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ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出

ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出

2016年6月27日鑑賞

 

王女は二階建てバスに乗って

 

王女様が宮殿を抜け出し、一般庶民の暮らしを一夜だけ楽しむという、いわば「逆転・シンデレラストーリー」。

本作のHPを見ると、イギリス王室で本当にあったお話のようです。

あの「ローマの休日」の元ネタでは? というのが本作の謳い文句。

監督の名前を調べて二度びっくり。

「キンキーブーツ」

のジュリアン・ジャロルド監督です。

僕はあの作品、劇場で観ました。

倒産寸前の工場を任された二代目若社長が、SMっぽい、おネェ専門のブーツ製造で、会社を立て直すというストーリー。これ嘘のようなホントの話なんですね。

マイナーな作品でしたが、痛快メチャクチャ面白かった。見て損はないです。

「あの監督が、こんな大掛かりな映画をつくれるようになったのねぇ~」と感心してしまいました。

本作では、とにかくエキストラの人数が半端ないです。

それもそのはず、舞台は第二次大戦末期の1945年5月4日、大英帝国がヒトラー率いるドイツに勝利し、降伏文書に調印させた、まさにその夜を描くのですから。

もう戦争は終わりだ!!

空襲警報に怯える夜はこれで終わり。

我らがグレートブリテンはファシズムに勝ったんだ!

街中が、人々が、喜びに沸きかえっております。

その群集シーンをキャメラは存分に撮って行きます。

制作費かかってんなぁ~、というのが正直な感想です。

戦争という国家の非常事態。ロンドンは幾たびとなく、激しい空襲に襲われ、多くの犠牲が出ました。その恐怖と戦う、精神的な苦痛。

 ロイヤルファミリーの王女様たちにとっても、戦争という閉塞感の中、更には、宮殿からは外へ出られない、という二重の精神的苦痛があるわけですね。

「バッカばかしい、青春をこの宮殿の中で送れというの? まるで尼さんね!」

と、のたまうのは王室の次女マーガレット王女様です。

そこで姉のエリザベス王女が、父親である国王、ジョージ6世に掛け合います。

「陛下、戦勝記念、百年に一度あるかないかの、この佳き日に、国民たちと交流して喜びを分かち合いたいのです」

このとき彼女は19歳、さすが、王位継承者。しっかりしてますなぁ~。

国王陛下におかれましては

「愛する娘たちにとっても、青春の一ページ、記念すべき日かもしれない」

と奇跡的にお許しが出ます。

二人の王女は大喜び……、なんですが……やっぱりねぇ、ロイヤルファミリーですし。

なんのことはない、がっちり護衛付きで宮殿の外へ。

しかし、この夜は、まさに戦勝祝いの特別の日。街じゅうが浮かれ騒いでます。

いつのまにか警護する方も、ガードがユルユルに。

その隙を狙って、マーガレット王女がパーティ会場から脱走。エリザベスも続きます。二人は初めての街の中、途中ではぐれてしまいます。

マーガレットを追いかけるため、バスに飛び乗る、エリザベス王女様。そこで出会ったのが、空軍兵士のジャック。

戦勝記念日だというのに、ちょっとブルーな雰囲気。

「君のようなお嬢様には、僕ら庶民なんて理解できるのかい?」と挑発的です。

「なんですって!! わたしだって准大尉としてお国のため、兵士たちの慰問活動をしてきたのよ」

でもさすがに、お嬢様。

なにせバスに乗るのに「お金が必要」ということさえ知らなかったのです。バス代をジャックに支払ってもらったエリザベス。ふたりは、運命に導かれるように、夜の浮かれ騒ぐ街中、マーガレットを探す「冒険」に出かけることになるのです。

このお話、戦勝記念日に、エリザベスとマーガレットの王女二人が、お忍びで街に出かけた、というのは、どうやら事実らしいんですね。ただ、なにせ英国王室のメンツにも関わることなので、詳しいことはわかってないようです。

ただ、英国王室というのは、映画のネタになりやすいのかなぁ~、とおもいますね。

ヘレン・ミレンがエリザベス女王を演じた「クィーン」

それに吃音癖のある国王ジョージ6世を描いた「英国王のスピーチ」

どちらの作品もアカデミー賞に輝いております。

また、故ダイアナ妃殿下の数々の暴露ネタなど、話題に事欠かないのが英国王室なんですね。

逆に言えば、それだけ王室と庶民の関わりが深い、と好意的に見ることもできそうです。映画の後半、軍服姿で、車を運転するエリザベス王女の姿。

本作で一番美しくて、凛々しくて、胸キュンしてしまうシーンです。

エリザベスを演じるのは「世界で最も美しい顔ベスト100」にノミネートされた、サラ・ガドン。

やはり、美女がスクリーンに映える姿は、映画のお楽しみの一つですね。

演出としては、やや、とっちらかってる感じがあるものの、主役のサラ・ガドンのチャーミングさに救われています。それをスクリーンで見るだけでも価値はあるかもと、思ってしまうのでした。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   ジュリアン・ジャロルド

主演   サラ・ガドン、ベル・パウリー、ジャック・レイナー

製作   2015年 イギリス

上映時間 97分

「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」予告編映像

 


帰ってきたヒトラー

帰ってきたヒトラー

2016年6月28日鑑賞

 

普通人ヒトラー、象徴は「拡散と暴走」する 

 

こりゃ、一筋縄ではいかない、どえらい映画に遭遇したなぁ~、というのが第一印象です。

おそらく今年、最強のインパクト、強烈な「毒」を含む問題作です。

ドイツ降伏の直前、自殺したはずのヒトラーが現代にタイムスリップ。

放送局をクビになったフリーキャメラマンとドイツ中を旅して周ります。その様子がYouTubeや、ネットで拡散。ドイツ中の話題と注目を集め、色んな騒動を起こしてゆく、というストーリー。

原作はベストセラーらしいです。

観る前は、いわゆる一連の「ヒトラー映画」のパロディ、芸事でいう「イロモノ」(色物)キワモノの類かな、と思ってました。

物語の前半から中盤は、まさしく、そうですね。

「ヒトラー~最後の12日間~」

を見事に「もろパクリ」したシーンなどもありますよ。

僕は腹を抱えて笑っちゃいましたが。

ヒトラーに関して興味のある方、ヒトラー関連映画やドキュメンタリーを見慣れた人には、そりゃぁもう「ビンビン」響くと思います。

ちょっとブラックな味付けですが、ユーモアに溢れていて、楽しく鑑賞できます。

キャメラマンとワゴン車で、ドイツ中を「ご視察」される、我らがヒトラー総統閣下。

ところが、徐々に……徐々に……、そのカリスマ性を発揮してゆくのですね。

この辺りの人心掌握術の見事さを披露してゆくあたり。

背筋がゾクゾクするほどの恐怖感です。

行く先々で、純朴なる、ドイツ臣民たちと会話を楽しまれる、総統閣下。

(僕の指が写り込んでしまいました)

一般ピープルからすれば「おもろい芸人がやってきた」ぐらいに、当初はおもっていたわけですが、そこはなにせ「ヒトラー総統本人」なのです。

民衆の声を聞きつつ、時折過激で挑発的な発言をする。

利害が複雑に絡みあって、並みの政治家では、とてもじゃないが言えないこと、それこそタブーとされることさえ

「ズバリ!!」と言ってのける。

 その痛快さ! 明快さ! 

「カンタン・明瞭」は、実に耳障りがいい!

単純に気持ち良いのだ!!

バカボンパパも「これでいいのだ!!」

我らが”民百姓”の分際ごときは、何も考えなくても、ヒトラーという代弁者が、綺麗に「コトバ」にしてくれる。

鬱憤を晴らしてくれる。

(ちなみにヒトラー生前の発言に”演説はその場の「最も愚かな者」に合わせるのだ”というのがあります)

やがて、YouTubeやネットで彼の言動が注目され始めます。

そうなると放送局がほっときません。

視聴率稼ぎのためには「キワモノ」なんて大歓迎!!

報道人としての”魂”など「スポンサー様」の靴を舐めるためには邪魔者でしかありません。

こうしてついにヒトラー総統はテレビに登場。

人気は人気を呼び、レギュラー番組さえ持つようになります。

テレビスタジオでのヒトラーの振る舞いに注目です。

さぞや熱血、力のこもった全力アピールで演説するかと思いきや、

……沈黙……沈黙……。

スタジオ内の観客がざわつき、そしてヒトラーに注目します。

何を言うのか? どんな「お言葉」を発せられるのか?

やがておだやかに、静かに話し始めるヒトラー総統。

もう、この時点で、彼はこの場を支配しました。

これこそが、ヒトラーのヒトラーたる所以です。

(このシーンはナチス演説会、記録映像の”もろパクリ”なのですね)

人の心を我慢できるギリギリまで「沈黙」という手段で焦らせ、自分への注意をひきつける。民百姓はただひたすら、彼のコトバを待ち焦がれるのです。

この悪魔のような演説テクニック。

この作品は「もしも~だったら」パターンのフィクションですが、ある真理を言い当てています。

「もしヒトラーが現代にタイムスリップしたなら」

再び、大衆の心を掴むことは「可能かもしれない」ということです。

映画館に通って映画を見続けていると興味深いことがあります。

「今」という時代の流れ、時代がどこへ行こうとしているのか? が伝わってくるということです。

本作はその典型とも言えるでしょう。

いま、世界中の国で起きているのは「ナショナリズム」という流れ。

いわば「内向きの流れ」だと思います。

かつて司馬遼太郎氏は「ナショナリズムは”お国自慢”であります。パトリオット(愛国者)とは違います」と言っておられました。

アメリカでの大統領選はどうでしょう?

過激な発言で、お調子者の大ボラ吹きが連日、テレビに登場して人気者になっております。そして、その「調子の波」にうまく乗っかろうとする、その他の政治家たち。さらには熱狂的に支持する一般市民を含む応援者たち。

これは笑えない現実ですね。

どんなホラー映画よりも恐ろしい。

そしてイギリスはどうなりましたか?

国民投票でEUから離脱。

こうなりゃスコットランドさえ、独立しよう、国をバラバラにしよう、という動きさえあります。

お題目のように言われた「グローバリズム」は、アレっ? いつの間に?(ここでダチョウ倶楽部さん入ります) どこへ消え失せたのでしょう?

本作においても、実にタイムリー、新鮮な「時事問題」「政治ネタ」を後半にぶっ込んできます。

ドイツ国内における移民の流入。自分の仕事を安い労働力が奪ってゆくのではないか? という恐怖感。

「髭もじゃらの連中には、この郷に入ってきてほしくないね」

という、あからさまには言えない、ドイツ人の本音の部分。

そこにワーグナーの堂々たる音楽を従えて、我らがドイッチェランドの理想郷をかかげる政治的アイドルが登場したとしたら……。

「恐れることはないのだよ」と扇動者は微笑みかけるでしょう。

「なぜなら、私は君だからだ」

「そうだよ、私は君と同じく、普通の人間だ」

「普通という名のシンボルなのだ」

私たちの中のヒトラーをどう飼い慣らせるのか?

それとも、もう暴走は止められないのか?

この時期にして、とうとう、こういう作品が出現してきた、と言える、やはり問題作には間違いありません。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ

監督   デヴィッド・ヴェンド

主演   オリバー・スマッチ、ファビアン・ブッシュ

製作   2015年 ドイツ

上映時間 116分

「帰ってきたヒトラー」予告編映像

 


マネーモンスター

マネーモンスター

2016年7月1日鑑賞

 

1%だけが儲かるシステムを吹っ飛ばせ!?

 

僕は会社を辞めた後、しばらく株のデイトレードにハマっていた時期がある。

1年目は散々な結果だった。なけなしの貯金は半分まで減った。

いろいろガチャガチャやってみて、自己流の勝ちパターンを見つけた。

それ以後「現状維持」だけはできるようになった。

株式投資をやってみて、わかったことが一つだけある。

株は「ギャンブル」だ。

「資産運用」などという「美辞麗句」に惑わされてはいけない。

もう一度言う。

株はまぎれもなく「ギャンブル」そのものなのだ。

パチンコやスロットなどより、もっともっとタチが悪いのだ。

僕のような個人投資家は、業界用語で「ゴミ投資家」と呼ばれている。

日本の株式を操っているのは、ご承知の通り、巨大な海外の機関投資家である。

決して日本の投資家たちではない。

僕は毎日、毎朝、株式相場が始まる前に、パソコン画面で各銘柄(会社の株をこう呼びます)の値動きや「板情報」と呼ばれる、その株の「売り」と「買い」の予約状況をチェックしていた。

朝9時前、市場はまだ開いていない。

しかしなぜか開始時間前から「買い」が殺到している銘柄がある。

不思議に思って、その会社の直近のニュースと四季報をチェックする。

さらにはチャート(株価の値動きを示す折れ線グラフ)を調べる。

おかしいぞ!?

「買い」を判断できる材料が何も見つからない。どうみたって「クズ株」だ。

9時。株式市場が開く。

途端にその銘柄は「ストップ高」!!

「買い」が殺到しすぎて値段がつかないのである。

その日の市場が閉まり、午後4時半ごろ。

異常な「買い」があった会社からニュースリリース発表。

その内容は、例えば「大規模リストラ決定」「工場撤退」いい場合は「特許申請」など。

会社の病巣を切り取ってしまえば「会社という患者」は快復する。

今後良くなる見込みが出てくる。

株取引の世界においては、従業員が安心して働ける環境など「戯れ言」である。

だから、ネガティブな情報でも、市場は好感度を持って、素早く反応する。

ではなぜ、この銘柄、この会社に、朝一番「買い」が殺到していたのか?

誰も知りえないはずの内部情報は、いったい誰が掴んだのか?

これを「インサイダー取引」でない、と断言する勇気は僕にはない。

誰かが情報をリークしたのだろう。

こんな例は、もうウンザリするほど毎日起こっている。

僕のようなアマチュア株トレーダーでも、こんな株式市場の現象は、何度も経験しているはずだ。

株式市場でうまく儲けるコツは、いかに有力な情報をいち早くつかむか!

それに尽きるのだ。

その情報を得るためには、有力な人脈のネットワークが必要だ。

素人投資家、一般人に、そんなネットワークや情報など望めない。

僕たちは、村上ファンドでもなければ、ホリエモンでもない。

情報が欲しければ、それに見合った巨額のアドバンス(前渡金)を準備しなければならないだろう。

そして今日も、我々ゴミ投資家の「なけなしの金」を株のプロたちが、ゴッソリかっさらって行く。

株式市場は、金持ちがさらに金持ちになるシステムの一つなのだ。

愚痴っぽい、長い前置きになってしまった。本当に申し訳ない。

さて、本作は、株情報番組「マネーモンスター」を見て株を買い、全財産を失ってしまった若者が自暴自棄になり、爆弾を持ってテレビ局に侵入。生放送中の当番組を乗っ取る、というお話。

テレビキャメラは、犯行の一部始終をリアルタイムで放送する。

これは犯人の要求なのだ。

ジョージ・クルーニー演じる主人公、リー・ゲイツ。

彼はこの「マネー・モンスター」という番組の、人気パーソナリティーだ。

犯人カイルは、ゲイツに爆弾入りのチョッキを着用させた。

彼の手は起爆スイッチを押し続けている。

カイルが指を離せば爆発する仕掛けだ。

その瞬間、キャスター、スタッフもろとも、スタジオは吹っ飛ぶ。

こうして、彼ら番組スタッフは、運命共同体にさせられてしまう。

もちろん警察の特殊部隊も動いた。

狙撃班がスタジオにこっそり侵入。犯人カイル、そして、ゲイツのチョッキに付けられた起爆用受信機をねらう。

警察幹部は特殊部隊の隊長に問いただす。

「生存率は?」

「まあ、80%ってとこです」

「低いな」

スタジオを仕切るのは、現場の女性ディレクター、パティ(ジュリア・ロバーツ)。

ゲイツはイヤホンをつけている。

ディレクターのパティは、犯人カイルに気づかれないよう、イヤホンでゲイツに指示を出す。

「犯人に話しかけて。時間をかせいで!!」

 

「マネーモンスター」は、司会者ゲイツの軽妙なトークが売りだ。エンターテイメントとして、番組を楽しませる工夫も盛りだくさん。

退屈な株情報番組ではない。

番組自体を1つの「ショー」として成り立たせている。

この番組が、高視聴率を稼いで、放送を続けてこられたのは、キャスターである、ゲイツの人気、番組構成、演出の面白さ。

何より重要なのは、ゲイツの情報の信頼性だったのだ。

だから一般ピープルは、パーソナリティーのゲイツを信じて、株を売買するのだ。

犯人カイルも、それを信じた。そして全財産を失った。

人気キャスター、ゲイツが勧めた銘柄は、なぜ大暴落したのか?

なぜ怪しい値動きをしたのか?

さて、犯人カイルはピストルを持っている。

もう一つの手には起爆装置。いつ爆発してもおかしくはない。

そんな緊迫した状況下、ディレクターのパティは、暴落した原因を探るべく、その会社幹部へ直撃取材をするよう、スタッフに指示を出す。

やがて取材班は、その会社のCEOが暴落の当日、不審な行動をしている、という情報をキャッチする……。

本作、ジョディ・フォスター監督の緊迫感溢れる演出、これはいいねぇ~。

キャスティングも秀逸。

軽妙洒脱なトークを操る人気キャスターに、ジョージ・クルーニーを据えたのは悪くない、というか大正解だろう。

ジュリア・ロバーツのディレクター姿も凛々しい。

アカデミー賞俳優たちの演技は、それはもう、ケチのつけようがない。

そんな中、僕が特に注目したのは犯人の若者カイル。

演じるのは、イギリス人の俳優、ジャック・オコンネル。若干25歳。

犯人ではあるのだけれど、思わず、応援、感情移入したくなるような、そんな演技の持って行き方がいいね。とても切迫感があった。

本作は「株」なんて特に興味がない、株の知識なんてない、という方にも十分楽しめる。もちろん株の基礎知識があれば、面白さは何十倍にもなる。

もう十分にお金を持っているはずなのに、それでも、さらに儲けようとする

「マネー」に取り憑かれた「モンスター」たち。

いまや株の売買は、優秀なコンピュータソフトによって、1,000分の1秒単位で「売り」と「買い」をこなしてしまうと言われている。

そうして巨人たちは「利ざやを稼ぐ」

また、そのような電子取引によって、市場が大変な混乱に陥ることもある。

(関連記事はこちら)

(アルゴリズム高速取引について)

こんなソフトを開発し、あるいはそれを購入して、利用できるのは巨大資本だけなのだ。

巨大な資本を持つ者だけが、より巨大で「おいしい」利益を享受できるのだ。

とり残されたのは、まさに99%の一般人たち。

もし巨人たちのシステムがクラッシュして、市場が大混乱に陥れば、実体経済へも影響は免れない。

長期的に見れば、景気さえも左右する。

そして景気後退の波に直撃されるのは、何の罪もない、一般市民だ。

悪くすれば職を失うだろう。

リーマンショックのとき、どれだけの人が、家を手放し、ホームレスになったか?

社会の底辺で最も弱く、市場とは何の関わりもない人たちが、最も深刻な被害を受けるのだ。

本作の中で、犯人の言動に、親近感を抱きはじめる視聴者、一般人たち。

彼らの眼差しを映し出すハンディカムの映像。

こんな「暴走するマネー主義」への異議申し立て、一般人の心を代弁したジョディ・フォスター監督に拍手を送りたい。

なお、参考までに、マネー資本主義に疑問を呈した

マイケル・ムーア監督の「キャピタリズム マネーは踊る」

また、マーケットは「成長し続けることが前提」という「幻想」は「そんなの、おかしいんじゃない?」と素朴な疑問を呈した

「シャーリー&ヒンダ ウォール街を出禁になった2人」

もオススメしておきたい。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ

監督   ジョディ・フォスター

主演   ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ

製作   2016年 アメリカ

上映時間 99分

「マネーモンスター」予告編映像


TOO YOUNG TO DIE ! 若くして死ぬ

TOO YOUNG  TO DIE ! 若くして死ぬ

2016年6月26日鑑賞

 

地獄にだけは…行きたく……なるかも?!

 

地獄というやつは、どうしてこう、想像力を掻き立てられるのだろう?

それに比べて、天国というやつは、どうして平和すぎて、人間には退屈なのだろう?

古くから多くの画家や宗教家、作家などが、地獄の恐ろしさ、むごたらしさを「さも、見てきたかのように」描いて見せた。

日本では、あの紫式部が、宮中でお披露目された「地獄絵」が怖くて見られず、後で「からかわれた」などというエピソードがあるらしい。

西洋だと、僕が心惹かれるのはヒエロニムス・ボス。

「快楽の園」という、3枚続きの祭壇画がある。左側には神様の領域を描く。これがなんとも退屈である。

しかし、誰もが惹きつけられてしまうのが右端の一枚。地獄絵である。

暗闇の中に、妖しく映る地獄の炎。

その明かりに照らし出される、異形の怪物たち。

その造形の見事さ、想像力のたくましさに圧倒されてしまう。

ヒエロニムス・ボスの、絵描きとしての力量、飛び抜けた才能の確かさが、うかがい知れる作品である。

もちろん、日本の絵師たちも負けてはいない。

国宝「地獄草紙」などは、鬼たちが今にも絵巻物から飛び出してきそうだ。

その描写力は、紫式部を間違いなくビビらせるだろう。

では、テクノロジーの発達した現代ではどうか?

総合芸術とされる、映画や演劇。

描かれる対象物は、常に動きを伴い、音楽も提供される。

映画に至っては「編集」というマジックによって「室内」から「宇宙空間」へも、瞬間移動可能なのだ。

現代に生きる「表現者」ならば、こういった、有り余るほどのテクノロジーを利用できる。

ならば、地獄描写など簡単に料理できるはず……と思ったら、とんでもなく痛い目に会うことは明らかだ。

本作は宮藤官九郎さんの脚本・監督作品。

彼らしく、かなりぶっ飛んだ設定。それにやたらと挑発的で、パンクっぽい表現になっている。

主人公の高校生は、旅行の最中、実にくだらない原因で乗っていたバスが転落。命を落としてしまう。目が覚めた時、彼は地獄にいた。

「なんでオレなんだよぉ~、好きな子いたんだよぉ~! まだ、キスもしてないんだぜ!」と彼は地獄の住人である、鬼相手に不満をぶちまける。

地獄では毎週、閻魔大王の裁きが行われる。

誰を畜生道や、餓鬼道、あるいは人道へ行かせるか、決めるのである。

主人公たちは、ここで何度も裁きを受けて、ある時は鳥のインコになり、ある時はカマキリにさせられたりと、輪廻転生を繰り返す、という物語。

支離滅裂を装ってはいるが、そこは「クドカン・ワールド」である。ちゃんと、映画作品として、押さえる部分はおさえて作ってあるので、辻褄は合う。

ラストシーンに至っては「これは予定調和なんじゃないの?」「クドカンらしくないのでは?」と首を傾げたくなるほどだ。

本作で描かれる地獄。

ツラ~い「責め苦」がありそうなものだが、そんなのそっちのけで、主人公や鬼たちは仲良く「部活」みたいなノリの良さで、ロックバンドをやっている。

ライブハウスさながら「バンド合戦」があり、これに勝つと人間界へ戻れるという設定。

それはなんとも楽しそうなのだ。

不謹慎なんだけど、天国みたいな、つまんないところにだけは行きたくない、と思わせてしまう。

小綺麗な高級レストランよりも、あえて薄汚れた居酒屋を好むようなものである。猥雑で、いろんな人が「生老病死」の定めのもと「四苦八苦」を抱えながら、いろんな生き方を紡ぎ出している。

その悶え苦しみながらも、生きなければならない「人間の可笑しさ」にまでたどり着けるのなら、表現行為や、芸術も捨てたもんじゃない。

その格好の例が落語の「地獄八景亡者の戯れ」である。

恐ろしいはずの地獄を、ここまで笑い飛ばしてしまった、先人たちの生きるたくましさに、僕は思わず頭を垂れたくなるのである。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   宮藤官九郎

主演   長瀬智也、神木隆之介、尾野真千子

製作   2016年 

上映時間 125分

「TOO YOUNG  TO DIE ! 若くして死ぬ」予告編映像


奥付



2016・7月号映画に宛てたラブレター


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著者 : 天見谷行人
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