目次
(ある老人の言。) (1984.9.19.)
《 我らが美わしの天地よ 》 …アリンシ=エランの物語…
《われらが麗しの天地》
…スタル・アルラーナ 創世賛歌…
《 ナシルの谷 》 史略
《 ナシルの谷 》 史略
《 ナシルの谷 》
(荒筋)
『 ナシルの谷 史略 』 : 目次
(草稿&没原稿)
(草稿&没原稿)
(手書きノート表紙)
(草稿)
『 ナシルの谷 史略 』 第一章 第一節 (1990.05.21.着筆)
大陸ウァ・エムバの大半を占めるングサ・インスカ(神聖帝国)が、いまだ平穏であった時代に、この史略は端を発した。
「概要: 《ナシルの谷》 史略」。 (仮題)
「人間なんてさあ、仕事と、食うものと、あと寝るところさえあったかけりゃ、それで十分だと思わん?」
「史略概説」。
(ナシルの谷 史略:概説
(設定資料)
(設定資料)
「神・聖・王・貴・業・労・素/放。 」+「学舎」。
([ン]が末尾につくもの⇒末子。)
(キャラ設定)
(キャラ設定)
◎ (仮題) ナシルの谷へ
アリンシ・エラン内親王
レーデル家のウルアン。まじめできつい。)
( だれだろう だれかしら ♪ )
(借景資料集)
(借景資料集)
(借景BGM集)
『 ELAN 』
奥付
(手書きノート EX-LIBRIS )
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(草稿&没原稿)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(草稿&没原稿)

 

 

 


(手書きノート表紙)

 

 

 

 

 


(草稿)

 

 今朝がた早くにあがった雨は木々の肌をしっとりと黒く濡らして、よじれるように萌えでたやわらかい新緑は、光を撒くように、ときおりの風に撫でられてはらはらと黄金の水滴を落とす。


 今朝がた早くに雨はあがった。木々の肌はしっとりと黒く濡れている。
 新緑はまるで光を撒くようだ。ときおりの風に撫でられて、はらはらと滴が、香りのたかい土にふる。

( もったいない… )

 うん、と伸びをして、黄金の日ざしを楽しみながら、エルルはちょこっと優越感にひたった。

 残してきた同級生たちは、惰眠をまだむさぼっている。

( 当番だと思うからいけないんだよな )

 うん。と、ひとり肯いて、学舎に付属の果樹園をひとり、とっとと歩いて行った。

 動きやすい素民の衣を着て、背には籠。両手にいっぱい枯れシダを持っている。

 

 

 

(参照したければ資料)

http://85358.diarynote.jp/201703031653272677/

(草稿)

2017年3月3日 リステラス星圏史略 (創作)


『 ナシルの谷 史略 』 第一章 第一節 (1990.05.21.着筆)

『 ナシルの谷 史略 』 第一章 第一節 (1990.05.21.着筆)

2017年3月3日 リステラス星圏史略 (創作)

 

 『 ナシルの谷 史略 』

 第一章 第一節


 土の香りがする。

 朝霧がさしそめた陽光をはねかしている。

 そろそろ刈らねばならない下草の水滴を踏みつけながら、うん、と伸びをした。

 エルルは朝が好きだ。

 この時間はなにより幸福だと思う。

 だから、他人の当番までつい引き受けて菜園へ、毎朝せっせと足を運ぶのは、日課を通りこした秘かな趣味なのだ。

 毒舌家のウルアンに言わせれば、お人好しの貧乏くじ、土民になるためにわざわざ学舎へ来たわけじゃない、なのだそうだけど。

 とまれ、日の出とともに新鮮な菜類を食堂へと運ぶ係が、いなければ困るのも、現実なのである。

 帝国が後援する数少ない公立学舎の生徒たちは、家柄血統を問わず自給自足を等しく義務付けられている。

 エルルが着ているのは手紡ぎ手織りの生なりのチュニックで、これも学舎に入って早々に、課業でこさえたものだ。

 業を卒えれば皆、あらゆる地方のあらゆる役職に就くことになるわけだから、国中のすべての産業の労苦を身をもって識っておかねばならない、というのが、学舎の教育方針。

 たてまえ通りにいくわけでもないのは、貴家の子弟と商家や労家の特待生が机を並べるのであれば、当然のことだ。

 エルルは、一応、貴家のはしくれの部類だ。

 学費にもさしたる不足はない。

 それが、なにを物好きに…と、ウルアンなど頭からの変人扱いだ。

 いいではないか。

 と、エルルは考えている。

 好きなものは好きなのだ。

 淡い黄金色の天空と、青白いソレル(太陽)にかけて、日の出とともに起きだして、アルラーナ(天地)の恵み物を籠に入れる、労家さながらの行ないが、自分に合っている

 それは、確かなことだ。

 幼ない頃、乳母の田舎に預けられて育ったことにも原因があるかもしれない。

 …まあ、それは、どうでもいいことで。

 今朝は、ことし一番の春ぶどうを皆の食卓に乗せられる。

 菜園でいつもの分を採ったあと、果樹の畑へいそいそとまわった彼は、役得、とばかり、まずは自分の口に放りこむ。

 つややかな黒い幹から春先の花房の形そのままに垂れさがる淡い桃色の半透明の樹果。

 独特の甘味。

 香りのたかさ。

 思わず口いっぱいに頬ばったところへ、

「うまそうじゃの」

 …急に、声をかけられて、彼はむせた。

 街道から学舎客門(正門)に通じる公道沿いの果樹列。

「わらわ(妾)にも、ひとつたも。」

 あわてて振りかえれば学舎内では珍しいことに、まだうら若い女性。それも、少々奇抜な装いではあるが、ひとめで上臈だと知れる、高価そうな衣をつけている。

 数ある貴家のなかでも、かなり帝室に近しい姫であろう。

 供はなく、見慣れない四つ足に曳かせた車輪つきの奇妙な輿に座している。

 ふっくらとした浅黒い肌の手のひらをさしだして、腰かけたまま、春ぶどうの果実の届けられるのを、当然のように待っている。

 その、態度が、エルルのしゃくにさわった。

 もし彼がもう少し位の高い貴族であるか、身分の低い労家の出自であれば、大慌てでお追従のひとつも言いながら、籠ごと献上するべきところであろうが。

 無頓着なエルルの場合、ただ、ムッと、口をヘの字にしただけである。

「…くれぬか? 少しでよい。」

 目下の者の無礼を気にした風もなく、姫君は重ねて言った。

 エルルにしても無視するわけにもいかない。

「これは、学舎に属するもので」

 背中の菜籠をしょい上げながら、慌てて韻文を探した。

「僕が冬のうちから丹精こめて、世話をして実らせた…」

「 これなる菜園は…
  学舎に属するもので、
  冬のうちから丹精こめて
  ぼくが世話をして実らせたものですが、 」

 初対面の貴種族に平文で話しかけたのでは、あまりに無礼にあたる。

 そのくらいの躾は、エルルも学舎で叩きこまれているのだ。

 姫君は、そうか、という顔で聞いている。

「 のどをうるおす一房を
  ぜひに欲しいとおおせなら
  御自分で 樹下までおこしを
  身分高きかた 」

「 よろこんで 差しあげましょう…」

 …ようするに、欲しいというなら自分で取りに来るのが礼儀というものだろう、と、身分差を無視して殆ど喧嘩を売っているに等しい。

 相手が悪ければ、分をわきまえぬ不省者と、学舎長にねじもまれて、悪くすれば波紋さわにぎなりかねない。

 …が、姫君は、姫君らしからず、天をあおいで愉快そうに笑った。

「確かにの。礼をわきまえぬ振る舞いにて、すまぬことよ。」

 車つきの輿をひく獣の手づなをはずし、低い座面から大義そうに両の足をおろす。

 小径から樹園へと続くゆるやかな斜面を、お運び下さろうというわけだ。

 そこまでは、エルルの感覚では、すくなくとも頼みごとをしている以上、当然、だと思った。

 姫君の上体が、一歩、踏み出したとたん、ぐらりと傾ぐ。

 泥にあしをとられて転ぶのか。と、見えた。

 エルルは慌てて駆けよりかけた。

 が、何事もなさそうに姫君は上体を起こす。

 あしが、つられて動く。

 また、反動をつけて、上体が、ぐらり。

 あしが、ひきづられて、ずるり。

 ………不具なのだ。

 気づいて、エルルは、困惑した。

 わずか3ヤンほどの傾いた草地を姫君は、ぐらり、ずるり、と全身を振りながら昇ってくる。

 近づけば、年長であろうにエルルとさして背丈もかわらぬ小柄な姫は、かすかに息をはずませながら、平然として謝罪した。

「礼を欠いてすまぬな。見ての通りの体にて、つい、余人に面倒をかけがちなのじゃ。」

「…いえ…姫君…僕のほうこそ…」

 存じ上げぬこととはいえ失礼を、と、しどろもどろに口ごもるのを、そういった応対には慣れているのか、半ば無視するようすで、春ぶどうの房をとる。





(未完)


大陸ウァ・エムバの大半を占めるングサ・インスカ(神聖帝国)が、いまだ平穏であった時代に、この史略は端を発した。

 

 

 聞くところによればエルルは一応、ハッシュ(貴家)のはしくれなのだという。

 なるほど舎生名簿には、ハッシュ・ノグナス・エルドス=ローン(貴・ノグナ家の末弟エルドス)、となっている。

 もちろんローン(末弟)であれば位階の継承は望めない、彼一代限りのものではあるが。

 ウルアンはといえば "家" も名乗りえない素民の出自である。

 ギオ・アグ・ウルノル=アン(素・アグ血統の単子ウルノル)。

 ただし舎生名簿には、養家であるライム(業)・ラク家の姓を借りて、ウルノル=ラーン(三男ウルノル)で載っている。


 大陸ウァ・エムバの大半を占めるングサ・インスカ(神聖帝国)が、いまだ平穏であった時代に、この史略は端を発した。

 

 

 



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