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風 狂(2017年6月号)目 次

 

 空と海は共にあるのに           金  得永

 芭蕉布に芭蕉の花咲く           出雲 筑三

 授業参観                 高  裕香

 夜を思考する人へ             高村 昌憲

 懐 旧                  北岡 善寿

 百の足                  なべくら ますみ

 蛙                    原 詩夏至

 汀                   長尾 雅樹

 

風狂ギャラリー

 三浦逸雄の世界(十九)          三浦 逸雄

 

エッセイ

 ちょっと怖いハナシ            神宮 清志

 

 アラン『大戦の思い出』(一)       高村 昌憲 訳

 

執筆者のプロフィール

 

読者からのコメント(2017年 5月号)

 


空と海は共にあるのに      金  得永

             

空と海 共にある世界

入道雲は流れて海へ下り

空の無窮世界を竜宮に

吐き出した泡で伝える

 

太平洋の大海も湖のごと

さざ波はひたひたと伝える

珊瑚のエメラルドは水彩を描き

ふんわり青い雲白い雲になる

 

空と海も共にあり

空と大地も共にある

夕焼けに全世界は共にあるのに

人間世界も いつか このようになるのだろう

 

 

     ※本作品の日本語への翻訳は金一男氏による。

 


芭蕉布に芭蕉の花咲く     出雲 筑三

 

琉球王国の斎場御を訪ねた

途中タコライスを食べたくなって

飛び込んだ小さな店はえらく美味だった

 

店内を飾る芭蕉布には芭蕉の花が咲いている

バナナのような葉も天に伸び伸びして

なんとも微笑ましい

 

急逝した友の数少ないもち歌の中で

最も情感のあるうたい方ができた歌

それは芭蕉布のうた

 

歌い終わると

本当はもっといい唄なんだよ

が口癖だった

 

ゆるやかに時はながれ

タコライスをまぜこぜにして

沖縄の味を彼を想いながら愉しんだ

 

きっと芭蕉の花は大きな実りをつけるだろう

芭蕉翁はこの花と葉をどう感じていたのだろうか

カタンカタンと芭蕉布は揺れた

 

 

          ※沖縄県南城市(せーふぁうたき)・世界遺産の聖地 


授業参観           高  裕香

 

今日は特別な日

お母さんが うんとお化粧をして

スカートをはく学校にやって来る。

 

シーンと静まり返った教室

今日の先生の声は優しく美しい

後ろでお母さんの目が光っている。

 

『手をあげるんだ!』と

ぼくが ぼくを励ます。

でも、指名されない。

 

『もう一度、勇気を出して!』

苦手な本読みがあたった。

いつもより大きな声でゆっくりと本を読んだ。

 

先生とお母さんが

「良くやったね。」と微笑んでいる。

終わりのチャイムが 心地よく響いた。

 


夜を思考する人へ     高村 昌憲

 

夜の美徳には忠誠がありません

眠らなければならないからです

眠る男にも忠誠は保たれません

夜には新しい秩序を見出します

 

眠るルイ十四世を考えてみても

美しく正しい者にはなり得ない

大切な思想のしるしを残しても

最も優しいものが実は最も怖い

 

夜と共にやって来るのは平和です

昼の疲労が仕掛けた疑いを晴らし

真に美しく正しい者への招待です

悪者の中にあっても平穏のしるし

 

人が仮定するのは他人を許すこと

そこから出来るのは祈ることです

両膝を曲げる動作にも疲れのあと

頭も又低くなると気付くことです

 

祈りにも疲れを感じる様になり

全ての思考に夜がやって来ます

思考の中に眠る術が必要になり

熟練を恃み自ら思想を破ります

 



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