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(中表紙)

 

 

 

リステラス星圏史略
古資料ファイル
5-X-1-2-3
『未完史』
第1部 第2章
「月は無慈悲な夜の女王」

3.ところで一方こちらでは。

 

 

 

 

 

(この話の前の部分はこちらでお読み頂けます)

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古資料ファイル
5-X-1-2-2
『未完史』
第1部 第2章
「月は無慈悲な夜の女王」
2.《ムーン II 》・
会田正行、ゆきかたしれず。


(1)

 …ここから、少しばかり別の話をしよう。


     O


 地上数mにぽっかりと不条理にも浮かんでいる船がある。

 銀青色の飛行艇だ。

 その舷側に肘をついて、下方を眺めおろしている男がひとり。

 男… いや、まだ "青年" の域だ。

 陽に灼けた浅黒い肌。きちんとわけた短い黒い髪。 "サムライ" を思わせる精悍な顔だちに、白い歯が印象的にひきたつ。

( …あ~あ、あ。)

  "彼" ・会田正行は、深く嘆息をつき、苦笑を洩らしていた。

( ひどいな。滅茶苦茶だ。戦術もなにもあったもんじゃ… いや、はなから存在を、やめきっているな、これじゃ。)

 折しも眼下では右と左にわかれて、麻痺光線は飛びかうわ、その脇からバット振りまわして鋼鉄球を打ちこむバカはいるわ、悪ノリした磯原はモグラ叩きをはじめるし、

 果てには屋上から "ごく普通の大人しい" 美少女だとばかり彼の信じきっていた《ユミコ嬢》さえまでが、嬉々として、そこらから拾ってきたものらしいブロック塊を投げ落としはじめ…

(…う~む…っ。さすがは、やっぱり、杉谷の実の妹だったか…。)

 紫の光線は連なる帯となり、鉄球が機織りの杼(ひ)のように、その合間を縫って飛んでゆく。

 それにしても、ごくごくまっとうで素直に生まれついた彼にしてみれば、戦術、と云えば正攻法か、古来からある伝統的なというかパターン化された奇襲戦略しか思いつけない。

 自分の得物(えもの)が手近にないのなら素手でやるか、せいぜいが相手の武器をかっさらって使いこなせというのが彼の一番オーソドックスな発想なのだ。

 なにしろビール瓶1本あれば立派な凶器になり得るんだという "常識" すら、杉谷とつきあい始めてだいぶ経ってから知ったという、大家の若旦那である。

  "喧嘩の杉谷" の無手勝流いきあたりばったりなぞ、観ているともう面白くてしかたがない。

 実に本能的に、うまく戦いこなしているな… という気がして、そのふてぶてしさ、たくましさが、ほとんど楽しくさえなってきてしまう。

 自身だってもちろん非常に優れた戦士ではあるのだ。

 例えば「武道」大会の総大将だとか、おそらく実際の戦闘だとしても、大局的な視点が必要とされる一軍の指揮官、などというのなら立派につとめてみせるだけの自信はある。

 しかしこういった小規模の、臨機応変が身上とも云うべきゲリラ戦ともなると、

( かなわんなぁ。)

 と正直に思ってしまうのだ。

 苦笑しながら、感嘆せざるを得ない彼らの下町的生命力の強さに。

「きゃ~♪ くっちゃん頑張ってぇっ」

「あ、ほら。また当りましてよ。」

 後部座席ですっかり試合観戦にうち興じてしまっている2人にちらりと目をやりながら、何の脈絡もなく彼は、先ほど出会った風変りな少女のことを想い出していた。



     O



 四方を灰色の板壁でかこまれた、工事資材置き場のかたすみでのことだ。

 そこらじゅうには鉄材やらブロック、機械類など、いつの時代にもいかにも工事現場で見かけそうなガラクタがごたごたと、まあ比較的に整頓はされて、積みあげられていた。

「え~い。くそ。こいつは外れんなぁ。」

 彼は悪戦苦闘している。

 目の前にはどでんと腰を据えた9人乗りの銀青色の飛行艇だ。

 中型くらいのサイズなのだろうが、動かせないとなると、必要以上に大きく重たく思えてきてしまうというのが人間心理の常ではなかろうか。

「………………あらまあ。何してるの、あなた?」

 背後から、やわらかく朗らかな少女の声が聞こえた。

「見れば解るだろう。この飛行艇の、キーを短絡させようと…」

 熱中のあまり、無邪気な問いについ答えてしまってから彼は慌てて顔をあげた。

 はじめは一行のひとり《まりちゃん》とやらが、ついて来てしまったのか、と思ったのだったが。

 彼のすぐ左肩ごしのところに、白い、愛らしい顔がある。

 小さな膝に腕をつっぱって、彼の手元をのぞきこむようにしている。

 さらりとした長い金髪。

 海色の大きな瞳。

(………いつの間に………!)

 これでも、彼は五感には自信のある、ひととおりの武術家なのだが。

 にっこりと、少女は朗笑った。

「馬鹿ねェ。それなら、そんなやりようでは駄目よ。盗もうって言うんなら、こうした方が… 貸してごらんなさい。」

 彼女がひょいひょいと、気軽に配線をいじり始めるのを、彼はア然として見ていた。

( なんだ、この子??)

 見れば随分いいところの娘らしい上品な服装である。

 物腰態度も洗練されていて、いかにも自信ありげで、もの怖じしない。

 年の頃は12~13歳だろうか。

 まさか泥棒が悪事だということが解らないほど幼いわけでもあるまいし、見知らない男の盗みの現場に出喰わして、平然としてその手伝いをはじめるというのは…

 そもそも何の理由があって良家の子女が、明けがた早々の工事現場で遊んでいなければならないのだ…。

「さ、できた。これで好きなように動かせるわよ。だけどあなた操縦できるの?」

「え? う。あぁ多分。すこし練習しさせすれば…」

「教えてあげましょうか?」

「ありが… いや、そんなことより。きみ、家はどこなんだい? こんな朝早くからひとけのない所でひとりで遊んでちゃ危な…」

「いやだ! あきれた! あなたもしかして、わたしのことを知らないなんて、言うつもりじゃないでしょうね?」

「 えっ!?」

「それで、危ないから御親切に家まで送って行ってあげようって云って、このわたしがのこのこ誘拐犯のクルマに乗るだろうだなんて、本気で思っているワケ? あんまり馬鹿にしないで欲しいわ。」

「い、いや、送って行ってあげたいのは山々なんだが、杉谷が待ってるだろうからそうも云っていられないし…」

 少女の反応が、はっきり云って彼には不可解だ。

 考えてみればここは自分のまったく知らない世界の、真っただなかであった筈なのではあるが…

(なんだっていきなりおれが女の子をさらわなきゃいけない話になるんだ? 被害妄想狂とか…

 いや、見たところこの子、知能は正常そうだし。

 それじゃ両親の躾がよっぽろ行き届いていて、人を見たら誘拐犯と思え、とか。

 …う~むっ。すさんだ世の中だ…。)

 現にいま目の前で、ひとを見たら泥棒をしていたという事実は都合よく失念している。

 まじまじと少女は彼を凝視した。

「わたしは宗女アルテミス・豪田・セイレアよ。この顔をよくご覧なさいよ… 本当に知らないの? あなたTVも新聞も見ないわけ?」

「そういうわけでもないんだが…」

 彼、完全に困惑した。テレビ?

 そういえばこの子、見るからに顔だちが整っているし。

「きみ、人気番組の子役かなにかなのかい?」

「…………… 冗談でしょ? それ。本気??」

 たっぷり5秒間、少女は軽蔑しきった眼つきで彼を眺めまわし…

 やがて、頭をかかえる。

「う~。信じらんないわよ、これはちょっと。

 いくら地表人とはいえ、いまどきコロニスト連合宗女の顔も知らない人間がいるなんて… あなた、名前は?」

「悪いね。本当に知らないんだ。おれは会田正行というんだが。」

「………マサ…ユキ……?」

 何を思ったのか、いきなり頓狂な声を出して少女はぷっと吹き出した。

「大時代! アナクロ!」

「なにが…」

 理由もわからず自分の名前を笑われて、よい気のする奴もいるまい。

「だァって、まるで、おおっむかしの…っ!」

 くすくすくす。

「大昔…って、sれはないだろう。なに右衛門だのなんとか乃丞だというわけでもあるまいし。おれの名のどこが…」

「骨董品ものよォ。いまどき二文字名前だなんて。いまどき…

 ……… え?」

 ふっ、と少女の表情が深刻なものになった。

「おおむかし…  "過去より来たる" …

 ………… まさか。」

「…え?」

「ううん。なんでもないんだけど。」

 しゃんと少女が背を伸ばしたのにつられ、なんとなく彼も立ち上がる。

 そうすると以外なほどに少女は小柄で、がっしりした体格の彼の胸もとにも満たなかった。

「こっちの話なのだけれどね。」

 しきりに考えこみながらその少女が言う。

「マサユキ…ね、ふぅん。とにかこうどうも情報が混乱しているみたいじゃない? ひとがせっかく面白がって出て来てみれば、全然違う話が…」

「 えっ?!」

 何の変哲もなく見える大きな瞳の少女が、どこからともなくいきなり小型の銃をとり出し、ポンポンともてあそびはじめる、などというのは…彼のように常識的に地道に生きている人間にとっては既に理解を超越してシュールな眺めである。

「何?どうしたの?」

「けれどギョッとしたていの彼の表情に少女がかまっている暇はあまりなかった。

「姫君ー…」

 よく響く声が誰かを呼んでいる。

「宗女さまーァ」

「アルテミス殿下ーっ」

 どうやら探している相手は少女らしい。

「ああん。もうっ!」

 少女はきかんきらしくひとつ地面を蹴った。

「ほんっとにアルバトーレの女官たちときたら、あっという間にひとの居場所をつきとめる名人ばかりなんだからッ! たまには、月の上くらい一人で出歩かせてくれたっていいじゃないねェ? いくらわたしに暗殺の危険性があるからって…」

「暗殺?!」

「そうよ。」

 ごくあたりまえのように言ってのけて少女はポンと腰のホルスターに銃を戻した。

「だって、わたしは宗女になったんですもの。違って?」

 どちらにおいでですぅ、と心配げな声の一団は次第に近づいてくる。

「はあい! わたしはここよ! 丸っきりの無傷だわっ!!」

 あきらめたのか、なかばは朗らかに叫びかえしたと思うと少女はくるりと方向を変え、走り出していた。

 資材置き場の入り口でちょっと立ち止まって、振り返る。

「じゃーね、マサユキ。また後で、会いましょう♪」

 そしてそれっきり、金髪をなびかせて鮮やかなうしろ姿は視界から消え…



     O



( 何だったんだ… あのこは…?)

 ぼんやりしている彼の目の前でいきなり白熱がひらめき楠木女史の足もとに穴があき、杉谷が高く跳びあがり。

 あれよと思う間に彼ら全員は銃でとり囲まれてしまった。

 ひょいと無雑作に白い指が伸ばされて…

「説明してちょうだい。あなたよ、マサユキ。」

 そんな注文をいきなり言われたところで、ことの解説を必要としているのは彼のほうなのである。

 一歩ふみ出したところでぐっとつまり、その場は口の達者な磯原にゆずった。

 その、磯原を、いつものとおり本人はまるで無自覚に、気遣ってやっている杉谷の不器用さが彼には微笑ましく…

 そうこうしているうちに金髪の小女王に導かれ、一行はふりだしの広間に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

(参照?資料)http://85358.diarynote.jp/201611022130499051/

「3.ところで一方こちらでは。」 (1)


(2)

 



 ガガガガン!


 最初の衝撃が襲ってきた時に、たまたま宗女姫は彼のすぐそばにいた。

 だから、彼だけは確かに見たのだ。

 華奢な体格のいまだ幼い少女が、照明の失われるその一瞬前に、さっと蒼ざめ、怯え、「ママ!」と小さく叫んでいたのを…

 青白色の光が戻って来てみると、少女はすでに平静を取り戻し、黒髪の従者に護られて、遠く広間の向う側につんととり澄ました表情で立っていた。

 報告の衛士が駆けこんで来る。

 まるで他人事のように、子供は恐ろしい決定を口にした。

「…自分の身の処しかたくらい…。」

 彼を、 "会田サン" を危険から護ろうとして、杉谷が時間軸の話を持ち出した。

 何よりも彼自身が、自分の見慣れた世界に早く戻りたかった。

 時間軸イコール秩序を乱してはならないと従姉姫は主張する。それでも。

 彼の脳裏を少女のさまざまな横顔がオーバーラップしては消えていった。

 微笑。

 無表情。

 スネたような、あきらめたような、運命に雄々しく、立ち向かうかのような…

「…月の上くらいひとりで…」

「わたしは宗女になったんですもの…」

「 自決用よ。」

 そして…


「ママ!」



  "もとの世界" へと戻る通路を次々と仲間はくぐって行った。彼もまたすでにそこへ足を踏み入れたのだ。

「急いで!」

 磯原が叫び、その姿がかすれはじめる。

 は振りかえり、少女の細い腕が銃を構えているのを見た。

 ………その白い、こめかみへ向けて……


「…アルテミス! 」


 疾りはじめてしまうのに、理由はもう要らない。

 杉谷の腕が瞬間のばされて、けれどを捕まえておくことなど、出来るはずもなかった。

「 会田サン?!」

「正行さんっ!!」

 …そうして…



 彼の背後で彼のもっとも信頼する二人の姿は消え。

 

 ヒーローは、振りかえらなかった。



 低い重力のなか、数歩の跳躍で彼は少女…アルテミス…に近づき、その小銃を奪っていた。

「マサユキ?! なにをする気なの、返して!」

 ぱんっ! 白い頬を、彼はあくまでも軽く、平手で打った。

「馬鹿なまねをするんじゃない! 何か方法がある筈だろう!」

「無礼ねッ! あなたに何が解ると…っ」

 叫ぶ少女を肩でかばいつつ後ろ手で制して、銃を装甲兵たちに向ける。

 何射しても倒れない。

「 ちっ。効かないのか…」

 敵勢に追いすがり、もつれるようにして "部屋" になだれこんでくる衛士たちの持つ武器も、多くは同じことらしい。

 正確な射撃で着実に戦果をあげ得ているのは、優しげな外見のアルヤ・アラムひとりと言っていい。

 従者の持つ熱線銃は特別仕様なのだろう。

「…武器が、要るな。」

 彼は広い "部屋" の中をじりじりと少女をかばって後退した。

 忙しく目であたりを探る。

 武器になるもの。…杉谷だったら…。

 重い装甲にしばられているとはいえ、歩兵はもともとの筋力において勝っている "地表人" なのだ。あっという間にかれらは続けざまに広間へと侵入して来ていた。

「宗女アルテミスの身柄を渡せ!」

 ヘルメット越しの声が室内に反響する。

「銃を反して! わたしは、生きて捕まるわけにはいかないのよ?!」

 彼の背後にかくれるようにしながら少女は鋭く叫んだ。

「 駄目だ。」

 冷静に彼は答え…後ろ手に少女を物陰に押しやると、黙って呼吸をはかり…

 飛び出した!

「うおりゃあ!!」

 剣道部主将として鍛えあがられた気合の声だ。

 迫力は広間を揺るがし、敵兵たちは一瞬、砲をかまえるその手を忘れた。

 高く… 宙に跳んだ彼のからだはやがてがっしりと装甲兵のただなかに足場をかまえ、手近の、長さ2mはある頑丈な照明器具を床面から引きもぎっていた。

「 そおらっ!」

 ぶん!

 鈍い金属音をたてて燈の先端はひしゃげ、スパークした火花と同時に歩兵ひとりが宙に投げあげられる。

「………撃っ 撃て撃てっ!」

 敵の小隊長がどぎもを抜かれて叫ぶ。

 彼はゆったりと笑って次のひとりをその隊長めがけて弾き飛ばし。

 乱戦は、始まった。

「巧い手ね。加勢するわっ!」

 彼について跳びこんで来たのは、なんと少女自身なのだ。

「危ないぞ。気をつけろっ!」

 怒鳴るヒマもなく、羽交い締めにかかる敵兵をアルヤ・アラムの熱線銃がつらぬいている。

「ありがとう!」

 少女はほがらかに叫ぶと続く数人を重いコンピューター・キットでなぎ倒して行った。

 すかさず月人の衛士たちが落とされた歩兵の砲を奪いとり、戦列に加わる。

「宗女殿下をお護りしろ!」

「地表人なぞに負けるな!」

 コロニスツ万歳!の声が戦闘要員ではない者たちの間からも湧きおこり、すべてはうまくいくかのように見えた。

 と…

「クイナイダ老師!」

 混乱の一画で若い女性技術者の悲鳴があがる。

 高齢の著名な学者は、いま歩兵の手になる砲に片脚をとばされ、ゆっくりと崩れ落ちていくところだった。

「…先生ーーーーーっ!」

 少女の叫びが "部屋" をつん裂く。

 そこに一瞬の隙があった。

 非情な歩兵の拳が少女のみぞおちに喰いこむ。

 がらりととり落とされる、ひしゃげた機械。

 ぐったりとして担ぎあげられる少女の蒼白な顔。

「 引きあげろ!」

 装甲歩兵は速やかに動きはじめる。

 しんと沈黙の張りつめる空間。

 カチリと、熱線銃をかまえる忠実な従者アルヤ=アラムの、立ち姿が会田正行の眼をひいた。

「 何をする気だっ?!」

 ふたつのことが同時に起こった。

 彼の厳しい声にふと、アルヤ=アラムは手を停めて気弱げに微笑むような苦しむような、曖昧な表情をし…

 その、従者に彼は頭から躍りかかったのだ。

「やめろっ。どういうつもりだ!」

「 やめて下さい。私は…!」

 ぴたりと少女の額に定められていた照準は、もみ合ううちに僅かにずれて発射された。

 装甲歩兵がひとり、ぎゃっと喚いて倒れ、べつの奴が振り向きざまに彼らふたりをめがけて引き金をひく。

「…………危ない!」

 直撃を腕に受けたのは、従者のほうだった。

 どう考えても不自然な、あきらかにマサユキをかばって突き飛ばした…ような形で。

「…な…」

 倒れこむ従者をとっさに抱えて、彼はしばらくのあいだ呆然としていた。

 どういうことだ?

 これは、どういう展開なんだ?

 …磯原がいれば、あるいは…。

「…あなたは、よその世界の御方だ。」

 血にまみれた腕をかかえこんで、なんとか立ち上がろうと苦労しながらアルヤ=アラムは呟いていた。彼の困惑に応えるように。

「我々には我々の掟があるのですよ。」

 彼は数秒間、相手の青白い顔を凝視し…

 それから吐き出すように言い切った。

「そんな事はどうだっていい。あんな小さな子供を見殺しにするつもりかっ?」

「 はい。」

 無表情に従者は応じた。

「 "手の者" 達はおそらく決して殿下を殺したがりはしますまい。死を選ぶことは、アルテミスさま自らの御意志なのです。」

「…………馬鹿な。自殺をしたがるような子じゃないっ!」

 相手が怪我人でさえなければ正行はその平然として見える顔を殴り飛ばしていたのかも知れない。

 装甲兵たちはすでに気配すらなく広間から撤退し去っていった後だ。

( 自殺をしたがるような子じゃない。)

 彼は心の中で繰り返した。

  "宗女殿下" などと人から呼ばれる子供になら、どれだけ複雑な事情が背後にあるものか、それは彼は知らない。

 だけど彼は知っているのだ。

 にっこりと、どれだけ生き生きと、あの少女が微笑むのかを…

「我々には我々の掟があるのです。」

 従者が繰り返した。

「そうかい。それなら…」

「戦士殿!?」

 狼狽したアルヤ=アラムの制止の声なぞもう気にもせず。

 彼は、走りだした。

「おれはおれの流儀に従うまでだ!」





 通廊を抜け、昇降機をあやつり、 "遺跡" 内部から駆けて出た彼の目の前で、漆黒の宇宙態は装甲兵の一団を呑みこみ、宗女姫を呑みこみ、音もなく発進の準備を整えつつあった。

「…くそっ!…」

 艇は宙に浮く。

 彼は大またに走り寄った。

 ぎりぎりの瞬間に、満身の力をこめて、彼は跳びあがった…

 接地脚に決死の思いでしがみつく。

 高度、10m、20m、まだまだ上がる…




 生きて捕まるわけにはいかないのだと少女は言った。

 それなら。

 唯一完全な解決策は、絶対に囚われの身に陥ったりしないこと。

 それだけだ。





 高く…



 たかく青年は、吊り上げられていった…






(…続く…)。

 

 

 

 

(参照…しなくていいよ…資料)

http://85358.diarynote.jp/201611031746149897/

「3.ところで一方こちらでは。」 (2)


(執筆当時の) ☆ あとあがき ☆ (&感想?)

 

 ☆ あとあがき ☆

 …う~む、書くことがない……以下次号。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(資料…だから参照しなくていいってば…w)

http://85358.diarynote.jp/201611041803407363/

「3.ところで一方こちらでは。」  (☆あとあがき☆)・他…

 

http://85358.diarynote.jp/201611041824493776/

一冊完成♪


(次号予告!)

 

この続きは、こちらでお読み頂けます。

リステラス星圏史略

古資料ファイル

5-X-1-3

『未完史』

第1部

第3章

俺たちは

 無鉄砲のかたまり。


http://p.booklog.jp/book/111026



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