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目の前の男が飽きもせずダメ出しをし続けている。

ダメな男ほど、ダメ出しが大好きで、褒められるのが大好きだ。
別に男に限ったことではないけど。
 
年上の男がキライだ。
頭ごなしに偉そうにものを言う。
自分の気に入らないことは全部ダメ。
 
偏見にも程があるけれど、昔、苦い経験をした。
苦いというか、マズイというか、こればかりは、人間関係何周しても、赦しの時は来ないだろうと思う。
 
18の時に、初めて彼氏が出来た。
お互い、付き合うということが初めてで、恐らく、【付き合うということ】をしてみたかったのだろう。
愛も好きもなかったと思う。
振り返っても、彼のどこが好きで、何に愛情を持っていたのかわからない。
多分、恋人という形に憧れていたのだと思う。
残念なことだ。
 
今だったら、恋人間のDVになるかもしれない。
毎日、電話をかけることを強要され、毎日の手紙を書かされ、話すこともない、書くこともない。
内容がなければ文句を言い、届かなければ文句を言い、意味がわからないまま、時間だけ過ぎた。
今なら携帯やメールのチェック、大変なことになっていただろう。
考えるだけで背筋が寒くなる。
 
束縛も酷かった。
女友達と出かけることさえ許可が要り、電話で20分足止めをくらい、
駒場寮の公演は途中から入って立ち見になり、席が空くことはなく友達を二時間立たせることになった。
 
夏休みはいつ会えるのかという。
夏期講習の予定でいっぱいで、「何日と何日なら」というと、「オレを置いて◯◯と机並べて夏期講習かよ」ガチャンと受話器が切れた。
震えた。
せっかくお金を出してもらった夏期講習なのに、怖くて行けない。
 
そんなことをしているうちに、遊び仲間も勉強の仲間も潮が引けていくように、去っていった。
 
ますます煮詰まっていく。
逃げ場はなくなり、追い詰められていく。
一度など、仲の良い年下の男友達を呼びつけて、お茶でもして仲良くなるつもりなのかと思ったら、
「おめでとうとかなにもいわねぇのかよ」とビンタを食らわせていた。
さすがに止めてよと叫んだ。
 
どうして気づかないんだろう。
どうして相手が目を覚ますと思っていたんだろう。
どうしてここで私が離れたら彼が孤立してしまうと自分を責めたんだろう。
 
孤立なんてさせておけばいいのに。
 
何も手につかなくなって、当然のことながら、その年は大学に受かることはなかった。
二回目の浪人が決まって、五月頃程なく別れた。
1年くらいの出来事だったろうか。
不思議なことに、泣いた。
何に泣いていたんだろう。
そうだ、清らかを捧げたから、結婚すると思っていたんだった。
そして、それが終わったから、泣いたのだ、多分。
 
そこから一気に叩き込んで、大学に滑り込み、
そこでも、騙されたり、全く、何が何やら。
 
でも、その先に愉しい彼氏もいた。
その先に穏やかな彼氏もいた。
 
目の前の男は飽きもせず、まだダメ出しを続けている。
(好きだねぇ)
こちらが半分真剣に、でも半分は呆れながら聞いているのに気づかない。
(今のこの状態が脇が甘いっていうんじゃないか?)
半分吹き出しそうになりながら、取り留めもないお説教を聞く。
 
私は年上とは付き合わないと決めている。
同じ年でも微妙だ。
きっと年上にも、キチンと話が聞けて、褒めあうのが上手な人もいるだろう。
でも、もう、一つの可能性として、危険は廃除する。
 
我が家で待ってる彼氏だって年下だもの。
ダメ出しされることもあるけれど、まあ、硬いのか柔らかいのかわからない心のクッションで、よしとする。
結婚生活は闘争。
まあまあ、時にはケンカして愛を深めればいいと思う。
 
ダメ出しはまだまだ続く。
手のひらサイズのかわいさで。

この本の内容は以上です。


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