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疑惑のチャンピオン

疑惑のチャンピオン

2016年7月11日鑑賞

 

ああ、山の流れのように

 

美しい山岳コース

下り勾配のS字コーナー。

「シュンッー」と、空気を切り裂くようにすり抜けてゆく、自転車ロードレーサー達の群れ。

それを背後から捉えるキャメラがいいなぁ~。

劇場の大きなスクリーンで、この景色を見るといいですよぉ~。

見事なコーナリング・テクニックを見せてゆくロードレーサーたち。

本当にこちらまで「ピレネー」や「アルプス」の雄大な山脈群を体験しているみたい。

ああ~、深呼吸したくなる!

爽やか! 

気分スッキリ!!

爽快気分はMAXハイテンション!!

やっぱりスポーツって「健全」でいいなぁ~。

えっ、そうじゃないの?

あれ、なに、その注射針。

なに、その飲み薬。

おいおい、自分の血液を「パック」に入れて冷蔵庫に保存?!

マジっ? 変態か? こいつら。

そこまでして彼らが栄冠を掴み取りたいもの。

それこそが、自転車レースの最高峰、と言われる「ツール・ド・フランス」である。

彼らの栄光への情熱と「執念」「情念」は、この作品を見ればわかる。

それはもう、並大抵の努力じゃない。

このレースに出られるレーサーたちは、すでに自国のレースで、数々の優勝を経験してきたツワモノばかり。

地元ではレースに出る前から

「あいつが出るんじゃ、優勝はもう決まり!」

と、マスコミでさえ、かえって注目しなくなるぐらいの、まさに「超一流」レーサーたちなのだ。

「TOP」中の「トップ」

「エリート」中の「エリート」

そんな彼らにとって「レースでの2番」は「負けた」ということ。

「レースは勝たなきゃ意味がない」

これはオートバイレースの世界を描いた、新谷かおる氏の漫画「ふたり鷹」のなかのセリフだ。

 

「負ける」ということは、かれらにとって「自分の全存在を否定」されることなのだ。

それほどの屈辱感、悔しさを味わい、それでも「次のレースでは勝つ」と再び立ち上がる。

ロードレーサーにとって必要なのは、そういう「ガッツ」「体力」と「気力」だけなのだ……、

と永らく思われてきた。

しかし、近年、それだけでは「レースに勝てない」ということが常識になっている。

そこで必要なのが「勝つ」ための「戦術」であり「戦略」なのである。

本作の主人公、ランス・アームストロングは、25歳で癌を宣告される。

しかし、それを克服し、みごとにロードレーサーとして返り咲いた。

そして彼は、ある「戦術」と「戦略」を駆使して「ツール・ド・フランス」前人未到、7年連続総合優勝に輝いた。

だが、しかし、かれの「戦術」と「戦略」は、一人のイギリス人記者、デイヴィッド・ウォルシュによって、その「秘密」と「実態」が暴かれてしまう。

本作は、癌に侵されながらも見事にレースに返り咲き、がん患者の希望の星として、多くの人に勇気と希望を与え続けた英雄の、まさに「栄光」と「転落」を描く。

監督はアカデミー賞に輝いた「クィーン」のスティーブン・フリアーズ氏。その映画作家としての腕の確かさは、本作でも随所にうかがえる。

特にレースシーンでの美しい風景。

対照的に、各レーサーの火花が散るような勝負の駆け引き。

手持ちキャメラではなく、ステディカムを使った、ブレのない映像シーンは、本当に映画館で観る価値がある。

そういえば最近、ようやくハリウッド系などの映画も、一時、馬鹿の一つ覚えみたいに”ブレブレ”の手持ちカメラを使っていたが、今はもう、流行らなくなったみたいだ。

しょせん、一時の流行である。

映像手法は、そんな流行に左右されることなく、本当の人間ドラマをじっくり捉えてほしい。

そのためのキャメラなのだから、これからの若い映画監督は、よく理解した上で、じっくり撮影方法を選択してほしいものである。

それにしても、本作で描かれる「ドーピング」

さらには、自分の血液を常時冷蔵庫に保管しておく、など、これらはまさに、サイクルレース界を永く密着取材しなければ、なかなか得られない情報である。

本作は、そのレース界の闇に迫った、ノン・フィクションを元に映画化された。まぎれもない実話なのだ。

全編を通じてドキュメンタリータッチで描かれる本作。

レースのシーン、選手たちのプライベートをはじめとして、突然のドーピング検査のシーンが特に印象的だ。検査官を外で待たせ、限られた時間の中、際どいタイミングで、必死に証拠隠滅を図ろうとするレーシングチーム。

そしてスポーツ医学と選手との関係。

そういえば、もう直ぐ「リオ・オリンピック」である。

選手たちは、もちろんドーピング検査に神経質だ。それも極度にだ。

細心の注意を払って、常備薬の成分を何回も見直し、

「大丈夫だよ」とマネージャーから手渡された何気ない「かぜ薬」が、もし、違反薬であったなら。

実際、過去には、選手たちが意図していないのに、チームの意向でドーピングを「させられていた」選手たちがいた。

そして栄光は剥奪される。

選手たちのその後はどうなるのか?

自分のこれからの人生、どう生きたらいいのか?

「人と競い合うこと」

「勝利すること」

ただそれだけに、全人生を捧げてきたスポーツマン、アスリートたち。

野球の世界では、ぼくは野村克也さんが大好きだ。

野村さんのボヤキのひとつではないが

「人生はね、野球を引退してからの方が永いの。今のうちから、ちゃんと人生を考えなさい」

常日頃から、そう「弟子」たちに説いていた。

そして楽天の監督引退式では、パリーグ全チームの選手たちから胴上げされ、祝福を受けた。野球人として、また、ひとりの人間として、最高の生きかたの見本ではないか? と僕は野村さんを見てそう思う。

本作で描かれる主人公ランスは、もちろん実在の人物で、現在44歳なのだ。まだ、44歳である。これからが人生の後半戦。折り返し点にある彼。

これから待ち受ける「ロング・アンド・ワインディングロード」は、緩やかで景色のいい「くだり坂」なのだろうか?

あるいは、きつい「上り坂」が、まだ待ち構えているのか? 

本人はこの映画を見てどう思うのだろう?

**************

天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆

美術 ☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

**********

作品データ

監督   スティーブン・フリアーズ

主演   ベン・フォスター、クリス・オダウド、ダスティン・ホフマン

製作   2015年 イギリス・フランス合作

上映時間 103分

「疑惑のチャンピオン」特典映像

 


ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

2016年7月24日

パルシネマにて二本立て鑑賞

 

歳をとるにも「コスト」なんだよね。

 

世界の大都市である、Tokyo,Japn の物価の高さは、飛び抜けていますね。

過去のランキングでは常にトップだったようです。

当然のごとくニューヨークも、やっぱり「お高い」

世界を代表する大都市の一つだから、それも仕方ないかもしれませんが。

本作に登場する老夫婦。

モーガン・フリーマンとダイアン・キートンが演じる、アレックスとルースの熟年ご夫妻。

この二人は、大都会のアパートメントに、40年間暮らしてきました。

部屋は5階建ビルの最上階にあります。

眺めは最高。

ニューヨーク、ブルックリンの街を、独り占めできるような展望です。

夫のアレックスは、そんな部屋をアトリエにして絵を描いている画家です。

アレックスは毎朝、愛犬のドロシーと散歩に出かけます。

このドロシーとも長い付き合いです。ペットというより、もはや家族以上の存在。

散歩の途中でコーヒーショップへ立ち寄り、二人分のコーヒーを持ち帰るのが日課になっています。

アレックスとドロシーは、ふたりして朝の散歩を終えて自宅に帰ってきました。

アレックスの片手にはドロシーのストラップ。もう一方の手には、二人分のテイクアウトのコーヒーを乗せたトレイを持っています。

最上階5階までの階段を、一段、また一段、のぼってゆくアレックスと愛犬ドロシー。

やれやれ、体がきついなぁ~。

歳を重ねるごとに、5階まで登る階段がきつくなってきました。

愛犬ドロシーも、寄る年波に勝てず、階段を登る途中で休憩するような有様です。

というのも、このビルには、そもそもエレベーターがないのです。

それ以外は、ほぼ完璧な「物件」なのですが。

そんな二人を見て、奥さんルースは、一つの提案を持ちかけます。

「いつまでもこの部屋にはいられないわ。エレベーターつきの、暮らしやすい部屋に引っ越しましょうよ」

アレックスにしても「確かにそうかもしれない、彼女の言う通りだ」と思う反面「いや、しかし、この住み慣れた部屋から出て行く、というのはなぁ~」

なんとも、複雑な心境です。

確かに愛犬ドロシーだって、階段は辛そうだ。

散歩も、そう長く楽しめないかもしれない。

アレックスも、渋々、自宅を売りに出す決意をし、不動産のエージェントをやっている、姪っ子のリリーに自宅売却を依頼するのです。

やり手不動産エージェントのリリー(シンシア・ニクソン)は、仲介手数料をかせごうと虎視眈々です。

アレックス夫妻の部屋を、さらに魅力的に見せるために「こうしなさい、ああしなさい」と指示を出してきます。物件の内覧会「オープンハウス」の日が勝負なのです。

そんなおり、愛犬のドロシーに異変が。うまく歩けません。

熟年夫妻は、急いで医者に連れて行こうとします。

この時の医師とのやり取りが興味深いですね。

ドクターによると

「病名はヘルニアです。手術が必要ですね。費用としては**万ドルかかるでしょう」

ワオッ?!

アメリカでも日本でも、ペットの医療費は高額なんですね。

さらには、事もあろうにアパートメントの近所で、テロが発生!!

不動産屋のリリーは頭を抱えます。

「Ohマイガー!! 相場が下がっちゃう!!」

いったい内覧会はどうなるのか?

アレックス夫妻の決断は?

愛犬ドロシーはどうなるのでしょうか?

本作を見ていて面白いのは、大都会を舞台にした暮らしぶりであり、それはズバリ

「お金」「プライス」なんですね。

ペットの病気治療費用が数万ドル、さらにはアレックス夫妻のアパートメント、その資産価値なんと100万ドルオーバー。

日本円に換算して1億円を楽に超える物件です。

そんな物件に、今までどうやってローンを払っていたんだろう? などと僕なんかは思ってしまったのですが。

アレックス夫妻は、決して贅沢な暮らしをしているわけではないのです。また、望んでいるわけでもない。

ただ、アメリカで最も歴史の古い町の一つ、ブルックリン。

250万人が住む、人口密度は高いけれど、落ち着いた雰囲気のある街並み。

ここで暮らし続けたい。大都会で慎ましやかに暮らすこと。

そう思う老境に入った夫婦を演じるモーガン・フリーマンとダイアン・キートン。

役者として、年輪を感じる演技は「さすが!」の一言でした。

 

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆

美術 ☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   リチャード・ロンクレイン

主演   モーガン・フリーマン、ダイアン・キートン

製作   2014年 アメリカ

上映時間 92分

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」予告編映像


ビューティー・インサイド

ビューティー・インサイド

2016年7月24日

パルシネマにて二本立て鑑賞

 

123人の僕が君を愛してる

 

へぇ~、韓国映画もこんな作品作れるんだ、というのが率直な印象。

韓国の漬物を代表するキムチ。同じ漬物でも、本作は日本の「浅漬け」のような印象です。

とってもスッキリ、あっさりした口当たりの良さ。

そんな感じなんですね。

本作の背景になっている舞台にしても、とっても洗練されていて、ハイセンス。

おしゃれ感覚あふれる家具と室内空間。

監督はCM畑の出身。カンヌ国際広告祭で受賞歴を持つ、ペク監督です。

どうりでねぇ~、オシャレなわけです。

さて、そんな素敵な舞台設定はできました。

ストーリーです。

主人公の男性。

彼は家具のデザイナーをやっています。

おもに椅子が専門。

かつて僕もインテリアを勉強した経験があります。

たかが「椅子」とバカにしちゃいけませんよ、あなた。

実は世界中のデザイナーが、こぞって歴史に名を残す、名作椅子を作ろうと、日夜しのぎを削っているのですよ。

ぼくは、某美大の図書館に頰かむりして忍び込んだ時、玄関ロビーになんと、あの世界的建築家である、ル・コルビジェの椅子が飾ってあるではありませんか!!

辺りをキョロキョロ見回して、僕はその椅子にそっくり返って座りましたよ!

「ああ、巨匠! コルビジェの椅子に座ってるぅぅぅ~!!」

まあ、病気ですな。変態ですな。

まともな”良い子”は真似しないようにね。

さて、本作の主人公ウジンは、芸術家肌と言うより、職人さんに近い感覚の持ち主。性格は内向的なんですが、いわゆる草食系で「ど・ノーマル」です。

ただ一点を除いてはね……。

彼が他の誰よりもただ一つ、強烈に違う事。

それは一旦眠って目がさめると、姿や性別まで別人になってしまう、という事なのです。

彼ウジンが想いを寄せるのは、アンティーク・インテリアショップで働く「イス」という女性。

 まあ、韓国モノをいくつもご覧になっている方には百も承知でしょう。「これでもか!」という美女でございます。

「イス」にしても、ウジンのデザイナーとしての才能、魅力にひかれ、やがて彼

自身の人としての魅力に惹かれてゆきます。

「目覚めるたびに別人になる」という、ウジンの秘密さえも受け入れたイスなのですが、やがて職場でいろいろと噂が。

「イスは男をとっかえひっかえ、付き合っているらしいよ」

「あんなに男漁りしていたなんて」

「人は見かけによらないわよね……」

などなど。

そりゃそうでしょう。イスはウジンただ一人とお付き合いしているのですが、ウジンは、毎日、容姿も性別さえも変わってしまうのです。本作でウジンが変身する、その人数、なんと「123人」

ウジンが女性の姿になった時、その一人を演じるのが、日本から参加した上野樹里です。

「のだめ」シリーズで韓国でも大人気の彼女。

本作では実に静謐な演技で、ほぼ、目線の移動、まばたき、ささやくようなセリフ回し。その眼差しで一瞬にして「上野樹里の雰囲気」を作り出してしまうのは、さすがの貫禄でした。

本作は「もし~だったら」という、一つの思考実験映画という見方もできるでしょう。

人間は生物学や医学の見地から言えば、絶えず細胞は死滅し、新しい細胞に生まれ変わります。約三ヶ月程度で、全身の細胞は、脳を除いてはほぼ全部、入れ替わってしまうそうです。

三ヶ月前に出会った同一人物は、生物学的には、別人と言ってもいいわけです。

本作の主人公ウジンでは、それが極端に短い「たった1日」でおこってしまうということなのです。

 

韓国映画は、その独特のどぎつさとアクの強さがある、という偏見を、僕は永らく持っておりました。

そのため映画作品鑑賞もイマイチ敬遠しがちだったのです。

しかし、こういう「浅漬け」のようなサッパリ味の作品なら、僕でも違和感なく鑑賞できました。

また、本作のペク監督の感性というのは、どこか日本の「はかなさ」に通じるものがあると感じました。ペク監督なら日本の「もののあはれ」という感覚を作品に込められるのではないか? と思えるのです。

たとえば、日本の古都「京都」を舞台に、恋愛ものであるとか、あるいは、世界的クリエイターを目指す若者などを描いてもおもしろいのでは? と思いました。

 

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆

美術 ☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

**********

作品データ

監督   ペク

主演   ハン・ヒョジョ、パク・ソジュン、上野樹里

製作   2015年 韓国

上映時間 127分

ビューティー・インサイド」予告編映像


存在する理由 DOCUMENTARY of AKB48

存在する理由 DOCUMENTARY of AKB48

2016年7月12日鑑賞

 

「AKBがAKBでありつづける」には?

 

ここであなたに質問。

「今のAKB48メンバーで”レコード大賞が獲れる”と思いますか?」

2011~2012年連続で、AKB48は「レコード大賞」を獲っている

あのときの勢いは本当にすごかった。

僕は第三回選抜総選挙のころ、妙にテレビがAKB,AKB,と連呼しているので、「何が起きているんだろう?」という興味からAKBをウォッチし始めた。

ミイラ取りがミイラになる、という古いことわざがあるが、まさにその通り。

このあと僕は、AKBの活動をテレビやネットで見続け「ダダハマり」することになる。ただし、ビンボー人で関西に在住していることもあり、AKB劇場には、一回だけ雰囲気を観察しに行ったことがあるだけだ。たまたま公演中に

「どんなところかいな?」

と、のこのこエスカレーターに乗って上って行った。すると、劇場前にスタッフが仁王立ちになっており、客席ではなく、AKB劇場ホール、そこそら入ることが許されなかった。

「はて”会いに行けるアイドル”とは、どこにいったのだろう?」

よく、AKB劇場は「ドンキホーテの上にある」と言われる。

間違いではない。

僕も現地に行くまではそう思っていた。しかし、東京、秋葉原のAKB劇場の建物の前に行った時、

「はぁ?!」

と思った。なんのことはない。

記憶が定かではないが、一階と地階は確かパチンコ店であった。

そのパチンコ店の上に「ドンキホーテ」があり、そのまた上にAKB劇場があるのだ。

「やっぱり現地に来ないとわからないなぁ~」とおもう。

では、なぜ

「パチンコ屋の上にAKB劇場がある」といわないのか?

たしかにパチンコは18歳未満は入場できない。プレイできない。

そういう射幸心を煽る、青少年には有害とされるギャンブルのホールの上に、

「健全な青少年である少女達」が歌って踊るホールがある。

僕みたいな「変なオヂサン」には、このあたりの事情がよくわからない。

まあ、それはひとまず置いといて。

レコード大賞の件である。

僕は今のAKBメンバーでは正直、三回目のレコード大賞は

「獲れない」とおもう。

レコード大賞は、CDなどの販売数でだけ評価されるのではない。若干、テレビ局なり、あるいは著名な審査員たちの「主観的評価」が加味される。

2011~2012連続受賞の時は

「わかりました。もう、AKBの運営システムは認めざるをえません」と、審査員達がバンザイしてしまったように僕には思える。

なにせ、週に一度行われる握手会など、独自のシステムでファンを囲い込み、さらに、選抜総選挙という一大イベントによって、ファン心理を不安に陥れる。それにより「なおさら応援しなきゃ!!」とファンを煽って、財布を開けさせる。

何もこれは悪いことではない。

AKBの初期は、総合プロデューサーである秋元康氏とメンバー、スタッフ達、すべてが手探り状態で、試行錯誤の上、今のシステムにたどり着いたのである。

その途中、多くの初期メンバーが脱退して行った。

「それが正解だと思ってました」と後にエースと呼ばれる、前田敦子や大島優子が語っている。

それでも彼女達は5年、6年と耐えた。

AKB初期メンバーである篠田麻里子は、発足当時、路上でAKBのチラシを配っていたのだ。食費にすら事欠き「部屋でカイワレを育て、スープにしていた」と語っている。同じく初期メンバーの板野友美の名台詞がある。

「つらいことなら、慣れてます」

のちに女子中高生のカリスマ、ファッションアイコンとなる彼女は、いったい「売れるまでに」どんな歩みをしてきたのか?

リーダーである総監督「高橋みなみ」を筆頭に、当初は歌もダンスもできない、どこから拾ってきたのかわからないような、普通の女の子達が、やがてJ-POPの大黒柱となるとは、誰が予想できただろうか?

よくAKBは「高校野球」に例えられる。これは秋元氏自身も認めていることだ。

つまり、パフォーマーとして、完成された形を、あえてAKBの場合「売り」にしていないのである。

僕がいつも思うのは、テレビのバラエティにしろ、AKBの最も面白い、美味しい部分は

「バックステージ」なのである。

あえてバックステージを晒し者にして、

「こんなにこの子達頑張っているんです。だから認めてください」

そしてファンは

「はい、認めます」

という同意のもとAKBシステムは成り立っているのである。

応援しているファンにとっても

「この子は少しづつ、成長しているな、よし、じゃあ僕も頑張ろう」という、元気をもらえる。演じるものと、観客がお互い「WIN-WIN」の関係性なのだ、と僕は思っている。

さて、AKBは大きな転機を迎えている。

「神セブン」と呼ばれたカリスマたち、一期生、二期生がほぼ卒業。

そして、精神的主柱であった総監督「高橋みなみ」という最後のカリスマが、ついに卒業した。

これから先、AKBはどこにむかうのか?

「タカラヅカ」のように、伝統と歴史を構築していけるのか?

今の若手メンバーは、AKBが軌道に乗ったあとで入ってきた。

一から何かを作る、という作業をしていない。

しかし、一から作るその代償は大きい。多くの初期メンバーが夢半ばでAKBを去った。最後までAKBに残れた、売れるまで残り続けた初期メンバー達。その要因は何だろう?

僕は残った初期メンバーを見ていつも思う。

「彼女達はとびきり美しい雑草なのだ」

雑草は実にたくましい。

何度もなんども引き抜いても、また性懲りも無く生えてくる。

摘み取っても、摘み取っても、それでも生えてくる。

高橋みなみを始め、あの2011~2012連続レコード大賞受賞は、まさに「雑草魂の勝利」であったとおもう。

「歌も下手」「ダンスもできない」「トークもダメ」

でも頑張る。頑張り続ける。

「折れない心」を持ち続ける。

そんなたくましさが、新世代のAKBメンバーには、僕の主観として、いまひとつ感じられないところがある。

さて僕は、本作のドキュメンタリーについては、ほとんど語らなかった。

まあ、AKBファンなら、当然いろいろと、ネットで動画を見ているだろうし、いまさら、目新しいな、という映像はそれほどなかった。

ただ、JKTに移籍していた仲川遥香が、現地インドネシアでまさに大スターになっていることは、印象的だ。これも彼女がインドネシアで「一から石を積み上げてゆく」作業をしてきたからである。

またスーパー研究生と呼ばれた光宗薫が、今現在、AKB時代を振り返って、自分の今までのキャリアの中でも特別の意味を持つ、と考えていることは、ちょっと意外だった。

卒業した内田眞由美も焼肉店をオープンさせ、充実した日々を送っている。その姿を見て、なぜかこちらまでホッとした感もある。

あのたくましさ、打たれ強さ。

それこそが、今後も「AKBがAKBでありつづける」必要条件であり「存在理由」なのではなかろうか。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆

配役 ☆☆☆

演出 ☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   石原真

主演   AKB48グループメンバー、およびスタッフ

製作   2016年 

上映時間 108分

「存在する理由 DOCUMENTARY of AKB48」予告編映像


奥付



2016・8月号 映画に宛てたラブレター


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著者 : 天見谷行人
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/mussesow/profile


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