閉じる


tovo plus〜あおもりの100家族、わたしたちのこれから。[season 5] No.056

今号(57家族目)のご家族 ▶

工藤 浩栄さん・金美淑(キム・ミスク)さん

撮影場所 ▶合浦公園(青森県青森市)

 

【インタビュー】

●浩栄さんと美淑さんは国際結婚なんですね。

▶浩栄さん「私たちは2000年4月に五所川原市のキリスト教会で出逢いました。彼女がかつて京都大学に留学していたときに学内の聖書サークルで非常に親しくしていた牧師が五所川原の教会に赴任していて、彼女が韓国から訪ねてきて1週間ほど滞在していたんです。再会は9年後の青森市。以後、私が訪韓したり、彼女が来日したりしながら、同じ信仰を通じて心が通い合い、2010年11月に婚約しました。」

 

●2011年3月11日のこと、憶えていますか?

▶浩栄さん「私は仕事で、青森駅近くのホテルにいました。長い揺れがあって電気が消えて。ホテルの人に促され、建物の外に出たら、信号が消えているし、人がワーワー騒いでいる。勤務先に歩いて戻りながら、携帯で韓国の彼女に『いま大きな地震があったけど、なんともないよ』とメールしました。中里の実家にも電話して。勤務先には非常用電源があって、リアルタイムでテレビを見ることができたんですが、津波が押し寄せる様子に『これは大変だ』と。」

▶美淑さん「私は当時、韓国の大田市というところで日本語学校の教師をしていました。日本で震災が起きた時刻、私は休憩時間で外出していて、彼のメールを見ていなかったんです。16時ごろ学校に戻ってテレビで震災を知り、彼に電話をしようと携帯を見て、メールに気づきました。」

▶浩栄さん「19時ごろ会社を出たんですが、星がとても青く、ゆらゆらして見えましたね。家に帰っても、停電で暗いことより、寒いことが堪えた。彼女と国際電話をしたけど、携帯の電池が無くなってはいけないと、すぐに切りました。離れて暮らしてたでしょ。『うちに誰かがいるというのは、羨ましいな』と思った。あの日ほど、家族がいないというのが、心細いというか。」

 

●その後はどう過ごしていたんですか。

▶美淑さん「韓国でも震災発生から1週間、1日中ニュースで映像が流れていました。日本語を勉強していた人たちに、とても影響がありましたね。『もう日本に行かない』と言い出したり。同じ日本語学校のソウル教室には約2,000人の受講生がいたのに、半減してしまったほど。私はそれまで20年間日本語を教えてきましたけど、こんなに学生たちにやる気がなくなってしまったのを見たのは初めてでした。どうにか『勉強したい』『(日本に)行ってみたい』という気持ちにさせたくて、彼に『青森県の美しい自然の写真をたくさん撮ってメールで送ってほしい』と頼み、それをプリントして学生たちに配ったりしました。」

▶浩栄さん「睡蓮沼とか、八甲田の写真が多かったですね。つがる市のベンセ湿原、十和田の鯉艸郷の花菖蒲や、弘前公園の桜とか。」

▶美淑さん「出勤前と仕事帰りには教会に寄って、泣きながらお祈りしていました。」

▶浩栄さん「彼女と国際電話で話すと『みんなのために祈りに日本に行きたい』というので、ケンカしましたね。『いまいるところでやってくれ』と(笑)。日本に住んでいる外国人が脱出しているときに、こっちに来るって言うんですから、ありがたいなと思いましたけどね。」

▶美淑さん「日本の人たちのために、何もできないということが申し訳なかった。」

▶浩栄さん「電話で話すと『日本に行く』『来るな』とくだらないことでケンカになるので、私は手紙を書くようになりました。ふだんなら1週間ほどで届くものが、あのころは2週間ぐらいかかって届いていた。速報性はいらないから、自分の想いを書いておこうと。それで、返事を期待しないで書くようになった。」

▶美淑さん「郵便屋さんに『日本に親戚がいるの?』と聞かれるほど、毎日届いて。(結婚し2013年に来日するまでに)手紙を430通ぐらい、メールも合わせると1,000通ぐらいもらったんですよ。」

 

●10年後に期待することは?

▶浩栄さん「(浩栄さんは牧師を目指して勉強中)私たちは、いつか一緒に教会をやりたくて、結婚したんです。どういう形でやるかは、これからの話ですけどね。」

▶美淑さん「私は、青森で松丘保養園(国立ハンセン病療養所)から韓国人の通訳・後見人的な依頼を受け通ううちに、園の人たちと仲良くなりました。園では毎年春に植樹をしていて、今年の4月、私も桜の植樹をしたんです。その桜が10年後どうなっているか、大きな樹になっていたらいいな。」

 

【取材後記】 震災による津波、原発事故…。「311」が韓国で日本語を学んでいた人たちに与えたショックは想像以上に大きく、美淑さんが勤務していた日本語学校の学生数は減少の一途をたどり、ついに昨年閉鎖されてしまったそうです。あの震災は海の向こうにも、“激震”をもたらしていたのです。その中にあって、美淑さんと浩栄さんの2人が懸け橋となり、日本のことを、東北のことを想い、伝えようとしてくれたことに、深く感じ入りました。感謝します。(今号No.056 インタビューと撮影:前田ふひと)

 

【寄付総額】2011年6月〜2016年10月27日まで「¥4,635,628」を、あしなが育英会「あしなが東日本大震災遺児支援募金」へ寄付することができました。ご支援に深く感謝致します。

 

【定期購読のご協力を!】1年間の定期購読を承ります。1,800円(送料・寄付含)/1年間(12号)です。このフリーペーパーは定期購読の皆様のご支援で発行されております。ご支援の程、宜しくお願い致します。ご希望の方は、ウェブショップ(http://shop.tovo2011.com)よりお申し込みください。

 


1
最終更新日 : 2016-11-08 11:11:52

この本の内容は以上です。


読者登録

tovoさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について