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  • 土星衛星羊飼い衛星群の再調査が始まろうとしていた。前回のメンバーであった桃月教授の前に1人の青年が現れる。前回の調査がなぜ凍結されたのか教えてほしいと迫られるが。桃月が隠してきた苦い過去と秘密が明らかになっていく。 SFファンタジーです恋愛はBLです。dlの際にはお気に入りにポチッと、もしくはコメントなど欲しい。誰かな?と考えています。 第2部「Star of a Rose」羊飼い衛星群で桃月の助手であった住谷が主人公。桃月の元を離れマゼラン星雲の調査団に参加するべく出発した住谷。列車内で薔薇の写真を手にする男を見かける。1枚の写真でしかなかった薔薇が住谷の運命を大きく変えていく。
  • 連載 ボーイズラブ BL小説 SFファンタジー

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薔薇の惑星へ 5

次の日の朝、6時に寝覚めるとリゲルの姿はない。エトナらは朝の検診の準備をしていた。

 

「リゲルから操舵室から出ないでくれって伝言だ」

 

テーブルにメモ用紙が貼ってあった。

 

「リゲルは何処に」

 

「分からない」

 

僕は取りあえず珈琲を用意しエトナらは朝食後に行う定時検診の準備を続ける。そうこうしている処にリゲルが飛び込んできた。

 

「おはよう、諸君!」

 

「おはよう。どうしたのリゲル」

 

「どうもこうも。管理船から連絡が入った。昨日の深夜に一度船を停止させたんだ。管理船を接近させて影の正体を判明させた」

 

「影って昨日言っていた」

 

リゲルが前面の大画面の横に付くサブ画面を操作し始める。船の外側を映し出した。

 

「分かったのはつい1時間前の5時だ。数枚の写真が送られてきた」

 

エトナが悲鳴を上げる。写真に写っていたのは薔薇のツタ。小さなツタが船の外側に貼りついていた。

 

「内側の位置を確かめようと行って来たんだが、廊下にツタが絡んでいて進めない。この船にはチェーンソーも積んであったがその保管場所にも行けなかった」

 

リゲルを押しのけ、クロードとエトナが画面を食い入るように見つめる。

 

「船内の空気は漏れてはいない。それはすぐさま確認した。俺は船の中から伸びたのではなく、マゼランステーションで外に零れ落ちたツタが貼りついたと考えている」

 

すぐさま2人はカーディナルの元に行かなくてはならないと宇宙服を着こみ出した。

 

「七瀬。これからまた管理船から連絡が来るはずだ。通信を頼みたい」

 

「わかった」

 

「エトナ、クロード。なるべく早く戻って来い」

 

「分かっている」

 

管理船から絶え間なく送られてくるツタの映像。宇宙空間が肌に合ったのかツタは明らかに伸びている。 

30分後戻って来たエトナとクロードはカーディナルに異常は見られないと口早に伝え、すぐさま管理船と006惑星に連絡を取り始める。

 

「3人とも聞いて欲しい。俺達が006惑星に辿り着くには氷の星004惑星の横を通り過ぎなければならない」

 

大きな懸念が僕達の前に現れた。管理船から送られてきた船体の写真と004惑星の映像を食い入るように見つめる。

エトナとクロードも息を切らしたまま唇を噛みしめる。004惑星は氷でできた小さな惑星だ。周りを回る他の惑星の微弱な光を集め反射していた。

普通ならば単に輝いて見える程度の星。今の今までは3020号船が横を通るのは何の問題もなかった。だが今はツタにどれだけの影響を与えるか分からない。

 

「ここでツタに光は当てたくない」

 

エトナが言えば

 

「だが遠回りをしていては燃料が保たない。この近くに燃料を供給できる星があるとすれば、それこそ004惑星ターミナルしかない。小さなステーションだ。そんな処に入って行くよりもツタが大繁殖するのを覚悟で一気に通り抜けたい」

 

「だがもしも大繁殖して、外側から動力部分にまでツタが侵入したら」

 

「ツタが焼けるだけだ」

 

エトナとクロードは青ざめたまま。リゲルが僕の顔を覗き込んでくる。

 

「七瀬の意見は」

 

「僕もそうだな。遠回りしてもツタの繁殖自体は止められない。速度を上げて006惑星に到着するのを早めた方が何とかなると思う」

 

クロードもその方がいいだろうと頷きながら、

「カーディナルはかなり強い品種みたいだ。遠回りしても光を浴びながら通っても繁殖の加減は減らないだろう」

 

「七瀬、あの薔薇星雲で宇宙空間で花を咲かせていた薔薇に我がカーディナルは負けてなさそうだ。これで決まったな。

明日の午前10時に006惑星に到着予定だったが、そんな悠長なことは言ってはいられない。だが、その前に腹ごしらえが必要だ。

今日の朝食は俺が作る。多分この後は俺は操縦席から立ち上がることも出来ないかもしれない。エトナとクロードも腹が減っただろう」

 

皿にソーセージを盛り、パンも厚切りでバターを乗せ焼く。

 

「では絶対に006惑星にカーディナルを連れて到着する! 決起朝食会を開く」

 

リゲルが珈琲片手に声をあげ、僕達は大きな口を開けてパンにかぶりついた。

 

 

そこからは僕達はリゲルの指示の元、操舵室を歩き回る。

リゲル以外は宇宙船に関しては素人もいいところ。通信は僕がやり、船内に付けられたカメラをすべて起動しクロードがツタとカーディナルを見張る。

エトナはツタが船の何処までツタを伸ばしているのかを並走する管理船から送られてくる映像を元に場所を割り出し、リゲルは管理船と連絡を取り合いながら船の航行速度を上げていく。

ここでもう1件管理船から非常に困惑せざるを得ない情報が渡された。

 

「宇宙の嵐を確認した。004惑星に接近してきている」

 

僕もエトナ達も思わず声をあげる。

 

「でもまだこっちに来るか分からないんだろ」

 

「いや、確実だろう。真正面からではない左から来て右に過ぎていく」

 

「時間は。通り過ぎるのはいつだ」

 

「俺達とぶち当たりそうだ。004惑星の手前で待つか、嵐をやり過ごしながらゆっくり通り過ぎるかで管理船が議論の真っ最中だ」

 

「そんな悠長にはしてはいられない。薔薇にとって004惑星の影響はかなりだ。横をゆっくり通り過ぎるのはあまりにも厳しい」

 

「リゲルの考えは」

 

僕は顎をしゃくっているリゲルを促す。

 

「俺としては速度は落さずに突っ切りたい。宇宙の嵐と言っても数値だけで見ると大した嵐じゃない。そよ風程度で穏やかだ。留まって待つよりはカーディナルへの打撃は少ないとみる」

 

その後も管理船と議論を飛ばしあう。クロードとエトナがリゲルの考えを支持し、004惑星の影響から少しでも早く抜け出すことが先決だと訴えた。

 

「だが、シュタイナーさん。宇宙の嵐の状態が今以上に荒れるようだったら」

 

「宇宙の嵐が強まるなんてのは今まで見たことも聞いたこともない。ヤツは常に一定の荒れ模様で移動する。変わる時があるとすれば消滅する時だ。それに俺は今まで宇宙の嵐を何度も突っ切っている」

 

結局管理船が折れ、僕達は目の前に迫りつつある004惑星と宇宙の嵐に備えることになった。

 

「あと2時間で004惑星が見えてくる。ここからは俺の手動操縦に切り替える。その方が操縦の緩急をつけやすい。3人とも20分前には席に座りシートベルトを着用」

 

「わかった」

 

「OK」

 

2人はその前にカーディナルを直接診察すると飛び出していく。

 

「七瀬。向こうに小さく見える星。あれが004惑星だ。かなり飛ばすぞ」

 

「船の操縦は任せたよ。信頼しているから」

 

「ありがとう、七瀬」

 

1時間半が経過し、僕達はシートベルトをがっちりつけ並走する管理船と共に004惑星の横を全速力で通り過ぎていく。

いくら惑星としては小さくてもそこは惑星を名乗っているだけある。徐々に巨大になって行き横を通り過ぎるのに30分もかかる。また後方に消えて行った時には1時間弱は過ぎていた。

 

「次が来るぞ。宇宙の嵐だ」

 

実際に宇宙の嵐をこの目で見るのは初めてになる。桃月教授と資料は数えきれない程見てきた。だが今迫って来ているのは資料ではない。まさしく本物だ。

 

「船体写真が送られてきた」

 

エトナがすぐさま映像を画面に映していく。

 

「今はまだ変化はない。だがここ数時間が勝負だ。刺激は受けている筈だ」

 

「七瀬。嵐の映像と数値も寄越せと管理船に伝えてくれ」

 

僕はすぐさま通信を始める。リゲルは真っ直ぐ前を睨みながら、同時にエトナと僕が画面に映していく写真に数値の書き込まれた難解なコードを読み解いていく。

 

「宇宙の嵐到着まで15分。ベルトを確認しろ。多少は船体が揺れ動く」

 

静かに船体が揺れ始めた。宇宙の嵐の先端が目の前の空間に到達する。

 

わっ、わわわ

 

エトナがイスの座面にしがみ付く。ジェットコースター並みの揺れが始まった。

僕も椅子にしがみ付きながらリゲルを見続ける。本当ならば目の前の宇宙の嵐を見ながらテティス教授とフェーベ君にレポートを送るところだろう。

だが僕はリゲルの真剣な顔から目を離すことが出来ない。揺れが一瞬収まる。

 

「油断するな。ここからが本番だ。舌だけは噛むなよ。しっかり椅子にしがみ付いていろ」

 

管理船からも連絡が入る。もしもの場合は4人でボート船に乗り込み脱出すること。

 

「何を言っているんだ。今外に出る方が危険だろうが。ボート船なんぞあっという間に嵐にもみくちゃにされる。よし、来るぞ」

 

船体は大きく揺れながら前に進んで行く。音など聞こえる筈もないのだが、目の前の大画面に荒れる嵐からはまさしく風が吹き荒れる音が聞こえてくる。嵐の中に小さな石が舞っているのを確認した。

 

「もう少しだ」

 

ガツン!

 

何かが船体に当たり、大きく右に流される。操縦桿を握り締め船を立てなおしていくリゲル。何度となく流されかけ船の緊急ライトが点滅を始めサイレンが響きだす。

僕もエトナもクロードも何をすることも出来ず、シートベルトに括り付けられたまま。リゲルが嵐よりもサイレンよりも大きな声を上げた。

 

「抜けるぞ」

 

あっ!

僕は思わず声をあげる。何もない宇宙空間が突如現れた。

 

「こちら3020号。船体左に隕石の粒が当たった。状況確認を頼みたい」

 

「OK」

 

僕達は固唾を飲んでリゲルを見守る。片手で操縦桿を握りしめたまま、手元の計器のスイッチを操作し画面に次々に数値が浮かび上がる。

 

「大丈夫だ。後10分はシートベルトを付けたままで。残りの風が来ることがある」

 

20分後リゲルが終わったと宣言をし、エトナとクロードが医務室の彼を見てくると防護スーツに宇宙服を着てすっ飛んで行った。

 

「外のツタは」

 

「いま管理船が調査中だ。004惑星で熱せられはしたがこれで多少は冷めたと思う。宇宙の嵐とぶち当たったのは運が良かったかもしれない。七瀬は船舶の免許は持っているか」

 

「いいや、残念ながら。エトナが小型船舶を持っているって言っていたな」

 

リゲルが船内放送でエトナを呼び出す。

 

「どうしたの」

 

操縦室に走り込んで来たエトナ。

 

「悪い、トイレだ。直ぐに戻る」

 

操縦桿を握らせ、絶対にこの状態のまま動かすなと命令口調。エトナが驚きつつも握り、リゲルが操縦室隅にあるトイレに駆け込んでいく。

 

「そんなゆっくり行ってよ」

 

僕とエトナで笑みを零したのだが、本当にあっという間にリゲルは戻って来た。

 

さぁさぁとエトナから操縦桿を引っ手繰り椅子に座り込む。リゲルは僕とエトナに大きな口を開けて笑顔を見せてきた。

 

「さて、006惑星を目指そう」

 

 

 

 

 


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最終更新日 : 2017-03-20 10:17:16

この本の内容は以上です。


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