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「分かった。今日は、ありがとう。早速、美緒、おすすめのおいしい蕎麦屋に行ってみよう。道案内、頼む」美緒の顔に笑顔が爆発した。「ヤッタ~、うれし~、三瀬方面なの。道案内はまかせて」二人は、ハスラーに飛び乗り、国道を天神方面に向かった。産の宮を右折して南下し、大野城線に突き当たると左折して、末永交差点を右折した。くねくねした糸島峠を越えると三瀬トンネルを通り抜けて三瀬峠をひたすら走って行った。

 

 

 

 運転中でも、沢富の頭は、蕎麦のことよりひろ子のことで頭がいっぱいだったが、美緒の声で意識は目の前の看板に向けられた。「あそこ、小さな看板に、無声庵、って書いてあるとこ。そこが入り口」沢富は、急ブレーキをかけて徐行した。小さな入り口をゆっくり左折すると、左側に5台ほど止められそうな小さなパーキングがあった。「ここでいいんだな」沢富は、白のBMWクーペの横にハスラーを止めた。

 

 

 

 店の中に入るとBMWの客人と思われる中年の夫婦が窓際のテーブルで蕎麦を食べていた。勝手知った美緒は、沢富を案内するように角の窓際のテーブルに向かった。その時、窓際の中年男性は、何気に、二人をチラっと見た。そして、エビ天をくわえていた中年男性の目は点になり、蝋人形のように固まった。きっと、美緒のミニスカートからチラっと覗いた赤パンが目に飛び込んだに違いなかった。

 


 

先に美緒が腰かけると沢富は彼女の正面に腰かけた。美緒は手に取ったメニューを開き、沢富の前に置いた。「私は天丼セットにするけど」沢富は、メニューをろくに見ず、俺も、と言ってメニューを閉じた。美緒が笑顔を作り、ささやいた。「二人って、兄弟に見られてるかな~?親子って感じじゃないし。恋人同士にしては、不釣り合いだし。ま、いっか」

 

恋人同士にしては、不釣り合い、とはどういう意味だろうと沢富は思ったが、年齢のことだろうと自分勝手に思い、聞き流した。

 

 

 

 注文を取りに来た女性店員は、笑顔で注文を取るとさっさとカウンターに引き上げていった。美緒は、二人がどのように思われているかにいつも興味があった。「恋人同士って、思われたんじゃない。サワピー、最近、若返ってるみたい。やっぱ、私と付き合ってるからよ。ここでは、恋人同士になりきって、楽しい話をしましょうね。サワピ~」美緒は、自問自答して納得してるようで機嫌がよかった。

 

 

 

 「時々、この店に来てるみたいだね」にっこり笑顔を作った美緒は、うなずき答えた。「ここは、先輩のお母様のお気に入りの店なの。何度か、先輩のお母様に連れられて、食事したの」沢富は、先輩に興味がわいてきた。「へ~、先輩って、高校の?」美緒は、先輩のゆう子のことを話すことにした。ゆう子は、数学の出来が悪かったのか第一志望の国立大学は不合格だったが、第二志望の私立F大学英文科に合格し、自宅から大学に通っていた。「一つ上のゆう子先輩っていうんだけど、今年から大学生。そう、私、今、先輩のうちに下宿してるの。来年は、先輩と同じF大学を受験するつもり」

 


 

美緒の近況について、今初めて知った。父親を亡くし、どのような生活をしているか心配していたが、先輩の家に下宿していると聞いて、安心した。「へ~、よかったじゃないか。先輩から勉強も習えて、一石二鳥だな。頑張って、合格するといいね」二人が話に没頭していると話を中断するかのように中年の女性店員が天丼セットを美緒の前に置いた。店員は、美緒の内腿をチラっと覗き、カウンターに引き上げていった。

 

 

 

 沢富も美緒のピンクの超ミニスカートが気になっていた。モリモリっと突き出した大きなお尻は、ミニスカートをさらに短くしていた。歩いていても時々赤パンが見えるほど短かった。ましてや、横座りをすれば、赤パンが丸見えだった。今流行りのミニスカートとはいえ、あまりにも煽情的と思えた。沢富は、ミニスカートのことを指摘しようかとも思ったが、オジン臭いと言われるのではないかと思い、そ知らぬ顔をしていた。でも、能天気な美緒の笑顔を見ていると、なんだか心の底でつぶやいてしまった。

 

 

 

あの時の中年女性店員の顔つきからして、一瞬固まった感じで、軽蔑したようなまなざしが見受けられた。おそらく美緒のミニスカートにあきれ返ったに違いない。見せパンという奴だろうが、ここまであからさまに見せるのは、いかがなものか。やはり、男にとっては、目の毒だ。俺もチラっと赤パンを覗き見ただけで勃起してしまった。でも、美緒は、男性にチラっとパンツを見せたがっているのかもしれない。

 


 

美緒は、満面の笑顔で沢富に声をかけた。「サワピ~、絶対、おいしいっていうから。特に、佐賀のお米は、最高だから。いただきま~す」美緒は、ざるそばのつゆの器を左手に取り、ワサビをほんの少しお箸の先でつまみ、ササッとかきまぜた。「サワピ~も、さあ」沢富も笑顔を作り、お箸を手にすると、天丼の器を右手に取った。タレのついたご飯を一口食べた沢富は、初めて体験するまろやかな触感に感動した。「うまい、確かに、美緒の言う通り、こんなにおいしいごはん、初めてだ」

 

 

 

 無心に蕎麦をすすっていた美緒は、ひょいっと顔を持ち上げ、ニコッと笑顔を作った。「そういうと思った。バリ、まいう~でしょ。福岡のお米もおいしいけど、佐賀のお米もおいしいのよね~。こんなにおいしいお米は、東京にはないでしょ。サワピ~、東京になんか帰らずに、ずっと、福岡にいなよ。住めば都っていうじゃない。田舎暮らしも慣れれば、最高だと思うんだけど。サワピ~」

 

 

 

 田舎暮らしにも慣れてきた沢富は、糸島に引っ越してきてもいいように思えてきた。「そうだな~、空気のいい田舎暮らしもいいよな。東京は、楽しいけど、体にはよくないから。アメリカでは、東京オリンピックにボイコットしてるみたいだし。そうだよな~、放射能オリンピックだなんて、前代未聞だよ。一体全体、何を考えて、放射能に汚染された東京になんかに。さっぱり、理解できない」

 


 

 美緒は、ぶつぶつぼやく沢富にお構いなく、エビ天にがっついていた。エビ天を引きちぎって、口をモグモグさせているとゆう子の笑顔が頭に浮かんだ。「サワピ~、今度、先輩を紹介するわね。チョ~、かわい~んだから。鼻の下をのばさないようにね」沢富は、熊本地震による川内原発への影響を考えていたが、かわい~と聞いて、目をぱちくりさせた。「ほ~、そんなにかわいいのかい。楽しみだな~」

 

 

 

 お茶をすすった美緒は、沢富のスケベ心を覗き見たかのように、ニヤッと微笑んだ。「興味あるでしょ。かわい~、ってもんじゃないんだから。グラドルよ。結構、有名なんだから、レオタード姿、ユーチューブで見たことあるかもよ」沢富は、グラドルと聞いて、ますます興味がわいてきた。「グラドル、レオタードね~~、ほ~~」沢富は、見たことがあるかもしれないと思ったが、はっきりとは思い出せなかった。

 

 

 

「ゆう子さんか、とにかく会ってみたいものだ。でも、美緒の先輩に、グラドルがいるとは、驚いた」美緒はもっとゆう子を自慢することにした。「グラドルで、ファッションモデルで、女優なんだから。きっと、すぐにTVドラマにも出れると思う。ゆう子先輩、チョ~~かわい~、ガンバ」沢富は、美緒の誇張に面食ってしまった。こんな田舎にグラドルがいるとは、夢にも思わなかった。二人は、食事を終え、すぐ近くのどんぐり村で遊んで帰ることにした。

 

 

 



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