閉じる


始まりは幼少期

 ここはとある施設。そこには様々な理由で親がいない子供達が預けられていた。そこに

一人の男児がいた。

 まだ九歳の男の子。その男の子には名前がなかった。どうやら生まれてすぐに

親に捨てられ、偶然この施設の人に拾われ、それからここで暮らしていた。

 なので本当の名前はわからないが、その拾った人が親代わりになり彼に

勇士(ゆうし)と名付け、その彼女は彼を育てる事にした。そうして彼は麻倉勇士という

名前をつけられた。

 それから一年経ち、十歳になった勇士には気になる女の子がいた。その子は

勇士と同じで親に捨てられ、ここに預けられた様で、その子はそれがトラウマに

なっており、人が嫌いになっていて、施設の中でも誰とも接していなかった。

 

 ある時、その子を見た勇士は気になり声をかけるが返事をしてもらえず

声をきけなかった。

 でも、いつも一人でいるこの子がかわいそうと思い、相手には

されないとわかっていていても毎日声をかけ、そばにいるようになった。

 それから少しずつその子は勇士との距離が近づき、一緒に

食事ができるまでになった。二人はずっと一緒にいて、寝るときも

勇士の部屋に呼び、一緒に寝る様になった。そして、ある日その子が

他の子供達にいじめられているのを勇士が見てしまい、その子を

守るためにいじめていた子達とけんかをした。すぐに施設の人が

止めて収まったが、勇士は少しけがをしていた。

 それを見てその子は泣きながら初めて声を出した。

 

 「ごめんなさい」

 「大丈夫。これくらい平気だから」

 

 勇士は初めて声が聴けてうれしくなり笑顔で返事をした。それから

その子は勇士を信じる事になり、勇士もその子に返事をした。

 

 「僕がキミを幸せにする」

 

 そうして二人は恋人同士になった。もちろんその子はまだ勇士以外の

人は信じれないので、ずっと勇士にくっついている状況が

続いた。

 そんなある時、勇士の義理の親である麻倉洋子が二人と

一緒に食事をしているときに聞いた。

 

 「勇士、その子の名前聞いた?」

 「!?そういえば聞いてなかった。ねぇ名前教えてくれる?」

 「えっとね、覚えてないの。ここに来てからずっと

怖かったから、全部忘れたくて」

 「そっか。どうしようお母さん」

 「そうね。それならあなたも私が面倒を見てあげるわ。それなら

二人も一緒に入れるし。そのほうが勇士もいいでしょう」

 「うん。でも、それだと僕達、その」

 「何?」

 「け、結婚できるのかなって」

 「あら、結婚するの?」

 「う、うん。僕がこの子を幸せにするって決めたんだ」

 「そう。それなら勇士と一緒じゃダメね。それなら、私が預かってる

という風にすればいいわ。それなら同じ家族じゃないから二人は

結婚できるわよ」

 「うん。それがいいよ。いいよね、えっと」

 「うん。私も勇士くんとなら一緒になりたい」

 「ありがとう。めぐみちゃん」

 「めぐみ?」

 「うん。キミの名前。これからずっと恵まれるようにって僕が

考えたんだけどどうかな?」

 「勇士くんが決めたならそれでいい。ありがとう」

 「じゃぁあとは苗字だね。私達と一緒じゃダメだから、違うのに

しないと。勇士、何かある」

 「そうだね。それじゃ天宮(あまみ)めぐみでどう」

 「うん。私はそれでいいよ」

 「そうね。綺麗な名前ね。じゃぁ今日からあなたは天宮めぐみちゃんね」

 「あの、よろしくねめぐみちゃん」

 「うん。勇士くん」

 

 こうして彼女は天宮めぐみという名をつけられた。それから洋子に

学校に行こうといわれ、洋子は二人を自分の家に連れていき

施設を出て行った。洋子はそのままそこで働いているが。

 勇士とめぐみはちゃんと勉強はしていたので、学力は問題

なかった。洋子は二人の事を市役所にも通わせる学校にも説明し

事情をわかってもらい入学させてもらえることになった。

 そうして、二人は小学校に入り、卒業し、中学校になったが

めぐみはまだ人見知りがあり、それでやはりクラスで小さいが

いじめもあった。

 

 そんなある時、めぐみはとうとういじめが悪化してきた事に

耐えられなくなり、授業中に飛び出してしまった。

 

 「めぐみ!?」

 

 同じクラスの勇士が後を追う。めぐみは屋上に行き、そこから

飛び降りようとした。策を超え、今にも飛び降りようとしていたが

勇士がギリギリそれを止めた。

 

 「めぐみダメだよ」

 「嫌、もう耐えられないの!私は必要とされてない。どこにも

居場所はないよ」

 「あるよ。僕の側が!!ずっと一緒にいるって約束したでしょ」

 「そうだけど!でも」

 「大丈夫。僕が守ってあげるから!絶対、一人にしない。だから

死なないで」

 「勇士」

 

 めぐみはとどまった。泣きながら勇士に抱き着き、勇士もずっと

めぐみを離さなかった。

 二人はこの事を先生達に話、いじめていた生徒達は処分を

受け、二人には近づかないと決められた。

  

 二人は少ししてから落ち着き、普通の暮らしに戻っていた。

 

 そんなある時、勇士がめぐみに話を持ち掛けた。

 

 「ねぇめぐみ、一緒に音楽やらない?」

 「音楽?それならよく一緒にしてるじゃん」

 

 二人は施設に居た時から音楽をしていた。それは楽しいことで

嫌な事を忘れようとしていたからだ。それでそこにあったピアノを

洋子から教わり、勇士が演奏し、めぐみが歌っていた。

 勇士は部屋でテレビを見ていて、とある音楽番組を見て

ミュージシャンになりたいと思った様だ。

 

 「うん。それをさ、本気でやってみようよ。ようはプロのミュージシャンに

なるってことなんだけど」

 「プロ?私達が?」

 「うん。一応、基礎はできてるんだしさ、そこから本格的に

やろうって思って、今、それの勉強してるんだ」

 「う~ん、ゆうがそうしたいならいいけど、私できるかな。人前で

歌うの」

 「大丈夫だよ。僕が側にいるんだから」

 「そうだね。ちょっと不安だけど、ゆうと一緒ならなんでもいいよ!

ゆうがずっと一緒なら」

 「うん。じゃぁ二人で頑張ろう。それで、母さんを楽させよう」

 「わかった。私も頑張る」

 

 こうして二人は音楽の道を歩くことになったのだ。

 


意外な場所でスカウト?

 麻倉勇士と天宮めぐみは中学三年になった。来年は高校に行くのだが勇士は悩んでいた。

 それは、めぐみと一緒の学校に行くべきかどうかだ。それというのも、めぐみは

学校ではどうか一人でいるが、それでも休み時間はいつも一緒にいる。勇士は

それでもいいのだが、めぐみの為を思うと、自分がいなくても一人で何かをできるように

なってくれればと思っているので、最悪は別々の高校にしたほうがいいと母親にも

話していた。

 でも、まだ春なので時間はあるからと、勇士はその事を保留にしていた。

 

 その勇士とめぐみは、とあるピアノのコンクールに出ていた。二人は音楽を

やろうと決めてから一緒にピアノを練習していた。

 やりたいのはJ-POP系だけど、基本や他のジャンルも勉強だと

クラッシックなども練習していて、二人はすでに一流の腕前になっていた。

 それも、二人は勉強もできるので飲み込みが早いからだ。

 

 それで、ライブもしたいが、さすがにいきなりできるわけはないので

それならと、ピアノのコンクールに出て、ステージで演奏する軽軽を

得ようとしたのだ。

 それらを積み重ねていくうちに、二人はその関係では少し名前が

知られるようになっていた。

 

 ――

 

 そんなある時、二人が一緒に出たコンクールで男子の部と女子の部で

二人は優勝をして、控室で帰る準備をしていた。

 すると、そこに二人に客がやってきた。

 

 「お邪魔します!あらっ!二人いる」

 「本当だ。ちょうどいいな。なぁ社長」

 「そうだね。キミ達、少しお話ししてもいいかな?時間があればだが」

 「えっと、あなた達は?」

 「これは失礼。私はこういう者だ」

 

 と、三人の前に居た、男前の人が名刺を勇士に渡した。そこには

N・Rレコードと佐藤孝志(さとうたかし)社長と書かれていた。

 勇士はわかった。この人達がレコード関係の人だと。

 

 「あの、本当にレコード会社の人なんですか?」

 「もちろん。ただ、まだ新設なのでね、名前は知られてないんだ!

まだ、うちの専属アーティストもいないしね。それで今、色々な

場所で人材を探していたんだ」

 「そうそう。それでね、学生で音楽をやってて、腕のある子を

探そうってことになったの」

 

 社長が話してるところに割り込んできたのは女性で、この

会社でのデビューが決まったら、そのアーティストの

マネージャーをやる予定の阿部みなみだ。

 

 「それで、どうしてこんなところに?」

 「それはね。こういうコンクールに出てる子なら腕はあるし

音楽でやっていきたいって子が多いと思ったのよ。だから

そういう子をスカウトしにきたの。それでここにきて皆の

演奏を聴いていたの」

 「そこで、私はキミ達二人の演奏に光る物を感じた。しかも

しっかりと優勝もしてくれた。だから二人に声をかけようと

最初に麻倉くんを訪れたんだが、二人はもしかして恋人関係

なのか?」

 「そういえばその子、天宮めぐみちゃんだっけ?さっきから

麻倉くんに抱き着いてるみたいだけど」

 「えっと、これはちょっと事情がありまして。まぁ僕達は

恋人同士です。少しわけがありますけど」

 「わけか。それは後で聞かせてもらうとして、どうかね?二人は

うちでメジャーデビューしてみる気はないか?キミ達なら必ず

売れると私は信じているよ」

 「それはうれしいです。僕らもメジャーデビューしたいと思って

音楽をやってきたましたので」

 「そうなの?じゃぁどうしてライブじゃなくてコンクールに?」

 「それは、僕達中学生じゃライブをしたくてもすぐには

できないだろうし、でも、それでもステージで演奏する経験は

したいと思って、それでこういったコンクールに出ようって決めたんです」

 「なるほど。これもいい経験だものね。社長、この子達大当たり

ですよ」

 「わかってる。あとはこちらがどう宣伝するかだ」

 「そうですね。それに力を入れればミリオンもいけるかもな」

 「うん、いけるよ!二人共、うちでデビューするってことでいいよね?

他の処に行かないよね?」

 「それはいいんですけど、僕らまだ中学生ですので、色々

やらなきゃいけないんですけど」

 「それはわかってるよ。それはこちらでも手を貸していくからキミは

デビューするかどうかを決めれるようにしておいてくれ」

 「わかりました。あの、よろしくお願いします」

 「やったぁ!よろしくね。私はキミ達のマネージャーをする

阿部みなみよ」

 「俺はプロデューサーの大神宗一(おおがみそういち)だ」

 「私は社長の佐藤孝志だ。麻倉くん。天宮くん。これから

よろしく頼む」

 「ハイお願いします」

 

 こうして二人は意外な場所でスカウトされた。社長達は帰る途中

めぐみが一度も勇士から離れなかった事と、一度も声を出さなかった

事が気にかかっていたが、二人のデビューが決まり、会社としても

安堵していた。

 その夜、勇士はこの事を母親に話、デビューする事を応援

してくれることになった。

 

 


二人のデビュー場所が決定する

 麻倉勇士と天宮めぐみは引っ越しをしていた。それは、デビューが決まりその会社に

近い場所にいたほうが便利なので、二人は洋子に許可をもらい、二人で

暮らすことを決めた。

 それが中学の冬の頃で、来年二人は高校生になる。その高校も一応

通うことにしているので、家から少し離れた場所を選んだ。勇士はめぐみと

一緒の学校に行くことにした。最初はめぐみの為に一人で通わせようと考えたが

これからデビューして一緒に仕事をするので離れているより一緒にいたほうが

いいと言われたので同じ学校を選んだ。

 

 二人のデビューは春頃の予定で、それまでに会社が色々売り込みをする。

 

 勇士は曲を作り、めぐみは歌詞を書く。そのスタイルで活動をし

曲ができたので二人は社長を含めて皆に聞かせていた。

 

 ここは会社のスタジオの中。そこで勇士ができた曲をまだ歌は

ないが聞かせていた。

 

 「うん。いいじゃない」

 「ああ、完成度はいいな」

 「確かに。だが、少しできすぎてる感じはあるな。これを客が

わかるかどうかだが」

 「そうですね。でも、これに歌が入ればわかりやすいんじゃないですか?」

 「そうだな。あとは歌次第か」

 「ゆうくん。これ歌詞はできてる?」

 「一応できてるよ。ねぇめぐみ」

 

 めぐみはうなずいた。ソファで座っている勇士に抱き着いているめぐみは

歌詞がかいてある紙をマネージャーの阿部みなみに渡した。

 

 「これがめぐちゃん歌詞か。意外っていうとあれだけど、かっこいいね」

 「どれどれ。ほう、こんな感じを書けるのか」

 「確かに、意外だな」

 「どうですか?めぐみの歌詞。一応、それに合わせてはあるんですけど」

 「まぁそれは聞いてみてからだな。天宮くん。歌ってくれるかな?」

 

 社長に言われ、とりあえずうなずくめぐみ。一応、皆は二人の事は

勇士から聞いており、めぐみの事も理解していた。

 だからあまり無理には言えなかったが、少しずつめぐみも返事を

してくれるようになっていた。めぐみは隣の部屋に入り、歌う準備を

する。勇士がマイクの前に座り、めぐみに声をかける。

 

 「大丈夫めぐみ?」

 「大丈夫。ゆうがいるから」

 「うん。じゃぁめぐみのタイミングでいいからね」

 

 そうしてめぐみは手をあげ、それに合わせて勇士が曲を流す。めぐみの

歌を聴くのは阿部達も初めてなので楽しみにしていた。

 そして、めぐみが歌いだした。その歌声に阿部達は驚いた。元々

綺麗な声をしているので、ある程度うまく聞こえるとは思っていたが

ここまで透き通った声とは思わず、聞き入っていた。

 曲が終わり、歌い終わるめぐみが部屋から出てきて勇士に

抱き着く。

 

 「お疲れめぐみ」

 「うん。どうだった?」

 「よかったよ。やっぱりめぐみの声は綺麗だね。ずっと聞いていたく

なるよ」 

 「ありがとうゆう」

 「うん。めぐちゃんすごいよ!これなら行けますよね社長」

 「ああ。予想以上だ。これに麻倉くんの曲とですごい歌になるだろう!

あとは二人のパフォーマンス次第だ」

 「そうですね。まぁゆうくんが後ろで演奏して、めぐちゃんが前で

歌うのが二人組のセオリーだけど、二人はどんな風にやりたい?」

 「あの、私はゆうが前に出てくれるほうがいいです」

 「お!めぐちゃんが提案した。それってめぐちゃんが後ろに入る

事になっちゃうけど」

 「えっと、正確には隣同士で並んで歌いたいです」

 「そういうことね。確かに後ろよりは横にいてもいいかな。まぁそれだと

普通はギターの人となんだけど、キーボードでもありかな」

 「うん。僕もめぐみの隣にいたいからそうしたいな」

 「なぁ、それはいいが、お前たちが恋人同士ということは公表

するのか?」

 「確かにそうですね。後でスキャンダルになるよりは最初に発表した

方が印象はいいかも」

 「それは、二人が決めることだな。どうする麻倉くん」

 「ハイ。それは公表します。どこでするかはデビューが決まってから

ですけど。隠し事は嫌いなので、なるべく話しておきたいです」

 「そうか」

 

 そんな感じで二人の事は公表することになった。まぁそれも二人が

売れるかどうかでもあったが。

 

 それから時間が経ち、二人は無事に高校にも入学し、その間に

曲が完成し、二人のユニット名も決まり、あとはデビューするのを

待つだけだった。

 そうして、CDが発売する一か月前、二人は初めての雑誌の

取材をしたりしていた。それは、阿部達が色々と売り込みをして

色んな所で曲を流してもらっており、それが噂になり二人の

事が広まっていたからだ。

 

 そして、二人が初めてメディアに出る場所が決まった。それは、今

一番人気のある歌番組だった。

 

 


この本の内容は以上です。


読者登録

凍夜さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について