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廃工場

 

 地球連合軍基地。

 

バランスボールやエクササイズローラー、ボディブレードなどが置かれている。

 

  奏、入場。

 

 

 

奏     さあ。入って入って。

 

 

 

  チョウジ、ハルオ、トーマス、明日香の四人、続いて入場。

 

 

 

奏     ここが、現在の地球連合軍基地だ。

 

チョウジ  いや、基地って言うか…。

 

トーマス  健康グッズばかりですね。

 

奏     俺はここで毎日、身体を鍛えている。見てろ。

 

 

 

  奏、バランスボールに乗る。

 

 

 

ハルオ   大丈夫かよ。

 

奏     そろそろ、ガロン長官も帰って来るはずだ。

 

チョウジ  え…ガロン長官?

 

トーマス  まだ、お元気なんですか。

 

奏     ああ。ガロン長官はな、爬虫類帝国と闘うため、自らをサイボーグに改造したんだ。

 

明日香   ガロン長官が、サイボーグに?

 

奏     それも、ただのサイボーグじゃない。生物学と機械工学の粋を集めた、究極のサイボーグだ。

 

チョウジ  生物学と、機械工学…。

 

 

 

  と、ガロン長官の声が響き渡る。

 

 

 

ガロン   諸君。久しぶりだな。

 

チョウジ  こ、この声は。ガロン長官!

 

 

 

  音楽。ガロン長官入場。

 

  右手が大根、左手が大根おろしになっている。

 

  音楽アウト。

 

 

 

ガロン   私の右腕は大根。そして左手は大根おろしだ。

 

四人    ズコーッ!

 

ガロン   諸君。私は、この時をずっと待っていた。完全なる昆虫戦士となった君たちが目覚める、この時をな。三十年ぶりのこの世界で、戸惑うことも多いだろう。分からないことがあれば、何でも聞いてくれ。

 

トーマス  じゃあ、私から。一体どうやってこの三十年間、爬虫類帝国と闘って来たんですか?

 

奏     ん?

 

トーマス  だって、その幼虫の身体じゃあ、昆虫戦士のパワーは出せないわけでしょう?

 

明日香   ああ、確かに。

 

奏     あー、うん。まあ、体力じゃ勝てないからねえ。ひたすら、爬虫類を就職させたよね。

 

チョウジ  就職?

 

奏     結局、地球でやることがないから、支配したいとか考えちゃうわけだろ。だから、怪人一人一人とまずは話して、何がやりたいか聞いて、で、就職させる。

 

ハルオ   ハローワークみたいだな。

 

奏     時間かかっちゃうけどさ、しょうがないよな。こっちは、マトモに闘えないんだから。

 

ガロン   私も、右手が大根ではな。

 

明日香   自分でやったんでしょ。

 

奏     それじゃあ、皆のことも教えてよ。そうだ、改めて自己紹介しようか。

 

ハルオ   はあ?

 

トーマス  何で、今更。

 

奏     いや、俺にしてみりゃ三十年ぶりだしさ。それに、皆も一緒に訓練してただけだし、                 実はお互いのこと何も知らないんじゃないの?

 

明日香   それはないと思うけど。

 

奏     じゃあ、まあ俺から。えー、時羽奏です。今の目標は、なんとなく生まれてる皆との                 溝を埋めること。将来の夢は、パイロットです。

 

ハルオ   間に合わねえだろ。

 

奏     じゃあ、皆も。

 

トーマス  ええと…エッフェル・トーマスです。元モデルらしく、華麗に闘いたいと思います。

 

チョウジ  え。トーマス、モデルだったのか?

 

トーマス  ええ、はい。

 

明日香   え、初耳。

 

奏     ホラホラ。知らないじゃん、お互いのこと。さあ、ドンドン行こう。

 

ハルオ   えー、多安島ハルオ。とにかく、俺がいれば全部大丈夫なんで、任せてくれ。

 

トーマス  へえ、言いますね。

 

ハルオ   い、いいだろ。ホラ、明日香。

 

明日香   え、私?…えっと…(かわいい声を出して)桜田〝ファミリア〟明日香です。えっと…その。紅一点、頑張りたいと思います。

 

ハルオ   何だよ、かわいこぶりやがって。

 

明日香   べ、別に。

 

奏     じゃあ、チョウジ。

 

チョウジ  …万里チョウジだ。俺たち、ずっと眠っていたみたいだけど…今日からコンチュ        ウジャーの100倍パワーで、爬虫類帝国のヤツらを全員ブッ倒してやる。そうだろ、    みんな!?

 

 

 

  三人、頷く。

 

 

 

奏     あー…うーん…。

 

チョウジ  何だよ。

 

奏     そういうノリは、いいかな。ちょっと、面倒くさいって言うか。

 

チョウジ  なっ。面倒くさいってどういうことだよ。

 

奏     ねえ、チョウジさあ。その熱血な感じ、いい加減やめようよ。何か、頭悪いよ。

 

チョウジ  あ、頭悪いって何だ。

 

奏     ってかさあ、前々から思ってたけど、すぐ「そうだろ、みんな!?」って聞くの、ちょっとアホっぽくない?

 

チョウジ  リーダーとして、全員の意思を確認してるんだよ。それのどこが悪いんだよ。そうだろ、みんな!?

 

奏     ホラ、また。

 

チョウジ  あー、もう。ガロン長官からも何か言ってやって下さいよ。

 

ガロン   いや、アホだな。

 

チョウジ  えー!?

 

ガロン   いいんじゃないか、もう全部適当で。

 

チョウジ  よくないですよ。俺は、この美しい地球を愛してるんです。

 

奏     かーらーの?

 

ガロン   ハハハ。

 

チョウジ  だから絶対、爬虫類帝国から守ってみせる。

 

奏     かーらーの?

 

ガロン   ハハハ。

 

チョウジ  人類が笑顔を取り戻すその日まで…

 

奏     かーらーの?

 

ガロン   ハハハ。

 

チョウジ  あーーー、何なんだよ、マジで!

 

トーマス  チョウジ、落ち着いて。

 

チョウジ  大体、就職って何だよ。そんなバカな話、あるわけないだろ。爬虫類帝国の怪人が、地球で普通に働くなんて…

 

 

 

  マムシ運送のマムシ、入場。段ボールを持っている。

 

 

 

マムシ   どーも、マムシ運送でーす。

 

奏     ああ、はいはい。

 

チョウジ  ……。

 

マムシ   お届け物の…サングラスですかね。

 

奏     サングラス?

 

ガロン   (奏に)今年の夏、バリ島に持って行こうと思ってな。

 

奏     長官、チャラいなー。

 

マムシ   こちらに、サインを。

 

奏     はい、いつもありがとうね。

 

マムシ   いやー、昔は世界征服のことしか考えてなかったんですけど、今はもう、運送業の楽しさで毎日キラキラしてます。奏さんのおかげですよ。

 

奏     爬虫類帝国にいたころから、武器とか運んでる時が一番楽しそうだったもんね。

 

マムシ   そーなんすよ。運ぶの大好きッス。じゃあ、また!

 

 

 

  マムシ、退場。

 

 

 

チョウジ  …いや、いるかもしれない。いるかもしれないよ、ああいうやつも。でも、だからって…

 

 

 

  突如、エマージェンシーのSE。

 

 

 

ハルオ   何だよ、今度は。

 

 

 

  ナレーションが流れる。

 

 

 

ナレ    緊急事態発生。金山電機社長、金山力社長が爬虫類帝国に誘拐された。繰り返す。金山電機社長、金山力社長が爬虫類帝国に誘拐された。

 

 

 

  恐怖の音楽。

 

 

 

明日香   な、何ですって。

 

奏     あー。事件起きちゃったかー。

 

チョウジ  くそ、みんな、行くぞ!

 

奏     まあまあ、そんなに急がなくても。

 

チョウジ  何言ってるんだよ。事態は一刻を争うんだ。

 

ガロン   (変なサングラスを着けて)チョウジ。はやる気持ちも分かるが…

 

チョウジ  何だそのサングラス!

 

 

 

  チョウジ、急いで退場。ハルオ、トーマス、明日香も続いて退場。

 


三十年前

サイレンの音。続いて、あちこちから爆発音。

 

  暗転。

 

  明転。三十年前。

 

  安土ジョーと爬虫類帝国の怪人1、戦いながら入場。お互い一歩も引かない、緊迫した戦い。

 

  続いて、過去の時羽奏と爬虫類帝国の怪人2、戦いながら入場。奏はすでにヤゴの姿。

 

  こちらは、ただただ時羽奏が逃げ回るという、何とも間抜けな光景。

 

  やがて安土ジョー、ライフルで怪人1を撃つ。爆発する怪人1。

 

  時羽奏、頑張って怪人2のお尻を叩いたりするが、やがてピンチを迎える。

 

 

 

過去奏   あああー…。

 

 

 

  ジョー、怪人2を奏から引きはがし、ライフルで撃つ。爆発する怪人2。

 

 

 

過去奏   うわ、怖かった。

 

ジョー   おい、奏。少しはまともに戦えよ。

 

過去奏   ご、ごめんジョー。

 

ジョー   つーか、何でお前だけ普通に起きてるんだよ。成虫になるんじゃねえのか。

 

過去奏   いやー、トンボは不完全変態っていうね、盲点。ハハハ。

 

ジョー   チョウジ達四人は分かるけどさ。何でお前みたいな臆病者がコンチュウジャーに選ばれたんだよ。俺なら幼虫のままでも、もっとちゃんと闘ってみせるのに。

 

 

 

  ガロン長官、入場。

 

 

 

ガロン   安土ジョー。時羽奏。無事のようだな。

 

ジョー   (敬礼して)ガロン長官。この地域の爬虫類帝国は、殲滅いたしました。

 

ガロン   ご苦労。今後、戦いはさらに厳しくなっていくだろう。しかし、我々は負けるわけにはいかない。人類の未来のため、爬虫類帝国を徹底的に叩き潰すのだ。

 

ジョー   はい。

 

過去奏   は、はい。

 

 

 

  スネーク将軍、入場。

 

 

 

スネーク  貴様ら…派手にやってくれたじゃないか。

 

過去奏   ス、スネーク将軍。

 

ジョー   ほう。組織のボスが直々にお出ましか。

 

スネーク  最高幹部だったイグアナ博士の仇だけは、どうしても自分で取らねばならんのでな。

 

ジョー   イグアナ博士…そうか、死んだか。

 

スネーク  ああ。安土ジョー…お前から受けた銃弾で、三日三晩苦しんだ後にな。

 

ジョー   それがどうした。あいつの作った毒ガスで、多くの人間が死んだんだ。

 

 

 

  ジョー、ライフルを撃つ。しかし、弾切れである。

 

 

 

ジョー   くそっ。

 

スネーク  ハハハ、どうやら天は、我らに味方しているようだ。さあ、死んでもらおうか。

 

ジョー   お前がな。

 

 

 

  ジョー、ナイフを抜く。じりじりと近づく二人。

 

 

 

過去奏   や…やめろ!

 

ガロン   …奏?

 

スネーク  何だ、貴様は。

 

ジョー   奏、邪魔するな。

 

過去奏   いや…だから。えっと。…何で、侵略したいんだろう?

 

スネーク  …は?

 

過去奏   だから、うん。そもそも、何で地球を侵略したいのかな、っていう。

 

ジョー   おい、そんなことはどうでもいいだろ。

 

スネーク  何だ、こいつも貴様らの仲間か。

 

ジョー   知らねえよ、こんなヤツ。

 

過去奏   いいじゃんか。別に、そのくらい教えてくれたって。

 

スネーク  フン。我々の星は、進み過ぎた文明のせいで崩壊した。よって、新しい住処が必要なのだ。…どうだ、これで満足か。

 

過去奏   新しい、住処。あ、そう。うーん…。

 

ジョー   何なんだよ、さっきから。

 

過去奏   じゃあ…えっと。地球連合軍の基地を半分くらい開放して…。

 

スネーク  何?

 

過去奏   あ、いや。そんなスペースじゃ足りないから、えっと…ガロン長官の家と…

 

ガロン   何?

 

過去奏   あと、ジョーの家と…

 

ジョー   勝手にカウントすんなよ。

 

スネーク  バカバカしい。爬虫類帝国に、どれだけの怪人がいると思っているのだ。誰の家にとか、そういう問題では…

 

過去奏   あーもう、うるっさいなあ!そんなこと分かってるよ!

 

スネーク  な、何だと?

 

過去奏   あー、だから…色んな家庭にホームステイみたいな感じにして…いや、それも違うし…

 

 

 

  過去奏、一人で勝手に悩み始める。

 

  音楽。

 

 

 

スネーク  安土ジョー。随分と、頭のおかしい仲間がいるじゃないか。

 

ジョー   だから、こんなヤツ知らねえって言ってるだろ。

 

スネーク  全く…そいつのせいで、闘う気も失せた。私の気が変わらないうちに、さっさと立ち去れ。

 

ジョー   はあ?ふざけるなよ。今ここで、お前を…

 

過去奏   え、本当?やった、ラッキー!!

 

ジョー   おい!

 

過去奏   ねえジョー。帰っていいってさ。

 

ジョー   何言ってんだ。敵を目の前にして引き下がるなんて…

 

過去奏   まあまあ。助かったんだから、そんなことはどうだっていいじゃんか。

 

ジョー   ガロン長官!

 

ガロン   いや。…武器が使えない今、我々が不利だ。ここは一度、引こうじゃないか。

 

ジョー   …あー…くそおおおお!!

 

 

 

  ジョー、地団太を踏む。

 

 

 

ジョー   お前…本物のバカだな。

 

 

 

ジョー、怒りながら退場していく。

 

 

 

過去奏   あ、ちょっと待ってよ。ジョー。ジョー。

 

 

 

  過去奏も追いかけて退場。ガロン長官も、追って退場。

 


この本の内容は以上です。


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