目次
ルシーの明日(完全版)
ルシーの明日(完全版)
「ルシーの明日」前編
「ルシーの明日」後編
「ルシーの明日」解説(ルシーとシリー)
「ルシーの明日」解説(ルシー的宇宙人)
「ルシーの明日」解説(ルシー的タイムマシン)
「おばあちゃん」
「ルシーの晩餐」
「時間犯罪(もしくは、AIクライシス)」
解説(AIクライシス)
「タイム残酷トラベル」
「火星征服団」
「過去確率」
「嫁食わぬ飯」
「ルシーの明日」ショートムービー
映画「ルシー」原案
おかしな童話集
おかしな童話集
「桃太郎(少年マンガ風)」シノプシス
「大きなガブ」
「ヒトラーの秘密」
「浦島異聞」
「狼ハンター」
「続・狼ハンター」
「狼ハンター」誕生秘話と今後の展開
「新釈・漁師とおかみさん」
おばけ坂シリーズ
お化け坂シリーズ
「3つの手の物語」
「お化け坂」
「あいつ」
「笑う幽霊坂」
「恨みの短冊」
「お化け坂を訪ねて」
「見えない叫び」
「びっくり妖怪大図鑑」
解説
トライ・アン・グルの大作戦
トライ・アン・グルの大作戦
「ガラスの靴大作戦」
「苦情の手紙大作戦」
「人喰い料理大作戦」
「シースルー大作戦」
<おまけ>ボツネタ大作戦
解説
アケチ探偵とニジュウ面相の冒険
アケチ探偵とニジュウ面相の冒険
「お題に生きる男」
「笑いを盗む男」
「知ってる人だけのお話」
「AIに負けるな」
「ニジュウ面相の別荘」
「ニジュウ面相は誰だ?」
解説
いずみの青春
いずみの青春(泉ちゃんグラフィティ)
アングル「泉」
「アリとギリギリデス」
<解説>「アリとギリギリデス」元ネタ
「ビデオの中の彼女」
<「湯けむりの天使」って、こんな内容>
「姪っこんぷれっくす」
「泉より愛をこめて」
「絵画の刑罰」
「V.O.ルーム」
「教室にて」(「脱衣ゲーム」より)
「ピンクの怪物」登場モンスター目録
「いけない同級生」シノプシス
「いけない同級生(仮)」シノプシス(続)
その他
その他
「おいらとタマの一人暮らし」
ボツネタ集
シノプシス・コンテスト用ボツネタ
共幻文庫コンテスト2015用ボツネタ
共幻文庫コンテスト2016用ボツネタ
アットホームアワード用ボツネタ
「師匠の憂鬱」(『西遊記』より)
さるかに合戦いろいろ
特撮ヒーロー「うさぎとかめ」
エデンの園、他
解放軍闘士のオオカミ
アリとキリギリス
アケチ大戦争
隣のタヌキ
現代版ギルガメッシュ
AI影の少女
いじめっ子は皆殺し
愛欲のリフレイン(別題「あなたと私だけの世界」)
<解説>名前遊び
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アングル「泉」

いずみちゃんシリーズの多数の作品の共通キーワードになっている、アングルの名画「泉」


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最終更新日 : 2019-10-15 08:55:32

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「アリとギリギリデス」

 アパート暮らしの私の隣の部屋にはキリギリスが住んでいる。もちろん、本物のキリギリスではなくて、イソップ寓話に出てくるキリギリスみたいに毎日ブラブラしていたから、陰でキリギリスとあだ名で呼んでいたのだ。

 その一人暮らしの青年がまともに働いているような様子は、ほんと、見た事がなかった。ほとんどの時間を、自分の部屋の中で引きこもって過ごしていたようだ。いわゆる、怠け者で、どこにも雇ってもらえない人生の落伍者って奴だったのであろうか。

 いや、勝手に結論を出すのは早すぎるかもしれない。もしかしたら在宅ワーカーだったのかもしれないし、実はそこそこの財産持ちで、働かないでいい身分だったと言う可能性もあるからだ。

 しかし、だとしても、それなりの金持ちなら、こんな安くてボロなアパートに居座るとは思えないし、やはり、無職の引きこもりなのだろうと考えた方が正しそうなのであった。

 そんな彼の事を、私はひそかに見下して、嘲笑しつつ相手にしていた。だって、私は独り身でも立派に働いているキャリアウーマンなのだ。出世街道まっしぐらとまでは言わないが、少なくても他人に対しては胸を張れる人生は送っていると自負していた。そんな私から見れば、働きもしない奴はやっぱりランク下の人間なのである。

 そのはずなのであったが、ある些細な恥ずかしい勘違いがきっかけで、私は彼と急接近する事になったのであった。

 それまでの彼とは、私はアパートの通路ですれ違っても、会釈する程度の間柄だった。オタクっぽい雰囲気を漂わせていた彼は、私が生涯で一番交わる事がなさそうな人種にも見えた。

 でも、彼が本当に見た目どおりの負け組の引きこもりなのか、実は裏の顔は相当な成功者だったのかだけは、ずっと気になっていて、前から確かめたいとは思っていたのである。

 ある日、彼の部屋を覗く事ができる絶好のチャンスが訪れた。ちゃっかり者の私は、そのチャンスを決して逃したりはしなかった。

 うまい用事ができたので、彼の部屋の前まで行ってみると、ちょうどドアが開きっぱなしになっていた。彼の方も、外出から戻ってきたばかりか何かで、まだドアを閉めていなかったらしい。中を覗き込むには最高の状態だった。

「もしもーし。いますか」

 と、私は、開きっ放しのドアから顔を突っ込んで、声をかけてみた。

「おたくの郵便物が、うちに届いていましたよ」

 いるのかいないのか、すぐには彼は現れなかった。

 そこで私は、もっと大胆に部屋の中を覗き込んでみたのだった。

 信じられないほど贅沢な家財道具とかは見当たらなかった。むしろ、質素なほど部屋の中は置かれているものが少なく、やはり、彼は低所得のただの庶民だったらしいと分かって、私は少し安心したのだった。

 その時、部屋の奥からトイレの水を流す音が聞こえてきて、間もなく、彼が慌てて姿を現わした。

「わざわざ、すみません」

 私の前に対峙した彼は、うろたえた感じで、そう口にした。なんだか、部屋の中を見られたくないような様子だ。

 この男、何をそんなに弱っているのだろう。私が見た限りでは、そんな隠し事があるような部屋にも感じられなかったのだが。

 私は、さりげなく、もう一度、部屋の中を見回してみた。そこで、地味な内装の中でも、テレビの近くの壁に貼られていた女性のヌードポスターが、ひときわ目をひく事に気が付いたのだった。

 私の視線がポスターの方に向いているのが分かると、彼はますます動揺していたのが、はっきりと分かったのだった。

 呆れた事だが、彼が部屋の中を見られたくなかった理由はこれだったらしい。しかし、一人暮らしの部屋に男が女の裸の写真を貼ったりしているのは、決して特別な事でもないであろう。むしろ、独身の男なら健全な行動のような気もするのだが、この男、なかなかのウブだったようである。

「あ、あのポスターは、そんなヘンなものじゃないんですよ。ボク、このいずみが好きで、これってアングルが・・・」

 彼は慌てて弁解したのだが、その言葉に逆に私はムッとさせられたのだった。

 と言うのも、いずみとは私の名前だったからである。隣の男の住人が、私と同名のセクシーアイドルのヌードを愛好しているとは、なんとも良い気がしない。もしかして、この男、ひそかに私にと気があったのではなかろうか。だから、部屋には、わざわざ、いずみと言う名のモデルの写真を選んで貼って、にやついていたのかもしれない。

「帰ります、あたし!」

 勝手に想像が暴走してしまった私は、急いで彼の部屋の玄関から立ち去る事にした。

 私が急に不機嫌になった事は彼にも分かったらしく、私の後ろで彼がオロオロしていたのは私にもよく感じ取れたのだった。

 

 さて、それからしばらくの間、私は彼の事を完全に忘れていた。引きこもりどころか変質者のように見えてきてしまって、忘れると言うより、思い出したくもなくなったのである。

 当然、彼とアパートの通路ですれ違っても、無視するようになった。彼の方も困ってしまったようで、私の前でどう態度をとればいいか、いつもオロオロしていたのであった。

 そんなある日、また、ちょっとした出来事が起きる事になった。正確には、私一人が勝手に突っ走ってしまったのだ。

 その日の昼間は、私は仕事で色々と失敗をやらかしてしまい、自分も落ち込むわ、上司からもさんざんに叱られるわで、そうとうにうっぷんがたまっていた。こんな時は、彼氏に優しい言葉の一つや二つでもかけて慰めてもらいたいものなのだが、この時付き合っていた彼氏と言うのがまた特に鈍感なヤツで、電話で連絡をとってみたところ、ひどく素っ気ない態度をとられてしまったのだ。その事で私もいきなりカチンときてしまい、私は彼氏と大ゲンカをしてしまった。向こうだって、なぜ私が急に怒り出したのかが分からなかったようで、当然どちらも謝らずに、電話は切ってしまい、私はますますムシャクシャした気持ちになってしまったのだった。

 その足で、一人で真っ直ぐ居酒屋へ行き、悪酔いするほどお酒を飲んだのだが、それでも気分は晴れず、そんな時、突然、隣の部屋の彼の事が思い浮かんだのである。私も、泥酔して、すっかり気持ちがおかしくなっていたのだと思う。もう何もかもヤケクソなのだから、いっそ自分の事を好いている隣の部屋の変質者と寝てやれ、と決めたのである。もちろん、彼氏への当てつけの意味もあっただろうし、自分を認めてくれない職場や社会に対する反抗のつもりでも、非道徳な事をしてやろうと思い立ったのだと思う。冷静になって思い返してみると、私ってほんとにバカである。

 しかし、この時の私は、もうすっかり、その気になっていた。

 夜遅くにアパートに戻ってきた私は、しつこく隣の部屋の呼び鈴を押し続けたのだった。

「ほら、早く出てきなさいよ!いるのは分かってるのよ。こうして、あなたのいずみが自分から来てやったんだから、ほら、喜びなさい」

 ドアの前で私はそう何度も叫んでいたらしいのだが、全く迷惑な話である。

 そして、うろたえながらも、彼がようやくドアを開いてくれたのだった。

「こらあ、遅いぞ。早く開けなさーい」

 と怒鳴って、私は彼の部屋の中へ飛び込んでいった。

 私の異常なテンションには、彼もそうとう驚いていたようだった。

「隣の蛙里さんですね。すみません、お部屋、間違ってますよ」

 と、うろたえながら彼は言った。

「間違ってないよ。だって、あたしはあんたに会いに来たんだもん」

「え?」

「え、じゃないの!ベッドはどこ?案内してよ」

「こ、ここで寝るつもりですか?蛙里さん、そうとう酔ってますね。ダメですよ、自分の部屋に戻らなくちゃ」

「一人で寝るんじゃないの。あんたと一緒に寝るの。嬉しいでしょ?」

「ちょっと!だいぶ酔いがひどいですよ。大丈夫なんですか」

「もう!何ためらってるのよ、この照れ屋さんが!あたしの事が好きで、前からエッチしたかったくせして。絶好の機会なんだから、素直に喜びなさいよ」

「ボ、ボク、そんなこと一言も言ってませんよ」

 そこで、私は壁に貼ってある女性のヌードポスターをバッと指さしたのだった。

「ウソおっしゃい!女の裸の写真に、あたしの名前で呼びかけて、夜な夜なスケベな事を妄想していたくせに!」

「それ、写真じゃないですよ。絵です、有名な名画」

 彼にそう言われて、私はハッとしたのだった。

 壁の全裸女性のポスターをよく見直してみたが、確かに、グラビアではなく絵画である。あまりに精巧に描かれた絵だったので、パッと見ただけでは写真と勘違いしてしまったようなのだ。

「アングルと言う有名な画家が描いた『泉』と言う絵です。とっても奇麗な女の子の裸婦像で、ボクの憧れなんです。猥褻な気持ちで貼ってたんじゃありません」

 彼の説明を聞いているうちに、私はすーっと酔いが醒めていったのだった。

 私ったら、何て、はしたない事をしてしまったのだろう!それも、自分より下だと見下していた相手に対して。これでは、私の方がずっとイヤラシい変態女ではないか。しかも、相手が自分に惚れていただろうなんて自惚れてもいた訳だから、なおさらタチが悪い。

「ご、ごめんなさーい!」

 私は、顔を伏せて、慌てて彼の部屋から出て行ったのだった。その時の私は、お酒のせいではなく、本当に顔が真っ赤になっていたに違いあるまい。

 

 こんな出来事があった後、私と彼は急速に親しくなっていったのだった。

 翌日、いの一番に彼の部屋へと出向いた私は、ひたすら昨夜の無礼を謝り、彼の方もさっぱりした態度でそれを許してくれたのだった。

 それからの詳しい経緯は少し省く事にするが、私は、彼が実はただの引きこもりニートなんかではなく、プロの小説家を目指している大志の持ち主だった事を知り、次第にそんな彼に惹かれてゆくようになったのである。

 しかし、筆一本で暮らしていけるような小説家になるのは、そう簡単な話ではない。定職につかず、多くの時間を売れるかどうかも分からない小説を書く為に費やしていた彼の生活は、じょじょに厳しいものになりつつあるようだった。

 そんな彼にとって、隣に住んでいて、いろいろと助けてくれる私の存在は力強い味方となったようで、私の方もまた、彼のサポートをする事が不思議と張り合いに思えてきていたのである。

 そんなある日の事だった。

「おーい、キリギリスくん。差し入れ持ってきてやったよ」

 そう言いながら、仕事帰りの私はそのまま彼の部屋へと押し掛けた。

 この頃の私は、彼の部屋の合鍵も持っていて、毎日のように彼の部屋に訪れるようになっていた。

 その日も、帰路の途中にあるコンビニで弁当を買って、彼の夕食用にと持っていってやった訳なのだが、部屋の中に入ってみると、何やら、彼は部屋の真ん中にちょこんと正座していて、ひどく落ち込んでいたのだった。

「あ、蛙里さん。いらっしゃい」

 私の姿を見て、彼がそう弱々しく声を発した。

「どうしたのよ。またえらく沈んでるようだけど」

「応募していた小説コンテストの結果が、今日、分かったんだけど、今回も入選からは外れていたんです」

 そうなのだ。コンテストで落選するたびに、彼は激しく落ち込むのである。しかし、今回は特に落ち込み具合が激しいようにも見えた。

「ボク、やっぱり才能が無いのかもしれません。小説家になるのなんて、あきらめた方がいいのかも」

「なに、弱気になってるのよ。あたしは、キミの書いた小説、好きだよ。続けていたら、いつかは絶対に報われるから、めげないで頑張りなさいよ」

「でも、これ以上は、一人で暮らしてゆくのも限界っぽいんです。実は、ボク、北海道の田舎に実家があるんです。親は酪農をしていて、前から跡を継ぐように言われていました。そろそろ観念して、田舎に戻った方がいいのかなあ、と思って」

「だけど、キミ、酪農なんてやりたいの?その仕事、キミに向いてる?どうしても小説家になりたかったのと違ったの?」

「仕方ないです」

 彼のイジイジした態度を見ていると、私も少々じれったくなってきたのだった。

 私は、バッと壁に貼ってある「泉」のポスターに指を突き付けた。

「キミに足りないものが分かったわ。パトロンよ。中世の芸術家たちはね、皆、よけいな仕事はしないで、芸術品を生み出す事だけに集中していたのよ。彼らがそういう生活を送って、後世に傑作を残す事ができたのは、彼らを支える後援者、パトロンがいたからだわ。キミにも、パトロンが必要なのよ。パトロンさえいれば、今まで通りに存分に小説だけを書き続ける事ができるでしょう。あたしがそのパトロンになってあげるわ。これで文句はないでしょう?」

 かくして、アリとキリギリスは一つに結ばれて、どちらも幸せになったのでありました。めでたし、めでたし。    おしまい

 

  ーーーーーーーーーーーーーー

 

 以上のような小説を読まされて、私は思わず絶句したのだった。

「なによ、これ?」と、私は小さくつぶやいた。

「今回は、ボクたちの今までの体験をありのままに小説に書き起こしてみたんです。事実は小説よりも奇なりで、面白いものでしょう。これなら、今度こそ審査員の心も突き動かせると思いませんか」私の目の前では、ギリギリデスのヤツがそう言って、自信満々の表情を浮かべていたのだった。

 キリギリスですらない。もはや、生活破綻寸前のラインで何とか暮らし続けていた彼の事を、私は小バカにして密かにギリギリデスと呼んでいたのだ。

 それにしても、いくら小説コンテストになかなか入選しないからとは言っても、この小説はあまりにも酷すぎる。情けない事に、彼と私が交際するようになったきっかけのくだりが本当に事実だったりするものだから、私としては、ますます笑えないのだ。しかも、この小説、自分ではなくて、私、蛙里いずみの手記というスタイルで書いてやがるところも、何だか腹立たしい。完全にフィクションなのはオチの部分だけである。

 こんな小説を、彼は本気で次の小説コンテストに応募するつもりなのだろうか。ましてや、こんな内容がほんとに入選できるとでも思っているのであろうか。

 あるいは。

 もしかすると、この小説は、彼の私に対するプロポーズだったのかもしれない。彼は、私に本当にパトロンと言うか、パートナーになってほしいと思っていたのではなかろうか。

 ギリギリデスと付き合うようになってから、私は、意外とダメ男にのめり込んでしまうタイプだったらしい事が分かったのだった。世間的に考えれば、それは良くない傾向なのだろうし、もしギリギリデスなんかと結ばれれば、不幸な結婚生活が待っているのはほぼ確実であろうと言う不安も覚えていた。

 はたして、私はギリギリデスに対して、どんな返事をしたらよいのだろう。

 目の前でニコニコしているギリギリデスと彼の小説の原稿を交互に見比べながら、私はすっかり困惑してしまったのであった。

 

  ××××××××××××××××××××××××

 

「私も小説を書いてみたんだ。どうだろう、面白いかな?」と、かわいい笑顔を浮かべながら、彼女が見せてくれた小説とは、以上のような内容だった。

 こんな小説を読まされて、僕の方こそ反応に困ってしまったのだった。

 彼女、蛙里いずみは、確かに、この小説どおりの、アパートの僕の隣の部屋に住んでいる独身のキャリアウーマンだ。しかし、僕とは全く交際などしていなかったし、こうして言葉を交わすようになったのも、つい最近になってからだった。

 たまたま、僕がプロ目指して小説を書いている事を知って、彼女の方から読んでみたいと言って、近づいてくるようになったのだ。彼女は可愛かったし、何となく自分のファンができたようで嬉しくて、僕の方もあっさりと彼女に気を許して、仲良くなっていったのである。

 すると、いきなり彼女は上記のような小説を書いてきて、僕に見せてくれたのであった。

 一体、彼女は何を考えていたのだろう。

 根性がなくて、すぐ仕事を辞めてしまう僕は、失業している時も多く、彼女の目には、なるほど、怠け者のキリギリスのようにも見えていたのかもしれない。その事をからかって、と言うか、たしなめるつもりで、こんな小説を書いてよこしたのだろうか。

 でも、それだけじゃないようなニュアンスも感じられる。ヒロインのいずみがやけに主人公(つまり、僕をモデルにしたキャラクター)に対して積極的みたいな感じもするのだ。性的なアピールの点でも、読まされているこっちが恥ずかしくなってくるほどの大胆さである。

 ひょっとすると、彼女は、小説を通して、本物の僕の事も誘っていたのであろうか。あるいは、誘っているように見せかけているのもまた、彼女のイタズラなお遊びなのかもしれない。

 まだ一度も女性と付き合った事がなかった僕にしてみれば、本当に可愛い蛙里いずみみたいな子と恋仲になれるのはまさに夢のような話だったのだが、でも、彼女の書いた小説を読んだ限りでは、今の自分の生活態度をあらためない事にはやはりムリな望みなのかな、とも思えてしまったのだった。

 アリとキリギリスがくっついてハッピーエンドなんてウマい話は、実際にはあり得ないのである。

 

     了


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<解説>「アリとギリギリデス」元ネタ

 「アリとギリギリデス」は、そもそも、冗談的にタイトルだけが先にひらめきまして、この笑えるタイトルだけが全てで、内容はどうでもいいような感じでした。

 まぁ、書くとしたら、働き者のアリより怠け者のギリギリデスの方が最後に幸せになるオチかなと、そこまでは決まってまして、たとえば人間に捕まったギリギリデスは快適な環境(人間の部屋)で冬を過ごすが、アリの方は厳冬のせいで凍え死んでしまうとか、そんな話を想定していました。もちろん、本気で書くには至りません。

 それが、アットホームアワードに何かもう少し出品したいと考えた末、このタイトルが急にピックアップされました。インパクトあるタイトル推しで、そこに無理やりストーリーを当てはめたのが、完成した「アリとギリギリデス」だったのであります。はっきり言って、執筆経緯がデタラメだから、完成品もろくなものではありません。

 ただ、「アリとギリギリデス」本編そのものは失敗でも、蛙里いずみシリーズが誕生するきっかけにはなりました。全くの無意味でもなかったのです。

 蛙里とは「かえるざと」とも「かわずざと」ともどちらで読んでもいいのですが、発音を変えると実は「あり」になります。そして、いずみの方はアングルの「泉」に引っ掛けられています。結局、この「いずみ」の方が膨らんでいって、シリーズ化する事となったのです。

 蛙里いずみシリーズは、少しエロ要素を盛り込むようにしています。「アリとギリギリデス」ではセックスを匂わす話が出てきた程度でしたが、以後の作品では、どんどんエスカレートしていきました。作者はちょいエロ小説のつもりだったのですが、末期の「絵画の刑罰」あたりに至ると、かなり内容がエグくなってしまい、こんなのが果たしてコンテストに出品できるのだろうかと困っている次第です。


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「ビデオの中の彼女」

 某地方の奥地にK温泉はある。このK温泉こそは、20年前、蛙里いずみが出演した成人用セクシービデオ「湯けむりの天使」のロケ地でもあるのだ。

 いや、回りくどい書き方をして誤摩化すのは止める事にしよう。この「湯けむりの天使」と言うオリジナルビデオは、実はアダルトものなのである。当時20代前半だった蛙里いずみは、このビデオの中で、まぶしいヌードも惜しみなく披露していたのだった。

 蛙里いずみの名前は、インターネットで調べてみても、恐らく引っかかりはしない。彼女は、正規のヌード女優などではなく、このビデオのみに出演した生粋のシロウトだからだ。「湯けむりの天使」と言うビデオのタイトルの方も、ネットでは多分見つからないはずだろう。このアダルトビデオ自体が、そこまで無名な作品なのである。

 しかし、私にとっては、もっとも思い入れのあるビデオでもあった。特に、出演していた蛙里いずみの愛らしい姿に、私は20年間、癒され続けてきたのである。彼女は本当に私にとっては唯一の存在だったのだ。

 ゆえに、このたび、私は、K温泉への一人旅を敢行する事に決めた。20年前の蛙里いずみが、どのような気持ちでこのビデオに出ていたのかを、あらためて追体験したくなったからである。

 東京を出発した私は、その日のうちに、K温泉のある地方に到着し、正午過ぎには、K温泉内の○×旅館へとチェックインした。

 この○×旅館もまた、「湯けむりの天使」のロケ現場の一つでもあったのだが、私にはまず先に訪ねておきたい場所があった。

 ○×旅館のすぐそばに、K温泉の観光名所の一つでもある大きな吊り橋がある。その吊り橋を渡った先は、散策ルートになっていて、K温泉周辺の豊かな自然を楽しめる趣向になっていた。この散歩道の一角にはきれいな小川が流れている河原もあって、そこが「湯けむりの天使」の最初のロケ現場でもあるのだ。

 「湯けむりの天使」のビデオを頭から再生してみると、まず、石だらけのこの河原がばあっと画面上に登場する。そこに、純白のレオタードを着た蛙里いずみが笑顔で現れ、リボンやフープ、ボールなどの小道具を持つと、やった事もない新体操の真似事をいっぱい披露してみせるのだ。たどたどしい彼女の動きは、まるで幼稚園のお遊戯のごときであったが、それが逆に愛嬌いっぱいで、微笑ましく鑑賞できたのである。

 この河原に来た私は、靴下を脱ぎ、思い切って裸足になってみた。石の冷たさをじかに感じる事で、露出の多いレオタード姿で踊っていた蛙里いずみの気分を、少しでも味わってみようと思ったからだ。

 冷たくてゴツゴツした石の肌触りが本当に気持ちいい。この少し照れ臭くて、開放的な気持ちになれる撮影を続けてゆくうちに、蛙里いずみは大胆なヌードも公開する決心を高めていったのである。

 この河原から少し離れたところに、壁の岩はだが完全にむき出しになった直角の崖があった。この壁の前でポーズをとった構図でも、蛙里いずみはビデオ内に写っているのだが、これがまたアングルの名画「泉」を彷彿させるような、なかなかの美しいカットに仕上がっているのだ。

 20年経った今でも、その壁の岩はだは手つかずのまま、当時の状態を保ち続けていた。私は、着衣したままだが、そっとその岩はだの前に立ってみた。そこは日陰になっていて、前方以外の視界がすっかり遮断されていた。静かに、ただ小川のせせらぎだけが心地よく聞こえてくるのであり、どこか神秘的な気分を味わえるのだった。「湯けむりの天使」を知らなければ、まさに気付かなかったであろう穴場である。

 さて、そろそろ○×旅館に戻る事にしよう。

 ○×旅館には、名物の露天風呂があるのだが、ここが「湯けむりの天使」の次のロケ現場でもあるのだ。

 20年前は、この露天風呂は男のみの入浴場所だったようで、それでも、ビデオのスタッフは、旅館の許可を得れたらしく、蛙里いずみは、貸し切り状態で、ビキニを付けて入浴していた。

 そもそも、この露天風呂が女人禁制にされていたのは、外部から露天風呂の内側が丸見えだった事が最大の理由だったようである。それでビキニ着用が条件になったらしいとは言え、でも、この露天風呂の女性入浴者第一号になれた事は、蛙里いずみとしても、さぞ自慢げに思えていたに違いあるまい。

 現在はこの露天風呂も、時間制で女性も入れるようになっている。露天風呂周辺の環境も整備され、女性の入浴時間帯は関係者以外は近づけないように配慮されているらしい。

 私もさっそく、この露天風呂には浸からせてもらった。さいわい、私以外の入浴者とは鉢合わせせず、20年前に蛙里いずみがビキニ姿でこの露天風呂内ではしゃぎ回っていた姿を自分に重ね合わせて思いふけってみたら、より露天風呂を独占している気分が堪能できたのだった。私にとっては、この露天風呂はあくまで蛙里いずみのメモリアルな場所なのだ。

 もちろん、露天風呂から見える外のロケーションも拝ませてもらった。それが、この露天風呂の目玉でもあるのだから。眼前に広がる大自然は、なるほど、皆が絶賛する美しさであり、確かに男だけの楽しみにしておくのは惜しいものがあった。しかし、蛙里いずみは、自分が写される事に夢中になっていたみたいで、20年前の撮影時には、この絶景を眺めていなかったようなのであった。

 ビキニ着用が条件だったにも関わらず、この露天風呂のくだりの最後の最後のショットで、蛙里いずみは、照れながらも、そのビキニを自分から上も下も外している。「湯けむりの天使」の中で、彼女がはじめて全裸になった瞬間であり、セクシーな撮影が続く中、彼女の方からもっと自分を見せたい気持ちになっていったらしい。そして、次の室内大浴場での入浴シーンでは、彼女もとうとう全裸で撮影に臨む事となるのだ。

 私も、彼女の軌跡を追って、露天風呂のあとは室内大浴場へと入りたいところだが、ここは先に夕食をとる事にしよう。「湯けむりの天使」でも、露天風呂と室内大浴場のパートの間には食事のシーンが挟まれているからだ。

 宿泊している和室に戻り、用意されていた夕食に箸をつけてみると、ある事に気が付いた。この料理、見覚えのあるものばかりなのだ。季節の山菜を主体にした郷土料理なのだが、思い出してみたら、どれも「湯けむりの天使」の中で蛙里いずみが口にしていたものばかりなのであった。どうやら、「湯けむりの天使」のロケと同じ季節にここに訪れたものだから、運良く、同じメニューを食べられたらしい。そして、おいしい土地の味を満喫させてもらいながら、20年経っても変わらぬ名物料理を提供し続けている老舗の旅館の粋な姿勢に、深い感動の気持ちも沸き上がったのだった。

 食事後、蛙里いずみは、旅館のホール方面にある娯楽施設で少し遊んでから、室内大浴場へと向かっている。「湯けむりの天使」の中で、彼女はゲームセンターで遊んだり、お茶目にカラオケを歌ったりしていたのだ。私も、ちょっとホールの方を覗いてみたのだが、残念ながら、今はゲームセンターもカラオケが歌える場所も無くなっていた。もはや時代が違うのだ。蛙里いずみが楽しそうに遊んでいた事を思うと、その思い出の場所をもう確認できないと言うのは、やや心残りにもなったのであった。

 そして、浴衣を身に着けた私は、室内大浴場を目指した。蛙里いずみも、まずは浴衣姿に着替えて、それから浴場へと入ったのである。

 ビデオ内では、この時も、大浴場は蛙里いずみ一人の貸し切りにしてもらっていた。スタッフ以外、誰にも見られていない場所で、彼女は生まれた時の姿に戻って、存分に大きな浴場でのたった一人の入浴をエンジョイしたのだ。ヌードを撮影されたとは言え、一生忘れられないような体験ができたのである。

 今回、私が入浴した時は、さすがに貸し切りと言う訳にもいかず、他にも何人かの入浴客がいたのだが、それでも、この浴場内で蛙里いずみが無邪気に跳ね回っていた姿を思いふけるにあたっては、邪魔に感じるほどのものではなかった。

 この大浴場は混浴ではない。しかし、若く、はつらつとしていた蛙里いずみのような女性と一緒にこの浴場を堪能できたのならば、殿方たちは、さぞ夢のごとき時間を過ごせた事であろう。 

 室内大浴場でのひとときを十分に楽しんだ私は、まっすぐ自分の部屋へと戻った。そして、20年前の蛙里いずみにも、自分の部屋にて最後の撮影が待っていたのだった。思い切って全裸になるほど開放的な気持ちになっていた彼女に対して、撮影スタッフは、寝る前の布団の上で、少し大胆な一人遊びをやってみせるよう指示したのである。もちろん、蛙里いずみはそこまで過激な撮影に対しては拒否もできたのだろうが、度重なるエロチックな撮影に彼女自身がすっかり高揚してしまっていたようだ。彼女は、体のうちの熱い思いを押さえておく事ができずに、ただの真似事でも良かったと言うのに、本気で一人遊びしている姿をカメラの前で披露するのである。

 その光景は完全に「湯けむりの天使」内におさめられており、シロウト娘のはしたない失態になったみたいな感じもするが、本人はその時、味わった事のない甘美な官能に浸れていたようなので、悔いは無かったのかもしれない。このビデオを見た殿方たちにしても、ただのセクシービデオではなく、クライマックスで、出演女性の積極的な姿まで拝めた訳だから、不満は無いはずなのである。

 この最後のロケ場所は、私が泊まった部屋ではなかったはずだ。しかし、この旅館の和室はどこも同じ作りになっている。あの時の蛙里いずみの姿を重ね合わせてみる分には、問題はなかった。私も、今夜は、最高に幸せな気分にまどろんでいた蛙里いずみの幻を、我が身のそばに感じつつ、素敵な夜を迎える事としよう。

 翌朝、私は○×旅館をチェックアウトした。こうして、私の「湯けむりの天使」を偲ぶ旅も終わったのである。

 来て良かったと思う。20代のまだ希望に溢れていた蛙里いずみの気持ちを、身を持って実感する事ができた。若い頃って、たとえ照れ臭い体験であっても、甘酸っぱい思い出に変えられるものなのである。

 私も今回のこの感銘を新たな支えにして、明日からを力強く生きていく事にしよう。

「あれ、あなた、蛙里いずみさんですね。ほら、20年前も、ここに来られた」

 私が旅館を背にして、少し歩き出した時、そう声をかけられたのだった。

 話しかけてきたのは、恐らく、○×旅館の主人と思われる男性だ。還暦はとうに過ぎていると思われ、頭はすっかり禿げ上がっている。

「あら、よく分かりましたね。あの時の事、覚えてましたか」私は口ごもった。

「そりゃあ、忘れませんよ。すごいべっぴんさんが、うちの旅館なんぞにビデオの撮影に来てくれたんですからね。いやあ、今でも、あなた、美人さんのままじゃありませんか」主人は、ほがらかに笑いながら、私へと話しかけてきた。

「でも、いやらしい目的のビデオだったんですよ。今思うと、逆に迷惑だったんじゃないかなって」

「いえ、とんでもない。こんな場所まで来て、撮影に使ってくれたりして、うちらはとても嬉しかったですよ」主人はそう言ってくれるのだった。

 実は、「湯けむりの天使」の主演の蛙里いずみとは私だったのである。20年前の事が急に懐かしくなって、このK温泉の地にさりげなく訪れてみたのだった。まさか、当時の関係者がまだ覚えていてくれたとは意外であった。

 あの頃の私は怖いもの知らずで、街中で映像会社のスカウトに誘われた時、全ては見せなくていいと言う約束を鵜呑みに信じて、アダルトビデオの収録に参加してしまったのである。実際、最初の撮影はレオタードとビキニだった。しかし、撮影スタッフたちに持ち上げられ、すっかりスター気分に酔いしれてしまった私は、最後は自分から何もかもをカメラの前に晒してしまったのである。

 今思えば、よく、これ一回のビデオ出演で済んだと思う。ヘタをしたら、このビデオを脅しのタネに使われて、次々にアダルトビデオへ出演させられていても、おかしくなかったところだ。全く、運が良かったのだと思う。

 もっとも、ビデオに出演したあと、私は個人的にはドキドキする日々を送り続けていた。このビデオに出演した事は、家族はもちろん、友達にも職場にも秘密にしていたのだが、ある日突然にばれちゃって、誰かから指摘されるのではないかと思ったからだ。

 しかし、それすらも結局はなかった。世にアダルトビデオは溢れているのである。そんな中で、「湯けむりの天使」は本当に誰も見てないような無名の一本にすぎなかったのだ。そうなると、私だってあれだけ興奮しながら出演したビデオだっただけに、逆に寂しい気持ちになってきたのだった。

 あれから20年が経つ。男運に恵まれない私は、今やすっかり独り身の冴えない中年女となっていた。自分の不幸な人生を嘆いているうち、むしろ「湯けむりの天使」に出演した時が一番自分が輝いてたのではないかとも思えてきたのだった。何よりも、このビデオには、私がまだ結婚する事も夢みていて、若くて、もっとも美しかった頃の姿がおさめられている。

 けがらわしいアダルトビデオなんかに、そんな感情を抱くなんて、お前は異常だ、と思う人もいるかもしれないが、私のように、恋に絶望した女性ならば、それもありうるのだ。私をモノ扱いにして、利用する事しか考えていなかった男たちに比べれば、「湯けむりの天使」に出演したひとときの方がずっと私は愛に満たされていた。

「女房には内緒ですけどね、あなたが出演したビデオ、私は今でも持ってるんですよ。おっと、いやらしい事する為にではなくて、あくまで記念としてですけどね」旅館の主人は言った。

 その一言を聞いた途端、私の目からは涙が溢れてきたのだった。

 確かに「湯けむりの天使」を見てくれた人が、ここに一人いる。この人は、「湯けむりの天使」の中の私の事を分かってくれているのだ。私の大切な分身、私の美しい青春の事を。

 やはり、ここを訪ねてみて良かった。

「あら、あなた、泣いているんですか。すみません、嫌な事を思い出させちゃいましたかね」私の目が潤んでいたのに気が付いた旅館の主人が、心配そうに謝ってくれた。

「いや、違うんです。ごめんなさい」と、私は慌てて言った。「何でもありませんから、気になさらないで。本当です」

 そして、私は、心からの笑顔を浮かべてみせた。

 

     了


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最終更新日 : 2019-10-15 08:55:32

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「泉より愛をこめて」

(本作は、アングルの名画「泉」が、もし無名の画家の描いたものだったら?という空想のもとで書かせていただきました)

 

「君のそのポーズだけどね、芸術用語ではコントラポストと言うんだ。真っ直ぐに立たずに、下半身は左足に重心を置き、右手は頭の上で左側へ曲げる事で、全体がS字っぽい形になっているだろう。これは、古代ギリシャ時代から伝統的に受け継がれている、もっとも美しい姿勢の一つなんだ」

 全裸で立っている蛙里いずみの前で、角土はそう楽しそうに説明した。

 今、いずみは彼氏の角土の絵画モデルをしている最中だ。角土は、いずみとほぼ同い年の、つまり20歳なかばの売れない画家の卵だった。いずみの方は、今の角土のウンチクもまるでチンプンカンプンな、芸術とは全く縁のない普通のOLだったのだが、それでも二人の関係はそこそこに順調だったとも言えた。

 もともと、いずみは、イケメンや社交上手のチャラ男よりも、オタクや暗そうな男ばかりに惹き付けられる傾向にあった。その手の男性には童貞も多く、セックス好きのいずみは、そうした野郎どもに一人でも多く最初の性の喜びを教えてあげるのを、女の武勇伝として自分の自慢としていたのである。

 だから、友人から、貧乏で変人の画家の知り合いがいると聞いた時は、いずみも直感が働いて、すぐにその人物を紹介してもらったのだった。それが、この青年、角土なのである。

 明らかに異性パートナーがいなかった角土と、間もなく、いずみは恋人同士になる事に成功した。彼のアパートの部屋にも入れてもらえたし、二人で外食に出かけたりもしたので、少なくても、いずみの方はもう彼の交際相手になれたものと確信していた。ただ、肉体関係だけがまだだった。

 やがて、角土はいずみに自分の絵のモデルになってくれないかとお願いしてきたのである。それも、ヌードの。

 このように頼まれて、いずみは、ようやく角土も自分とセックスする気になってくれたのだと勝手に喜んだのだった。ヌードモデルの話は自分の服を脱がす為の口実だと思ったのである。

 ところが、実際に絵画制作が始まると、角土は本当にもくもくといずみの裸身を描く事だけに集中してしまったのだった。

 いずみがモデルとして脱ぐ場所は、彼の部屋の中なのだが、最初のデッサンの日、その日の作業が終わったあと、素っ裸だったいずみは真っ直ぐ、角土のベッドに転がってみた。角土の方も、すぐベッドに来て、そのまま愛し合う行為を始めるかと思ったからだ。

 しかし、角土はいずみに労いの言葉をかけると、疲れてるなら今日は泊まってもいいよと言って、自分は外へと出かけてしまった。

 拍子抜けしたと言うか、いずみには何だか訳が分からなかったのであった。それで結局は何事も無しである。いずみが出て行ってしまうまで、角土は部屋には戻ってこなかった。

 その後も、ヌード絵画制作は続き、いずみは何度も角土の部屋に呼ばれてモデルをつとめたのだが、そのたびに作業終了後のセックスをいずみの方は期待していたにも関わらず、角土は一度もいずみを抱いてはくれなかったのだ。

 そんなじれったい日々が何日も続いた。絵だけが着実に完成へと向かっていた。

 一緒に寝ていない以上、いまだに、角土が未経験だったかどうかの確認はとれていない。しかし、いずみの側は、一方的に自分の裸を見られている事で、角土相手にセックスしたいと言う興奮がどんどん膨らんでいってしまうのであった。だって、ここまで自分の全てを拝ませているのに、性行為をしてないなんて、どう考えても変ではないか。

 もしかすると、角土は絵が全て完成した暁に、その喜びの絶頂の流れで、いずみを愛そうとしたのかもしれない。いずみもそう考えて、さらに辛抱を続けていたのだが、いい加減、自分を抑えられなくなり始めていた。

「ねえ。だいぶ出来上がってきたんじゃない?」

 ある日のヌード画制作のあと、いずみは角土のキャンバスを見ながら、そう角土に話しかけてみた。もちろん、まだ裸のままで。

 角土の絵は、確かにかなり仕上がっていた。いずみをモデルにしたメインの裸婦像の部分はほぼ描き上がっている。絵の中の裸婦は、正面を向いて、少し足を内股にして立ち、顔の真左に位置する場所に大きな壷を両手で抱えていた。実際のいずみは、円筒形の大きなお菓子の缶を持たされていたのだが、絵の中では見事に壷に化けていたのである。その壷を、絵の中の娘は、なぜか注ぎ口を下の方に向けて、持っていた。

「ねえ、この子、すごいスタイルがいいわね」と、いずみは言った。

「そりゃあ、君がモデルだからね」角土が、お世辞だか本気か分からないような言葉を返してくれた。

「でも、ちょっと人間らしい温かみが感じられないかも。まるで、彫刻みたい」

 いずみにそう言われて、角土は少し険しい顔つきになった。まさか、そんな指摘をされるとは思ってもいなかったのであろう。

 困惑した表情で、角土はいずみの顔を見つめた。

「ボク、女神のつもりで、この子を描いたんだけど、嬉しくなかった?」と、彼は口ごもった。

「私が女神?私が?」いずみはクスクスと笑った。「私は人間のままがいいな」

「でも、ボクは君を、超越的な存在の女神として描きたかったんだ」

 いずみは真摯なまなざしを静かに角土へと向けた。

「この絵の子が冷たく見えるのはね、女神として描いたからじゃないよ。あなたが、本物の女性の温かさを知らないからだわ。女の子の温もりや柔らかさを覚えたら、あなたはもっと素敵な絵を描けると思うよ」

 いずみにそんな奇妙なアドバイスをされ、角土もかなり狼狽していたようだった。

 そこで、いずみは、さらに追い討ちをかけてみた。そっと角土の右手を持つと、その手を自分の方へ引き寄せ、むき出しの乳房に触らせてみたのである。

 ギョッとして、角土は慌てて右手を引っ込めた。乳房を触られたいずみの方が、ずっと落ち着いていた。

「どう?他の場所も触れていいのよ。二人で愛し合ってみたら、きっと、今以上のインスピレーションだって湧くはずだわ」恐ろしく冷静な口調で、いずみは角土に提案してみた。

「ダメだよ、そんな事をしたら!ボクはそんなつもりで、君のヌードを描きたかったんじゃないんだ!」角土は叫んだ。

「なぜよ?あなた、インポやホモでもないんでしょう?それなのに、なぜ、私の事を抱きたくないの?」

 いずみは、角土がこっそりアダルトDVDを借りて観ていた事を知っていた。彼が性異常者でない事もきちんと調べあげていたのだ。

「あなたにとって、私は一体、何なの?私は、あなたは自分の恋人だと思っていたわ」そう言って、いずみはさらに角土へと詰め寄った。

「ボクだって、君の事は大切な彼女だと思ってるよ」

「何人めの?」

「は、はじめての」

「だったら、なおさら、なぜ私の事を抱いてくれないのよ?おかしいよ、それって!こんなの恋人同士とは言えないよ!」

 そして、いずみはいきなり角土へと抱きついていったのだった。角土の体に両手を巻き付け、否応無しに自分の唇を角土の口へと押しつけた。信じられない事に、キス行為さえ、これがはじめてだった。

 しかし、次の瞬間、角土は強引にいずみの体を自分から引き離したのだった。

「違うよ!ボクは、君の事が本当に好きなんだ。だから、君の体は汚さずに、きれいな姿を絵の中に残しておきたいんだ」角土が叫んだ。

「そんな言い訳、分かんない!私はあなたと素直に愛し合いたいの!」いずみも叫んだ。

 二人の間には完全に距離が空いていた。やや離れた場所にあったキャンバスの中の裸婦は、二人の痴話げんかを呆れて眺めていたようにも見えた。

 いずみの方はまだ興奮していたが、性欲より憤りの方がすっかり上回ってしまったようだ。

「もういいよ!意気地なし!」

 そう吐き捨てるように怒鳴ると、いずみは急いで衣服を身に付けだした。そして、うなだれている角土にそっぽを向けると、さっさとこの部屋から飛び出してしまったのだった。

 その後、いずみは角土とは会っていない。角土の方からも、いずみへは何の連絡もよこさなかった。いずみも大人げない事でケンカしちゃったと多少は後悔もしていたのだが、自分の方が間違っていたとは思えなかったので、角土に自分から謝って、無理によりを戻す気にもなれなかった。当然、ヌードモデルの方もあれっきりだったので、あの絵が無事に完成したのかどうかも分からない。

 いずみが、角土の訃報の連絡を受けたのは、それから約1年後の事である。あまりにも若すぎる死だった。はっきりとした死因は聞かなかったが、自分の部屋で倒れていたのを、アパートの大家が発見したのだと言う。

 友人からその話を告げられ、いずみもさすがに動揺したのだった。

「あなた、角土さんとは交際もしていたのでしょう。今度、角土さんの画家仲間が、合同の絵画展を開くらしいわ。偲ぶ意味も込めて、角土さんが描いていた絵も一緒に飾るそうよ。あなたは、角土さんの葬式には行ってないんだし、せめて、その絵画展だけでも見に行ってあげたら、どうかしら」

 友人にそう勧められて、いずみも迷いながらも、結局、角土の遺品となった絵の数々を見てくる事にしたのだった。

 絵画展は、交際中に角土に何度か連れていってもらったギャラリーにて開かれていた。感傷的な記憶に浸る姿を知り合いの前では見せたくなかったので、いずみは一人でこっそりと、この絵画展に訪れてみたのである。

 観たかったのは角土の絵だけだったのだが、合同展示会だったので、思った以上に角土の絵は置かれてはいなかった。いずみとしては、あの例の絵が果たして、あるかどうかもひどく気になっていた。

 そして、会場の中を歩き進んでいくうちに、とうとう、彼女はあの絵を見つけたのである。いずみがモデル放棄したにも関わらず、角土は絵をきちんと完成させていたのだ。

 少し離れた場所から、その絵を見つけて、思わず、いずみは目を見張った。そのまま立ち止まってしまった。いずみには、その絵がそれほど眩しく見えたのである。

 いずみが最後に見た段階ではまだ未完成だった部分が全て描き込まれていた。いずみがモデルをつとめた美しい裸婦が、何やら殺伐とした岩はだの手前にと立っている構図だ。背景が味気ない分、よけい裸婦の姿は輝いて見えた。確かに女神のごとき神秘さも漂わせているのである。

 そして、あの制作途上の時に感じた冷たさが、なぜか今の絵の少女からは伝わってこなかった。よく見ると、この少女は、頬を赤らめているのである。目もうつろだし、口も開いていた。おやおや、この子は全裸を晒している自分の事を激しく羞恥しているようだ。女神のごとき完璧な女体に、人間っぽい未熟な心を添えるとは、なんて鮮やかな着想なのだろう。角土は、いずみのアドバイスを忘れずに取り入れてくれたのである。いずみのヌードを最高に素晴しい形の絵に直してくれたのだ。それで、なおさら、いずみには、この裸婦の姿が愛おしく見えたようなのである。

 絵の下の部分には、タイトルの札があり、そこには「泉」と書かれていた。そのタイトルを見て、さらにいずみは熱い思いがこみ上げてきたのだった。

 この絵の前には、ちょうど一組の若いカップルが立っていて、和やかにこの絵を鑑賞していた。

「へえ、この絵、『泉』と言うのね。どこにも泉なんか無いのに、なぜなのかしら」と、カップルの女の方が何気なく口にした。

「それはきっとね、この裸の女の子が泉を擬人化したものだからなんだよ。ほら、見てごらん、この子が持っている壷から水が流れ落ちているだろう。つまり、水が溢れ出る様子を象徴しているんだ」カップルの男は、そう得意げに解説してみせた。

 違うよ!この裸婦の名前がいずみなのよ、と、たまらず、いずみは心の中で叫んでいた。

「この絵、本当に素敵よね。でも、気の毒に、この絵を描いた人は、もう亡くなっちゃったそうよ。この絵が遺作だったらしいわ」さらに、カップルの女がそんな事を喋った。

「こんな綺麗な幻想の女性を描ける人だ。確かに、惜しい才能を無くしたのかもしれないね」カップルの男も、そう返していた。

 だから、違うんだってば!この子は私、私がモデルなのよ、といずみもしきりに心の中で訴え続けていた。やがて、急に涙がこぼれてきたのだった。

 角土は、自分に対して、こんな清純なイメージを持ち続けてくれていたのである。本当はセックスまみれの、はすっぱだった自分の事を。そんな彼女の実像をはっきり目にしていたにも関わらず、角土自身は彼女の事を絶対に抱いたりしないで、ピュアな印象を崩さないようにしてくれていたのである。

 愛の形とはさまざまなのだ。この絵は、角土がいずみに捧げた究極の愛のプレゼントなのである。こんな素敵な愛情表現をしてくれた角土の思いを、自分はなぜ理解してあげなかったのだろう。そして、この絵が遺作だったと言う事は、角土は別れた後も自分への愛を最後まで貫き続けてくれていたと言う事なのだ。いずみを純白で愛らしい存在として讃え続けながら。その結晶がこの絵なのである。角土自身はもうこの世にいないが、彼のいずみへの愛は、芸術として、絵画として、これからも残り続けるのだろう。文字どおりの永遠不変の愛として。いずみだけに注がれた愛のせせらぎとして。

 先のカップルが他の絵も眺める為に歩き出した時、女の方がチラリといずみの方に目をやった。女は、いずみの顔を見て、はたと考え込んだが、絵画の少女といずみの顔が酷似していた事にはとうとう気付けなかったようだった。

 いずみは何だかおかしくなって、小さく微笑んだ。「泉」の絵にまつわる真実は、これからもずっと、いずみと角土だけの二人っきりの美しい思い出なのだ。

 包み込むような至福感にうち震えながら、いずみは止まらない涙をしきりに指で拭い続けた。

 

      了


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「ピンクの怪物」登場モンスター目録

 

ピンクの怪物の「ピンク」とは、往年のピンク映画の「ピンク」と同じ使い方である。すなわち、ピンクの怪物とは、猥褻エロモンスターという意味合いになる。

さらには「ピンクの象」という暗喩も存在する。これは、お酒や薬物の中毒状態で見える幻覚の別称で、つまり、ピンクの怪物たちが、実は幻想の存在である事も、それとなく示唆している。

また、東映ドラマ「どきんちょ!ネムリン」(1984年〜1985年)の主題歌では、主人公の睡眠の妖精ネムリンが「ピンクモンスター」と表現されており、ここでも、ピンクの怪物(モンスター)と夢の中の存在のつながりが見られる。

そして、ピンクモンスターとは、元国会議員の豊田真由子氏のあだ名にも他ならず、だからこそ、「ピンクの怪物」本編内でも、いずみがスキンヘッドの永山の事を「このハゲー!」と怒鳴るシーンがあるのだ。

 

 

ピンクの怪物ファイル1 口裂け女モドキ

 

口元に大きなマスクをつけた、若い女。

マスクを外したら、口が裂けてるのかと思いきや・・・。

映像化した場合は、恐らく、映倫に引っかかりそうな怪物。

「最初の怪物」「次なるミッション」などに登場。

 

 

ピンクの怪物ファイル2 乳房ボール

 

まさに、乳房ボールとしか呼びようのない怪物。

ゴロゴロ回ったり、ポンポン飛び跳ねる。

その誕生シーンは、諸星大二郎氏の漫画を意識しました。

「笑う裸婦像」「会館の死闘」に登場。

 

 

ピンクの怪物ファイル3 カレ

 

ピンクの怪物たちを生み出した、謎の男。

キリスト教圏の国の子供番組では、「悪魔」が放送禁止用語になっていて、

「him(カレ)」で代用されたりもするそうです。

「あらわれた悪魔」から登場。

 

 

ピンクの怪物ファイル4 散歩する舌

 

変形自在で、テクニシャンの、長い舌。

最初、ペニスにするつもりでしたが、

あとで、正式なペニス怪物も登場しますので、こちらは舌にしました。

「魅了する舌」「永山登場」などに登場。

 

 

ピンクの怪物ファイル5 人食い精子

 

正しくは、巨大フグリが、ピンクの怪物の一体。

巨大フグリから放出された人食い精子は、何でも食べてしまい、

あわや、世界を滅ぼしかける。

「侵略する精子」「いまわのセックス」などに登場。

 

 

ピンクの怪物ファイル6 巨大フグリ

 

人食い精子の保有者。

フグリ(陰嚢)のくせに空に浮かぶ事ができる。

発情すると、まん丸になる。

「急展開」「丘の上の攻防」などに登場。

 

 

ピンクの怪物ファイル7 大地に生えた性毛

 

その名の通り、地面から湧き出た陰毛。

謎の女・令子につきまとうストーカー。

弱点は、核攻撃。

「仲間割れ」「令子の謎」などに登場。

 

 

ピンクの怪物ファイル8 大ペニス・小ペニス

 

大ペニスは、巨体で街を破壊し、小ペニスは、密室潜入のプロ。

多様な特殊能力を駆使する、夜の王者。

映像化したら、多分、映倫には引っかかる。

「淫魔のビル」「総力戦」などに登場。

 

 

ピンクの怪物ファイル9 カマキリ女(仮称)

 

残っていた小ネタを全部、投入したキャラ。

ボディは超グラマーだが、全体的には、やっぱり化け物。

設定では、七人兄弟の末っ子。姉と同じく「皆殺し」が好き。

「二人のいずみ」「弱点」などに登場。

 

 

ピンクの怪物ファイル10 アニムス

 

セックスすると生まれる巨大ヒーロー。

怪物を倒すたびに消滅するが、セックスしたら、何度でも復活する。

言うまでもなく、ウルトラマンを意識したキャラです。

「光の巨人」「性の権化」などで活躍。

 

 

 

 「ピンクの怪物」主要登場人物

 

 ・蛙里須(ありす)いずみ

本作のヒロイン。美しい女子高生。

カレを探し出すミッションに巻き込まれる。

自分の事は、子供っぽく「あたし」と呼ぶ。

「西遊記」の三蔵法師にあたるキャラ。

 

 ・永山(ながやま)

いずみの従者。特殊工作兵風の青年。

粗暴だが、頼りにもなる、皆のリーダー。

いずみの事は「アリスさん」と呼ぶ。

「西遊記」の孫悟空にあたるキャラ。

 

 ・球異(きゅうい)

いずみの従者。自称・名探偵の青年。

どこか軽薄で、女の子好き。

いずみの事は「いずみん」と呼ぶ。

「西遊記」の猪八戒にあたるキャラ。

 

 ・所田(ところだ)

いずみの従者。自称・発明家の青年。

ころころ態度が変わる、最悪なヤツ。

いずみの事は「いずみクン」と呼ぶ。

「西遊記」の沙悟浄にあたるキャラ。

 

 ・令子(れいこ)

皆の前に、突然現れた謎の女性。

たいがいは眠っているが、態度は友好的。

いずみの事は「いずみちゃん」と呼ぶ。

実は、続編への伏線となるキャラ。

 

 


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「いけない同級生」シノプシス

 変人や暗い男性が大好きだと言う蛙里いずみの、その嗜好性がいつ頃からはじまったのか、そのルーツを探る話を書いてみたくなりました。蛙里いずみシリーズの特徴である、アングルの「泉」は、この作品には絡んでいません。

 

 地味な高校生男子・河川亮生(りょうせい)には、明るい蛙里いずみと地味な井森カコと言うクラスメートの女子がいた。

 亮生は、カコに密かに気があったのだが、ある日、いずみがセックスしようと亮生に迫って来る。実は、いずみは皆にはもう経験済みだと言い触らしていたのだが、本当はまだバージンだったのだ。その事が皆にバレてしまう前に、口の堅そうな亮生相手に、処女を捨てる事にしたのである。

 そんな訳で、二人は恋人でもないのに、互いに初セックスを経験してしまう。女になれて満足したのか、それっきり二人は接近していない。

 同じ頃、井森カコが不良生徒にひそかにレイプされたらしいと言ううわさがクラス中に広まった。おとなしいカコは被害を訴えなかったため、逆に彼女も実はヤリマンらしいと言う評判が飛び交ってしまう。

 カコの事が好きだった亮生は、カコともセックスできるのでは、と勝手に考えてしまい、帰り道に一緒になった彼女を廃屋に連れ込もうとする。しかし、彼女に泣かれてしまい、未遂に終わるのだった。

 それから、数年以上たち、三人は同窓会で再会する事になる。いずみもカコも、性格は学生の頃とまるで変わっていないのであった。

 亮生は相変わらずカコに気があって、仲直りしたいと考えていたのだが、浮かれたいずみがいきなり「自分の初体験の相手は亮生だ」と皆の前でカミングアウトしたものだから、カコへの接近はまた失敗してしまう。

 しかも、同窓会終了後も、いずみは亮生に絡んできて、久しぶりにセックスしようと言い出す。高校の時は無理強いセックスだったので、きちんとしたセックスでお詫びしたいと言うのだ。何となく申し入れを受け入れた二人はラブホテルへ行き、亮生は今後もセックスしたかったら呼び出して、といずみに持ちかけられる。ひょんな事で、セックスフレンドを手に入れてしまったのだった。

 しかし、その後、亮生は街中で偶然カコとも再会する。そこで、カコは本当は自分も亮生を好きだった事を打ち明け、今度は二人はためらう事なく結ばれ、正式な恋人関係になるのだった。

 亮生とカコがデートしている姿を見かけて、いずみはショックを受ける。実は、いずみも亮生の事を本気で愛していたのだ。

 

 こんな感じで、三角関係の物語はもくもくと続けられそうです。しかし、長くなりそうなので、発表の場が見つかりません。とりあえず、今は書かないで、執筆保留としています。

 なお、登場人物の名前は、蛙里井森(イモリ)だから亮生(両生)類、いずみ(泉)とカコ(河口)の間にいるから河川、と言うように、やっぱり言葉遊びになっています。

 この後は、「サラマンダ」(両生類)と言う芸能プロダクションも登場予定です。

 さらに、「いけない同級生」の派生作品「おもちゃのいる教室」にも、きちんと名前を与えられているキャラたちには、清水(堰)と、いずれも、河に関連した言葉が用いられています。


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その他

目次

 

「おいらとタマの一人暮らし」

「おもちゃのいる教室」(18禁)

「いじめっ子の笑い話」

 

ボツネタ集

  • 「師匠の憂鬱」
  • さるかに合戦いろいろ
  • 特撮ヒーロー「うさぎとかめ」
  • エデンの園、他
  • 解放軍闘士のオオカミ
  • アリとキリギリス
  • アケチ大戦争
  • 隣のタヌキ
  • 現代版ギルガメッシュ
  • AI影の少女
  • いじめっ子は皆殺し
  • 愛欲のリフレイン
  • <解説>名前遊び

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「おいらとタマの一人暮らし」

 おいらは、いきなり、一人暮らしをしないといけない事になってしまった。正確には、タマも一緒についてきたので、二人暮らしなのかもしれないが、タマとおいらはイキモノの種類が違うらしいので、やはり一人暮らしと言う事になるらしい。

 タマは、おいらと今まで同じ家で暮らしてきた、えーと、なんて説明したらいいのかな、要するに、おいらはタマのお守なのだ。何しろ、タマは、おいらが物心がついた頃から一緒にいて、おいらが同じ布団に寝てやらないと、夜も眠れないほどの寂しがり屋なのである。離れられないのは当然だったとも言えよう。

 おいらが生まれる前は、おいらのかーちゃんがタマのお守をしていたようだ。だから、おいらとタマが二人だけで家を出て行く事になった時は、かーちゃんから、タマの事をよおくかまってやるよう、いっぱい頼まれてしまった。タマは、おいらたち母子にとっては、それほど不可欠な存在だったのである。

 かーちゃんと別れる事になるのは、確かに、おいらも悲しかった。

 しかし、タマだって、自分のとーちゃんとは離れる事になるみたいなのだ。お守のおいらが弱音を吐く訳にもいかないだろう。

 これは、ジリツとか呼ばれる行動なのだそうである。子どもは、いつかは親元を離れなくちゃならないものらしい。タマがその時が来てしまったらしく、おいらもその巻き添えをくう事になってしまったのである。

 タマは、おいらを抱きかかえながら、自分のとーちゃんにこんな事を言っていたっけ。

「パパ、心配ないよ。あたしだって、もう大人なんだから。いくらでも一人で暮らせるよ。でも、カイトは連れていくからね。部屋に戻った時、誰もいなかったら、ちょっと寂しいもん。アオイの方は置いていくから、きちんと面倒をみてあげてね。アオイも、もうだいぶ歳だから、大事にしてあげてよ。パパも、あたしが居なくなったからって、だらしない生活をしたらダメだからね」

 カイトとはおいらの事で、アオイの方はかーちゃんの名前だ。こんな話を耳にしたから、おいらたち親子も離ればなれになる事が分かったのである。

 おいらとかーちゃんが親一人子一人なら、タマの奴もとーちゃんと二人っきりの家族だった。ともに、親とは別れて暮らす事になったのである。

 そして、その日がとうとう訪れた。

 おいらは、はじめて見る新品の籠に入れてもらって、まさに王様待遇で、タマに新しい家へと運んでもらったのだった。

 籠に限らず、どうやら、今まで使っていた道具は、食器にせよ、トイレにせよ、爪とぎにせよ、タマと遊ぶオモチャにせよ、全て、これまで居た家に置いてきてしまうらしい。かーちゃんが前の家にそのまま残る訳だから、考えたら、当たり前の話だ。

 一方で、おいらは、全ての道具を新調してもらえる事になったようなのである。

 こうして、やって来た引っ越し先の部屋は、今まで住んでいた家と比べると、だいぶこじんまりとした狭い場所だった。おいらとタマだけで暮らすのだから、それほど広くなくても良かったのだろう。

 その新しい住居に、たちまち、おいらの為の買ったばかりの生活用品はセッティングされていった。

 新しい家でも、すぐに、おいらが過ごせる環境は整ったのである。

 とは言え、今までとは異なる造りの部屋に、何もかも新品の道具ばかりだったので、どうも落ち着かなかったのは確かだった。

 それでも、ごはんの内容は今までと同じだったし、トイレの砂もこれまで通りのものを使っていた。何よりも、仲良しのタマが一緒にいる。

 かくて、最初こそストレスは感じていたものの、次第に、おいらも新しい家に慣れていったのだった。

 タマの様子も観察してみたが、タマの奴も、最初の頃は、とてもせかせかと動き回っていて、雰囲気から、新しい生活に戸惑いつつも、楽しんでいたようにも感じられた。

 元から、昼間はあまり家には居なかったタマだったが、この新しい部屋に越してきてからは、日中は完全に外に出かけるようになってしまった。朝早くに出て行ってしまうのだが、帰ってくるのは、ほとんどが夕方を過ぎてからなのである。

 出会える時間が少ない分、帰ってきてからのタマは、なおさら、おいらにベタベタくっつくようになって、それはまあ構わないのだが、困った事に、おいらの方が昼間の時間を持て余すようになっていた。

 これまでの家だったら、かーちゃんと一緒だったから、タマやそのとーちゃんが居なくても、それなりに、かーちゃんとじゃらけたりして、時間を潰せたものだ。しかし、この新居では、タマが出て行ってしまうと、本当においら一人になってしまうので、何もする事がなくなってしまうのだ。

 そんなおいらの気持ちを察してくれていたのか、外から戻ってきた時のタマは、すぐにおいらの事を持ち上げてくれて、

「ごめんね、カイト。寂しかったでしょう」

 と、優しい声をかけてくれたあとに、ぎゅっと抱きしめてくれるのであった。

 おいらにとっても、その瞬間は一番幸せな時間だったが、どうやら、タマにしてみても、それは同じだったようである。

 タマは、毎日のように、日中は外へと出かけていたが、外での生活は必ずしも楽しいばかりではなかったみたいなのだ。

 家に帰ってきたばかりのタマは、大体、疲れ切っていたようにも見えた。暗く沈んでいるような事もあった。そんな時は、おいらを抱きかかえて、ようやく笑顔を取り戻していたみたいなのである。

 やっぱり、タマも、前の家やとーちゃんの事が懐かしいのだろうか。前の家で一緒に住んでいたおいらと戯れると、昔の感覚が思い出せて、ささやかながら心が落ち着くのかもしれない。やはり、タマには、おいらが必要な存在だと言う事だ。

 だから、タマと一緒にいられる時間は、おいらも積極的にタマにすり寄ってやる事にしていた。そうしてやると、迷惑そうな事をつぶやきながらも、実はタマも本心では喜んでいたみたいだったからだ。

 タマは、おいらの方が寂しくて、寄ってくるみたいな事を口にしていたが、実際には、おいらがタマの事を気に掛けて、寄り添うようにしていたのである。そんなおいらの気持ちも分かっておらず、タマって奴は、ほんとに無邪気なものなのだ。

 タマの上に乗っかって、顔を舐めてやったり、自分の喉を鳴らしてみせたりすると、特にタマは喜んだ。タマの手の上に、おいらの前足を置いてやったりすると、タマは「わあ、カイト。犬よりお利口だぁ」と大げさに喜んでくれたりもした。とにかく、おいらの一挙一動が、今のタマの慰みになっていたようなのである。

 そして、夜は、おいらとタマは同じベッドで寝た。おいらには、小さな籠の寝床もあてがわれてはいたのだが、夜中にそこを使う事はほとんど無かった。たいていはタマと一緒に寝る事になった。タマが強引においらを抱いて、自分の大きなベッドに潜り込んでしまうからだ。おいらも、それに別に不満はなかったのである。

 これは、前の家にいた時からの習慣だった。ただし、前の家にいた頃は、おいらとタマ以外に、おいらのかーちゃんも一緒だった。おいらたち親子ともに、タマのベッドで寝かせてもらっていたのである。

 この新しい部屋では、タマとベッドは完全においらだけで独り占めだ。決して悪い気もしないのである。

 こんな生活が、新しい家に越してきてから、何日も続く事になった。

 じょじょにだが、おいらもタマも新しい生活スタイルに馴染んできたようだった。少なくとも、おいらは、同居家族がタマ一人でも、それほど寂しいとも思わなくなり始めていた。

 そんな、ある夜の事である。

 外出から戻ってきたタマが、やけにそわそわとしており、すぐにおいらの事を抱き上げた。

「カイト。どうしよう、不審者だよ、不審者」

 と、タマは言った。

 フシンシャが何なのかは、おいらにはよく分からなかったが、最近、タマがよく口にするキーワードだった。

 タマは、おいらを抱いたまま、窓の方へと向かった。窓はあらかじめカーテンを閉めていたが、すき間からソッと外を観察したのである。

 タマは、おいらにも外を見るよう、おいらの体を窓へと近づけた。

「ほら、あの電柱の影に誰かいるよ。最近、怪しい人がよく、このあたりをうろついてるんだって。このうちも狙われていたら、どうしよう」

 タマの言う通り、確かに、すぐ外にある大きな電柱の裏に何かが隠れているようだった。

「警察に電話した方がいいかな。でも、大げさになり過ぎても困るし」

 タマの、おいらを抱きしめる力が強まった。タマも、よほど怯えて、興奮しているらしい。まさに、こんな時こそ、お守のおいらが、タマの心の支えになってやらなきゃいけないようだ。

 一声にゃーと鳴いて、おいらはタマを元気づけた。

「ありがとう、カイト。自分がいるから大丈夫、って言ってくれてるのね」

 おいらの心遣いが分かってくれたらしく、タマがおいらの頭を撫でてくれた。

 しかし、その後、しばらく進展は無かった。タマは、まだ様子をうかがっていて、ケイサツとやらに電話を掛けたりはしなかったし、部屋に閉じ篭ったまま、時々、窓から電柱の方を見張る状況が続いた。

「あれ、いなくなったよ」

 ふと、タマがそう言った。どうやら、電柱の影に潜んでいたフシンシャの姿が、いつの間にか見えなくなったらしい。

「本当に、もうどこかへ行っちゃったのかな」

 タマがつぶやいた。

 そして、タマは、おいらを抱いたまま、ゆっくり歩き出したのだった。

 タマの奴は、臆病な割には、好奇心が強い面もあるのだ。この時もそうだった。よりによって、止めとけばいいのに、わざわざ、部屋の外へ出て、本当にフシンシャがいなくなったかどうか、確かめようとしたみたいなのである。

 おいらを抱いたままでだ。おいらと一緒なら、多少は怖さが紛れるとでも思っていたらしい。とんだとばっちりなのである。しかし、タマのお守として、こうなったら、おいらもとことん付き合うしかなさそうだった。

 タマは、静かに部屋の玄関の方へ向かい、音を立てないようにして、そっと玄関のドアを開いた。むろん、おいらを抱いた状態でである。

 玄関の外を見たタマが、次の瞬間、大声を出した。

「パパ!」

 その声にびっくりして、おいらも慌てて、タマの腕の中から地面へとぴょんと飛び降りた。

 タマが呆れた顔をしている。タマの視線の先には、戸惑いながら立ちすくんでいるタマのとーちゃんの姿があった。

 

 それから、数十分後、タマのとーちゃんはおいらたちの部屋に入れてもらえて、テーブルの前に座らされ、タマの説教を受けていた。

「もう、パパったら!あれほど、あたしは心配ないって、言っておいたじゃない。これまでも、こそこそ、うちのそばまで来て、様子を伺ったりしていたのね。今まで、近所で不審者と間違えられていたのも、全部パパだったんでしょう?」

 タマは、普段は本当に優しいのだが、怒った時は実に怖いのである。

「珠華、本当にごめん。たまたま、そばを通りがかったものだから、覗いてみただけなんだ。ウソじゃない、信じてくれ」

 タマのとーちゃんは、ひたすら平謝りしていた。

 タマに怒られるのは、前の家に居た頃から、たいていは、このとーちゃんだったのである。

「たまたま通りがかっただけって、実家からここまで100キロ以上離れてるのよ。それに、こっちの方角にはパパの用事のありそうな場所はないし。ごまかそうったってダメなんだからね」

「許しておくれ。お前がきちんと一人で暮らせてるか、気になってしょうがなかったんだよ」

「月に一度は、そっちの家にも顔を出してたじゃない。それに、あたしんところに来たかったら、そんな隠れたりしないで、堂々と訪ねてきてくれたら良かったのよ」

「それはそうだけど、あんまり遊びに行き過ぎたら、それはそれで、お前もうるさがるだろう?」

「当たり前よ!あたしだって、もう子どもじゃないんだから!」

 タマのとーちゃんは、図体がでかいわりには、タマにはからきし弱いのであった。

 しかし、本物のフシンシャとやらじゃなくて、まずは一安心だったようである。

 タマには、こんなに自分の事を心配してくれている親がいて羨ましいな、とふと、おいらも思った。

 おいらの心の中にも、優しかったかーちゃんの姿がぼんやりと浮かび上がったのであった。

 

    了


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ボツネタ集

 以下に掲載するのは、作品化にこぎつけなかったボツネタの数々です。

 主に、ブックショート共幻文庫のコンテスト用に考えたアイディアです。

 

 ボツネタと言うより、今はまだ書けない作品のシノプシスもいくつか含まれています。

 映画用のアイディアである「ルシー」「AI影の少女」「Battle on spirits」などがそうです。「いじめっ子は皆殺し」も、執筆保留中の小説の一つです。


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シノプシス・コンテスト用ボツネタ

 今となっては思い出したくもない、あるシノプシス(あらすじ)・コンテスト用に送ったアイディアの数々です。

 私のネタも、1次予選は通過していたらしいのですが、肝心のコンテストの方が終盤ウヤムヤになってしまい、誰かの作品は入選したみたいなのですが、その後の展開の話がまるで聞かれず、専用サイトの方も自然消滅してしまいました。

  • ノストラダムスの大予言、惑星直列、マヤの予言など、そのたびに地球は未曾有の危機に襲われていたのだが、未来人のタイムパトロール隊が現代人に気付かれぬようにそれらの脅威を密かに撃退してくれていた!自分たちの住む未来を守るため、過去の破滅の歴史と戦うタイムパトロール隊の活躍冒険劇。
  • 未来の地球人の兵器は、どれも安全装置(ブレーカー)がついていて、戦闘の時、極限までパワーを発揮できなくなっていた。そんな状態の時代に、宇宙人が攻めて来て、地球軍はピンチに陥るが、主人公の少年は古代博物館の奥に眠っていた過去の強力兵器、巨大ロボットを見つけ、それに乗って出陣する。
  • 人類が絶滅した超未来の地球。人類の文明を引き継いだロボットたちの未来社会に、実験で絶滅種の人間が一人、クローン再生される。ロボットだけの世界に紛れ込んだ、たった一人の人間が騒動を起こす。
  • 馬、牛、豚、ニワトリ、犬の五匹の動物による戦隊ヒーローが誕生する!彼らは、長きに渡って、自分の同族を家畜として虐待隷属してきた人類を悪の組織と見立て、戦闘を開始する。善悪の視点をひっくり返してみた風刺ヒーローもの。
  • 現代日本のある父子家庭。パパ大好きな娘が、不思議な力(魔法?超能力?)で、大人になる能力を身につけ、冗談のつもりで大人の姿で父に接近したところ、恋仲になってしまう。ここに禁断のラブファンタジーが展開。賢い娘は、大人と子供の姿を使い分け、父がピンチの時に上手に手助けする。
  • テレポートができる超能力者の地球人が、調子に乗った結果、宇宙の果ての惑星に瞬間移動してしまう。座標があいまいな為、超能力では地球に戻れない。しかし、その星には友好的なエイリアンがいて、一人乗り宇宙船を貸してくれて、地球人はそれに乗って、地球を目指す事に。大冒険スペースオペラ。
  • 地獄のテレビ放送、ベルゼブル通信。悪魔たちが視聴するベルゼブル通信の内容は、ドキュメンタリーも企画ものも創作ドラマも、人間の悲劇や不幸を取り扱ったものばかりだ。地上に降り立った悪魔のキャスター、ベルゼブルの今宵の犠牲者は誰?
  • マッドサイエンス部。我が校の科学部の部員は、一人一人が博士なみの天才だ。それぞれの部員が、生物学、ロボット工学、心理学、天文学など、一つの科学分野だけ得意としており、そんな彼らが時には手を結んだり、あるいは敵対したりして、学園に騒動を巻き起こしたり、事件を解決したりするのだ。 

 ボツネタとは言ってますが、まあ、依頼さえあれば、いつでも正式作品に書き上げられるネタばかりです。3番めの未来ロボット社会ネタなんて、まさにルシーものの原点ですね。5番めの父娘ラブファンタジーは、コミPo!版「ミーちゃん千一夜」の変形。と言うか、ほんとは「ミーちゃん千一夜」のネタを送りたかったのですが、すでに執筆済みのネタは応募不可でしたので、送れませんでした。6番めのスペースオペラの話も、実はマンガ用の下書きは学生の頃にすでに書き上げてしまっています。7番めのベルゼブル通信も、大学生の時にアマチュア映画で作れないだろうかと温めていたネタです。

 そして、このコンテストでの見捨てられ感がはなはだ悔しかったのが、このたび、私がまた小説を書くようになりだしたきっかけでして、1番めの1999年のタイムパトロールものを発展させた物語が「ルシーの明日」だったのでした。


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共幻文庫コンテスト2015用ボツネタ

 共幻文庫が、お題つきの短編小説コンテスト12回連続を行なっていたのに私が気が付いたのは、2015年も末でしたので、この2015年のコンテストにはほとんど参加できませんでした。参加できたのは、終盤の3回分だけで、なおかつ時間が足りなかったので、各回に1本だけ出品するのが精一杯です。よって、作品化以前に、形にならなかったアイディアも結構ありました。

 第10回のお題が「秘密」。このお題は、色々な切り口で書けそうです。昔話の「雪女」みたいなストーリーとか、皆が知っているのに、わざと知らないふりをしている秘密の話とか、いろいろと構想は浮かび上がったのですが、なかなか形になりませんでした。結局、締め切りに間に合いそうになくて、出品したのは、昔書いた短編の使い回しで「ブログ・ブロークン・ジェラシー」です。

 第11回のお題は「手」で、最初は、タコ型宇宙人と握手したところ、握手したのは触手じゃなくて、触手の中に混ざっていた性器だった、と言う下ネタを考えていたのですが、状況設定がうまくまとまらず、作品化ならず。代わりに、浮上し、作品化にこぎつけたのが、お化け坂シリーズの第1話となる「帰り道」でした。

 第12回のお題の「。」につきましては、はじめっから「お題に生きる男」のネタしかひらめきませんでしたので、ボツネタはありません。


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共幻文庫コンテスト2016用ボツネタ

   第1回お題「笑い」

 正式に出品した作品のうち、「笑いを盗む男」はユーモア、「笑う幽霊坂」はホラーでしたので、もう一本、ほのぼのした作品を送ろうかと考えていました。で、思いついた話と言うのが、幼稚園の女先生がジャングルを歩いていると、ヘンテコな動物にいっぱい出会うと言うストーリーで、実は入院していた先生を喜ばす為に、園児たちが書いてきた動物の絵で作られた紙芝居だった。その紙芝居を見た先生が嬉しくて最後に笑うと言うオチだったのですが、いまいち傑作になりそうな気配が感じられません。で、書かないで、止めてしまいました。登場人物名は全部「クレヨンしんちゃん」から借用しようと言うところまで話は煮詰めていたのですがね。

 

   第2回お題「復讐」

 このお題は私の得意ジャンルです。次々にネタがひらめいたのですが、ここは慎重になって、特に中身が凝った作品のみを出品作として完成させました。

 実際に執筆したにも関わらず「浦島異聞」は、復讐ネタっぽくなくて、出品を保留したのは、すでに別所で書いた通り。「浦島異聞」の姉妹作で「かぐや異聞」なんてのもひらめきました。かぐや姫が何らかの復讐の為に、地球の花婿候補たちに無理難題を吹っかけた、と言うオチなのですが、いまいち中身が軽すぎました。もともと、「浦島異聞」つながりで、登場人物名に昔話キャラを多用したかっただけの作品なので、「浦島異聞」の方が出品保留になると、当然こちらも書くのは中止です。

 悪魔サタンが復讐に燃える話を考えました。神様エホバが、突然あらわれて、サタンにあっさりと神様の地位を譲ってくれたのですが、神様の仕事は忙しすぎて、サタンはびっくりします。結局、エホバに神様の役職を返上するのですが、復讐しようとしたら、逆に不幸になってしまうと言うお話。このテの、復讐すると自分が苦境に陥ったり、復讐内容が逆に相手を喜ばせてしまうと言った話をもくもくと練っていました。

 ヴァイトン(精神を喰う生命体)が出てくる話も書こうかとしていました。学校のイジメで自殺した子がヴァイトンに生まれ変わります。ヴァイトンの好物は、イジメをする意地悪な心で、今度はヴァイトンたちが地球へいじめっ子の心を食い荒らしに向かうと言うシーンで終わります。でも、この話は暗くなり過ぎて、入選からは絶対外されると思いました。

 いっそ、復讐対象が実は今この小説を読んでいる審査員だ、と言うトリッキーな展開の話も考えました。でも、そんな話じゃ、絶対に審査員にはウケないし、入選はムリですよね。

 

   第3回お題「料理」

 料理と聞いて、すぐひらめくのが「注文の多い料理店」(by宮沢賢治)。ほとんど躊躇する事も無く「人喰い料理大作戦」のネタがまとまりました。トライアングルのエピソードについては、この程度の安易さで構わないのであります。

 一方、ルシーをどう料理と結びつけるかは、けっこう苦労しました。最初、ロボット玩具のルシーに電気をさまざまに料理して喰わせる話を考えていたのですが、どう知恵を絞っても、電気の料理と言うものが思い浮かびません。結局、ありふれたストーリーですが「ルシーの晩餐」の形に落ち着きました。

 

   第4回お題「幽霊」

 このお題を見た途端、私には「お化け坂」を送れ、と示唆しているように見えてしまい、別コンテストで落選したばかりの「お化け坂」をすぐに投稿してしまいました。

 もう一本は、もともとは「幽霊人形(仮)」というアイディアで、はじめっからオモチャの人形に幽霊が取り憑く話を予定していました。幽霊が取り憑いたのは、オモチャ会社の試作品の人形で、会社は「幽霊が取り憑く人形」として、量産して大々的に売ろうとします。しかし、実際に幽霊(試作品を作った男の死んだ奥さん)が本当に取り憑いたのは、最初の試作品だけで、あとの人形はインチキで、その事がバレて、幽霊人形はすぐ発売禁止処分になってしまいます。で、唯一のホンモノ幽霊人形を巡って、最後は「知ってる人だけのお話」と同じオチになる訳です。なぜ、この原案を「知ってる人だけのお話」に大幅変更したかと言いますと、この「幽霊」のお題が発表された後すぐ、共幻文庫のサーバーが本当に繋がらなくなるハプニングがありまして、不謹慎ながら、ネタとして小説に組み込んじゃった次第です。ほんとに「知ってる人だけのお話」なのであります。

 本当は、本物の幽霊ではなく、幽霊部員や幽霊船と言った「人がいない」という意味合いの幽霊ネタを書いてみたい気もあったのですが、すでに出品用作品が2本決まってしまっていたので、このネタは膨らみませんでした。

 

   第5回お題「成長」

 「AIに負けるな」のストーリーは、お題が分かる前からすでに決まっていました。原案段階では、本編内でも触れてる囲碁勝負のような、人間の小説家対AIの小説書き勝負の話にするつもりでした。タイトルが「AIに負けるな」なのは、その名残りなのであります。

 もう一本、出品しようと言う事で、蛙里いずみの新作にする事はすぐひらめいたのですが、アイディアがまとまるまでは、かなり苦労しています。最初、「姪の成長」を正攻法で描こうとも思ったのですが、あんまり面白くなりそうにありません。それで、いつものごとく「キャラクターの成長」をオチにした、トンデモない話になってしまったのであります。実はいずみが二人出てくるのが元々のイメージだったのですが、むしろ意外さを重視して、完成品のようなスタイルにしました。

 もっと変わった「成長」の話も書けそうな気はするのですが、今回はあまり頭を絞ってはいません。

 

 総括しますと、本コンテストでは、ニジュウ面相ネタお化け坂などのシリーズものにこだわりすぎた為、アイディアに自分で制限をかけちゃた感じもします。特に後半戦ほど、すでにネタが決まっていたため、新しい発想が膨らまなかったようで、ちょっと惜しい事をしたかもしれません。


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アットホームアワード用ボツネタ

 アットホームアワードの小説コンテストお題が四つありまして、そのうち、お題「一人暮らし」には「おいらとタマの一人暮らし」を、お題「お隣さん」には「おばあちゃん」を送らせていただきました。

 さて、お題はまだ二つあったのですが、「おばあちゃん」の出来が良すぎた事もあって、なかなか次のネタが決まりませんでした。

 お題「ご当地物語」は、私自身があんまり旅行しない人間なもので、いい舞台がひらめきません。いっそ、私が今住んでいる町を舞台にした「桜の町大作戦」(うちの町の名物が桜草だったもんで)なんてのも考えたのですが、少し安直すぎるかと思い、ひとまず保留にしました。もし、この話を書いていたら、トライアングル・シリーズの一本になっていました。

 もう一つ残っているお題「二次創作」がまた、なかなかの難産でして、ネタは次々にひらめくのですが、あと一歩、作品化に及びません。

 「三匹のこぶた」を元ネタにして、ワラ、木、レンガの家を比べる話とか考えたのですが、いまいち内容がふくらみませんでした。「不思議の国のアリス」のパロディで「日本の国のアリス」はどうだろう、と思いました。日本の住宅はウサギ小屋だと聞いて、アリスが小さくなるお菓子を用意しているとか、日本の住宅事情をアリス原典のネタと引っ掛けて、ユーモアに描こうかと思ったのですが、これも、あまり斬新な内容になりそうな気配が感じられませんでした。

 いっそ、「宇宙戦争」タコ型火星人が地球人に化けて、スパイとして日本に潜入する話なんてのも考えたのですが、最後は、日本人の親切さに触れて、火星人が改心すると言う展開にしたかったのに、生き血が好物で、ウィルスにやたらに弱い火星人では、なかなか、そんな方向には話を進める事が出来なかったのでありました。

 

 さて、これ以上、アイディアがひらめかなかった為、アットホームアワードへの参加はもう止めるつもりだったのですが、その後、アットホームアワードの入選作を見ますと、私がNGネタと考えていた幽霊物件話とか「ご当地物語」でも「架空の町」なんてのが採用されておりまして、オイオイと思ってしまいました。

 何でもアリかよ、と判断した私は、とりあえず、もっとアットホームアワードに作品を送ってみる事にしました。そうして、無理やり書きあげた新作が「アリとギリギリデス」「ビデオの中の彼女」だったのであります。まぁ、最終的にどれも入選し損ねた訳なのですが。


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<解説>名前遊び

 執筆活動を再開するにあたり、過去の自作のキャラクターはほぼ使い回ししないと心に決めたのですが、そうなると、登場人物の名前の付け方に自由度が増した分、少し遊びたくもなってきました。

 最初に遊んでみたのが「帰り道」です。この作品に出てくる二人組の名前は、一恵とF先輩で、私としては、吹石一恵と福山雅治のつもりだったのですが、ヒントが少なすぎて、誰にも気付いてもらえなかったようです。そんな訳で、「帰り道」の続編となる「3つの手の物語」では、もろ、先輩を福山と表記し、一恵の父親の徳一も登場させております。(吹石一恵の父親の名前が徳一)

 以後の作品では、もっと分かりやすい名前遊びをする事にしました。

 

「お化け坂」

はるか    (春か)

なっちゃん  (夏ちゃん)

アキラ    (秋ラ)

冬彦

 

「笑う幽霊坂」

美来  (未来)

過子  (過去)

 

「おばあちゃん」

世界一

世界初音  (世界初ね)

世界喜望  (世界規模)

 

「ルシーの晩餐」

キノオ  (昨日)

キョウ  (今日)

アス   (明日)

 

「浦島異聞」

桃吉  (桃太郎)

金太  (金太郎)

寸坊  (一寸法師)

 

「時間犯罪」

L(Laboratory)病理研究センター

時間犯罪を犯す人H(Human)

バチルスB(Bacillus)

友人F(Friend)

 

 トライアングル・シリーズは、主要登場人物が三人と言う事で、トライアングルトライ、アン、グルに分解してみました。そのまんま、他の登場人物名も、打楽器を用いています。雑誌「ダ・ガッキ」をはじめ、編集長のシン・バル氏、T・バリン(タンバリン)氏、すず(ベル)さん、など。

「ガラスの靴大作戦」に出てくるサンドリヨン(社)とはシンデレラのフランス名「人喰い料理大作戦」のゲストキャラであるモーロックとは、ウェルズ「タイムマシン」に登場した人喰い未来人の名前です。トライアングル・シリーズにつきましては、ボツネタの方も、大体こんな感じでゲストキャラ名が付けられています。

 

 「知ってる人だけのお話」の登場人物は、虎井、安藤、グルと実はトライ、アン、グルを和名に変えただけのものです。もう一人?の重要登場人物である尾場家サカも平仮名にすると「おばけさか」となり、他にもルシーアケチ探偵、ニジュウ面相などが出てきますので、この作品はほんとは私の最近のシリーズもの全ての名前を含有したお遊び(パロディ)だったりします。

 

 「おいらとタマの一人暮らし」は、人間キャラの名前の方が珠華で、通称タマ。猫の親子の方がアオイとカイトと、今どきの人間の子どものような名前を付けられておりまして、名前だけだと飼い主とペットが逆転しています。

 

 いずみちゃんシリーズ蛙里いずみと言う名前は、第一作「アリとギリギリデス」のアリに引っ掛けて、生まれました。蛙里(かえるざと)の読み方を変えると「あり」とも読めるのであります。さらに、「泉より愛をこめて」に出てくる画家の角土(かくど)ですが、これも角土=角度=アングルとなり、名画「泉」の作者であるアングルを和名に変えた(かなり苦しいですが)ものなのでした。

 

 「狼ハンター」の登場人物、ペローグリムと言う名前はどちらも「赤ずきん」を紹介している有名童話作家の名前です。山羊のニコの名の由来は、ネタばれしちゃいますが、お察しの通りユニコーンから取っています。赤ずきんの喋り方を藤田ニコル風にしたからと言う訳ではありません。


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