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コラム

山男 山女

『山好きに悪い人はいない』

そう聞かされたり、我が娘に言ったりしたが、実際のところ大差はないと思う。
誰とでもよく喋る人、無口で一人でいるのが好きな人、私の山行でもたくさんの方々と接してきた。 結局、山でも下界でも人は様々、十人十色。 私自身は初対面の方と会話するのが非常に苦手で、相手が話し掛けて来てくれればその波に一緒に乗ることができる程度。自ら率先して話すことはできない。ゆえに山小屋でそばにいても本を読み続けている私をつまらない人だと感じた輩もいることだろう。
高尾山のように登山者以外の人も訪れるところでは、登山に適した恰好で歩いている人以外には擦れ違いざまに挨拶はしなくてもいいと思う。以前、「こんにちは」と声をかけた時、『あんた誰?』みたいな顔をされた。相手の返事や反応を期待せずに社交事例で軽い会釈でも充分だと思う。高尾山できちんと挨拶をしてまともな返答をしてくれるのは私の経験からすると3~4割程度である。

これが丹沢になると中級レベル以上の登山者が多いので人の応対もガラッと違う。挨拶を交わしてくれない人は奇妙に感じるくらい少ない。その奇妙な人は年輩男性に多く、たいていすれ違う直前に相手から目を反らすので判る。

 

さて、タイトルの山男 山女、個人的に感じる特徴を述べると、

  1. 細かなことは気にしない
  2. 呑気
  3. 意志が固い

これらは共通していそう。

 

細かなことは気にしない』に関しては、限られた水や食料で歩き続けることになるので、汚れた衣服と身体のまま、時には何日もその恰好でいることになる。うちの小学生の娘が二泊三日の縦走を終え、下山してトイレで手が洗えた時に感動したことは記憶に新しい。汚れて汗臭い身体でも、無事に帰宅すれば良い。

身だしなみだけに関わらず、考え方にも些細なことは気にしない一面がある。私自身も職場で繰り広げられる人間模様に「そんなことどうだって良いじゃんよ」と感じることばかり。

 

呑気』 は大切だと思う、というよりせっかちでは山行においては危険。何でも自分の思い通りにいかないと納得できなかったり、先を不安視する性格では山でのアクシデントに冷静に対応しにくくなるだろう。「山頂に到達できたらラッキーだね」「雨が降らないと良いね」程度の心の余裕が必要。子どもを連れて行くのなら尚更である。念のため下山予定日の翌日を予備日としておくくらいがちょうど良い。

 

意志が固い』 は「あの山を目指すのに私には今何が欠けているか?」と自分自身を冷静に判断する力とその対策の実行力、またその努力を継続する強い意志を持っていないと、ステップアップどころか遭難の危険性も高まってしまう。

色々な登山経験者の話やネット上で記事を読むと、初めての登山が日本アルプスや富士山で、結局それっきり続けることはなかったという人が目立つ。(ネットのフリマサイトで売られている一度履いたきりの登山靴のどれほど多いことか。)おそらくあまり登山に興味のないまま人に誘われ、それ以上の努力をしないままやめてしまったのだろう。

 

日帰りの低山から始めて、地道に歩いて楽しみを見つけ、時には些細なトラブルに遭遇していくことで経験値を積み、やがて大舞台の頂上に立つ目標を持ち続けていくことが結果的に安全な山行に繋がると思う。

 

 


山小屋が好き

今これを執筆している現在、まだテント泊をしたことがない。近いうちに山岳用テントやその他のギアを買い揃えるつもりでいる。

諸々の事情で宿泊山行はなかなかできないが、東京都の最高峰、雲取山までの経由地である七ツ石小屋の麓にある七ツ石小屋で初めての1泊登山を実行した。小さな小屋だったのでアットホームな雰囲気で、小屋番さんから色々勉強させていただいたのが記憶に残る。夜明け前に雲取山を目指し、登頂した感動は忘れられない。

(奥多摩の章『雲取山までの道(1)(2)』を参照のこと)

 

丹沢の最高峰、蛭ヶ岳山頂にある蛭ヶ岳山荘に行った時、小屋番さんに言われて実行していることがある。それは山小屋の記録を帳面に記しておくこと。以後、それまでに泊まった小屋の感想や状況などを書いている。読み返すと忘れていたことも記録されていて面白い。

今までピーク時に行ったことがないので呑気なことが書けるが、山小屋の雰囲気は結構好きである。薄っぺらい板張りの造りとほんのりカビ臭い布団、有り余るほどの長い夜。現実社会ではめったにできない知らない人との共同生活もたまには良いものである。

蛭ヶ岳山荘の小屋番の東城さんは自分だけの世界が持てるという理由でテント泊をお奨めしてくれ、もちろん近いうちに実行するつもりだ。余談だが蛭ヶ岳山荘の消灯後に宿直室から聞こえる東城さんの大きないびきがそれを物語っているようにも思う。


あとがき

もうすぐ、北海道大雪山旭岳に行く。娘と初めての遠征山行になる。

記憶が確かならば、学生時代、新潟県の弥彦山に友人5名で登った以来の旅行を兼ねたものとなる。

当時、友人の思いつきで登山をすることになったので、サンダル履きのままマメを足につくり苦労したことを覚えている。

あれから30年近くの歳月を経て、いま私がこうやって楽しんでいるのが不思議だ。

 

今回の本書はブログをほぼまるごとコピーし、修正や写真の添付を少々おこなっただけのもので、記事公開時の文体のまま出版したので丁寧語使いであったりそうでなかったりする。

はじめは統一してまとめようと思ったが、当時の感情を忘れてしまうことに繋がりかねないのでそのまま遺しておいた。

ゆえに読みにくいところも多々あったと思うが、所詮素人の無料公開書籍なのでご容赦いただきたい。

 

山行書の第二弾は北海道大雪山から始め、この夏に行った山を取り上げたいと思う。

次回作もお読みくださる素敵な輩がいらしたら光栄である。

ではまたその時まで!

 

2016年7月21日 高橋 啓道


最終更新日 : 2016-07-21 10:13:40

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