのことだ 

でも、目の前のあたしがネズミを潰す道具みたいな形をしているじゃない。 

ネズミなんか潰したくない 

あんたバカ?あたしが釘を打ってあげるって言ってんの 

それはいいかもしれない長いこと自分で釘を打つことに疑問を感じてた。 

あんたはイエローサブマリン。みんなで楽しい旅をする潜水艦。バンド演奏も加わって何不自由なく楽しく暮らせる潜水艦。 でも、ポンコツみたいね。

俺はネズミを潰す道具を目の前にして不安を感じているよ。ポッキリ折れてしまった俺を打ち止めてくれるのだろうか 

潰すも治すもあんた次第じゃない 


奥付



Puzzzle文集10


http://p.booklog.jp/book/115223


著者 : puzzzle
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