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彼がその身に背負うもの6

西山君の部屋。

 


「・・・」


「西山君?」
「木村さ・・・もり・・・・・・、森井さんが、戻ってきた」
「え?ホントに?」
「なんか、様子が・・・」
西山君が起き上がる。

「どうしたのさ?

じゃあ俺、今見てくるよ」

「俺も行きます」
「もう大丈夫なの?」
「なんとか。
だいぶ身体も楽になったんで。すいません、迷惑かけちゃって」
「大丈夫ならいいんだけどさ」

二人で部屋を出て
一階のHIDEAWAYに行く。




--



「あれ、西山、もう大丈夫なの?」
「あぁ。


三沢さんも、どうもすみませんでした」

「いいよいいよ。それよりもう大丈夫?」
「はい、なんとか」


「で、なにしに来たの?いきなり」
春が聞く。

「あのさ、森井さん来た?」
木村さんが言った。

「あぁ、さっき戻ってきて
花梨ちゃん探すってまた出ていきましたけど」
「じゃあ今いないのか・・・。だって、西山君」

「でも、声、すぐ近くで聞こえてるんですよね」

「じゃあまだ近くにいるんじゃない?探してみようか」
三沢さんが言った。
「じゃあみんなでとりあえず手分けして」
外に出ながら、木村さんが言った時だった。

何かふと気になって、屋上を見た。


「あっ」

「え?」
「春・・・・・・屋上」
「屋上?・・・・・・あ」
「え?立入禁止でしょあそこ!」
木村さんが言う。
「なんであんなとこにいんの」

「ってか、柵・・・」
三沢さんが呟いた。


「やばっ。これやばいって!


花梨ちゃん!!!!」


春が思いっきり叫んだ。


声が聞こえる。


下から。




「花梨ちゃん!!!」



後ろからも。



後ろを振り返った時だった。



森井さんの顔が見えた途端
私は何かに引っ張られた感覚に襲われた。






柵が、外れた瞬間だった。


落ちる。





そう思ったとき
森井さんが私の手を掴んでくれた。

まるでドラマのようだった。


「森井さんっ」

「はぁ・・・はぁ、はぁ・・・。
花梨ちゃん・・・手、離すなよっ」


「は・・・はいっ」


でもドラマと現実は違う。


「森井さん!!!!」
下で、春川さんたちの声が聞こえた。



「あかんっ」

落ちかかってる人を支えるのは半端なくつらい。
ドラマのように、そのまま引き止めて上に持ち上げることができない。


いつの間にか

自分の身体も下に引っ張られていた。

「森井さん。

離してください」


「何言うてんねやっ・・・待って
なん・・・なんとかっ・・・あっ」
また引っ張られる。

 


限界や。


あぁ俺も落ちる。
今、たとえ
花梨ちゃんの手を離したとしても。
絶対、離さへんけど。



そして俺らはこうなった。
生きるか、死ぬかの瀬戸際。


助かりたいと思うわがまま。
助けてあげたいと思うわがまま。


あぁ


飛ぶことができたなら。
この羽が、羽ばたいてくれたなら。

最後までわがままなのはわかってるよ。

この際や
俺も助かりたいって言うわがままを

やめよう。

今まで散々我がまま言うてきた。
自分勝手やった。

認めるよ。

差し伸べられた手を
自分から避けてきた。


こんな俺に
花梨ちゃんは
また手を差し出してくれた。
俺のわがままに愛想つかさんと
とことんわかろうとしてくれてた。

なのにまたわがままで突き放した。

それでこうなってしもうたんや。

 


せやろ?神様。

 

 


もう、俺のわがままは最後にする。



俺はどうなってもええよ。

綺麗事かもしれへんけど。

俺は死んでもええから。

花梨だけは
花梨ちゃんだけは助かってほしい。



最後のわがままや。
自分のためのわがままやなくて
大切な人のための
最初で最期のわがまま。

頼むから。






瞬間、強い勢いで
下に引っ張られた。



 



頭が真っ白になった。
その後何がどうなったのかなんて
なんもわからなかった。

 

 


この本の内容は以上です。


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