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薔薇の惑星へ 4

彼らはオリオン大星雲の宇宙中央大学の学生で遥々1か月かけてマゼラン星雲の006惑星までやって来た。大学は半年に一度戻るだけでほぼこの薔薇の惑星で過ごしているらしい。 

 

「2年間の研究の予定です。僕もクロードもこのまま大学院に進むから、僕はまたこの惑星に戻って研究を続けるつもりです」

 

「俺ももちろん。そのまま惑星に住むか、もしくは」

 

「もしくは?」

 

クロードの代わりにエトナが喋り出す。

 

「2人で星系を渡り歩きたい。薔薇の星の子孫が住む村や町を探して歩きたいんだ。まだ知られていない調査の入っていない星もある。僕とクロードで6つは目星を付けた村があるんだ」

 

「どれもかなり遠い。星系が違えば独自に進化を遂げているのではないかと考えている。今回のカーディナルさんから連絡が入ったのは1か月前。すべてを整理しこちらに向かいたいとあった。ご両親ももう星に薔薇を咲かせていてね、彼の星系は俺もエトナも行った事が無くて発芽するまでの短い時間の間に話が出来るかもしれないと考えていた」

 

「カーディナルさんから連絡は受けていて到着を待っていたんです。あと数か月は大丈夫かなと思っていたのだけど、列車や船内の温度調節が発芽を促してしまったんだ」

 

エトナは茹でたパスタにシーチキンの缶詰めを開け美味しそうに食べ始める。クロードはその横で僕と話を続けてくれた。

 

「薔薇の星の研究を行っている大学があると知って、俺は自分の親を説き伏せ星系を幾つも渡り受験をした。大学に入って半年が過ぎた頃、研究チームの教授に声をかけられたんだ。

 

教授はなかなか大学に戻っては来ない。自分としてはどうやって自分の事を知らせようかと考えていたのでちょうど良かった。教授は俺の僅かな兆候とお茶を飲むのを見て出身の星の名を聞いてきた。俺は教授の部屋で膨大な質問を受け、その場でチームに入ったんだ。

 

いや、身体中調べられるなんてことはなかった。大学に入ってすぐにあった健康診断の一覧表は眺めていたけれど、毎日の血圧、体温ぐらいかな。その年の冬休みには俺は教授と共に出て来たばかりの村に帰ることになった。

どうしても連れて行ってほしいって。まだ研究チームの名簿に俺の村は載っていなかったんだ。

 

俺の村の住人は発芽したなんてのは聞いたことがない。寿命だって数ある星系の様々な寿命の長短に比べれば、いたって普通の枠におさまる。俺達の種族は自分たち以外の種族との交配を試みたんだ。それは自分達の長きにわたる進化に大きな変革をもたらした。

 

初めは自分達を調べに来たと教授をおそれた村民も教授の明るい性格と自分達には何ら危害が加えられないと分かって、それからはかなり協力的で自分達の何世代か前の写真を見せる爺さんまでいた。

 

教授は数年はここに住みたいって言っていたけれどチームから朝昼晩とメール攻勢にあって泣く泣く大学に戻ったんだ。エトナとは2年生になってチームに入って来て知り合った」

 

「クロードの事を知ったのはチームに入って3か月ほどが経ってから。それからは毎日の診察は僕がしている」

 

パスタを食べ終わるとエトナはチームに提出するレポートがあるとクロードの話を切り上げさせ、僕も部屋の端に陣取ったスペースでパソコンを開く。幾つも画面を立ち上げ研究と資料整理に没頭し始めた。

 

その日はもうそれで終わってしまい次の日も何事もなく、夕方4時の定時観察には僕も2人について行きカーディナルの診察を手伝う。

 

「このまま通常だと1か月ほどをかけて徐々に鼓動は静まっていく。完全に停止してからが彼の第2の人生の始まりになる」

 

3人で船内のツタも確認して歩く。操舵室に戻った時にはもう時計は6時を指しており、リゲルは管理船と連絡を取り合っていた。

 

「30分ぐらい前に、管理船から連絡があった。船の後方に1か所気になる影が映っているとあった」

 

「影?」

 

「ああ、だが位置的には何もない筈だが。計器にも異常はないし、七瀬たちが診察に行っている間にひとっ走り動力室も確認してきたが何も異常はなかった」

 

リゲルは気がかりなようだったが、エトナは006惑星に定時観察を送信を始め、僕は大したことではないだろうと話半分に聞くに留まっていた。

 

夜11時。就寝前の検診が終わり僕達3人は就寝の支度を始める。だがリゲルだけは船の外側を調査している管理船からの連絡を待っていると言ってきた。

 

「僕は宇宙を漂う小さな塵か何かだと思うけれど」

 

「まぁ多分な。俺はここでも十分寝れるから。明日の朝になってもまだ俺が寝てたら起こしてくれ」

 

「OK。珈琲を淹れてから起こす」

 

椅子の上で胡坐をかいたリゲルにおやすみと手を振り、僕はベッドに潜り込んだ。僕はリゲルの心配を軽く考えていたのだった。

 

 

 

 


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最終更新日 : 2017-03-13 10:57:13

この本の内容は以上です。


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