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美緒の近況について、今初めて知った。父親を亡くし、どのような生活をしているか心配していたが、先輩の家に下宿していると聞いて、安心した。「へ~、よかったじゃないか。先輩から勉強も習えて、一石二鳥だな。頑張って、合格するといいね」二人が話に没頭していると話を中断するかのように中年の女性店員が天丼セットを美緒の前に置いた。店員は、美緒の内腿をチラっと覗き、カウンターに引き上げていった。

 

 

 

 沢富も美緒のピンクの超ミニスカートが気になっていた。モリモリっと突き出した大きなお尻は、ミニスカートをさらに短くしていた。歩いていても時々赤パンが見えるほど短かった。ましてや、横座りをすれば、赤パンが丸見えだった。今流行りのミニスカートとはいえ、あまりにも煽情的と思えた。沢富は、ミニスカートのことを指摘しようかとも思ったが、オジン臭いと言われるのではないかと思い、そ知らぬ顔をしていた。でも、能天気な美緒の笑顔を見ていると、なんだか心の底でつぶやいてしまった。

 

 

 

あの時の中年女性店員の顔つきからして、一瞬固まった感じで、軽蔑したようなまなざしが見受けられた。おそらく美緒のミニスカートにあきれ返ったに違いない。見せパンという奴だろうが、ここまであからさまに見せるのは、いかがなものか。やはり、男にとっては、目の毒だ。俺もチラっと赤パンを覗き見ただけで勃起してしまった。でも、美緒は、男性にチラっとパンツを見せたがっているのかもしれない。

 


 

美緒は、満面の笑顔で沢富に声をかけた。「サワピ~、絶対、おいしいっていうから。特に、佐賀のお米は、最高だから。いただきま~す」美緒は、ざるそばのつゆの器を左手に取り、ワサビをほんの少しお箸の先でつまみ、ササッとかきまぜた。「サワピ~も、さあ」沢富も笑顔を作り、お箸を手にすると、天丼の器を右手に取った。タレのついたご飯を一口食べた沢富は、初めて体験するまろやかな触感に感動した。「うまい、確かに、美緒の言う通り、こんなにおいしいごはん、初めてだ」

 

 

 

 無心に蕎麦をすすっていた美緒は、ひょいっと顔を持ち上げ、ニコッと笑顔を作った。「そういうと思った。バリ、まいう~でしょ。福岡のお米もおいしいけど、佐賀のお米もおいしいのよね~。こんなにおいしいお米は、東京にはないでしょ。サワピ~、東京になんか帰らずに、ずっと、福岡にいなよ。住めば都っていうじゃない。田舎暮らしも慣れれば、最高だと思うんだけど。サワピ~」

 

 

 

 田舎暮らしにも慣れてきた沢富は、糸島に引っ越してきてもいいように思えてきた。「そうだな~、空気のいい田舎暮らしもいいよな。東京は、楽しいけど、体にはよくないから。アメリカでは、東京オリンピックにボイコットしてるみたいだし。そうだよな~、放射能オリンピックだなんて、前代未聞だよ。一体全体、何を考えて、放射能に汚染された東京になんかに。さっぱり、理解できない」

 


 

 美緒は、ぶつぶつぼやく沢富にお構いなく、エビ天にがっついていた。エビ天を引きちぎって、口をモグモグさせているとゆう子の笑顔が頭に浮かんだ。「サワピ~、今度、先輩を紹介するわね。チョ~、かわい~んだから。鼻の下をのばさないようにね」沢富は、熊本地震による川内原発への影響を考えていたが、かわい~と聞いて、目をぱちくりさせた。「ほ~、そんなにかわいいのかい。楽しみだな~」

 

 

 

 お茶をすすった美緒は、沢富のスケベ心を覗き見たかのように、ニヤッと微笑んだ。「興味あるでしょ。かわい~、ってもんじゃないんだから。グラドルよ。結構、有名なんだから、レオタード姿、ユーチューブで見たことあるかもよ」沢富は、グラドルと聞いて、ますます興味がわいてきた。「グラドル、レオタードね~~、ほ~~」沢富は、見たことがあるかもしれないと思ったが、はっきりとは思い出せなかった。

 

 

 

「ゆう子さんか、とにかく会ってみたいものだ。でも、美緒の先輩に、グラドルがいるとは、驚いた」美緒はもっとゆう子を自慢することにした。「グラドルで、ファッションモデルで、女優なんだから。きっと、すぐにTVドラマにも出れると思う。ゆう子先輩、チョ~~かわい~、ガンバ」沢富は、美緒の誇張に面食ってしまった。こんな田舎にグラドルがいるとは、夢にも思わなかった。二人は、食事を終え、すぐ近くのどんぐり村で遊んで帰ることにした。

 

 

 


 

                            焼身自殺 

 

 ひろ子の素性をあれやこれやと考えるようになってから、ますますひろ子のことが気になって、夜も眠られなくなった。ひろ子の素性を探る前に伊達に相談することにした。水曜日、仕事が引けるとサンセットロード沿いにあるイタリアンレストランに伊達を誘った。二見ケ浦海岸を一望できるレストランは、目の前に夫婦岩を見ることができる小さな丘の上にあった。こんなに眺めのいいレストランに誘ったということは、このレストランでJKと食事をしたに違いないと伊達は思った。席に着いた伊達は、皮肉を言いた。「ほ~、いい店、知ってるじゃないか。ここでJKと食事したってことか」

 

 

 

 伊達の一言に真っ赤になった沢富であったが、気を取り直して話を切り出した。「今日は、ちょっと、相談があるんです。ひろ子さんのことで」伊達も、一度、じっくりひろ子の素性について話し合いたいと思っていた矢先だったので、身を乗り出して返事した。「なんだ、ひろ子さんのことって」沢富は、何をどう、相談すればいいか迷ったが、とにかく、美緒から得た情報を報告することから始めることにした。「美緒から聞いた話なんですが、どうも、栗原はある女性と時々ゴルフに行っていたようなんです」

 

 

 

伊達は、女性と聞いて、身を乗り出した。「ほ~、それで」沢富は、話を続けた。「その女性というのが、もしかして、ひろ子さんじゃないかと。というのはですね、ひろ子さんの趣味は、カラオケとゴルフなんです。どう思われますか?」伊達は、腕組みをすると唸った。「う~~、そうか。やっぱ、ひろ子さんは、ただものじゃないってことか」沢富は、問い返した。「ただものじゃない、それは、一体どういうことですか?」

 


 

伊達は、自分の邪推を話す決意をした。一度、沢富をじっと見つめると、話し始めた。「今から話すことは、あくまでも、俺の邪推だ。気を悪くするな」沢富は、きりっとした目つきで、ゆっくりうなずいた。「本当に、悪く思うな。ひろ子さんは、もしかして、工作員かもしれん。ほら、耳にしたことがあるだろ、CIAが警察内部にもいるってことを。ってことは、一般人の中にもCIAが潜んでいるってことだ」

 

 

 

コクン、コクンとうなずいた沢富は、ひろ子が覚せい剤の取引にかかわっているとにらんでいたが、工作員だという発想はなかった。思ってもいなかった邪推に度肝を抜かれた沢富だったが、二見ケ浦海岸を窓越しに一瞥すると、伊達の顔をギョロっと睨み付けた。伊達は、喧嘩を売られるんじゃないかと、一瞬身を引いた。「そういう見方もあったんですか。工作員ですか。そう考えると、覚せい剤取引ともつながってきますね。なるほど、覚せい剤取引を主導していたのは、ひろ子かもしれませんね」

 

 

 

伊達は、沢富が冷静な判断をしたことにほっとした。「そう思うか。そこでなんだが、覚せい剤取引のことはさておいてだな~。俺は気になっていることがある。今回の大統領の広島訪問だ」伊達は、眉間にしわを寄せた沢富の顔を覗き込んだ。大統領と聞いた沢富は、ポカンと口を開けてしまった。ひろ子の笑顔を思い浮かべた沢富は、伊達の言わんとすることがさっぱりつかめなかった。「いったい、どういうことですか?大統領とどんな関係が?」

 



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