閉じる


tovo plus〜あおもりの100家族、わたしたちのこれから。[season 6] No.060

今号(61 家族目)のご家族 ▶

今井 健さん・聡子さん・結也くん

撮影場所 ▶カフェ・デ・ジターヌ 古川店(青森市)

 

【インタビュー】

●2011年3月11日のこと、憶えていますか?

▶健さん「その日もここ(カフェ・デ・ジターヌ 古川店)にいて営業中でした。正直なことを言うと何をしたかは覚えていますが、どんな気分だったかはよく覚えていないんです。揺れが来て…、落ちないように(コーヒー)豆の瓶を移動して…、火を止めて…、その頃も店内の照明は今と同じように吊り下げ型だったので、それらの揺れを押さえて…。割と長く続いた揺れが収まった頃に外に出てみたんです。向かいのサンフレンドビルには、まだ何軒かのテナントさんが入っていたんですが、そちらの方々がたくさん歩道に出て来ていましたね。私はその様子を眺めながら、煙草を一本吸っていました。動揺を隠すように…。駅前には、電車が動かなくなってしまったことにより行き場を失った方の姿が見受けられたのですが、うちの店にも何人か『どうなるんでしょうね』といらしてました。しかし、停電によりコーヒーを淹れることができず、お湯しかお出しすることができませんでした。県病前店にある焙煎機のことや家族のこと、特に祖母のことが気掛かりで、暗くなる前に店を閉めて家へと戻ったのですが、家も祖母も、そして、県病前店から戻ってきた父と母の身にも特に何もなく、皆の無事が確認できて安心しました。うちは炊飯器がガス式だったので、家にあった米をガンガン炊いたのを覚えています。もう、ガンガンと…。人間、米と水があれば何とかなるだろうと思いまして。その夜は小さな反射式のストーブを一家四人で囲み、ラジオに耳を傾けて過ごしていたのですが、流れてくるニュースはどんどん暗い内容のものが増えていきました。何処ぞの沿岸にたくさんのご遺体が流れ着いているとか…。青森市内にも津波がくるかもしれないといった情報もありました。篠田や沖館といった地区や、西側、蟹田あたりまで避難指示が出ていたんじゃなかったかな。本当はいけないのでしょうが、近所を流れる沖館川の様子を見に行ったりしてました。後になって、帰宅困難者が割といたということや、その方たちを近くのホテルが受け入れていたこと、ラーメン屋さんが炊き出しを行っていたことなどを知り、自分にはそのような余裕がなかったなぁと思いました。」

▶聡子さん「私はその頃、東京でファッション関連の仕事をしていました。地震が起きた時は、旧いマンションの4階にあるオフィスにいたので、凄く揺れましたね。私を含め5〜6人いたのですが、皆で机の下に隠れました。その時に、シルバーアクセサリーの材料などが収納されている、決して軽くはない棚が歩いている様を見て『こりゃやばいぞ』と感じました。揺れが落ち着いてから実家に携帯から電話してみたのですが、繋がらず…。近くにあった公衆電話に並び、そこから掛けてみてもやはり繋がらず、不安でしたね。自転車で通勤していたので、家まで帰るのにさほど苦労はしなかったのですが、線路沿いの道や環七(東京都道318号環状七号線。大田区平和島を基点に、世田谷区、杉並区、などを経由して江戸川区臨海町に至る都道)沿いの歩道では、たくさんの人が歩いているのを見ました。その晩、友達から一緒に過ごさないかと誘われたのですが、私は外に出る気になれず、家にいました。一晩中友達とツイッター上でやりとりしていましたね。」

 

●その後、心境や生活の変化はありましたか?

▶健さん「震災後は食料を備蓄したり、ガソリンをこまめに入れたりしていたのですが、最近あまりやらなくなってきました。2014年に結婚し、子供が生まれ、自分のことよりも他人のことを考えるようになったと思います。」

▶聡子さん「以前は自分のことで精一杯だったけど、家族含め周りの人のことを思うようになりました。」

▶健さん「古川店の他にも県病前の店やヨーカドーでも売ったりと、家族が分散した感じでやっていましたが、やはり家族はなるべく一緒にいた方が良いなと思うようになり、県病前店を閉めて実家の隣に篠田店をオープンしました。」

 

●ご家族の10年後は?

▶健さん「10年後、結也は高学年に。自分は49歳に。その頃も身心共に健康でいたいですね。ジターヌは変わらず家庭のためのコーヒーを作り続けていたい。辛い時期も焙煎することで救われていた面もありましたので、これからも焙煎していきたいです。3.11にできなかったことをできるような、心に余裕を持てるようにもしていきたいですね。」

▶聡子さん「家族仲良くしていたいですね。このお店があるニコニコ通りを含め、地域の方ともたくさん関わっていき、より良い街に出来たらいいなと思います。」

 

【取材後記】自家焙煎珈琲豆屋カフェ・デ・ジターヌ(古川店:青森市古川1-1-5/篠田店:青森市篠田3-3-9)。僕は幾度となくこちらのコーヒーに救われている。癒されている。慰められている。助けてもらった上に元気まで頂いている。出会って10年以上経っているのだけど、今日も頂いたコーヒーには新しい発見(悦び)があった。ジターヌに入る前と出た後で、僕の心の姿が変わっている。ささくれ立った部分は弾かれ、温められて幸せな香りを漂わせ、帰ってくる。僕も焙煎されたのかも…とかなんとか、午前3時に荻野目ちゃん版の『コーヒールンバ』を聴きながら思ってみたり。(今号No.060のインタビュー:なるみしう/撮影:須川健太郎)

 

【寄付総額】2011年6月〜2017年2月22日まで「¥4,867,700」を、あしなが育英会「あしなが東日本大震災遺児支援募金」へ寄付することができました。ご支援に深く感謝致します。

 

【定期購読のご協力を!】1年間の定期購読を承ります。1,800円(送料・寄付含)/1年間(12号)です。このフリーペーパーは定期購読の皆様のご支援で発行されております。ご支援の程、宜しくお願い致します。ご希望の方は、ウェブショップ(http://shop.tovo2011.com)よりお申し込みください。


1
最終更新日 : 2017-03-06 11:39:55

この本の内容は以上です。


読者登録

tovoさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について