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1

鍵を探していたんです。
もうずっとずっと長い間。
 
扉はどこにでもありました。
えんえん続くこの道の
はるか先にもありました。
 
えいっと蹴飛ばした石が転がって
カーンと音を立てて見つかることも
ありました。
 
湿気って灰色になった落ち葉くらい
退屈なほどみつかりました。
 
なので大切なのはやはり鍵でした。
なんでも鍵があったなら
特別な扉が開けられるんだとか。
 
 

2

だれもみたことのない
自分さえ知らなかった
一番欲しいものが
そこで手に入るんだとか。
 
それはもう
目の色変えて探しました。
あっちかそっちかこっちかどっちか
足の裏はタコがふくれて真っ赤っか。
 
ペラペラペラペラぺらぺらぺらぺら
本をめくって人に尋ねて
骨折り損のくたびれもうけ。
鍵はどこにもありません。
 
こうしてそうしてようやくです。
ながい旅路の果ての果て
そっと小声でいいました。
「もう、そろそろ休もうか」

3

息もせずに休んでいたんです。
もうずっとずっと長い間。
 
ベットはどこにでもありました。
えんえん泣いてる部屋の中
背中にもたれてありました。
 
しとしと降ってる雨の中
シーンと音がなくなって
水たまりの中で眠りました。
 
ときにはガラスを引き裂いて
外の中にもぐり込み
胎児のようになりました。
 
休んで眠ってぼんやりして、
手のひらみつめて気付くんです。
この手は何も持てはしない。
この手を握った人はもういない。
 
もしも一つ願いが叶うなら。
 
そうして私は退屈な灰色落ち葉になりました。

4

 
ひらりひらりと舞い上がり
 
どこまで飛んできたのやら
 
ころりころりと蹴飛ばされ
 
どこまで転んできたのやら

5

 
ここがどこかは秘密にしましょう。
裸で宇宙にさらされて
いつ間にやらわたくしは
ひとつの小さな鍵でした。
 
 
さぁどうぞ。
授かった役目を果たしましょう。
あなたの扉を開きましょう。
これがあなたの鍵ですよ。


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