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登場人物
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畠山家分裂
畠山家分裂 1
畠山家分裂 2
畠山家分裂 3
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河内をわたる風
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義政の親政
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初陣誉田城
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喜ばれぬ凱旋
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喜ばれぬ凱旋 7
すれ違う心
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すれ違う心 6
去る人、来る人
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都からの追放
都からの追放 1
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都からの追放 3
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竜田神南山の敗北
竜田神南山の敗北 1
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竜田神南山の敗北 3
竜田神南山の敗北 4
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嶽山城籠城 1
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それぞれの戦い
それぞれの戦い 1
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それぞれの戦い 3
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田楽踊り
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山上の激戦
山上の激戦 1
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猿女との約束
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大庭関の陰謀
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畠山家分裂 1

       【畠山家分裂】
 その日、神保国宗の屋敷には椎名次郎左衛門や遊佐長直といった内衆が集まっていた。畠山家の重臣が揃っている。
「お屋形さまの容態が悪いというのは確かなのだな」
 椎名次郎左衛門が尋ねると、神保国宗は深くうなずいた。
「薬師にも確かめてある。保って半年とのことだ」
「では」
「うむ、かねて打ち合わせの通り、お屋形さまが動けなくなったところで、あの小僧を倒す」
「弥三郎さまは、同意されているのですね」
 若い遊佐長直が、口をはさんだ。
「もちろんじゃ。それだけではない、細川どのや山名どのなど、幕府の宿老はみなお味方じゃ」
 国宗は自信満々である。
「小僧を亡きものにすれば、弥三郎さまの家督相続は、すぐに認められるじゃろう」
 椎名次郎左衛門も、言葉を添える。
「細川さまの腹心である磯谷どのから、場合によっては細川さまの手勢を出してもよいと言われている。さらに越中から神保家の手勢を連れてくるよう、長誠に命じてある」
「まず、仕損じることはあるまい」
 お互いの目を見つめて、みな確信をもった。
「もともと、お屋形さまが悪い。桂女の子、皮屋の子を、畠山家当主になどできるわけがない」
「そうじゃ、東寺の落ちこぼれなど、主君として仰げるものか」
 みな、後ろめたさがある。なにしろ謀反に近いことを、しようとしているのだ。自分たち自身も、納得させる必要があった。

 

 客人たちが帰って、神保国宗が横になる。まどろみはじめた時、外が騒がしくなった。
「何事じゃ」
 呼びかける間もなく、郎党が飛び込んできた。
「殿、夜討ちでございます」
「なんだと。相手は誰だ」
 立ち上がった国宗が、たずねる。
「はっ、しかとは分かりませんが、訛のある声からして、河内勢と思われます」
「うぬ、田舎ものどもめ。来たか」
 手早く着替えて、国宗は太刀を取った。
 表に出てみると、すでに門は破られ乱戦になっていた。
「殿、お味方は不利でございます。いったん逃れて、巻き返しを図りましょう」
「むむ、やむを得ぬか」
 国宗が奥に引き返そうとしたとき、大きな声が聞こえてきた。
「神保国宗はどこじゃ。隠れてんと出てきさらせ!」
 あのよく響く声は、誉田久康の声だ。
「連歌もヘタクソな上に、武士の誇りもないんか。コラ!」
 カッとした国宗は郎党が止めるのも聞かず、表に向かった。
「おお国宗、そこにおったんか」
 国宗は太刀を抜いた。
「これまで数々の雑言、許しがたい。まことの武士の腕を見せてやるわ」
「ちょー待たんかい」
 誉田久康は兜と腹巻を脱ぎだした。国宗はいぶかしげに見つめる。
「ワレが鎧を着けていない以上、ワイも鎧を脱ぐ。待ってろや」
 国宗はあきれた。
「さて。これでよっしゃ。あっち(あの世)で、鎧がなかったから負けた。誉田の奴は卑怯やゆわれたらかなわんからのう」
「ふん、後悔するなよ」
 神保国宗が斬りかかる。誉田久康は、がっしりと受け止めた。そのまま鍔ぜりあいが続く。お互い一歩も引かずに押しあっている。刀だけではない、お互い、相手の顔を火がでるほど睨みつけていた。
 まわりの者たちも手がだせない。息を飲んでみつめていた。
 国宗が優勢かと思えば、久康が押し返す。そんな時間がずっと続いていた。武士と武士の意地が、張り合っているのだ。
 長い時間が流れ、周囲の戦いが終わってからも、なお押しあいが続いていた。神保屋敷は、すでに河内勢に制圧されている。
 ようやく、誉田久康の優勢が見えてきた。いくぶん若い分だけ勝っている。久康は、国宗の上におおいかぶさってきた。
 国宗が後ろ向きにどっと倒れ、勝負がついた。
 誉田久康はそのまま馬乗りになる。だが二人ともはあはあと荒い息を吐いていて、動けない。
「久康、オレの負けだ。首を打て」
「はぁ、はぁ。国宗、ワレこそ見事やった。これほどやるとは思わんかった」
「ふん、世辞などいらんわ」
 上下になった二人は、お互いを見つめあった。
「久康、これはどうじゃ『花ならぬ 身をも何処に 誘ふらん』」
 にやっと笑った久康が答える。
「乱れたる世の 末の春風」
「やるのう」
 笑った国宗の首を、久康は切った。
 享徳三年(一四五四年)の春の夜だった。


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畠山家分裂 2

 神保家では、主だった者四人が討たれた。逃れたのは、神保与二郎ほか数人である。神保長誠は越中に行っていたため、命びろいした。
 畠山徳本入道のもとに、報告がはいっていた。予想外だったのは、畠山弥三郎兄弟をとり逃がしたことである。年若い二人を脅さないように、平服の者どもを送ったのが失敗だった。危急を知った遊佐長直が駆けつけてきて、二人を連れ去ったらしい。
「長直め、やりおる」
 その他、椎名、土肥など、内衆たちにも逃げられた。徳本入道は張本人である神保国宗さえ倒せば、内衆たちは詫びをいれてくると思っていたのである。
 自分たち父子が、これほど嫌われていることに、徳本入道は衝撃を受けていた。
 弥三郎兄弟は細川屋形に、その他の重臣たちは山名屋形に逃げ込んだという。幕府宿老もみな、自分の敵であることを改めて知った。
「お屋形さまは、ずいぶん嫌われておりますな」
 義就は、のんきな事を言う。
(それは、おまえも同じだ)
 幕府宿老が敵になっているのは、自分が派閥に加わらないからだと思う。だが、畠山家の内衆が反乱を起こすのは、義就のことが気にいらないからだ。徳本入道はそう見ていた。
 末法の世の春風に散らされるのは、自分たちかも知れない。病身の徳本入道に、弱気の虫が生まれてきていた。

 

 細川屋形に、弥三郎派の者たちが集まった。
 弥三郎、弥次郎兄弟の間に細川勝元が割り込んできて肩に手をかける。
「この細川屋形にいるかぎり、大丈夫じゃ。ご安心めされよ。幕府の宿老もみな、お二人の味方ですぞ」
「かたじけない」
 弥三郎が答える。
「あとの事は磯谷四郎と、よく相談されることじゃ。なに、東寺あがりの小僧など、誰も相手にしませぬわ」
 勝元は笑いながら、部屋を出て行った。
 磯谷四郎が、畠山の内衆たちを見回す。
「さて、今後いかにするかですが」
「それがしに策がござる」
 言い出したのは遊佐長直だった。
「河内の者どもは、たしかに強者が多い。正面から戦えば、こちらも無事ではすまぬ」
「では、どうするのじゃ」
 弥三郎派の長老格となった椎名次郎左衛門が、問いかけた。
「河内で騒ぎを起こさせるのでござる」
 遊佐本家は代々、河内の守護代を務めてきた。河内の中に、領地もたくさん持っている。徳本入道に対して反乱を起こさせることも、容易だろう。
「河内で反乱が起きれば、遊佐国助や誉田一族は、国元に戻るはずじゃ。そうすれば、都で徳本入道と義就に味方する者はいなくなる」
「なるほど」
「さすがに遊佐本家にその人ありと言われた長直どのじゃ」
 磯谷四郎が、感心してみせた。
「越中の軍勢もほどなく都にまいりましょう。その時こそ、勝負でござる」
 神保与二郎が、腕をさすった。


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畠山家分裂 3

 河内の国元で違乱が起きているという報告が、徳本入道のところにはいったのは、七月になってのことだった。
「お屋形さま」
 遊佐国助や誉田久康が、対応のために集まってきた。
「細川勝元のやつが、裏で糸を引いているに決まっている」
 みな憤慨していた。
「国助、久康、おぬしら直ちに河内に向かえ。刃向かう者どもを鎮めてくるのじゃ」
 徳本入道が、指示した。畠山家が守護を務める国は、河内(大阪東部)越中(富山県)紀伊(和歌山県)それに大和(奈良県)の一部である。なかでも河内は都にも近く、分国の要だった。河内を安定させなければ、何もできない。
 評定に出てきた義就が、珍しく発言した。
「しかし、手勢を送ってしまえば、都が手薄になりましょう。大丈夫でしょうか」
 内衆(重臣)のほとんどに背かれた今、頼りになるのは河内衆だけだ。その虎の子を手放してしまえば、都で何かあったときに、対処のしようがない。みなの懸念はそこにあった。
「弥三郎も椎名次郎左衛門も、摂津(大阪北部)に向かったらしい。勝元の本拠で、再起を図るつもりじゃ」
「では、当面都に攻め上ってくるおそれはない、ということですな」
 遊佐国助が言と、徳本入道はうなずいた。徳本入道の顔色はひどく悪い。気力を振り絞っているようだ。
「なにか動きがあれば、すぐに知らせる。むしろ、早いうちに手を打っておく事が肝要じゃ」
 徳本入道の言葉に、一同が頭を下げた。

 

 十日ほどたった夕刻、義就が寝所で休んでいると、庭先から声がかかった。
「修羅さま」
 円々なのが分かって、義就は濡れ縁にでてきた。
「円々どうした」
 円々が、縁の下で平伏している。
「細川屋形に、軍勢が集まっております。」
「なにっ」
 寝耳に水だった。摂津に動きがないことは、今日も確かめてあった。
「どうやら越中の者どものようでございます。明日にでも、こちらに寄せてくる気配でございます」
 円々たち散所法師の、横のつながりは広い。ほとんどの寺には、ケガレを始末する散所法師がいるのだ。お互い協力していかなければ、生き残れない世だった。
「ううむ」
 越中の軍勢がこれほど早く上洛してくるとは、思わなかった。まがりなりにも、畠山徳本入道は越中守護である。それに刃向かうとなれば、異論もあるだろう。国中をまとめて軍勢を出すには、時間がかかると踏んでいたのである。
 そのとき、隣の部屋の蔀戸から、覗いている者がいるのに気づいた。笙子姫に違いない。義就はずっと隣の部屋で寝起きしているのだった。
「笙子、安心しろ。わたしはこれから、お屋形さまと打ち合わせをしてくる。おまえを危険な目に会わせるつもりはない。ここで待っておれ」
 そう言うと、義就は父、徳本入道の寝所に向かった。



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