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(中表紙)

 

 

リステラス星圏史略
古資料ファイル
5-X-1-4
『未完史』
第1部 第4章
…間奏曲…
空中分解 Part.1.

 

 

(この話の前の部分はこちらでお読み頂けます)

http://p.booklog.jp/book/111026/read

リステラス星圏史略

古資料ファイル

5-X-1-3

『未完史』

第1部

第3章

俺たちは

 無鉄砲のかたまり。

 

 

 

 


(1)

夜が明けた。

 気がつけば全員そのままの恰好で眠りこけちまってたらしい船の小さな居間の中で、目を覚ましてみればとうにおひる。洋上を一路日本へとホバー走行しているところだった。

 青い青い浪が見渡す限り広がっている。

 所々の島影をのぞけば360° がぼうっとかすむ光の水平線だ。

「  わ~ぁぁァ…あ。」

 みんなモゾモゾと起きだしていた。

 好だけはいつの間に入りこんだのかコクピットの副操縦席に収まって、まだしっかり眠りこけている。

 女の子から順ぐりに洗面所、使い。

 ユミちゃんはまだ麻酔が効いている老人の包帯とりかえ、ひろと先輩は栗原のクォクが早速ぶっ壊れているとか云って、当の栗原と2人して大喜びで修理工具ひっぱり出している。

 ヤニさんは寝不足は美容にどうのと景気よく悪態をつき、色っぽく欠伸を噛み殺しながら…も~、美人は何やっても美人に見える。うん♪…人数分の濃いコーヒーを淹れてくれた。

 ゆかり姫、その隣でヤニさんの言葉使いに苦笑しながら、朝食の支度をしてくれてる。

 手伝おうかと申し出たら、「男子厨房に…」どうとか云われて追い出されてしまった。

 う~む古式ゆかし過ぎる教育ってのも考えもんだな。

 俺、ヒマ、持てあましちまう…

 フテて寝なおそうとしてたらユミちゃんから洗濯のあがった分の包帯巻きをおおせつかった。

 しゅるしゅる。

 わりと平和。

 ゆかり姫がヤニさんに質問しているのを聞けばあと2時間ほどで日本本土の防衛海域につくという。

 ………突如。

 …赤ちゃんが泣きはじめた…!!

「 ! ぅ、ぅわァ~~~ゴ、ゴメンっ!」

 はっきし云って俺、このコの存在を忘れはててたもんね…っ

 育ての親らしき人物から引き離されたってのにケロッとした顔して平然と眠り続けてるしさ、そういや昨夜ヤニさんが普通の乳児にしちゃ長いこと目を覚まさなすぎるとか心配していたような記憶がないでもないけど、

 …ぅわあ、何でもいい。どーーーーにかしてくれ、この泣き声…っっっ

 俺と姫がオタオタしているとユミちゃんがすっ飛んできて優しく抱きあげた。

「困りましたネェ。粉ミルクなんてもう置いてないンですョ。せめて牛乳と思ったンですけどあいにくこれも切らしちまってましてネ。なにせ合成モンには飽き飽きして、どうせ地球に行くからには美味いホンモノを仕入れてやろうって思ってた矢先なンですから。」

 なんでそんなものが積んであるのか、空の哺乳ビン放りあげながらヤニさん登場。

「 牛乳? このくらいの赤ちゃんにはかえって良くないと思うわ。イシュタンパクシツですもの。」

 さすが看護婦志望。イヤな顔ひとつせずテキパキとおくるみはがして、オムツ替えにかかる。…俺パス。…

「あァ、タオルなんか代用にしなくっても、オムツなら前に使ってたやつが…オヤ。男の子なンですかい?」

「そうみたい。優しい顔してるから、てっきり女の子だと思ってた。」

 食糧に関しては白米が少しあったので、ユミちゃんが重湯を作ってみようということで話が落ちついた。

 それにしても、何だってそんなに赤ン坊の世話なんかに慣れて…??

 あぁ、そーか。ゆみちゃん、よくうちの母上にくっついて、乳児園だの養護施設だのへボランティアに行ってたっけ…。

「 ワコよ…!!」

 ぎくりと、ソファに寝かされていた老人が身動きしてハネ起きた。

「 ! そこに居ますわ。お起きになってはいけません。」

 ゆかり姫が慌てて腕を添えるまでもなく、苦痛に顔をゆがめて再び倒れてしまう。そのままギラギラする眼をうすく開けて、 "ワコ" さまとやらの無事を確認するように横目で眺めていたが、ヤニさんがほんっとに幸せそうな顔してあやしているもんで、安心したのか、ふっと体のちからを抜いた。

 遠くを見る目つき。

(しっかし流石のヤニさんも、女だけあって、赤ちゃんとかの小さな 可愛いもの 見ると眼の色の変わっちまう一人らしい。…猫にマタタビ…?
 男にはイマイチあの反応は理解しがたいね!)

「よう爺さん、目が覚めたのか。」

 好がうっそりと操縦室との戸口をふさいでいた。

 はん。よっく言うぜ、自分だっていま起きたところのくせに。

「…わしは…場沼という。」

「それで?」

 そろそろと上体を起こし、壁にもたれかかって、ポツリとだけ爺さん…場沼さんは口をきいた。

「……それで?」

 好にしては辛抱強く尋きなおすんだけれど、それっきり、答えない。

 おし黙っている。

「 おい。清。」

 おかげでホコ先が俺にまわって来てしまった。へぃへぃ。

荷物 が2つに増えた理由を説明して貰おうか。」

 ユミちゃんが慣れた手つきで楽しそうに授乳(授おもゆ?)しているほうを好はアゴで指した。

 わ~。だからそう恐ろしい眼をするなっつーの!

「 あ、えとさ。」

 俺はできるだけ手短に あの場面 の説明。

 もちろん信じてもらえそうもないので、不可思議な印象と現象のことはほぼ全面的にはしょって。

 話してるうちにチクリと胸が痛む。

 あの神秘的な、神々しくさえあった、端正な死に顔。

 横たわっていた姿が目に浮かぶ。

 …うわ~~~。

 …俺って、あの妖精人に、……惚れちまってたんだな……っ

 二言三言しか話してない相手なのに我ながらヘンだとは思うけど、多分、あの瞳。

 最初に鍵のことであの深い色の瞳にのぞきこまれた時から、魅かれちまってたんだ。

 一目惚れって現象、本当にあるんだな。バカバカしい…

 …もうあの貴婦人は、死んじまったのに…。

「 ふん。」

 気に喰わねェな、と話を聞き終えた好の口から十八番(オハコ)が出る。

「それで? その女は 何処へ そのチビを届けさせたがっていたんだ?」

 単に恐いのとは違う、妙に光る眼をして俺を睨めつける。

 見透かされるような…

 ………ふん。

 おまえにはそんな能力ナイってくらい、俺ちゃんと知ってるんだからなッ

「…え~…と、アサ…朝…朝ナントカ…なんとか森。」

「…アサ………『朝日ヶ森』か…?!」

 好の手の中でコーヒーカップが大きく揺れた。

「熱(あち)っ!」

「大丈夫? お兄ィちゃんたらっ」

「あっそうそう。そんな名前。」

 ちょうどその時ひろと先輩たちが油まみれになって格納庫から戻って来ていた。

「…ピィユゥ!」

 栗原がヘタっくそな口笛。

 話の終わりの方だけ聞きかじっていたらしい。

 ひろと先輩、爺さんと赤ン坊を等分に値踏みして。

 ヤニさんが含みのあるような眼つきで煙草管に点火した。

 キセルパイプ…。

 俺としちゃやっぱ煙管(きせる)とかパイプとか素直に呼びたい。

 けど、これが「正式名称」。

  ”宇宙人” 御用達のタバコ吸引用具。

 喫煙。…この素晴らしい習慣というのは『指輪物語』をひきあいに出すまでもなく、人類には欠かせないものらしい。

 だけど宇宙空間で紙巻きや葉巻くわえたって火の点けようがないし、初期の… ”植民者” (コロニスツ)以前の ”開拓者” (フロンティア)の時代、コロニー建設の為に何十時間も宇宙服着たまま真空中で作業し続けたり、休みをとるにしても体を横にするのが精一杯ってェ気密匣(ポッド)の中では、不必要な酸素消費が許される筈もない。

 そうでなくても嫌煙権なんてコトバ発明する人種もいるわけだし、進取の気性と妙なロマンチシズムを兼ねそなえた宇宙の男たちが大いに閉口させられたのは、ま当然だろーな。

 そんないきさつから工夫されたのが、このポータブル(持ち運び可能)な装置だった。

 本体は厚みも重さも、俺らの感覚で言う ”煙草の箱” の2倍強ずつくらい。

 ヤニさんはこれを銀のガンベルトの左側に装着してるけど、Point.Pやスターエア宙港ではポケットに入れたり、単にカバンに放りこんでるだけという人も見かけた。

 形やサイズにも結構いろいろ有るらしい。

 で、これから折り曲げ・引き伸ばし自在な細いチューブ(管)が出ていて。

 その先端にパイプ。

 The Kiseru Pipe.

 命名はもちろん形が煙管に似ているところから。

 このパイプの吸い口のところはもちろん簡単にくわえてもいいんだけど、スペース・メットの飲食物パック用ジョイントとも規格が合わせてある。

 で反対側の、本来なら火皿がある筈のところへ、粉末煙草の圧縮カートリッジをセット。

 間のパイプと本体とのチューブは両方とも二重構造になっていて、吸うのに合わせて適量の酸素を供給する一方、排煙…つっちまうとなんかエライ表現だな…を換気し、本体へ送り返して、浄化・放出する。

 つまりは宇宙服脱げない状態や、狭い船内、公共の金で空気確保してんでエチケット上喫煙できない場所なんかにおいて、周りに迷惑かけずに一服楽しめる装置なわけだ。

 もっともヤニさん、地球に降りて来てからは煙モクモク輪っか作ったりしながら吸ってるけどね。

 …う~~~。うまそおだなァ。

 俺も吸いたいッ

 そう云や《ムーン II 》で手持ちのひと箱空けちまって以来だ。


 …閑話休題(それはさておき)…。


「………朝日ヶ森?」

 ゆかり姫が山盛りサンドイッチのお盆を運んで来ながら不審そうに眉を寄せた。

「その名前…あたくしにも聞き覚えがありますわ。正行さんから。」

 ちょっとちょっとっっっ

 んじゃそれ知らないのって俺だけなわけっ??

「ユミちゃん知ってるっ?」

「ううん。初耳。」

 じゃ、 俺たち だけ、か…。

「好ォ、なーんなんだよそれっ」

「 ンでもねェよ。」

 ウソつけ★

 おまえが物こぼすなんざ何年に一度じゃないかよっ

「…ふんっだ。…とにかくその何でもないナントカの長に預けて欲しいって言ったんだ、彼女は。」

「…リーダーに、ねェ。」

 ヤニさん、ポンと廃カートリッジ(吸殻)を手の平にたたき出して。

「朝日ヶ森…か。それが 有る からには、結局、いずれは行くことになるだろうな。しかし… なるほど、緑衣隊イコール皇国軍か? …」

 好は独言のように呟く。

 ゆび噛むクセやめろってばっ

「………ふん。いいだろう。清、おまえが責任持つならそのガキ置いといてもいい。ただしジャマになったらその場で放り出すからな。」

「おまえなァ~~~~っ」

 人情ってもんがないのかよ。相手は自力じゃまだ生きていかれない赤ン坊なんだぞっ!」

「それで構わねェだろうな爺さん。」

「…ああ。足手まといなら出て行く。」

 なんとなくそれで話は決まってしまった。

 そして遅い朝食。






 

 

 

 

 

http://85358.diarynote.jp/201611162107097349/

『俺と好』1 第4章・間奏曲 … 空中分解 Part.1. (1)+(2)。

2016年11月16日 リステラス星圏史略 (創作) コメント (1)


(2)

 

 

 サンドイッチは全員に行き渡るだけ十分にあった。

 食事の間に栗原が昨夜の話をはじめ、ドギューン!とかバリバリ!とか、しきりに擬音を交えて動力室のぶっ壊しかたを解説している。

 その手振り身振りにユミちゃんキャアキャア云って面白がり(事実上聴衆は彼女ひとりだ。)、ゆかり姫テーブルの後片付け。

 ひろと先輩はドガンズギュンをうるさいとも思わず再び眠りこける。

 ヤニさんは着替えると云って寝室にひっこんでしまった。

 好… コ・パイ・シートでコーヒー啜ってる。

 あいつ一度気に入った場所見つけると居ついちまうからな~…

 俺も操縦室はいってスクリーンを覗く。

 今はものすごく素直に外の景色を映し出してるから、窓と変わりがなかった。

 青い青い海と、それより明るい色調の青い青い空。

「…ふうん。綺麗なもんだよな。…これって南太平洋だろ。」

 普段ならもっと大騒ぎして感動してやるんだけど、寝不足と精神的な疲れのおかげで、そんな気分じゃない。

「 いや。もう北半球に入ってる。」

 そんな事どうだっていいのに、わざわざ計器に目を走らせて、好。

 俺の表情を確かめるように振り返って、座れよって感じで無愛想にアゴで指す。

 普段ならヤニさんが座る、メインシート。

 時折り操縦桿がかすかに振れるのは自動システムだ。

 柔らかい。広くてゆったりしていて、自由に姿勢を変えられる。

「…外の音って聴こえないわけ? ここ。」

 好の長い指が黙ってボタンのひとつに触れる。

 おーお。もうしっかり扱いかた覚えちまって。

 まあ昨夜一晩ヤニさんがやるのを見てたんなら、こいつなら当然だけど。

 わりと抑えたボリュームで ”外” の生の音が部屋の中に入ってくる。

 太洋を渡る波の音。

 MISS-SHOT の吹き出すジェットの響き。

「………ふうん。………」

 俺は片方の膝をかかえて深くシートにもたれかかった。

 目をつぶって。

 潮騒のくりかえし宥めてくれる優しさとはずいぶん違う。

 もっとずっと男性的な、洋々として、荒々しい。

 そして限りなく自由。

 ………海…………。

 俺はスクリーンに映っている浪ではなく、心の中に浮かび上がってくる青い色を見つめる。

 青。

(( …ああ。そうか。 ))

 何かが心のなかでつながった。

 青い浪。

 白い、純白のように見えながら、それでもどこかに海の耀よいを秘めた、泡の飛沫。

(( エルフィーリ(妖精人)…訂正。…ネーレイド (人魚姫)。 … ))

 もう死んでしまった彼女の瞳と髪の色だ。

「 おい。」

 海の… いや、 ”水の” 娘……

「 おい。清?」

 後ろでシュンっという軽い音がする。

「 げっ!! 」

 みっ、…耳もとに息なんか吹きかけるなアホゥッっっ!

 思わずのけぞったすぐ目の前に好の顔。

 ニヤッと やらしい 笑いかたをして、いつの間にやら俺の椅子のヒジかけに片膝のっけて乗り出して、両手で背もたれのフチをしっかりつかまえて。

 ………しまった油断したッ…!!

 う。

 気がついた時にはたいてー後のまつりなんだ、こーゆーのは。

 なまじ《ムーン II 》で1週間も同室だったのに手を出されずに済んでいたんで気をゆるめたのが、マズかった…

「…おまえ、まだ何か隠してんだろう。」

「 へ? な、なんのことかなっっっ!? 」

 長いつきあいなんで好の言いたい事くらいすぐに判る。

 喋ってたまるかっての。もう死んじまった年上の女性に一目惚れしてあげく落ち込んでるなんざ…

 冗談じゃねェよ。

 他ならぬ好にチラッとでもバラしてみろ。むこう3年間はいやンなるほどからかわれ続けるに決まってる…

「それ以上寄るなよなっ! わめくぞ。ユミちゃんに人格疑われてもいいのかよっ」

「後ろ見てみな。」

 げ。

 さっきの シュン は、エアロック閉めた音かいな…ッ★

「…おまえ~…! くそ、どのスイッチだよっ」

「下手にいじくると船ごと墜ちるぞ。」

 う。

「さて、と。あきらめて白状するんだな。何を隠してる?」

 アゴに手なんぞかけるなっ! 服の前かってに開けるな~っ!!

「ンな大事な事じゃないってのッ☆」

「 ほー。…重大でないことを、なンでわざわざ隠す必要がある?」

「 ぎゃっ…」

 …そ、その指…っ!

 その指先をなんとかしてくれっ! !!

「どうせならもう少し色っぽく反応しろ。」

 ………き さ ま な ~~~~~ッ★

「…おまーこそ、アサヒガモリ、ってな何なんだよ…っ!?」

 咄嗟に口をついた疑問詞。

 べつに深い意図はなかったんだけど、単に他のセリフ思いつかなかっただけなんだけど、何故か………

 反撃成功。(??)

「 ………おまえにゃ関係ない。」

 好の顔がすっと遠のいて、一瞬、見覚えのあるひどく優しいような表情。

 そして困惑。

 それからそれを見せちまったことに腹をたてたみたいにそっぽを向いて。

「 関係ないことあるかよ。おまえに関係あってどーして俺に関係ないんだよっ!」

 も、噛みついたろ。

 追及してやろ。

 こいつにこーゆ顔させたのってホンっト久しぶりですぜ。

 やったねっ♪

 しかし束の間の勝利。

「 ガキの口だす事じゃねえんだよ。童顔。」

 ぐ。

 ぐっさァ~~~~っっ

 も、死んでやる。スネてやる。イジケてやるっ

 よくも人の弱点を。よくも俺がいちばん気にしていることをっ!!

 どーせ童顔だよ。精神年齢も低いよ。

 だからって姫だって栗原だって知ってるらしいことを、俺にだけ教えないっていうのは、何なんだよ。

 …くそ~~~~っ

 どっせ頼りになんぞなんねェんだよ俺は。

 フンッッ!


「 、っ…☆ っっ」


 軽いキスひとつ残して、好はさっさとエアロック開けて出て行ってしまった。

 去りぎわに、目一杯 ”外の音” のボリュームあげて…。

 ぐわ。

 思わずよろっときそうな音量。

「きゃっ。」

「なん? お、どーしたんだよ杉谷。」

「清に聞いてみな。」


 あのヤロウ。

 ……… ”不利な喧嘩はする奴がバカだ” てのはあいつの処世訓のひとつ。

 ふん。

 おまえだって俺に弱味握られた事になるんだから、な。

「ぉわ~すげぇ音っ!」

 栗原がスイッチ切りにコクピットへ入って来る気配。

 俺は慌てて胸のジッパーを引き上げなけりゃならなかった…。




(3)

 

 

 本来のコースを大きく迂回して南米方向から来たように見せかけていた俺たち、やがて日本の防衛海域に入ろうってところでスターエア⇔日本首都の洋上主要航路に合流する。

 大型タンカーや鉱石貨物船は で、スピードが勝負の商業貨物や旅客専門はホバー船や MISS-SHOT と同じようなジェット推進で運行している。

 無論さらに "速さ" を要求する輩ははるか高空、大圏航路の上だけど…一般の民間の用船がそこを通ると、時折 誤って 皇国軍に撃ち墜とされるんだそうな…。

 ところどころを方向区分ブイで仕切られた両側を、右往左往する乗りモンの類は、ラッシュ時でない首都高速のそれと同じ程度に混みあっていた。

 その大人しやかでいてそれなりに活気を見せる高速船の列の中を、ひっきりなしに電波サイレンで警告を出しながら、パトロール艇らしいのが走りまわっている。

 ヤニさんがそこらの船の通信員に立体電話でちょっかいかけて聞き出したことには、

{ 知らねェのかい。ゆんべスターエアの皇国軍司令部が襲われてな。ほとんど壊滅状態でビルさえまともにゃ残りゃしねェってんで、今日は朝っぱらからすげェ騒ぎよ。
 おかげでこちとら仕事あがったりだが、ま、オエラガタの慌てぶりが想像できるってェだけでも、お釣が来るってもんよ。}

「…おぉやぁ。そりゃァ残念なコトをしちまった。急いでリマになンざ向かわずにスターエアで一泊しとくんでしたネェ…!」

 そうすりゃ騒ぎにまざれたかもしれないのに、あたしの知り合いもあそこに捕まってたンですョ…と、洗いざらい情報聞きだしながら、シャアシャアたるもの。

 実はヤニさん、すでにペルーの友人に口裏合わせてくれるよう、連絡つけてある。

 派手な赤ペイントの惑星間小型艇が列に割り込んで来たとあって、

「…アチ。おいでなすった…」

 神経とがらせてる海上巡視艇が職務質問のため「停船!」を呼びかけてきた。

「………普段ならこんな目に遇いやしないンですがねェ…」

 うんざり。という風に大げさに額に手をやりながら、もう片方の白い指がサラサラ操作盤の上を走って停止・着水する。

 小型の曳航艇がチャグチャグと直進してきた。

「さ、て。
 ボーヤとこちらのお嬢さン以外はコンテナーの方に行っといちゃくれませんかね。あとは適当に誤魔化しときますョ。」

 俺とユミちゃんを指す。

 あとの連中はゾロゾロと指示に従って。

 ピーッと玄関?のブザーが低く鳴るのへ、ヤニさんはスタスタと出て行った。

 俺は面白そうなのでほこほこくっついて行き。

 振り返るとユミちゃんは居間との境にひっかかって、不安げに首だけをのぞかせていた。

 平気だよ。とウィンクひとつ。

「 ハイな。 」

 目一杯なまめかしく壁にヒジついてシナを作って、ヤニさんは扉の開閉ボタンへと指を伸ばした。

「 お役目ごくろうさンでございます。」

 残念ながら俺のほうからは見えない、凄いほどに艶やかだろう微笑みに、踏み入って来ようとしたパトロール2人はまずビビらされてしまったようだった。

 その鼻先に小さな銀板とIDカードをさしつける。

「 惑星間自由貿易人、ヤニ・シュゼンジシブ・シュゼンジシカ。 "火喰い竜の" ヤニと云えばもしかして御存知じゃあと思うンですけどネ。」

「 ! 火喰い竜のヤニ…!」

 若いほう、新入りらしいパトロールの顔に思わず尊敬というか憧憬の色。

 へ~えヤニさん有名人っ!

 …しっかし…

 自由貿易人なんつって許可証や身分証明みせたところで早い話が宇宙の運び屋、流れ者。

 アウトロー(無法者)にパトロールが憧れてたりなぞしていいものか? いまいち疑問。

 案の定、年かさのほうは若いのを横目で睨みつけて、ますます表情を硬くした。

「カードとライセンスは本物だ。…で? 荷の品目と数量は? 目的地及び受取主は? …コンテナ内を改めさせてもらう。」

 カードの判別器を腰に納めながら乱暴に押し入って来ようとする。

「きゃ。」

 背後でユミちゃんの短い悲鳴。が。

 むずと掴まれたヤニさんの細腕は不思議とびくとも動かなかった。

「積み荷はこのおふたりコンテナは居住用。」

 唄うような揶揄うような口調。

「マ、もちのろん、嬢さん坊ちゃんがたの為の専属用心棒が3~4人乗りこんじゃァ、居ますがね。皆さん首にごたいそうなシロモンをぶら下げていらっしゃるンで、パトロールにお引き合わせするってェわけにも行かないんですョ。」

「 なんだと!」

「ま、ま。鈍い旦那だねェ、ヤボ云うは女に嫌われますョ。そこは察ッして下さらなくッちゃァ。」

 チッチッと指を振る。

 パトロールはますます居丈高に船荷証を見せろと主張。

「 解ってないンですネェ、いまいち。」

 広げた胸もとから気短そうに書類ザックを取り出した。

「お尋ねのモンはここですョ。…ぉおっと触っちゃァ、いけないねェ旦那。

 まずコレだけちょいと拝んじゃ貰えませんかぃ。」

 1枚、ちらっと引き出してまたすぐ戻す音。

「 う!?」

 パトロール達の顔色が… みるみる変わって行って。

「こんな手はァ、あんまし使いたかないンですがね。」

 ヤニさんはいとも色っぽくタメ息をついた。

「いま見せたのは、ま、別ン仕事の時のですけれどね?

 お解りでショ。ふたつ名前はダテや酔狂でついてるわけじゃァない。それなり の自信と実績があって初めて名乗れるもンですからねェ…。

 パトロールの旦那がたなら無法者のルールっくらい、先刻ご承知でしょォが。

 この方々はネ、さる御方からあたしが内密に依頼を受けて、はるばる冷たい真空世界からお連れして来たンですョ。

 顔立ちをご覧になりゃ半分日本人だ。ってェのはお判りですね?

 さて、それ程ちょくちょく《コロニスツ》の領域まで出向いて来られる御方と云えばァ。………さてネ?」

「…そ、相当、 "上" 、の、…?? 御方。って事に……っ??」

 若いパトロール、おどおどと。

「 "云わぬが花" ってもンでしょうが?」

「…本当でありますか…ご子息殿?」

 年配のほうはそろそろ同期の出世度合の気になるお年頃。

 今までの失点を取り繕うとでも云うように急に丁重な態度。

「………疑うわけ?」

 せいぜい『生まれのいいお坊ちゃん』らしく高飛車な声を出してやるんだけど。

 俺、こういうおっさんの姑息な表情って、あんまし好きくはない~…

「 マ、そぉいぅ事で。」

 声はにこやかに態度はシタテに出ながらも、ヤニさん断固とした動作で前に進み出て、パトロール2人を船外へ追い出してしまった。

「し、しかし。ちゃんと調書を取って行きませんことには、上司に…」

 若いほう、世慣れしていないだけに、 "権威" てものがピンとは来ないらしく、シャクシジョウギ。

「あァ。…それもそうですかねェ。」

 例の、小首をかしげる感じの振り向きかたで俺たちの方へチラッと微笑みかけてから、自分も揺れるタグボートの上に鮮やかに飛び降りた。

 ………ハシゴを使っても、下までは約2mあるんですが………

 スリット入りのロングドレスったってスペース・スーツの一種なんだから、もちろんその下に細身のパンタレットみたいなものをはいてはいる。

 しっかしそれが白地の極薄。ほとんど半透明に肌の色や脚の形が透けて見えるとあっては男としては、まンだすなおに素足でいてくれたほうが、精神衛生上ありがたい…ような気がする…

 タグボートから見上げれば、ヤニさんはちょうど逆光線になっている筈だった…。



 ユミちゃんは安心したのか一旦居間のほうへ引っ込むと、洗い物のカゴを持って来てランドリーのほうへ姿を消す。

 『新入り坊や』がシドロモドロに質問するのへ、ヤニさん適当にでっちあげて答えて。

「どしたンです? 書かないンですかい?」

「は。あの、規定では、船内の実物とチェックしながら…」

「…新入りサァン…っっ アンタって、ほんっと、可愛い…♪」

 何を思ったのか笑いこけ… 笑いじょーごだったんですか、ヤニさん。

 『パトロール・年配』は、これはもう彼女に逆らおうという気力はなく。

てっきとう に生きましょうや、ねェ? 早く老けちまいますョっ!」

 すっ、と俺の眼下、斜め下2mかける3mくらいの所でヤニさんのすらりとした体が『新入り』のほうへ近寄った。

「…ま、これはほんの、ワ・イ・ロ…♪」

 白魚の指先がひょいと相手のアゴを捉える。

 げっ!!

 きっ! …キッキッキっ! kissしてる~~っっっ!! ??

 ………………ッ☆

 あ、あいつ役得だッ うらやま… ぃゃ不届きな…ぃや、えーと。

 と、とにかくっ!

 ア然としている年配と、呆然としている若輩を乗せて、タグボートは静かに母船へと去って行った。

「…ヤ、ヤニさん………。」

 当の彼女はごく平然とした顔で海面からのハシゴを登って来る。

 手を貸そーかと思ったけど、なんとなく、俺はひきつって壁に貼りついてしまって離れられなかった…。

ぉおや。 坊やさん、どうかしなすッったンですかィ?」

 ニッ、という、笑み。

 十分解ってるくせしてこちらの反応を楽しんでいる。

 ふいっとその限りなく陽気に色っぽくて人生を楽しんじゃってる顔が、大映しになった。

 ! ひ、ヒエェっっ

 …ぅ、わ。

 ………柔らかい感触………。



(………やっぱ好とは、………ずいぶん違う。…………☆)



「 これっくらいで驚いてちゃァ、いけませンよ。」

 人差し指でチカッと合図を残しながら、ヤニさん退場。

 ………ぉ、男の側の立場と都合ってェもんも考えてもらいたいぃぃぃぃっ!

「…あら? 清クン変な顔してどうしたの?」

 からのカゴ持ってランドリー兼バスルームから姿を現わすユミちゃん。

「わっ馬鹿っ☆」

 こ、こんな時に肩に手なんかかけないでくれっっっっっ



 …も、俺は、アセッてトイレに駆けこむっきゃ、なかった…。



 ………………。★

 

 

 

 

 

(参照したければ資料)

http://85358.diarynote.jp/201611162112568657/

(3)+(4)。

2016年11月16日 リステラス星圏史略 (創作)


(4)

 

  

 洗面所で手と顔を洗って居間へ戻ろうとすると、開けかけた扉(ふだんは手動になっている)の向うに誰かしらがいるような気配がする。

 ふっ…と、何とはなしに手が止まった。

「………び出して何の用だ、会田? 逢引でもしたいのか?」

「 、…そうやっていつでも相手の足元をすくおうとなさる態度には、あたくし感心できかねましてよ。」

 うっ …扉のすき間から声がもれてくる。

 なんとゆーか、出るに出られない雰囲気。

「どうしてもお伺いしたい事がございましたの。かと云って他のかたがたもいらっしゃる所で軽々しく口にすべき内容とは思われませんでしたし、この船でひとけの無い場所といえばここくらいのようですから。」

 …俺はだんじて立ち聞きしたくてしてるわけじゃないんだからね姫…っ

「 女のほうから迫られても面白くも何ともねェぜ。」

 あくまでも話をおちょくりはぐらかすつもりの好を相手に、ゆかり姫の表情、想像できてしまう…。

「…婉曲な言いまわしはお嫌いでいらしたのでしたわね。直截に申し上げましょう。お伺いしたいのですわ。

 杉谷さん。あなたはスターエア島で皇国軍司令部司令官室へお行きになられたはずです。

 では、その司令官をどうなさいましたの?! 」

 みぞおちに冷たく突き刺さる、張りつめた声。

「 ふん。」

 俺の親友が鼻で嘲り笑う。

 …ソノ司令官ヲドウナサイマシタノ…

 その答えは、おそらく俺も薄々感づいてはいる、けれどもけっして意識にのぼせたくはない、なにか、だった…

 好は、これから日本本土に乗りこもうって時に、その1支部とドンパチ追撃戦やりながら、もつれ込んだりせずに済むように、ってんで先手必勝を決めこんだんだった。

 その本部・司令官室にまで単身乗り込んで行ったのだったら。

 やる事は決まっている…口封じ。

 より上層部へと俺たちの情報が伝わらないように。

 好は肯定も否定もしない。

 ゆかり姫もそのまま黙っている。

 俺の首すじを伝う、汗。

「少なくとも、正行さんがいらっしゃれば、そういう行為をお許しにはならなかった筈ですわ。」

「その会田サンを探しに来てるんじゃないのか、今は。」

 好、たぶん、いつものあの薄気味の悪い嘲笑を浮かべて。

「…………その通りでしてよ杉谷さん。」

 姫の声はますます硬く強張った。

「そして、ともあれ 今は あなたがリーダーシップを握っていらっしゃるのですから、従いましょう、あたくしもね。

 ただこれだけは覚えていらして下さい。あたくし、あなたのなさりかた、認めませんわ。絶対。」

「 それが、オレにどう関わりがある?」

 カシャッという低い音。漂ってくる煙草の煙の匂い。

「…いいえ。なにも…。

 後悔、なさいませんように。あたくしこれでも恐い女でしてよ。」

「 ” I know. ” 」

 かつっ。

 ゆかり姫が一歩行きかける、靴のかかとが床にあたる響き。

「考え直せ。と、正行さんならばおっしゃることでしょうね。穏やかに。

 あなたが冷然と人を殺せる人間だなどと知ったら、優実子さん、磯原さんも、さぞ悲しまれるだろうと思いますわ。

 …おふたりとも、すっかりあなたを信頼していらっしゃるようですもの。」

 エア・ロックの開く音。

 そして再び軽い擦過音。

「…冷然… 信頼ねェ。」

 ふーっ…

 聞き慣れた、煙を輪っかに作る時の、ため息みたいな低いブレス。

 ぐぃ、と、俺と好の間を隔てていた銀色が横に消えた。

「 おまえ、オレを信頼するほど馬鹿か?」

 わからない。

「ユミにはバラすんじゃねェぞ。」

 最後の1本の残ったCABINの箱をライターと一緒に俺に投げてよこしながら、背を向ける一瞬前のいつもの皮肉っぽい、自負に満ちた笑顔が…



 何故だか哀しく視えた…



 煙草を1本、できるだけ長い時間かけて。

 ゆかり姫、少なくとも俺のことは、心配してくれなくてもいいよ…。

 好がどんな奴だか… もう、6年越しのつきあい。

 割れたビール瓶1本で7人に重傷を負わせたことも。

 ワナを仕掛けて卑怯な手段でひとりカタワにしちまった時も。

 いつも俺は一緒だった。

 なかばいじょう強引にひきずりこまれて。

 好が、どんな奴だか………



 ヒトゴロシ。



 だけど… この言葉だけは…



「おまえ、オレなんぞについてっとロクな目に遇わねェもんな。」

 こんな科白をふいっと云われたのは、あれはいつの事だったろう…。



 俺は吸いガラを始末すると、深呼吸して、何喰わぬ顔で、扉を開けた。



「 ! …磯原さん。」

「あれ、清クン、まだそっち居たの??」

「うん。なんで?」

 あくまでも。俺はウソが得意なんデス。…

「どしたの、ゆかり姫。かお蒼い。」

 白々しい質問だなぁ。

「 あ、いいえ。別に…」

 気づかわしげな視線が走る。

 はん。

 好は奥か…。



「 坊やさん、お嬢さんがた。」

 コクピットからヤニさんが声をかけてきた。

「そろそろ日本が見えてきましたョ。」

「きゃ~~~。見たい。見せてっ♪」

 明るく楽しくユミちゃんが飛んで行く。

 ので、オレもつきあって ”外” を見に移動した。

 倍率をあげてくれたので、蒼い大海原の向う、黒ずんだ稜線がくっきりと浮かび上がる。

 その手前に銀色のかなり巨大そうな海上都市。

 明るかった空は心なし曇りはじめ、左手、南西の方角からかなりの速さで黒雲の端切れが寄せてくる。

「…まずいことにひと荒れ来るようなンですョ。今夜あたりちょいと揺れるかも知れませんねェ。」

「 嵐になんの? へぇ♪」

「?」

「清クンてばカミナリ好きだもんねぇ。」

「 加えて。栗原が居るだろ。あいつは地震カミナリめちゃくちゃ苦手なんだ。もぉひたすら騒ぎまくるんだぜっ♪」

「ホント~~~? きゃあ♪」

「……イイ性格してますねェおふたかた☆ ………あたしも楽しみにしとこ。」

「、どっちがぁ~??」

 わめくと、ニンマリ笑ってヤニさんは後部ガレージの連中を呼びに行く。

 ゆかり姫はまだ居間で暗くなったまんま、どっぷり自己嫌悪に陥ちこんで。

((………やめなよ。人を責めるたんびに自分の潔癖さがイヤになるって、きみのしょーもない性格は、解っちゃいるけど。…今回ばかりは確実に、好が悪いんだからさ。

 …きみの言い分、絶対的に正しい。))

 俺の母親はキリストの信者です。

 汝、殺すなかれ。

 俺が蚊を叩いても怒るという…

 スクリーンの中、大きな雲が「闇の乗手」のように重苦しく走り過ぎて行き。

 部屋の中にも一瞬おとずれる暗がり。

 姫に、なにか言ってあげたいけど、そうすると会話を聞いていたことがばれて余計にめりこむでしょう…。

「 ねェねェねェ、清クンったらあ。」

 雲間から、ぱあっとまた陽光がそそいだ。

「ここ、太平洋側でしょ。日本のどのあたりなのか、判る?」

「え? んーっと、」

 O市は内陸都市だったし、 ”海” と云えばどっちかってと日本海側を指す。

 俺は急にふり向いたまぶしさに、小手をかざして目をしばたいた。

 コンソールに指を伸ばして、これだけはやっと覚えたスクリーンの倍率操作。

 目盛りをあげると海上都市の像は手前にずれてぼやけ…

 浮かび上がる海岸線の遠景。

 乏しい地理的知識を総動員して推理する。

「 う~~~ん。…」

 頭をひねりながらユミちゃんのそこに居てくれることに感謝していた。

 まったくのところ、好がユミちゃんにだけはよわいっていうのも、単なる血のつながりなんてものだけが理由じゃあないと思う。

 そうではなくて、彼女は本当に、護られるにふさわしい特別な女の子なんだ。

 特別な。

 …俺、6年近くつきあっててユミちゃんの落ちこんだりヒガんだりしたところって、想像すら出来ない。

(スネるとかヒスおこすとかは時々してるけど。)

 何があっても曲がらないし、負けない。

 どんな時にも物事を明るいほうへと持って行くことのできる天才で。

 ……花にたとえるならキミは向日葵(ひまわり)そのものなんだろーね、ユミちゃん。

 見ているとこっちにまで太陽エネルギー、充電されてくる…。

「皇国とやらの ”首都シゾカ” って、シズオカ のことかなあ? だとすりゃ富士山みえてもいい筈なんだけどね。」

「あ。見たい、それ♪ あたし未だ見たことないっ!」

「きれいだよ~あれはホントに。」

 なんせここは俺たちから見れば未来世界?で、地名や単語の発音なんかが大分ちがいがある。

 古語…とまで俺達の口調が古めかしく聞こえるってわけでもないようだったけど、流行語はもちろん、新造語とか、日本人お得意のガイライゴ、なんかでは、ヤニさんや皇国軍の兵士たちの言葉遣いの中にもずいぶん判らないものがあった。

 そこはそれ、宇宙から降りて来たばかり、てことで上手く誤魔化したけれど…


 



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