閉じる


(中表紙)

 

 

 

リステラス星圏史略
古資料ファイル
5-X-1-4-X
『未完史』
第1部 第4章
…間奏曲…
 (あとがきでっせ。)

 

 

 

 

(この話の「前の部分」?は、こちらでお読み頂けます。)

 ↓

http://p.booklog.jp/book/111212/read
リステラス星圏史略
古資料ファイル
5-X-1-4
『未完史』
第1部 第4章
…間奏曲…
空中分解 Part.1.


あと書きでっせ。

 

 

 あと書きでっせ。

          by 遠野真谷人


 星間連盟リスタルラーナの主惑星リスタルラーナの首都リスタルラーナの郊外(エア・バスで二時間ほどの所)にある、アール・ニィ…まぁ、総合芸術大学とでも思し召せ。

 その構内をぽけぽけと、ひたすら己れの思考に埋没しながら歩いて行く青少年がありました、まる。

 こらこら掲示板にぶちあたるとゆーに。

 中肉中背と言ってやるには若干サイズが小さい。

 同い年の同種族の女の子に比べれば大きいほう、という位かな。

 割とスリムな褐色の体に、集中力さえ健在ならけっこう運動神経も良さそう。

 女顔。

 やや吊り上がり気味の優しい切れ長の黒瞳。

 短く切った縮れっ毛。

 そして、滅多にいない程の、一種神秘的とさえ言える雰囲気のある、 "美少年" である…。

 …この、地球連邦(通称テラズ)からの留学生で、あまりにも原作の設定にいったりだからと自主製作映画『俺と好』の "磯原 清" 役を割り当てられた彼、脚本と原作のコピーをしっかりと抱えて、深ァく悩みこみながら今、図書館からの帰り。

 役作りのために詳しい時代背景を調べて来よう…と、思いたって勇んで出かけたまでは感心だったんだけれどねェ。

 そもそも彼、『芸術大学』程度の図書館に置いてあるほど一般的なアルマゲドン(最終戦争)伝説のテープ(本)がいかに少ないか、そこんところの認識が甘かったのである。

 … (ほとんど無いのよ。)

「 う~くそっ。考えが甘かったぜ何にせよ、俺だって婆っちゃまから聴かされた話がほとんどで、専門書どころか、学校の教科書でだって読んだ覚えがねェもんなァ。

 …とにかく、そうだ、けっきょく性格はいいんだよな、性格は。

 俺より若干お人よしでヌケてる。って以外は、殆ど同じなんだから。

 行動パターンも人に言わせりゃしっかり似てるそうだし…

 う~っ。こーゆー莫迦モンとは、俺、あんまし似たくねェ…

 古代地球語の発音は、難しいけど慣れれば何とかなりそうだし…

 …リスタルラーナの連盟共通語を覚えた時に比べれば、そもそも文法が近いdけはるかに楽なんだ。

 なんたってテラザニア連邦公用語の、もともとの形。

 …うー。…」

 そうなのだ。

 凝り性の原作者まやとが名目だけとはいえなぜか総監督兼任で、乗り性のプロデュース責任者・オリキャラ劇団長を動かしてしまったとなれば。

 セリフ、原語で喋らせて現代語の字幕流すくらいの芸当は朝飯前って顔で実行を決めちまう。

 金はかかるわ手間はかかるわ、演技側の苦労にしたって考えてもみろってんだ…

 なんて風には、決して文句を言えない所に芸術大学アール・ニィ名物『オリキャラ劇団』なるものの恐さというか、凄さがあるのだけれども、今はおくとして。

「…お~い。 "清" !」

 ぶたくたやってる彼に気軽く声をかけて歩き寄って来る女性(一応)が一人。

 キヨシ君なんかよりよっぽど背が高い。

 すらりと引きしまって見事な均整を見せている体躯に、ポニー(子馬)というよりはユニコーン(一角獣)テールといった感じで豊かになびいている珍しい灰色の長い髪。

 それとは別に横分けにしてある中途半端な前髪が顔の左半分を軽く覆っている。

 だけどわざわざ振り返ってそういった特徴を確認するまでもなかった。

 その、深みがあるくせにふわりと軽く明るい声の持ち主といったら、サキ…つい半年ほど前にプロ活動の休止を宣言して世間を騒がせた人気 No.1 の、歌手兼女優シェリル・プラネットでもある…本名サキ・ラン=アークタス。

 彼女しかいるわけがない。

「ハイ、清。熱心だねェ。」

 その長い脚で楽々と追いついて来て、もう一度声をかける。

 しっかし10cm近くもある高いヒールつきのブーツ履いて、よくもそう速く歩けるもんだ。

「や。久し振りじゃん。ここしばらく見かけなかった。」

  "清" のほうも軽く笑い返して、二人は並んで歩きはじめた。

「ん。ちょいとね。衣装と小道具に関する資料が足りないっていうんで、テラ(地球)まで取りに戻ってた。」

「…実家って…極東平野出身だっけサキは? 資料って、え…。」

「 あっはっは。そーゆー "清" クンは、何? 図書館の帰り?」

「そーォなんだよ、それがサッ。もォ聞いてくれよォ~~~っっ」

「………なんにも、本、無かったてんだろ?」

 ぱち。(^w-)☆彡

 ウィンクひとつ、飛んだりなんかして。

「あれ、どうして…」

「マボロシなんだよね。前アーマゲドン期の伝説なんてやつは、殆どね。」

 昼下がりのアール・ニィ芸術大学構内…平和な光景。

 サキがひとつ大きく片脚を蹴り上げると、カーン!とか冴えた音が響いて、青紫の空を空缶が護美箱まで飛んで行く。

「…ナイッシューっ♪」

「サキ・ラン。真面目に教えてくんない?」

「熱心だねェ。演劇ひとすじ少年は。」

「そりゃそのために留学して来たんだもの。」

「あはん。うらやましい。」

 意味もなく微笑ってサキは話し始めた。

「母の遺した書庫にね、あの時代の古書がごっそりある。」

「 え、ウソだろ。だって、前アーマゲドン期の伝説に関しちゃ、そもそも出版点数が極端に少ない、皆無に近いって司書コン(※)が…

 どうやって作者まやとが脚本書いたのか今、不思議に思ってたとこなんだぜっ」

「誰が、 "関する本" だって言った?」

「え?」

「わたしゃ あの時代の古書が って言ったんだよ。古資料と言うべきかな?」

「…へ。え、えぇ~~~! 千年よりも昔の…?!」

  "清" の驚愕ぶりをサキは横目にながめて楽しんでいる。

「アイン族って知ってる?」

「あ、確か地球連邦統一の時に最後まで連邦政府にはむかってたひとつだろ? 首長と政府派遣員の婚姻によってカタがついたとかいう。

 それが何か…」

「わたしの一族なんだ。」

「…げ。ちょっと待てよーーーっ」

 この "清" も歴史的なものは割りかた得意である。

「おたくの正式名、サキ・ラン=アークタス、だったよね。間違いない?」

「あっはっ。お察しの通り、《蘭》家は代々首長職を、ってよりは族長兼祭祀なんだけど…を出してきたよ。

 もっとも部族はもう解散したけどね。」

「…政府派遣員がアークタス氏って言わんかったっけ?」

「うん。わたしの父。」

「…う~~~。」

 いきなりお知り合いが歴史的有名人物になってしまって、 "清" の頭はパニックした。

 なんたってちゃんと教科書で読んだことのある名前なのだ。


「…ま、いいけど… それで?」

「アインの一族の存在理由… アーマゲドン直後のそもそもの初めにコミュニティを築いた目的っていうのが、 "神殿を守ること" だったんだ。

 その "神殿" が、さっき言った書庫さ。

 昔の人間が貴重な歴史的資料を残そうとして打った手だったんだろうねえ。

 もっともそんなこと、母が…蘭 冴夢(らん・さえむ)という優れた祭司が出て扉の古書体文字を解読するまでは、忘れ去られていた事なんだけれど。」

「ふうんっ。」

 すっかり吊りこまれて "清" は聞いている。

「それで?」

「もちろん他にも何箇所か、地球には古書籍や美術品の類が保存されてあった時間基地がある。」

「奥アジアのシャンバラ図書館とかだろ。そりゃ知ってるよ。」

「あはは。アイン=ヌウマの神殿の特色はね、事前から準備され整理されてあった全地球的レベルの文化遺産じゃない、かなり個人的な資料が 紙に書かれた形のまま 大量に保存されてあったってところなんだ。」

「…カミに。へー、そりゃ貴重…」

「だろ。で、そこの所有権とか版権とかは全部わたしにあるんだよね。管理と研究は一応考古学会に全面委嘱してあって、今、リスタルラーナ科技庁の協力で、研究者用の分子レベルまでの完全コピー、限定制作しているんだけれど…

 これが、顔で手に入る。」

 こほむ。

 効果をねらってサキはひと息ついた。

「速い話が資料、翻訳して真谷人のところに持ち込んだの、わたしなんだ。

 磯原清の日記帳とか、アルバトーレの予言の書の写しとか、…まぁいろいろあってね。」

「 ぐわ。」

  "清" は叫んだ。

「 冗談だろ!? まさか、じゃ、あれ全部………」

「実話だよ?」

 からからっと笑ってのけてサキときたら完全に、 "清" の現実世界に穴をぶち開けてしまった。

「う~~~~っ!」

  "清" は思わず校舎の壁さんとお近づきになってしまったりする。

「伝説ってェのはあくまでもフィクションなんじゃないのかっ!? じゃあ実は探せばその辺にくっちゃんの子孫がうろついてたりして、タイムマシンで行くと本物の磯原清に会えたりして、……きゃあ。お話が、俺の隣りを歩ってるッ!」

 …

「ゲシュタルト崩壊した?」

「したした。崩れすぎてもうシャーベットになっちまった。」

「あは」

 サキがその有名な澄んだ微笑を浮かべるのを、 "清" はちょっと見とれて。

 ふと、彼方を見遥かす表情を彼女は浮かべた。

「あの時代は… よかったね。

 暗くて、誰もが、明日はどうなるのかなんて、まるで視えてなくて、それでも…

 だからこそ、みんな精一杯で生きてた。

 恋して、笑って、殺しあったりもして。

 裏切りや暗殺もあったけど、それは結局はひとりひとりが自分なりの信条で、地球を愛して救おうとしていたからに他ならなくって、…

 結果は、必ずしも幸福なものには終わらなかったけれど、

 …それでもわたし達がのこった。

 地球は、亡びてしまったわけじゃない。

 彼らが泣いたり笑ったりしながら消えて行ったのが、無駄になってしまったわけじゃあ、絶対にないんだよね。

 …そう。

 あの時代は本当に… 良かったよ。

 わたしは知ってる。

 小さい頃から書庫に入り浸って、読んでばかりいたせいかな。

 まるで自分が昔その場に居合わせたことがありでもしたみたいに、

 …わたしにはそう思えるんだ。」

 陽射しのなか…光を弾くというよりは、自身それを放つかのように、かすかな青白色のオーロラを秘めて、彼女は立っていた。

  ”清" は、ふと思った。

 姿かたちだけの自分なんかよりよっぽど、かつて実在したという伝説の超能力者に、もしかして彼女の魂は近しいんじゃないだろうか。

 時代を超えて、共鳴を起こすほどに…。



「 、 あ”~っと。ミーティングに遅れる~っっ」

 それが趣味の古風な針式のアナログ時計をのぞき込んで、サキは叫んだ。

「ぅわ、しまった。」

  "清" も自分のを視て慌てて。

「 走ろっか。」

「 OK。 」



 ………………



「ぉお~い、遅いぞぉ!」

 遠くで、 "好" が、じれったそうに腕を振りまわして、二人を呼んでいた。





(…本気の冗談なんだよ。
 『粗菜獲茶』よろしく♪)



(※司書コン;司書コンピューター。図書館のヌシ。)


 

 

 

(参照したければ資料)

http://85358.diarynote.jp/201611172116568570/

(第4章の、あとがき。)+「あと書きでっせ」+…あるふぁ…?

2016年11月17日 リステラス星圏史略 (創作) コメント (2)


(次号予告)

 

 

 

 

 

(この続きはこちらでお読み頂けます。)

リステラス星圏史略

古資料ファイル

5-X-1-5-1

『未完史』

第1部 第5章

1.月を売った男。


http://p.booklog.jp/book/111240

 


奥付


リステラス星圏史略
古資料ファイル
5-X-1-4-X
『未完史』
第1部 第4章
…間奏曲…
 (あとがきでっせ。)


http://p.booklog.jp/book/111216


著者 : 霧樹里守 is 土岐真扉
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/masatotoki/profile


感想はこちらのコメントへ
http://p.booklog.jp/book/111216



電子書籍プラットフォーム : パブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社トゥ・ディファクト



この本の内容は以上です。


読者登録

霧樹 里守 (きりぎ・りす)さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について