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スコットランド人・ケンタッキー人、そして、会津人

 ラグビー国際マッチでは、初の天覧試合が、2016年6月25日、味の素スタジアムで開催されました。

 昨年、ラグビーW杯で南アフリカを破り、世界の注目を浴び、現地のイギリス人からも破格の応援を得た日本チームの今回の相手は「スコットランド」でした。

 

 「イギリス」ではありません。

  「スコットランド」です。

 

 <United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland>で略称は<UK>。日本語では、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」が、英国の正式名称となります。

 つまり、連合王国の中の、グレートブリテン島の北部にあるスコットランドと試合を行うのです。

 

 仮に、日本が、「本州及び北海道・四国・九州及び沖縄連合国」ということであれば、その北海道とやるということになります。

 しかし、日本には、国として、そういう括りがないので、サッカーにしろ、ラブビーにしろ、イギリスという国が、やれ、イングランドだとか、ウエールズだとか、チームを編成してくるのには、日本人には少々戸惑いがあります。

 

 その戸惑いを胸に、スコットランドとの試合をテレビ観戦しました。

 

 バグパイプの音色が響くスコットランド国歌、Flower of Scotlandを聞くことができました。歌詞を読めば、それはイングランドとの戦いを歌ったものです。ますます、戸惑いは膨れ上がります。

 そして、選手たちのユニフォームの脇には、緑のタータンチェックがさりげなくデザインされていました

 粋だなあと、思いました。

 

 応援席では、タータンタムをかぶった男性、キルトを着てバグパイプを演奏している立派な風体の男性、はたまた、ユニオンジャックならぬ、青地に白のバッテンのついたスコットランドの旗、St.Andrew's Cross旗を振る方々がいました。

 St.Andrew's Crossとは、バッテン型の十字にかけられて殉教した聖人セント・アンドリューを象徴としている旗です。

 

 私は、イギリスには4回ほど出かけています。

 でも、正確に言うならば、私は、<イングランド>に4回出かけたというべきなのでしょうか。

 同じ国に属していながら、歌う歌、振る旗からして違うというあり方に、何か違和感と失望感を、私は持っています。

 

 失望感というのは、明治以来、我が国に対して、多大の支援をしてくれた、とりわけ、先端技術の産物である海軍の土台を作ってくれた英国に対して、生じてくる感慨です。

 

 そんな立派な国が、女王陛下のもとで一致結束していけないものなのか……というものです。

 

 聞くところによれば、今回のEU離脱に伴い、スコットランドはまたもやUKからの独立を問う国民投票を企図しているといいます。さらに、ロンドンもUKから独立したいと突拍子もないことをインド系のロンドン市長が言い出し、なおかつ、ビートルズの出身地リバプールもスコットランドに帰属したい旨を公言しているといいます。

 

 こうなると、本当に「英国解体」というセンセーショナルな事態が現実味を帯びてきます。

 

 

 青地に白のバッテンのついた、スコットランドの国旗、St.Andrew's Crossに似た旗を、私は知っています。

 こちらは、<Confederate flag>と言います。

 

 日本語では「南部旗」と言っています。

 こちらは、赤地に青のバッテンで、その青いバッテンには、白いふちが施されています。

 バッテンには、13の星がついています。

 13は、アメリカ南部連合の国の数です。そのど真ん中にある星は、ケンタッキー州を指しています。

 

 この「南部旗」は、2000年まで、サウスカロライナ州の議事堂に掲げられていました。ミシシッピ州やジョージア州の州旗のデザインの一部としても使われています。

 

 アメリカを二分したあの「南北戦争」では、これら南部の国々が<Confederate flag>を振って、北軍と戦いました。

 この戦争での死者は、62万人だったと言います。

 アメリカが第二次大戦で、太平洋・欧州で失った命は32万と言われていますから、この戦いがいかに悲惨であったかわかります。

 

 しかし、アメリカは、その「しこり」を克服しました。

 それだからこそ、世界一の国を作り上げることができたのです。

 些細なことですが、<United State of America>が今の米国の正式名称です。しかし、南北戦争後、しばらくは、<States>と複数形で表していたそうです。

 

 このたった一語の<s>が、「分裂・解体」を避け、「統合」をしていった象徴の名残であるなと思うっているのです。

 

 

 実は、我が国でも、似たような事例があります。

  それが「会津戦争」です。

 

 薩長同盟軍は、京都守護職を務め、勤皇の志士を取り締まり、徳川幕府を支えた会津藩を朝敵として、徹底した破壊工作を会津藩に仕掛けました。

 

 男たちは籠城して薩長軍を迎え討ちます。

 女子供は城に蓄えてある米を減じてはと、城には籠らず、城下の家に残り、薩長が町筋に侵入してくると見事自害して果てたと言います。

 老いも若きも、武士たちは薩長と戦い、命を落としていきました。

 そして、善戦虚しく、不運にも生き残ってしまった藩士たちには、「藩ぐるみ流刑」ともいうべき処置が下されたのです。

 

 寒さ厳しい、下北の斗南に、開拓者として送り出されたのです。

 食べるものもなく、藩主の容大を始め、藩士たちは文字通り「草根木皮」を食したと言います。

 

 しかし、その末裔が薩長に対して、新政府と袂を分かち独立するとか、その後の混乱に乗じて、新政府に戦いを挑むとか、あるいは、薩長に対して、子々孫々にわたって、敵討ちをするとか、公に口にしたことはありません。

 西欧列強に負けない新しい日本を作り上げるため、そのために、皆が心をひとつにして取り組むことを選んだのです。

 

 米国も日本も、もちろん、英国も、その歴史の中で、すさまじい混乱を経験し、今に至っています。

 

 おそらく、賢明な英国人たちは、国を分裂させる前に、また、国内が混乱でにっちもさっちもいかなくなる前に、何らかの方策を立てると私は確信しています。

 

 かつて、世界の四分の一をその支配下に置いたイギリス、今、その面影はありませんが、世界の多くの敬意と賞賛を集める国です。

 

 今回のイギリスのEUからの離脱という「事件」は、21世紀の国際社会に計り知れない衝撃を与えていくことでしょう。その連鎖もどのように伝わっていくのか、興味深く関心を持たざるをえないのです。

 

 

 


奥付


LP


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著者 : nkgwhiro
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