閉じる


<<最初から読む

16 / 19ページ

 春も夏も秋も冬も、ずっと二人で生きてゆく。
 どれほど、この言葉一つを待ち望んだことか。この時、私は初めて知った。将軍として、あまりにも重いものを抱えた彼が何故、私に何の約束もしてくれなかったのか。
 将軍ではなく、ただ一人の男に戻った彼は今、すべてのしがらみから解き放たれたのだ。
 慶喜さんの手がさしのべられ、私は彼の手に自分の手を重ねた。
 大きな手と小さな手。繋いだ手と結び合わされた指から、温かなものが流れ込んでくる。もう、この手をけして放さない。
 私は強い決意をこめて、彼を見上げる。彼がにっこりと笑って頷いた。まるで、お前の気持ちはよく判っているよ、とでもいうかのように。
 また、遠くで鳥が鳴いた。何故、自分が存在していた時代から百年以上も前のこの時代に時を越えて来たか?
 私は今まで、その問いに対する応えをずっと探し続けてきた。けれど、その応えはいつも濃い霧の中を手探りで進んでいるときにも似て、掴めそうで、なかなか掴めなかったのだ。
 だけど、今、やっと判った。
 私は彼に出逢うために、この時代に時を越えて来たのだ。「徳川慶喜」、第十五代将軍となった彼に愛され、また私も彼を愛するために。
 私は涙を堪えて彼に微笑みかけた。
「素敵な写真をたくさん撮ってくださいね?」
「ああ、もちろんだ」

 明治元年(一八六八)年、京都にいる帝に恭順を示すために寺でひたすら謹慎する前将軍徳川慶喜の傍らに、影のように付き従う美しい女がいたという。
 慶喜は彼女を「ゆう」と呼んでいた。後に彼が静岡に移り住んだ後も、彼の厚い寵愛を受けて数人の子をなしたといわれる女性であるにも拘わらず、その出自は不明とされている謎の女性である。


 なお、鳥羽伏見の戦いで幕府軍を率いて戦いながら、途中で逃げた慶喜は「総大将にあるまじき行い」とその脆弱さをそしられた。
 だが、恭順謹慎、江戸無血開城などにより、無血革命に近い状態で政権移譲できたことから、近代日本の独立性が守られ、維新への功績は大きいと評価された。
 慶喜の恭順により、京都や江戸が焦土となることをまぬがれ、また、フランスの援助を拒絶したため、外国の介入がなかったとし、彼を維新最大の功績者の一人であったとする見方もある。

 

                   【第二話 了】


あとがき

 「東めぐみ」の筆名で創作活動を始めて、そろそろ20年になります。その中で拙いながらも、たくさんの作品を創り続けてきました。時代小説・歴史小説をメインに書いている私ですが、今回、初めて「二次創作」というジャンルを手がけることになりました。
 そのきっかけは、アメブロのアプリゲーム「艶がーる」にハマッたのことです。

 現代を生きる女子高生がひょんなことで江戸時代、幕末にタイムスリップして幕末の志士たちと恋愛するというシュミレーションゲームです。これがなかなか面白い。歴史上の事件や出来事、更には実在の人物などを巧みにストーリーに織り込みつつ、興味深く物語りが進んでいきます。この歳になるまで乙女ゲームとは無縁でしたが、なかなか、よく作られた物語世界にあっさりと引きこまれてしまいました。
 そんなことがきっかけで、初めて書いた二次創作が今回の作品集です。もちろん、世界観はゲームを借りていますが、スートリー展開は私独自のものになっています。
 ふと、せっかく書いた作品たちと大好きな花の写真をコラボさせたフォトブックができないものかと考え、連休最後の日に近くの公園に行って花たちを撮影しました。
 初夏の花たちと小説、自分では一生懸命作ったつもりですが、いつもながら拙いものになっていると思います。
 よろしければ、お目通しいただければ幸いです。
 2016年5月11日 
                 東 めぐみ拝

 

 

 

 

 

 


奥付



永遠~あなたを愛したことを後悔しない~【艶がーる】二次創作小説集


http://p.booklog.jp/book/106921


著者 : megumi33
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/megumi33/profile


感想はこちらのコメントへ
http://p.booklog.jp/book/106921

ブクログ本棚へ入れる
http://booklog.jp/item/3/106921



電子書籍プラットフォーム : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社ブクログ



この本の内容は以上です。


読者登録

megumi33さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について