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弱くなった管理系の現場

現在の企業をみていると、どうも管理系の仕事レベルが以前よりも劣っ

ているのではないか、と想像しています。

もっとも、仕事のレベルでいえば、近時の企業活動をみていると、経営

職から技術職まで含めて劣化しているのかもわかりません。

そのことはさておき、管理系の分野においては、やはりコストダウン経

営の影響が色濃く反映されていると考えています。

とにかく、理由もなくスピード経営の影響でしょうか。

 

(図)1990年代以降の経営構造

 

 

管理系の仕事は、そもそも収益を上げる部門ではないだけに、人材育成

などに多くの時間やコストをかけたくないといった背景があります。

さらに会計や給与計算などそれぞれのシステムを使用することで省力化

が図られ、従来と比較すれば人員の大幅削減がおこなわれています。

他方、管理系の仕事では、システムなどによって省力化が図られる仕事

もありますが、人間系として多様な要素を把握しながら運営していくと

いった仕事があります。

とくに判断が必要な仕事は、それぞれの分野に専門性を有していながら

企業活動を俯瞰できる人材を配置しておかなければなりません。

理由は、専門性だけでは企業活動を通してみれば単なる部分でしかなく、

企業活動は専門性も必要ですが、経営は全体的な機能や仕組みの中で経

営者が独自に判断し、あるいは決断し、実行されていくという継続的な

プロセスの繰り返しだからです。

どちらかといえば、専門は経営の全体的な機能を補完している一部の機

能にすぎません。

 

さらに、現在東芝などで問題になっているような内部統制にかかわる分

野においては自社の事業構造や会計処理、人的資産の有無など広く経営

に通じた人材の育成をおこない、しかも内部監査体制のように組織的な

運営体制を構築しておかなければならず、とくに人材の長期的な育成は

 

 

 

 

必須条件となります。

自社の正当性を証明するのは、まずもってこのような体制が構築されて

おり、しかも相応な人材を伴って継続的に運営されていることが前提に

なるからです。

監査法人が企業の内部統制を確立するわけではありません。

あくまで自社が主体的に確立することで企業活動の正当性を担保しては

じめて監査法人の同意(監査証明)を得ることができるのです。

企業(経営者)がこのような体制を構築し維持することなく、監査法人

の証明を得れると考えているとすれば、まったくナンセンスな話です。

 

私がみている範囲からでも管理系の人材育成は極端に少なくなっていま

すし、なにかあれば契約社員や派遣で補う企業が相当数あるように思え

ます。

このように企業の中にいる人材は、判断業務における訓練をされていま

せんから専門的な知識に限らず人間系の問題点などを実践的に習得して

いないケースが多く、企業における問題の本質に近づくことさへできて

いません。

 

さらに管理職や経営職においても経営を総合的に考える、あるいは専門

性をかみしながら経営活動を幅広く考察するなどの訓練がないため、ほ

とんどが経営における課題や問題の本質に入っていけていません。

とにかく経営数字優先で仕事がおこなわれている現状からすれば、今後

も東芝のような問題は、必ず発生すると想像されます。

 

会計処理においてはコンピュータ会計の発展で会計や簿記の知識がなく

とも誰で経理処理ができますが、本来であれば、自社の事業構造におけ

る経理作業の流れを理解でき、さらに現場の生の仕事を習得している人

材が必要になりますが、当然長期的な育成ではコストがかかりますし、

数字至上主義の経営職からすれば無駄な人材育成のようにみえるでしょ

う。

しかし、事業規模が大きくなればなるほど、管理系の仕事と現場が離れ

ていきますので人材育成を怠れば、当たり前ですが、会計処理の不正を

見抜くとは難しくなり、内部監査における人材の枯渇は、さらに経営全

般の適正なチェックが働かなくなることで東芝化していきます。

 

 

 

 

この点では事業規模の大小にかかわらず上場企業における管理系の人材

育成は、本来であれば、非上場企業とは比較にならないほど時間やコス

トがかかり、そのうえ長期的な展望が必要となるものです。

人事部門においても、今後ますます多くなるであろう法律改正や多様な

働き方に備えるということは、必然的に労務問題がこれまで以上に多く

なるということを示唆しています。

これまでの20年間のような経営をおこなってきた多くの上場企業では

、相応なコストをかけて管理系の仕事の体制を再構築していく時期にき

ています。

事務の仕事は少ないでしょうが、管理系の判断業務では、専門性を有し

た知識と事業活動における営業、経理、人事、さらに自分の専門以外の

部門の現場責任者など複数の仕事の習得が、益々必要です。

これからの人材育成では、複数の分野を習得し、しかも幅広く経営活動

を実地で理解し、さらに習得しながら、自社の事業構造における課題や

問題点と複数の専門的見地をリンクすることができ、そのうえで自社に

必要な解を出せる人材が求められます。

専門性を習得するのは、ただ単に会計や労働法などの知識を理解するこ

とではありません。

専門性を自社の要求に応じて展開でき、同時に現場で習得してきた自社

の在り方を俯瞰する力と結び付けながら、自社の問題の本質を炙り出し、

企業の将来を変えていくことができる人材の育成ということになります。

 

このような人材は日頃は目立たないものです。

しかし、日々確実に判断をしながら仕事を組みてて自社のあらゆる部門

に目を光らせ、有用な情報を発信し、適切な事業遂行に近づけようと努

力奮闘しているものです。

どこの企業に必ずいるのですが、見つけたり、活かしたりするための方

針や機能を、現在の企業、なかんずく経営職が見失っています。

とくに自分の意のままに動かそうとする経営職やトップほど、このよう

な人材から遠いところにいると思っておいたほうがよいでしょう。

また、このような人間は筋が悪い仕事をするものです。

さらに似たような筋が悪い人間が集まるから始末に負えません。

 

非常に単純なことですが、なかなかできないのが日本人の特徴かもわか

りませんが、それだけに先に進めておくことができる経営者は、もちろ

 

 

 

ん今より多くのコストが発生しますが、だれもやりたがらない先憂後楽

こそ、事業を継続的に発展させていくことになるでしょう。

それだけ高い志と目標が必要になりますが、そのような企業では人間が

嬉々として働き、必ず十分な成長と発展ができます。

 

 

 

 

 


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最終更新日 : 2017-06-13 13:52:11

この本の内容は以上です。


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